
監護者わいせつ罪とは、親など監護者の影響力に乗じて18歳未満の子どもへわいせつな行為に及んだときに成立する犯罪です。
罰則に罰金刑はなく、6月以上10年以下の拘禁刑と定められています。そのため、起訴されて有罪となれば、執行猶予がつくかどうかで刑務所に入るかどうかが決まります。
「警察から呼び出しの連絡が来た」「家族が逮捕されたが、これからどうなるのか」と不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。もっとも、捜査の早い段階から弁護士が動くことで、身柄の解放や不起訴処分を目指せる場合もあります。
この記事では、性犯罪事件を数多く取り扱ってきた弁護士が、次の点について解説します。
- 監護者わいせつ罪の罰則と公訴時効
- 罪が成立する4つの要件
- 逮捕された後はどうなるのか
- 実刑・前科を避けるためにできること
お読みいただくことで、ご自身やご家族の状況が監護者わいせつ罪にあたるのか、そして今どの段階で何をすべきかを整理できます。
なお、すでに捜査機関から連絡を受けている方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。地域を問わずご相談を承っています。
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監護者わいせつ罪とは
監護者わいせつ罪は、刑法179条1項に定められた犯罪です。その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をすることが、処罰の対象とされています。
(監護者わいせつ及び監護者性交等)
第百七十九条 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条第一項の例による。
2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条第一項の例による。
2017年の刑法改正で新設された監護者わいせつ罪
監護者わいせつ罪が刑法に置かれたのは、2017年(平成29年)の改正のときです。改正前は、実親や養親などの監護者が、同居する子どもへのわいせつな行為を繰り返していても、
- 監護者による暴行又は脅迫
- 被害者の心神喪失・抗拒不能
が認められなければ処罰が難しく、より罰則の軽い児童福祉法違反や各都道府県の青少年保護育成条例違反で処罰せざるを得ませんでした。児童福祉法違反の罰則については「児童福祉法違反とは?弁護士がわかりやすく解説」で解説しています。
しかし、18歳未満の者は監護者に依存して生活せざるを得ない立場にあります。その状況を利用してわいせつな行為に及ぶことの悪質さから、暴行・脅迫の有無を問わずに処罰の対象とする規定として設けられたのが監護者わいせつ罪です。2017年7月13日以降の行為に適用されています。
また、監護者わいせつ罪は新設時から非親告罪です。かつての強制わいせつ罪は親告罪(被害者の告訴がなければ起訴できない犯罪)でしたが、同じ2017年の改正で非親告罪に改められました。そのため、被害者の告訴がなくても起訴される可能性があります。
監護者わいせつ罪と監護者性交等罪の違い
刑法179条2項には、監護者性交等罪が規定されています。同じ立場にある者が、影響力に乗じて「性交等」をした場合に成立します。
監護者わいせつ罪との違いは、行為の内容と罰則の重さにあります。
- 監護者わいせつ罪:「わいせつな行為」(乳房を揉む、陰部に触れる、キスをするなど)をした場合に成立。罰則は6月以上10年以下の拘禁刑
- 監護者性交等罪:「性交等」(性交、肛門性交、口腔性交、膣・肛門への身体の一部(陰茎を除く)や物の挿入でわいせつなもの)をした場合に成立。罰則は5年以上の有期拘禁刑
つまり、行為が「性交等」に至っているかどうかによって、適用される罪と罰則の重さが分かれます。
監護者わいせつ罪の罰則
刑法179条1項は、罰則について「第百七十六条第一項の例による。」と定めています。刑法176条1項は「不同意わいせつ罪」の規定(2023年(令和5年)の刑法改正で旧「強制わいせつ罪」「準強制わいせつ罪」が統合されたもの)で、「例による」とは罰則を同じにするという意味です。
