
「家族が麻薬の所持や使用で逮捕された」「麻薬及び向精神薬取締法違反の罰則はどれくらい重いのか」と、不安を抱えていませんか。
罰則は薬物と行為の種類で決まり、コカインやMDMA、大麻を営利目的なく所持・使用した場合は7年以下の拘禁刑(旧:懲役)です。もっとも、早期の弁護活動によって、不起訴処分や執行猶予付き判決を目指せる場合があります。
この記事では、薬物事件の刑事弁護に強い弁護士が、次の点について解説します。
- どんな薬物が処罰の対象になるのか
- 所持・使用・譲渡などの罰則一覧
- 逮捕された後の流れと弁護士ができること
- 不起訴や執行猶予を獲得した解決事例
お読みいただくと、見込まれる刑の重さと、今すべきことを整理できます。
なお、麻薬取締法違反についてお困りの方は、お読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。地域を問わずご相談を承っています。
麻薬及び向精神薬取締法違反とは?対象となる薬物
麻薬及び向精神薬取締法(略称:麻向法〈まこうほう〉、通称:麻薬取締法)は、麻薬と向精神薬(睡眠薬や抗不安薬の一部など)の輸入・製造・譲渡・所持などを規制する法律です。免許を受けた麻薬取扱者や処方を受けた患者など、法律が認める場合を除いてこれらを扱えば、麻薬及び向精神薬取締法違反として処罰の対象になります。
ただし、処罰される行為は、麻薬では所持・施用(使用)・譲渡・輸出入・製造など幅広く、向精神薬では輸出入・製造や、他人に売る・譲る行為などです。
麻薬にあたる物質は、法律の別表と政令で指定されています。ヘロイン(ジアセチルモルヒネ)、コカイン、MDMA、LSD、モルヒネなどが代表例で、マジックマッシュルームも麻薬として扱われます。
さらに大麻も、2024年12月12日施行の法改正でこの法律の「麻薬」となり、所持や譲渡に加えて施用(使用)も新たに処罰の対象になりました。なお、覚醒剤は別の法律(覚醒剤取締法)で規制されています。
麻薬にあたる物は、海外で合法とされていても、日本に持ち込んだり国内で所持したりすると処罰の対象です。
麻薬及び向精神薬取締法違反の罰則一覧
麻薬及び向精神薬取締法違反の法定刑(法律が定める刑の範囲)は、薬物・行為・営利目的の有無で決まります。主な罪の刑罰は拘禁刑(2025年5月までの「懲役」)で、営利目的なら罰金が併せて科されることもあります。
ヘロインとそれ以外の麻薬の罰則
ヘロイン(ジアセチルモルヒネ)に関する麻薬及び向精神薬取締法違反は、ほかの麻薬より刑が重く定められています。大麻・コカイン・MDMA・LSDなどは「ヘロイン以外の麻薬」の列にあたります。
| 行為 | ヘロイン | ヘロイン以外の麻薬 |
|---|---|---|
| 輸入・輸出・製造 | 単純:1年以上の有期拘禁刑 営利目的:無期若しくは3年以上の拘禁刑(情状により1000万円以下の罰金を併科) |
単純:1年以上10年以下の拘禁刑 営利目的:1年以上の有期拘禁刑(情状により500万円以下の罰金を併科) |
| 所持・譲渡・譲受・製剤・小分け・施用・施用のための交付(ヘロインは交付・廃棄も) | 単純:10年以下の拘禁刑 営利目的:1年以上の有期拘禁刑(情状により500万円以下の罰金を併科) |
単純:7年以下の拘禁刑 営利目的:1年以上10年以下の拘禁刑(情状により300万円以下の罰金を併科) |
「1年以上の有期拘禁刑」の上限は20年です(刑法12条1項)。表の麻薬及び向精神薬取締法違反の罪はいずれも、未遂でも処罰されます。
営利目的とは、自分や第三者が金銭などの利益を得る目的のことで、密売が典型です。譲渡は無償でも処罰されます。また、ヘロイン以外の麻薬も、都道府県知事への届出や職員の立会いなしに廃棄すれば、1年以下の拘禁刑若しくは20万円以下の罰金(または両方)の対象です。
なお、公訴時効(一定期間が過ぎると起訴できなくなる制度)の期間も、法定刑の重さで決まります(刑事訴訟法250条)。大麻の場合は「大麻取締法違反の時効は何年?所持・使用(吸引)・栽培の時効」で解説しています。
向精神薬の罰則
向精神薬に関する麻薬及び向精神薬取締法違反の主な罰則は次のとおりです。
| 行為 | 単純 | 営利目的 |
|---|---|---|
| 輸出入・製造・製剤・小分け | 5年以下の拘禁刑 | 7年以下の拘禁刑(情状により200万円以下の罰金を併科) |
| 譲渡・譲渡目的の所持 | 3年以下の拘禁刑 | 5年以下の拘禁刑(情状により100万円以下の罰金を併科) |
