外患援助罪(がいかんえんじょざい)とは、日本に対して外国から武力行使があったときに、外国に加担して、外国の軍務に服したり、軍事上の利益を与えた者を処罰する罪です。刑法第82条に規定されています。外患援助罪の罰則は「死刑又は無期若しくは2年以上の懲役」です。なお、日本でこれまでに外患援助罪が適用された事例・判例はありません。
(外患援助)
第八十二条 日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。刑法 | e-Gov法令検索
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、外患援助罪の成立要件や罰則、外患援助の未遂・陰謀・予備の処罰について詳しく解説していきます。
目次
外患援助罪の成立要件
外患援助が成立するための要件は次のとおりです。
- ①日本に対して武力行使があったこと
- ②外国に加担したこと
- ③軍務に服した、あるいは軍務上の利益を得たこと
①日本に対して武力行使があったこと
まず、外国から日本に対して武力行使があったことが要件です。
ここでいう「外国」とは、主権、領域、国民という国家の三要素がそろった国のことをいい、国際的に国として承認されているかどうかは問いません。一方で、三要素のうち一つでもかけている組織、私的団体、テロ組織などは外国にあたりません。
「武力行使」とは国際法上の敵対行為をいい、外交が日本の領土に侵入する行為が典型例です。一方、経済制裁などは武力行使にはあたりません。実際に武力行使があったことが必要ですので、武力行使前の準備行為だけでは武力行使があったとはいえません。
②外国に加担したこと
次に、外国に加担したことが要件です。
「外国に加担した」とは、外国に対し、積極的・自覚的に協力することです。
③軍務に服した、あるいは軍務上の利益を与えたこと
次に、外国に加担して、軍務に服し、あるいは外国に対して軍務上の利益を与えたことが要件です。
「軍務に服する」とは、外国の組織の一員として、その組織から支持を受けて活動することをいいます。軍隊の戦闘に加わることまでは必要ありません。「軍事上の利益を与え」とは、外国に対して日本の機密情報を提供したり、食料、武器、弾薬を提供するなど、外国の武力行使にとって有利となるような行為を行うことをいいます。
外患援助罪の罰則
外患援助罪の罰則は、死刑又は無期若しくは2年以上の懲役です(刑法第82条)。
外患援助罪は、祖国である日本国を裏切り外国に加担する重大な犯罪ですので、同じく国家反逆の罪である外患誘致罪や内乱罪と同様に死刑が罰則に設けられています。
なお、外患援助の教唆(そそのかすこと)をし、またはこれらの罪を実行させる目的をもってその罪のせん動をした者は、7年以下の懲役または禁錮に処せられます(破壊活動防止法第38条1項)。教唆された者が外患援助を実行した場合、教唆した者には、破壊活動防止法の刑罰よりも重い外患援助罪の刑罰が適用されます(破壊活動防止法第41条)。
外患援助罪は未遂・陰謀・予備も処罰される
外国援助罪は未遂を処罰する旨の規定(刑法第87条)、予備・陰謀を処罰する旨の規定(刑法第88条)が置かれています。
外国が日本に対して武力行使したものの、軍務に服すること、あるいは軍務上の利益を与えるに至らなかったときは外国援助罪の未遂、外国が日本に対して武力行使する前に外交に援助行為を行った場合は外国援助罪の予備又は陰謀で処罰される可能性があります。
外国援助罪の予備・陰謀罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
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