このような漠然とした不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、詐欺の刑事弁護に強い弁護士が、
- 詐欺罪で逮捕される要件や逮捕される確率
- 詐欺罪で逮捕された後の流れ
- 詐欺罪の懲役の平均(中央値)
- 詐欺罪で執行猶予はつくのか
- 詐欺罪は初犯なら執行猶予になるのか、懲役実刑もあり得るのか
- 詐欺で逮捕回避や不起訴・執行猶予獲得のためにすべきこと
などについてわかりやすく解説していきます。
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目次
詐欺罪とは
まず、詐欺罪とはどんな罪か解説していきたいと思います。
成立要件
詐欺罪とは、詐欺の犯人の欺罔行為(①)によって錯誤(②)に陥った人の財産的処分行為(③)に基づいて財物の占有が犯人に移転する(④)ことによって成立する犯罪です。すなわち、詐欺罪が成立するためには、
- 欺罔行為
- 錯誤
- 錯誤に基づく処分行為
- 財物の移転
というように、詐欺罪の成立要件が一連の流れでつながっていることが必要となります。
①欺罔行為、②錯誤
まず、詐欺罪の成立には、犯人の①欺罔行為と人の②錯誤が必要です。
欺罔行為とは人を騙す行為、すなわち、人が錯誤に陥らせる行為をいいます。錯誤とは、簡単にいえば、勘違い、誤解という意味です。
たとえば、
- 架空の儲け話をもちかけ、金銭を取得する行為
- 借金を返済する意思も能力もないのに、必ず返すといって金銭を取得する行為
などが欺罔行為の典型例です。
欺罔行為は人に対して何かしらの働きかけを行う作為によって行われることがほとんどですが、作為のみならず不作為による欺罔行為もあります。ただし、不作為による欺罔行為というためには、たとえば、人が錯誤によって余分な釣銭を出したのを知りながら、そのことを教えないで黙って釣銭を受け取った釣銭詐欺のように、真実を告知すべき義務を負う者が故意にこれを怠って告知せず、人が錯誤に陥っている状態を継続させ、またはこれを利用したといえることが必要です。
③錯誤に基づく処分行為、④財物の移転
次に、詐欺罪の成立には、人の③錯誤に基づく処分行為と処分行為に基づく④財物の移転が必要です。
錯誤に基づく処分行為とは、人の勘違い、誤解によって財物を移転することをいいます。錯誤に基づく処分行為は詐欺罪の成立要件にとって不可欠の要素です。錯誤に基づく処分行為が必要とされる点において、人の意思に反して財物を取得する取得罪(窃盗罪、強盗罪)と区別されます。
たとえば、家にいる主婦に、「今あなたの家の前でご主人が車に轢かれて倒れています」などと嘘を言って、主婦を家から出させて留守にさせ、その隙に財布を奪ったような場合では、主婦による錯誤に基づく処分行為がないため詐欺罪ではなく窃盗罪が成立します。
④財物が移転したというためには、お金の手渡しであれば実際に受け取ったこと、口座振込みであれば口座に振り込まれたことが必要です。
詐欺罪の罰則は懲役刑のみ!罰金刑はない
詐欺罪の罰則は「10年以下の懲役」です。窃盗罪(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)と異なり、罰金刑は設けられていません。
詐欺罪とは?成立要件・欺罔行為の意味・罰則・詐欺の種類を解説
詐欺罪は未遂でも罪に問われる
人を騙すつもりで騙す行為(欺罔行為)を行ったのに、何らかの事情でお金などの財物、あるいは飲食代の支払いを免れるなどの財産上の利益を得ることができなかった場合には、「詐欺未遂罪」に問われることになります。(刑法第250条参照)。刑罰は詐欺罪と同じ「10年以下の懲役」ですが、未遂の規定(刑法第43条)により刑を減軽するときは罰則が「6か月以上5年以下の懲役」まで減軽されます。
詐欺での逮捕について
次に、詐欺罪と逮捕について解説します。なお、逮捕は大きくわけて「通常逮捕」、「緊急逮捕」、「現行犯逮捕」の3種類があります。
詐欺で逮捕される要件
逮捕の要件については、詐欺罪で選択されることが多い通常逮捕、緊急逮捕について解説します。
通常逮捕
通常逮捕の要件は、「逮捕の理由」があること、「逮捕の必要性」があることです。
