起訴とは、検察官が裁判所に対し、被疑者を処罰して欲しいと求めることです。起訴には、正式起訴(公判請求)と略式起訴(略式命令請求)があります。
正式起訴とは、公開された法廷で裁判をするための起訴です。他方で、略式起訴とは、簡略化した起訴のことで、検察官が提出した書面(証拠)のみで審査して罰金または科料を科す裁判手続きを求めるための起訴です。
では、起訴されてから判決が確定するまで、どのような流れを辿るのでしょうか?
この記事では、刑事事件に強い弁護士がこの疑問を解消していきます。正式起訴と略式起訴の両方を網羅していますので、記事を最後まで読むことで、刑事事件の起訴後の流れの全体がわかります。記事を読んでも問題解決しない場合は気軽に弁護士に相談してみましょう。
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目次
正式起訴された後の流れ
正式起訴されると正式裁判を受けなければなりません。正式裁判は、みなさんがテレビドラマなどで見るように、裁判官・検察官・弁護人と被告人の3者が実際に公開の法廷に出廷します。そして、裁判官が裁判に顕出された書類や証言を基に有罪か無罪か、有罪であるとしていかなる刑罰、量刑が適当かを決めます。以下で、正式起訴~判決確定までの流れについて解説します。
- 正式起訴
- 起訴状謄本送達
- 国選・私選弁護人の選任(起訴までに弁護人が選任されていない場合)
- 裁判準備(弁護人との打ち合わせ)
- 裁判
- 判決
- 確定
①正式起訴、②起訴状謄本送達
検察官は正式起訴する際に裁判所宛に「起訴状原本」、「起訴状謄本」「弁護人選任届(起訴時までに私選弁護人を選任している場合)」を提出します。その後、裁判所から被告人(起訴された人)宛に起訴状謄本が送達されます。身柄事件の場合は収容先に送達され、担当者から受け取ります。在宅事件の場合は起訴状記載の住所宛に送達されます。
起訴状謄本を送達する趣旨は、被告人にどんな事実で起訴されたのか知ってもらい、これから進む公判(裁判)の準備資料としてもらうためです。
③国選・私選弁護人の選任
正式起訴までに弁護人が選任されていない場合(特に在宅事件に多い)は、起訴状謄本の送達と同時に「弁護人選任に関する照会書・回答書」が送られてきます。そこで、弁護人を選任するかどうか、選任するとして国選か私選かを決め、裁判所宛に回答書を提出しなければなりません。なお、以下のとおり、国選弁護人の選任には一定の要件、手続きを踏むことが必要です。
④裁判準備
裁判準備では、まず起訴事実の認否を確定させます。そして、起訴後おおよそ2週間前後で、検察庁から証拠書類が開示されます。弁護人はそれを基に、認否に応じてどんな証拠(書類、証人、物的証拠)が必要なのか検討し、裁判所や検察庁に対して意見を述べたり書類を提出したりします。一方で、被告人、証人と裁判に向けて打ち合わせを行います。
⑤裁判
刑事裁判は、検察官、弁護人の主導で行われるのが原則です(当事者主義)。検察官、弁護人は、起訴事実や起訴事実以外の情状を証明するための証拠を提出したり、それに対して意見を述べたり、証人を尋問するなどして裁判官の有罪・無罪、刑罰・量刑判断の心証を築いていきます。
⑥判決
判決では、刑事裁判に顕出された証拠を基に心証を築いた裁判官から、有罪の場合は刑罰・量刑を、無罪の場合は端的に「無罪」と言い渡されます。その後、裁判官が事実認定した過程や理由、刑罰・量刑の理由を説明します。通常、否認事件や無罪の場合はこの説明が長くなります。
勾留中に執行猶予付き判決を言い渡されるとその時点で釈放されます。
⑦確定
確定とは、判決に対して不服申し立てができなくなった状態のことをいいます。
判決に対しては、被告人(弁護人)、検察官とも不服を申し立てることができます。不服申し立ての期限は、判決の翌日から起算して14日間です。仮に、この期間、被告人、検察官の双方が不服申し立てをしない、あるいは不服申し立てを放棄、取り下げるなどした場合は判決が確定します。