不同意わいせつ罪の罰則は「6月以上10年以下の拘禁刑」ですから、監護者わいせつ罪の罰則も「6月以上10年以下の拘禁刑」ということになります。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役と禁錮を一本化した刑のことです。
罰金刑がないため、有罪となった場合の判決は、実刑か執行猶予つきのいずれかです。なお、未遂も罰せられ(刑法180条)、刑が減軽されることがあります(刑法43条)。
監護者わいせつ罪の公訴時効
公訴時効とは、犯罪行為が終わってから一定期間が過ぎると、検察官が起訴できなくなる制度です。監護者わいせつ罪の公訴時効は12年で、犯罪行為が終わった時から進行します(刑事訴訟法250条3項3号・253条1項)。
さらに、被害者が犯罪行為の終わった時に18歳未満だった場合は、犯罪行為が終わった時から被害者が18歳に達する日までの期間が12年に加算されます(刑事訴訟法250条4項)。監護者わいせつ罪は被害者が18歳未満の場合の犯罪ですから、実際にはこの加算がされます。
行為から長い年月が経ってから被害が申告されることもあり、時効が完成しているとは限りません。
監護者わいせつ罪の構成要件
監護者わいせつ罪の構成要件(成立要件)は、以下の4つです。
- ①監護者であること
- ②相手が18歳未満の者であること
- ③監護者であることによる影響力に乗じたこと
- ④わいせつな行為をしたこと
①監護者であること
まず、18歳未満の者を現に監護する者(監護者)でなければなりません。
「現に」監護する者である必要があるため、離婚して離れて暮らし、子どもの生活に関わっていない親は、通常、監護者わいせつ罪の監護者にはあたりません。監護者にあたるかどうかは、以下の事情を総合的に勘案して判断されます。
- 18歳未満の者と同居しているかどうか
- 18歳未満の者に対する指導状況、身の回りの世話等の生活状況
- 生活費の支出などの経済的状況
- 18歳未満の者に関する諸手続などを行う状況
そのため、親権者であっても「監護者」にはあたらない場合もあり、反対に、親権者ではなくても「監護者」にあたる場合もあります(法律上の親子関係がなくても同様です)。実務では実親や養親が多いですが、内縁の夫など法律上の監護権をもたない者も、事情によっては監護者にあたることがあります。
監護者にあたりうる例は、児童養護施設の職員、子どもを預かって養育している親類、同居している親の交際相手などです。一方、学校や塾の教師、習い事のコーチ、バイト先の教育係などは、生活全般の世話をしているとまでは言えないため、通常は監護者にはあたりません。
②相手が18歳未満の者であること
次に、相手が18歳未満の者でなければなりません。18歳未満であれば女性のみならず男性も監護者わいせつ罪の客体(被害者)になりえます。
相手が18歳未満であることに加えて、監護者がそれを知っていたこと(故意)も必要ですが、監護者わいせつ罪では知っていることがほとんどでしょう。
相手が18歳以上(成人)であれば、同様の行為でも監護者わいせつ罪の対象にはならず、代わりに不同意わいせつ罪の成否が問題になります。また、監護者にあたらなくても、16歳未満の者にわいせつな行為をすれば不同意わいせつ罪が成立します(相手が13歳以上のときは、行為者が相手の生まれた日より5年以上前に生まれていることが要件です。刑法176条3項)。不同意わいせつ罪との違いについては「不同意わいせつ罪とは?旧強制わいせつ罪との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。
③監護者であることによる影響力に乗じたこと
次に、監護者わいせつ罪では、監護者であることによる影響力に乗じたことが求められます。「監護者であることによる影響力」とは、衣食住などの経済的な面や生活上の指導監督といった精神的な面から、18歳未満の者の生活全般を監督し、保護することにより生じる影響力をいいます。
「乗じて」とは、その影響力が行為の当時においても及んでいる状態を利用して、わいせつな行為をすることをいいます。
要するに、18歳未満の者が経済的にも精神的にも監護者に頼らざるをえない状況下でわいせつな行為に及んだことが必要ということです。「従わないなら学校にも行かせない」といった具体的な言動がなくても、その影響力が及んでいる状態のもとでわいせつな行為に及べば「乗じて」にあたります。