なお、向精神薬については麻薬と異なり、自己使用目的での所持や施用は処罰の対象とはなっていません。
逮捕・起訴された場合の弁護活動
麻薬及び向精神薬取締法違反の事件では、逮捕・勾留(身柄の拘束)から裁判まで、段階に応じた弁護活動が必要です。
接見で本人を支え、早期の身柄解放を目指す
逮捕後、身柄の拘束が続く場合は48時間以内に検察官へ送られ、その後24時間以内に勾留を請求するかが決まります。勾留は原則10日間で、延長されると最大20日間に及びます(刑事訴訟法203条・205条・208条)。
検察統計によると、令和7年に処理された麻薬及び向精神薬取締法違反の被疑者の約58%が逮捕され、そのうち検察官に送られた人の約97%に勾留が認められています(いずれも大麻の事件を含む値。出典:e-Stat「検察統計調査」2025年)。
薬物犯罪では、弁護士以外との接見(面会)を禁じる「接見禁止」が付くことも多く、ご家族でも本人に会えない場合があります。弁護士は立会人なしで接見できるうえ、事件と無関係のご家族との面会を求める申立て(接見禁止一部解除の申立て)も行えます。この申立てについては「接見禁止一部解除の方法と流れ・認められやすいケース」で詳しく解説しています。
保釈(保証金を納めて釈放してもらう制度)は起訴後にしか認められないため(刑事訴訟法207条1項ただし書)、弁護士は起訴後、ご家族の上申書などを添えてすみやかに保釈を請求します。
故意や捜査の違法を争い不起訴・無罪を目指す
麻薬及び向精神薬取締法違反で処罰されるには、違法な薬物を扱っているという認識(故意)が必要です。ただし、薬物の名前や成分まで知っている必要はなく、「身体に有害な違法薬物かもしれない」程度の認識(未必の故意)でも故意が認められる可能性があります。
中身を知らずに預かった荷物や、合法と言われて買った商品(いわゆる脱法ハーブ)に麻薬成分が含まれていた場合は、この認識の有無が争点です。
「何か悪い物だとは思っていたでしょう」と取調べで問われて安易に認めると、故意を認める供述調書(取調べでの話をまとめた書面)が作られかねません。起訴前の取調べへの対応は非常に重要で、弁護士(弁護人)は接見で答え方を助言し、状況により黙秘権の行使や調書への署名・押印の拒否を勧めます(刑事訴訟法198条2項・5項)。
また、捜査に重大な違法がある場合は、その捜査で得た証拠を判断に使わないよう主張し、嫌疑不十分(犯罪を証明する証拠が足りないこと)による不起訴や無罪の獲得に努めます。
情状を立証し執行猶予を目指す
検察統計では、令和7年の麻薬及び向精神薬取締法違反の起訴率は60.9%でした(大麻の事件を含む値)。所持・使用・譲渡などの主な罪には罰金だけの刑がないため、起訴されて罪を認める場合は、執行猶予が付くかが大きな分かれ目です。
執行猶予は、言い渡される刑が3年以下の拘禁刑である場合などに付けることができます(刑法25条1項)。初犯で所持量が少なく営利目的もない事案では執行猶予が付く可能性が高い一方、大量所持や営利目的の場合は初犯でも実刑になり得ます。
裁判では、弁護士が、薬物を断つ決意と入手先との関係の解消、専門医療機関での治療や自助グループへの参加、ご家族による監督の約束などを、有利な事情として主張・立証します(情状立証)。これが認められれば、執行猶予が付く、刑期が短くなるなど、量刑面で有利な結果につながる可能性があります。準備には時間がかかるため、早めに弁護士へ相談してください。
麻薬取締法違反の解決事例
当事務所の弁護士に刑事弁護をご依頼いただき、不起訴や執行猶予付き判決を獲得した麻薬及び向精神薬取締法違反(麻薬取締法違反)の事例を紹介します(プライバシー保護の観点から内容を一部加工しています)。
麻薬取締法違反、関税法違反の事件で、嫌疑不十分による不起訴を獲得した例
被疑者は、外国から麻薬指定薬物の入った商品を国内に輸入したとして麻薬及び向精神薬取締法違反、関税法違反で逮捕された事案です。
逮捕直後に弁護士が被疑者と接見したところ、被疑者は「輸入した商品が麻薬だったとは知らなかった」と言って、麻薬輸入の故意を否認していました。
弁護士はさらに詳細に被疑者から話を聴いたところ、被疑者の話に不自然、不合理な点はなく信用できると判断したことから、まず被疑者が取調べで自白しないよう取調べのアドバイスを行いました。
また、被疑者の収容先の留置場に出向いて被疑者と頻繁に接見し、被疑者の体調面を観察し、精神的なサポートを行いました(被疑者は接見禁止決定を受けておりご家族との面会が禁止されていました)。