逮捕の理由とは、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることをいいます。相当な理由があるかどうかは、捜査機関(警察・検察)が集めた証拠から客観的・合理的に犯人だろうと判断できる程度の理由があることをいいます。つまり、この人が犯人であることを裏付ける証拠がないまま、捜査官の主観だけで逮捕することはできない一方で、犯人だと断定できる程度の証拠が集まっていなくても逮捕できるということになります。
次に、逮捕の必要性とは、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがあることをいいます。逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがあるかどうかは、犯人の年齢・性別・境遇、犯罪の軽重、犯行態様、被疑事実に対する犯人の認否などの諸事情を勘案して判断されます。
緊急逮捕
緊急逮捕の要件は、「実質的要件」と「手続的要件」にわかれます。
実質的要件とは、
- 被疑者が「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮」にあたる罪を犯したこと
- 罪を犯したと疑うに足りる充分な理由があること
- 急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
です。
詐欺罪の罰則は「10年以下の懲役」ですから、詐欺罪は「長期3年以上の懲役」の罪にあたります。緊急逮捕は、逮捕当初は犯人を令状なしに逮捕できるものですから、嫌疑の対程度は通常逮捕よりも高い「充分な理由」があることが必要とされています。急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとは、裁判官から逮捕状の発布を受ける余裕がない場合、すなわち、ただちに犯人を逮捕しなければ犯人が逃亡、あるいは罪証隠滅行為に出るおそれがある場合をいいます。
次に、手続的要件とは、犯人を逮捕した後、ただちに裁判官に対して逮捕状の発布を請求する手続きをとることです。ここで逮捕状が発布されないときは、捜査機関はただちに犯人を釈放しなければいけません。
詐欺で逮捕される確率
令和4年度の犯罪白書(以下「犯罪白書」といいます。)によると、令和3年度中に詐欺罪で起訴されるなどして既済となった人の数は17,437人で、うち、逮捕されたことがある人(逮捕された後、釈放された人、検察庁に逮捕された人も含む)は8,379人いたとのことです。つまり、全体の約48%の人が逮捕されたということがわかります。
ちなみに、窃盗罪は約32%、強盗罪は約43%、恐喝罪は約75%という割合です。
詐欺罪で逮捕された後の流れ
詐欺罪の容疑で逮捕された後は、以下の流れで手続きが進んでいきます。
- 警察官の弁解録取を受ける
- 逮捕から48時間以内に検察官に事件と身柄を送致される(送検)
- 検察官の弁解録取を受ける
- ②から24時間以内に検察官が裁判官に対し勾留請求する
- 裁判官の勾留質問を受ける
→勾留請求が却下されたら釈放される - 裁判官が検察官の勾留請求を許可する
→10日間の身柄拘束(勾留)が決まる(勾留決定)
→やむを得ない事由がある場合は、最大10日間延長される - 原則、勾留期間内に起訴、不起訴が決まる
- 正式起訴されると2か月間勾留される
→その後、理由がある場合のみ1か月ごとに更新
→保釈が許可されれば釈放される - 勾留期間中に刑事裁判を受ける
詐欺罪で逮捕されてから最大3日間(48時間+24時間)は弁護士以外の者との連絡はとれません。そのため、会社勤めされている方や学校に通われている方は、弁護士を介して家族から会社や学校に休みの連絡を入れるようお願いしましょう。また、勾留が決定すると、刑事処分(起訴・不起訴)が決まるまで最大20日間身柄拘束されます。
その後、起訴されて刑事裁判にかけられてしまうと、日本では99%以上の確率で有罪判決となってしまいます。前述の通り、詐欺罪は懲役刑のみで罰金刑はありませんので、仮に実刑判決となった場合は必ず懲役実刑となり刑務所に収監されてしまいます。執行猶予がついたとしても有罪であることに変わりはありませんので前科がついてしまいます。
詐欺の懲役は平均何年?