また、被害者の同意があった場合でも、監護者わいせつ罪の成立は妨げられません。監護者の影響力のもとでは、18歳未満の者が自由な意思で同意することは困難であると考えられるためです。
④わいせつな行為をしたこと
最後に、監護者わいせつ罪が成立するには、わいせつな行為をしたことが必要です。わいせつな行為とは「行為者またはその他の者の性欲を刺激興奮または満足させる行為であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反する行為」と解されており、具体的には、
- 被害者の胸を触る、揉む
- 被害者の性器を触る
- 自己の陰茎を被害者の性器に押し当てる
- キスをする
- 裸にして写真を撮影する
などの行為がこれにあたります。
なお、性交、肛門性交、口腔性交や、膣・肛門への身体の一部(陰茎を除く)・物の挿入でわいせつなものも「わいせつな行為」にあたりますが、これらの「性交等」に至った場合は、より罰則の重い監護者性交等罪として処断されます。
逮捕後の流れと身柄拘束の期間
加害者と被害者が同居していることが多い監護者わいせつ罪では、捜査機関に発覚すると逮捕に至ることが少なくありません。逮捕された場合、刑事手続きは次の順序で進みます。
- 逮捕から48時間以内に検察官へ送致される
- 勾留は最長20日間
- 起訴・不起訴が判断される
- 刑事裁判で判決が言い渡される
- 判決が確定し刑が執行される
①逮捕から48時間以内に検察官へ送致される
監護者わいせつ罪で逮捕されると、警察署の留置施設に身柄を拘束され、警察官による取調べが行われます。警察は、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察官へ送致しなければなりません。
逮捕は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、かつ証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合に認められます。監護者わいせつ罪では、被害者に接触して口裏合わせをするなど証拠隠滅のおそれがあると判断されやすく、逮捕される可能性があります。
②勾留は最長20日間
検察官は、送致を受けてから24時間以内に、引き続き身柄を拘束する必要があるかどうかを判断し、必要があれば裁判官に勾留を請求します。
裁判官が勾留質問を経て勾留を認めると、まず10日間の勾留が決定され、その後、捜査の必要性に応じてさらに最長10日間延長される場合があります。逮捕から起訴・不起訴の判断までは最長23日間となります。
監護者わいせつ罪では、長期間にわたって加害行為が繰り返されているケースも多く、捜査に時間を要するとして勾留が延長される傾向にあります。また、被害者との接触を防ぐため、接見禁止(弁護士以外との面会が禁止される措置)がつくこともあります。詳しくは「接見禁止とは?逮捕後に面会が禁止される理由と対処法を解説」をご参照ください。
身柄拘束が3週間を超えて続けば、その間は出勤も外部への連絡も自由にはできず、仕事や家庭への影響は避けられません。
③起訴・不起訴が判断される
勾留期間中に、検察官が起訴・不起訴を決定します。監護者わいせつ罪には罰金刑がないため、略式手続(書面のみで審理する簡易な手続き)は用いられず、起訴されれば公開の法廷で審理を受けます。
不起訴となった場合は身柄が解放され、前科もつきません。一方、起訴されて有罪が確定すれば前科がつきます。なお、起訴された後は保釈請求ができ、認められれば保釈保証金の納付を条件に身柄が解放されます。保釈の条件や早期釈放については「保釈と釈放の違いは?早期釈放のためにすべきこと」で説明しています。
④刑事裁判で判決が言い渡される
監護者わいせつ罪で起訴されると、呼称は「被疑者」から「被告人」に変わります。起訴からおよそ1〜2か月後に第1回公判期日が開かれ、裁判所で審理が行われます。
裁判では、検察官が犯罪事実を立証し、被告人側が反論します。監護者わいせつ罪の事実そのものを争うのか、罪を認めて量刑のみを争うのかは、弁護人と協議した上で決定します。審理が尽くされると、判決が言い渡されます。
⑤判決が確定し刑が執行される