さらに並行して、被疑者の話の裏付けとなる証拠を可能な限り集め、検察官に対して現在の証拠関係から被疑者に麻薬輸入の故意を認めることは困難であり被疑者は無罪である旨の主張を行いました。
その結果、検察官は起訴を断念し、嫌疑不十分による不起訴となりました。
MDMA所持の事案で、嫌疑不十分による不起訴を獲得した例
被疑者は、路上を歩いていた際、パトカーを運転していた警察官に呼び止められ、職務質問、所持品検査を受けたところ、所持していた鞄の中からMDMAが発見・押収されたことから麻薬及び向精神薬取締法違反で逮捕された事案です。
弁護士は、逮捕の通知を受けた被疑者の母親からの依頼を受け、被疑者が収容されている留置場で接見しました。
接見の場で被疑者は「自分が持っていた鞄は先輩から預かっていたもので、中身に何が入っているかまでは知らなかった」などと話し、麻薬所持の故意を否認していました。
そこで、弁護士は被疑者の先輩とコンタクトを取り、被疑者に鞄を預けた理由・経緯、渡した際のやり取りの内容などを詳細に聴き取ったところ、被疑者の弁解は十分に信用できると確信しました。
その上で、検察官に対して被疑者の弁解は真実で麻薬所持の故意はなく、被疑者は無罪である旨を主張しました。
この結果、被疑者は勾留8日目で釈放され、刑事処分は嫌疑不十分による不起訴となりました。
コカイン所持で逮捕・勾留されたものの、即決裁判で執行猶予を獲得した事例
被疑者は一人バーで飲酒していた際、密売人と思われる人物から声をかけられ、密売人からコカインを購入し、バーのトイレで使った後、その残りを持って自宅に帰ろうとしていたところ、警察官から職務質問、所持品検査を受け、麻薬及び向精神薬取締法違反(所持罪)で逮捕された事案です。
被疑者の所持の事実は明らかで、被疑者は麻薬の押収手続に不満はなく罪を全面的に認めており、かつ、被疑者が初犯であったことから、弁護士は執行猶予相当事案と考え、検察官に対して即決裁判を申し立てるよう求めていきました。
即決裁判とは、有罪であること(執行猶予付き判決となること)が前提であるものの、起訴からおおむね2週間で判決・釈放まで至る手続きのことです。
そして、弁護士の働きかけの結果、検察官は即決裁判の申し立てを行い、被告人は起訴から2週間後に執行猶予付きの判決を得て釈放されました。
麻薬所持・施用で起訴されたものの、裁判で執行猶予を獲得した例
被疑者は、警察から親と同居している自宅のガサを受け、被疑者の部屋から麻薬を発見・押収されたため麻薬及び向精神薬取締法違反(所持罪)で逮捕・勾留されました。
また、被疑者は、尿検査の結果、麻薬の陽性反応が出たことから、所持罪で起訴された後、施用罪でも捜査を受け、追起訴されています。
弁護士はこの起訴後にご両親から依頼を受けました。
被告人が所持、施用の事実とも全面的に認めていたことから、まず裁判所に対して保釈請求し、被告人の身柄を釈放しました。
また、被告人は大麻所持の前科を有しており、被告人自身麻薬を常習的に使っていたと話していたことから、薬物への依存度が顕著に認められました。
そこで、薬物治療の専門病院で治療を受けるとともに、精神保健福祉センターが主催する家族教室に通うことを被告人とご家族に勧めました。
被告人にはご家族などの協力を得ながら薬物治療に取り組んでいただきました。
弁護士は、こうした被告人やご家族の取り組みや被告人が猛省しており二度と薬物には手を出さないと述べていること、ご家族が被告人の監督を誓約していることなどを裁判で主張しました。
こうした地道な取り組みが裁判で評価され、執行猶予付きの判決を獲得しました。
麻薬取締法違反でお困りの方は弁護士にご相談ください
麻薬及び向精神薬取締法違反は重い拘禁刑が定められた犯罪ですが、取調べへの助言、故意や捜査の違法を争う主張、保釈請求や再犯防止の環境づくりなど、弁護士が早く関わるほど打てる手は増えます。
ご家族が逮捕されて面会もできない方、警察から連絡を受けた方、起訴されて裁判を控えている方など、精神的な負担も大きいと思いますが、どの段階からでもサポートが可能です。
当事務所は薬物事件の弁護に豊富な実績があります。依頼者の不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動き、全力を尽くして守ります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

