監護者わいせつ罪とは|構成要件や罰則は?同意があっても成立する?

監護者わいせつ罪とは、18歳未満の者に対して、監護者がその影響力に乗じてわいせつな行為をすることで成立する犯罪です。刑法第179条1項に規定されており、平成29年の刑法改正によって新設されました。

この記事では、

  • 監護者わいせつ罪が新設された経緯
  • 監護者わいせつ罪の構成要件(成立要件)
  • 監護者わいせつ罪の罰則

につき、わいせつ事件に強い弁護士が解説していきます。およそ3分ほどで簡単に読めますので、最後まで読んでみてください。

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監護者わいせつ罪が新設された経緯

監護者わいせつ罪は平成29年刑法改正によって新設された罪です。

改正前までは、実親、養親等の「監護者」が18歳未満の者に対してわいせつな行為等を繰り返し、監護者と18歳未満の者との性的行為が常態化している事案であっても、

  • 監護者による暴行及び脅迫
  • 被害者の心神喪失・抗拒不能

が認められない場合は、強制わいせつ罪準強制わいせつ罪などの刑法上の性犯罪で処罰することは不可能でした。そのため、監護者わいせつ罪が制定されるまでは、より罰則の軽い、児童福祉法や条例で処罰せざるを得ませんでした。

もっとも、18歳未満の者は経済的にも精神的にも未熟であり、経済的・精神的に監護者に依存して生活しなければならないところ、こうした状況を利用して性的行為を行うことは、強制わいせつと同様に、18歳未満の者の性的自由を侵害する行為といえます。

そこで、事案の実態に即した処罰を可能とするため、改正によって監護者わいせつ罪が新設されたというわけです。ちなみに、平成29年7月13日以降の行為から適用可能となっています。

監護者わいせつ罪の構成要件

監護者わいせつ罪は刑法179条1項に規定されています(2項は「監護者性交等罪」という別の罪に関する規定です)。

(監護者わいせつ及び監護者性交等)
第百七十九条 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。

刑法 | e-Gov法令検索

上記の刑法179条1項より、

  • ①「現に監護する者(監護者)」が
  • ②「18歳未満の者」に対して
  • ③監護者であることの影響力があることに乗じて
  • ④「わいせつな行為」をすること

が監護者わいせつ罪の構成要件だとわかります。

①現に監護する者(監護者)

監護者かどうかは、次の諸事情などを考慮して実質的に判断されます。

  • 同居の有無、居住場所に関する指定等の有無
  • 指導状況、身の回りの世話等の生活状況
  • 生活費の支出などの経済的状況
  • 未成年者に関する諸手続等を行う状況

そのため、親権者であっても「監護者」にはあたらない場合もあり、反対に、親権者ではなくても「監護者」にあたる場合もあります

親権者でなくても監護者(現に監護する者)にあたる例としては、養護施設の長、親から子供を預かって実際に養育している親類、同居している親の交際相手などが該当します。一方、学校や塾の教師、習い事のコーチ、バイト先の教育係などは、子供に対して強い指導的役割を担っているものの、子供の生活全般にわたって世話をしているとまでは言えないため、「監護者」にはあたりません。

②18歳未満の者

18未満の「男女」という意味ですので、被害者の性別は問いません。

③監護者であることの影響力があることに乗じて

「監護者であることの影響力」とは、現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点や、生活上の指導監督など精神的な観点から、現に18歳未満の者を監督し、保護することにより生ずる影響力をいいます。

「乗じて」とは、上記の影響力が一般的に存在し、わいせつな行為を行う当時においてもその影響力を及ぼしている状態を利用してわいせつな行為をすることをいます。「従わないなら学校にも塾にも行かせない。食事も食べさせない」といった具体的な言動がない場合や、被害者の同意があった場合でも、その影響力を利用してわいせつ行為をすれば「乗じて」に該当します。

④わいせつな行為

わいせつな行為とは「行為者またはその他の者の性欲を刺激興奮または満足させる行為であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道徳観念に反する行為」と解されています。

具体的には、

  • 被害者の胸を触る、揉む
  • 被害者の性器を触る、舐める
  • 自己の陰茎を被害者の性器に押し当てる

などの行為がわいせつな行為にあたります。

監護者わいせつ罪の罰則

刑法179条1項によると、監護者わいせつ罪の罰則は「第百七十六条の例による。」と規定されています。第176条とは「強制わいせつ罪」に関する規定ですが、「例による。」というのは、強制わいせつ罪と罰則を同じとする、という意味です。そして、強制わいせつ罪の罰則は「6月以上10年以下の懲役」ですから、監護者わいせつ罪の罰則も「6月以上10年以下の懲役」ということになります。監護者わいせつ罪は懲役刑のみで罰金刑はありませんので、起訴されて有罪になれば、執行猶予付き判決を得ない限り刑務所に収監されます。

なお、監護者わいせつ罪は、未遂であっても、既遂と同じ法定刑の範囲で罰せられます。ただし、未遂の場合は減軽される可能性があります(刑法43条)。

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