監護者わいせつ罪の有罪判決には、刑務所に収監される実刑と、一定期間問題を起こさなければ刑の執行を受けずにすむ執行猶予つきの判決があります。執行猶予の条件は「執行猶予とは?実刑との違いや認められる条件をわかりやすく解説」をご確認ください。
実刑か執行猶予かは、行為の悪質さに加え、判決までにどこまで対応できたかを総合して判断されます。本罪では、犯行が単発か長期間にわたるものか、被害者への慰謝の措置ができているか、被害者と離れて生活する環境が整っているかといった事情が考慮されます。
判決に不服がある場合は、控訴・上告により上級の裁判所に判断を求めることができます。不服申立ての期間が過ぎると判決は確定し、実刑であれば収監されることになります。なお、執行猶予がついた場合でも前科は残ります。
実刑・前科を避けるためにできること
監護者わいせつ罪では、不起訴処分を得て前科を避けるには起訴されるまでの対応が、有罪となった場合に実刑を避けるには判決までの対応が、それぞれ結果を左右します。ここでは、4つの場面に分けて、とるべき対応を説明します。
警察から呼び出された段階で弁護士に相談する
監護者わいせつ罪の容疑で警察から呼び出しを受けて取調べに応じる在宅事件でも、捜査が終われば起訴されることがあります。身柄を拘束されていないからといって、監護者わいせつ罪の疑いが軽く扱われているわけではありません。在宅事件の流れは「在宅事件の流れと期間|起訴率・不起訴率と身柄事件との違い」で紹介しています。
取調べでは、記憶があいまいなまま話した内容が調書に残り、後から訂正するのは容易ではありません。連絡を受けた段階で弁護士に相談し、何をどこまで話すのかを整理しておくことが重要です。
被害者への謝罪と示談交渉を弁護士に任せる
罪を認める場合、まず優先されるのは被害者への謝罪と慰謝の措置です。示談が成立すれば、不起訴処分となることや、刑が軽くなることにつながる場合があります。
もっとも、監護者わいせつ事件では、被害者が同居する子どもであり、その親権者が交渉の相手となることも少なくありません。本人が直接連絡を取ることは、証拠隠滅を疑われるうえ、被害者を追い詰めることにもなります。示談交渉は弁護士を通じて進めるべきです。
示談金の目安や交渉の進め方は「不同意わいせつ(旧強制わいせつ)の示談金相場や示談の進め方」で説明しています。
再犯防止のために生活環境を見直す
監護者わいせつ事件では、事件の前まで被害者やその親族と生活をともにしていたケースが少なくありません。同じ環境に戻れば、被害者は加害者と再び顔を合わせることになり、再犯のリスクも高まります。
そのため、離婚、離縁、別居(引っ越し)、転職などを検討し、可能な範囲で行動に移していくことが必要です。被害者が安心して生活できる環境を整えたかどうかは、処分や量刑の判断で考慮されます。
専門機関のカウンセリングを受けるなどの取り組みも、再犯防止の姿勢を示す材料になります。これらを書面にまとめ、検察官や裁判所へ示していくのは弁護人の役割です。
身に覚えがない場合は供述の信用性を争う
身に覚えがない場合は、無罪を主張する立場から、依頼者の主張に沿った弁護活動を行います。監護者わいせつ罪の事案では、監護者であることや相手の年齢についての故意を否認するよりも、わいせつな行為の事実そのものを否認することが多いと思われます。
この場合、事実を裏づける証拠の中心は被害者の供述ですから、その供述が信用できないことを主張するのが弁護活動の柱になります。また、不利な供述をしてしまわないよう、接見を通じて取調べへの対応を助言します。
否認する場合は勾留が長期化する傾向にありますので、勾留の理由や必要性がないことを主張し、早期釈放を求めることも考えられます。どの対応が有効かは事件の段階によって変わります。判断に迷う場合は、早い段階で弁護士に相談してください。
監護者わいせつ罪を犯してしまった方へ
監護者わいせつ罪は、被害者がご家族であるという事件の性質上、示談交渉も、再犯防止のための環境調整も、ご本人だけでは進めにくい事件です。
弁護士に依頼すれば、取調べへの対応を助言し、示談交渉や身柄解放・不起訴処分に向けた活動をただちに始められます。
処分が決まってからでは、打てる手が少なくなります。
当事務所は刑事事件に注力しており、監護者わいせつ罪をはじめとする性犯罪事件についても豊富な弁護経験があります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

