
殺人予備罪とは、人を殺す目的で凶器の準備や犯行現場の下見などの予備行為をした場合に成立する犯罪です(刑法第201条)。法定刑は2年以下の拘禁刑とされていますが、情状によりその刑が免除されることもあります。
「具体的にどのような行為が殺人予備に該当するのか」「自分自身に殺意がなくても成立するのか」といった疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、殺人予備罪の構成要件や中止犯の扱いについて解説します。
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殺人予備罪の構成要件
※2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。本記事の法定刑は改正後の内容で記載しています。
「予備」行為とは
「殺人予備」とは、殺人行為を可能・容易にするために「準備する行為」を指します。殺人予備罪の条文は以下のとおりです。
(予備)
第二百一条 第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。出典:e-Gov法令検索
具体的には以下のような行為が殺人予備行為に該当します。
- 刃物や銃器や毒薬などの凶器を入手する行為
- 自動車やバイクなどの移動手段や共犯者との連絡手段を準備する行為
- 被害者の自宅などの犯行現場を下見する行為
- 犯行計画を立案する行為 など
殺人の目的とは
殺人予備罪は殺人の目的を有しているという主観的な要件が必要です。
もっとも、自分自身が殺人を犯す意思を有していることが必要か、他人が殺人を犯すことの準備行為であることを認識していればよいのかという点が問題となります。
この点が問われた裁判例の中には、自ら殺人を犯す目的までは必要なく他人が殺人を犯すことの準備行為であることを認識していれば「殺人の目的」が認められると判断したものがあります。
つまり他人が殺人をする準備に協力して凶器などを準備した場合であってもそのことを認識していれば、本人に殺意がない場合でも殺人予備罪が認定されるということです。
殺人罪そのものの構成要件や刑罰については「刑法199条の殺人罪とは?構成要件・刑罰・関連する罪の種類」で詳しく解説しています。
殺人予備罪の中止犯
自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽または免除するとされています(刑法第43条但書き参照)。これを中止犯や中止未遂といいます。中止犯の場合には刑が必ず減軽・免除されます。
(未遂減免)
第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。出典:e-Gov法令検索
それでは未遂より前段階の予備行為の場合にも、中止未遂減軽・免除が認められるのか否かについては、明確な規定がなく議論があります。
この点古い判例(大審院判決大正5年5月4日)では、予備罪の場合に自ら意思で犯罪を中止したとしても、未遂犯と同様に刑の減軽または免除を必ず認めるわけではないと判断したものがあります。
なお、殺人予備罪と同じく予備行為を処罰する罪として強盗予備罪があります。強盗予備罪の構成要件や法定刑については「強盗予備罪とは?構成要件・法定刑・事後強盗の予備につき解説」をご参照ください。
しかし、予備行為よりも進んで実行に着手した未遂犯ですら中止犯のときは必ず刑の減軽・免除されるのだから、それ以前の予備行為を中止した場合にも必要的減免を認めるべきではないかと考える学説も有力です。
まとめ
殺人予備罪は、殺人の目的で凶器の準備や犯行現場の下見などの予備行為を行った場合に成立し、法定刑は2年以下の拘禁刑です。殺人の目的については、自ら殺害する意思がなくても、他人が殺人を行うための準備であることを認識していれば認められるとする裁判例があります。
また、予備段階で自らの意思により犯罪を中止した場合に中止犯の規定が適用されるかどうかは議論が分かれており、判例は必ずしも刑の減軽・免除を認めない立場をとっていますが、これに対しては有力な反対説も存在します。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