犯罪白書によると、令和3年度中に第一審で、詐欺罪で有罪判決を受けた人に対する科刑状況は次のとおりです。
懲役6月未満 | 1(実刑) |
懲役6月以上1年未満 | 95(実刑65、執行猶予30) |
懲役1年以上2年未満 | 1147(実刑321、執行猶予826) |
懲役2年以上3年以下 | 1701(実刑569(一部1))、執行猶予1131) |
懲役3年超え5年以下 | 338 |
懲役5年超え7年以下 | 54 |
懲役7年超え10年以下 | 16 |
懲役10年超え15年以下 | ― |
※一部とは一部執行猶予、執行猶予とは全部執行猶予のこと
詐欺罪の懲役の上限は10年ですが、実際には懲役1年から3年以下の懲役を受けている人が多いことがわかります。全体(3351人)の約85%の割合です。したがって、詐欺罪で有罪判決が言い渡された場合の懲役期間の平均的な相場は1年以上~3年以下と考えてよいでしょう。
詐欺で執行猶予はつく?懲役実刑になってしまう?
「詐欺の懲役は平均何年?」の箇所でもおわかりのとおり、詐欺でも執行猶予がつくことがあります。ここでは、実刑と執行猶予について詳しく解説していきます。
実刑・執行猶予とは
実刑とは執行猶予がつかない量刑のことです。懲役とは刑務所で服役しなければいけない刑ですから、懲役の実刑判決を言い渡されたときは刑務所に収容され、懲役の期間が経過する(仮釈放が認められる)まで刑務所内で生活しなければいけません。
一方、執行猶予とは懲役などの刑の執行を猶予(延長)される量刑のことです。刑の執行とは刑の内容を実現するということで、懲役であれば検察庁が刑を執行する、すなわち、被告人を刑務所に収容する手続きをとります。執行猶予を受けると、ただちに刑務所に収容されずに済むということになります。
執行猶予とは?実刑との違いや認められる条件をわかりやすく解説
詐欺で執行猶予がつく条件
執行猶予付きの判決を受けるには次の条件をクリアする必要があります。
判決で3年以下の懲役の言い渡しを受けること
まず、詐欺罪の場合、判決で3年以下の懲役の言い渡しを受けることが必要です。懲役が3年以下でも実刑となることはありますが、執行猶予の可能性もあるということになります。一方、懲役が3年を超えると執行猶予を受けることができません(必ず実刑です)。
前に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと
次に、前に禁錮以上の刑に処せられたことがない、あるいは、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑が終わった日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないことが必要です。
「前に」とは、今回の判決よりも前にという意味です。「禁錮以上」とは、禁錮、懲役、死刑の刑を指しますから、前科が罰金のみの場合は執行猶予を受けることができます。「処せられたことがない」とは、前科をもっていない初犯の場合はもちろん、懲役・禁錮の前科をもっていても、執行猶予がついていてその期間が経過している場合も含みます。
また、刑務所に服役した実刑前科をもっている場合でも、その刑の執行が終了した日から5年以上が経過している場合も執行猶予を受けることができます。
情状に組むべき事情があること
次に、情状に組むべき事情があることです。
組むべき事情とは、たとえば、前科・前歴がない(初犯である)こと、犯人が深く反省していること、示談が成立している(被害弁償が済んでいる)こと、被害者が宥恕を示していること、などが挙げられます。
詐欺で執行猶予になる割合
「詐欺の懲役は平均何年?」の箇所でも紹介したように、詐欺罪でも執行猶予となっている人は一定数います。令和3年度に詐欺で執行猶予を受けた人は2167人で、全体の約65%の割合です。
懲役の長さごとにみると、「懲役2年以上3年以下」で「約66%」、「懲役1年以上2年未満」で「約72%」、「懲役6月以上1年未満」で「約36%」の割合で執行猶予となっています。
詐欺で初犯なら執行猶予?懲役実刑になることはある?
詐欺が初犯なら執行猶予となるのでしょうか?