裁判が確定すると実刑の場合は刑の執行が開始し、執行猶予の場合は執行猶予期間が開始します。
略式起訴された後の流れ
略式起訴されると略式裁判を受けなければなりません。もっとも、受けるといっても正式裁判と異なり、法廷に出廷する必要はありません。裁判官は、検察官から提出された書面のみを基に、略式命令をすることが相当な事案かどうかを判断し、相当と判断した場合は「100万円以下の罰金又は科料」の範囲内で略式命令を発します。以下で、略式起訴~判決確定までの流れについて解説します。
- 略式起訴
- 検察官が裁判所宛に書類を提出
- 略式命令発布
- 略式命令謄本送達→釈放(身柄事件の場合)
- 確定
①略式起訴、②検察官が裁判所宛に書類を提出
検察官が略式起訴するには、被疑者の同意が必要です。したがって、検察官が略式起訴する意思がある場合は、取調べ時に、検察官から同意書にサインを求められます。略式裁判では、裁判官に主張する機会やそれに見合う証拠を提出する機会が与えられません。したがって、正式裁判を受けたい場合は無理してサイン(同意)する必要はありません。
同意した場合は、検察官が自ら選別した書類を、略式起訴する日と同時に裁判所に提出します。
③略式命令発布
裁判官は検察官から提出された書類を基に、略式命令を発布するのが相当か否かを判断し、相当と判断した場合は「100万円以下の罰金又は科料」の範囲内で略式命令を発します。なお、裁判官が略式裁判不相当と判断するのは稀で、ほとんどの事件では略式起訴されると略式命令が発布されると考えてよいと思います。
④略式命令謄本送達
裁判官から略式命令が発布されると略式命令謄本が被告人に送達されます。身柄事件の場合は、通常、略式起訴された日(身柄期間満了日前)に略式命令が発布され、裁判所で略式命令謄本を受領します。そして、受領後、釈放されます。在宅事件の場合も、略式起訴され略式命令が発布されると正式裁判同様、起訴状記載の住所宛に略式命令謄本が送達されます。
⑤確定
略式起訴の場合の確定とは、正式裁判の申し立てができなくなった状態のことをいいます。略式裁判では法廷が開かれず、意見、主張を述べる機会がありませんから、略式命令を受けた後でも正式裁判を受ける道が残されているのです。正式裁判申し立ての期限は、略式命令謄本の送達を受けた日の翌日から起算して14日間です。この期間、被告人・検察官が申し立てをしない、あるいは申し立てを放棄、取り下げるなどした場合は判決が確定します。
裁判が確定すると略式命令に記載された金額を国(検察庁)に納付する必要があります。
起訴後の保釈(釈放)の流れについて
保釈とは起訴後に勾留されている被告人に、保釈保証金の納付を条件としたうえで被告人を一時的に釈放する制度のことです。
釈放とは|保釈との違いや認めてもらうための条件を分りやすく解説
保釈は、起訴後に勾留されている被告人が対象であり、被疑者段階では保釈を請求することはできません。
保釈の流れは以下となります。
- 裁判所に保釈請求書等を提出する
- 裁判官が検討する
- 裁判官が保釈許可決定を出す
- 裁判所に保釈保証金を納付する
- 保釈される
司法統計年報の「勾留・保釈関係の手続及び終局前後別人員」によると、勾留状を発布された被告人員数に占める保釈を許可された被告人員数(保釈率)は、令和2年度では31.35%となっています。平成元年度では23.72%であった保釈率も、平成28年以降は30%台をキープしており増加傾向にあります。
当法律事務所では、起訴後の保釈、執行猶予の獲得実績があります。親身誠実に、弁護士が依頼者を全力で守りますので、お困りの方はまずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が解決への第一歩です。
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