この点、実刑か執行猶予かの判断にあたっては、
- 犯人の罪に対する認否
- 犯行の計画性の有無
- 犯行動機・犯行の態様
- 余罪の有無
- 被害の程度
- 前科、前歴の有無(初犯かどうか)
- 示談成立の有無(被害弁償の有無)
- 被害者の処罰感情
などの諸事情が考慮されます。
このように、初犯であることは量刑を決めるにあたって一つの考慮事情にはなります。
もっとも、量刑を決めるにあたっては初犯以外のことも考慮する必要がありますので、初犯であっても、その他の事情において犯人に不利な事情があれば、実刑となることは十分に考えられます。
たとえば、「犯行の態様が悪質かつ組織的に行われた」「被害額が高額」「被害者との示談が成立しなかった」等の事情があれば、初犯であっても懲役実刑の判決が下される可能性もあります。
詐欺で逮捕回避や不起訴・執行猶予獲得のためにすべきこと
最後に、詐欺罪を疑われる行為をしてしまったときに、逮捕を回避するため、不起訴・執行猶予を獲得するためにやるべきことについて解説します。
示談交渉する
まだ、捜査機関に詐欺事件を認知されていない、逮捕されていない段階では、いち早く被害者にコンタクトをとった上で謝罪し、示談交渉することが考えられます。
示談交渉の結果、被害者が示談に応じるのであれば、被害者から捜査機関に対して被害届・告訴状が提出される可能性はなくなります(示談金の支払いと引換えに、捜査機関に対して被害届・告訴状を提出しないことについて被害者に合意してもらいます)。被害者から捜査機関に対して被害届・告訴状が提出されなければ、捜査機関は詐欺事件を認知することができません。捜査機関が事件を認知しなければ、逮捕に踏み切られることもありません。
また、示談交渉は捜査機関に詐欺事件を認知された後でも有効な手段です。示談成立のタイミングが逮捕前であれば逮捕を回避できる可能性がありますし、逮捕された後でも早期釈放や不起訴獲得につなげることができます。示談成立のタイミングが起訴後でも、保釈や執行猶予の獲得につなげることができます。
もっとも、被害者との示談交渉は弁護士に任せましょう。詐欺の犯人との直接の示談交渉に応じる被害者はいないといっても過言ではありませんし、仮に交渉に応じてくれたとしても話がまとまらず示談成立までこぎつけることは難しいはずです。被害者と接触したばかりに罪証隠滅行為を働いたとみなされ、逮捕されてしまう可能性もないとはいえません。
また、被害者と示談交渉するには被害者とコンタクトをとれる状況になければいけません。被害者と面識がなく、被害者の連絡先を知らない状況であれば示談交渉をはじめることができません。このような場合には、捜査機関から被害者の連絡先を取得するしかありませんが、捜査機関が詐欺事件の犯人に被害者の連絡先を教えることはありません。一方で、被害者の意向しだいでは、弁護士には教えてくれることがあります。
被害者とコンタクトをとれる場合もとれない場合も、被害者との示談交渉を希望する場合は弁護士に依頼すべきといえます。
自首する
まだ、捜査機関に詐欺事件を認知されていない、逮捕されていない場合は自首することも対策の一つです。
自首することで捜査機関に対し「逃げも隠れもせずに罪を認める」という姿勢を見せることができ、逃亡や罪証隠滅のおそれがないとして逮捕回避につながる可能性があります。また、法律上の自首が成立すると判断されれば起訴か不起訴かの判断や、裁判の量刑を決める段階おいて有利な結果につながる可能性があります。
もっとも、自首したからといって逮捕を回避できることが保障されているわけではありません。実は自首した結果、逮捕されるケースも珍しくないのです。
そのため、自首するといっても、ただ単に捜査機関に出向けばいいという話ではありません。あらかじめ弁護士に相談、依頼し、アドバイスを受けながら自首に向けた準備を進め、弁護士同伴のもと、自首した方が安心です。
弁護士に相談、依頼する
ここまでお読みいただいておわかりのとおり、逮捕回避や不起訴・執行猶予獲得のためには弁護士の力が必要不可欠です。もし、逮捕が不安、起訴されないか不安という悩みをお持ちでしたらはやめに弁護士に相談しましょう。はやめはやめに相談することで、今できることも多くなります。反対に、相談が遅れれば遅れるほど選択肢がなくなり、不利な結果を招きやすくなります。
当事務所では、詐欺被害者との示談交渉、早期釈放、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、詐欺を働いてしまい逮捕のおそれがある方、既に逮捕された方のご家族の方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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