- 「詐欺罪の立証は難しいと一般的には言われているし、罪を犯しても、検挙されたり刑事処罰を受けたりしないのではなかろうか…」
- 「仮に詐欺で逮捕されて有罪となっても刑罰は軽いのではないだろうか…」
このようにお考えの方もいるのではないでしょうか。
結論から言いますと、詐欺罪の立証は難しいです。欺罔行為の時点で犯人に被害者を騙す故意があったことを証明することが困難であるためです。もっとも、犯罪白書によると令和3年における詐欺の検挙率は49.6%、検察統計によると起訴率は52.7%となっており、検挙・逮捕、刑事処罰を受ける可能性も十分あります。また、詐欺罪の法定刑は懲役刑のみで罰金刑はありませんので、刑法犯の中でも刑罰が軽い部類の犯罪ではありません。
この記事では、詐欺に強い弁護士が、
- 詐欺罪の立証が難しい理由
- 詐欺事件を起こした場合の対応方法
などについてわかりやすく解説していきます。
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詐欺罪の立証は難しい?
詐欺罪とは
詐欺罪とは、人を欺いて相手を錯誤に陥らせて財物を交付させたり財産上不法の利益を得る犯罪で刑法第246条に定められています。
詐欺罪の成立要件
詐欺罪の成立要件は以下の3つとなります。
- ①欺罔行為:人を欺く(騙す)行為があったこと
- ②錯誤:欺罔行為により相手が錯誤(勘違い・誤解)に陥ったこと
- ③財物の交付:欺罔行為により錯誤に陥った相手に財物(金品)を交付させたこと
この3つの要件全てを満たして初めて詐欺罪の既遂罪が成立します。欺罔行為に着手したものの財物の交付に至らなかった場合には詐欺未遂罪が成立します。
詐欺罪とは?成立要件・欺罔行為の意味・罰則・詐欺の種類を解説
詐欺罪の刑罰は軽い?
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。
世間では「詐欺罪の刑罰は軽すぎる。もっと重い刑にすべきだ」という意見を述べられる方が多い印象ですが、詐欺罪は罰金刑がなく、有罪となれば必ず懲役刑が科せられます。そのため、刑法犯の中でも詐欺罪は比較的刑罰が重い犯罪といえるでしょう。
詐欺罪の立証が難しい理由
詐欺罪の立証は困難であると言われている理由はどのようなものなのでしょうか。
詐欺の意図を立証する必要があるから
詐欺罪の実行行為、つまり犯罪とされている行為は「欺罔行為」です。
欺罔行為とは、財産交付の判断の基礎となる重要な事項について、人を錯誤に陥れるような明示・黙示の表示を行うこと、と定義することができます。
故意犯として犯罪を処罰するためには、実行行為の時点に犯人の故意が存在していることが必要があるのです。
したがって詐欺罪の場合でいうと、”欺罔行為の時点”で被害者を騙す認識や認容があることが認定できなければなりません。
詐欺の意図が争われるケース
上述のような「詐欺の意図」については、立証することは容易ではありません。
したがって詐欺罪では、以下のように犯人から犯行当時、被害者をだます意図はなかったという反論がなされるケースが度々発生します。
- 貸金詐欺:「お金は借りたが、その当時は必ず返すつもりでいた」
- 結婚詐欺:「プレゼントや婚約指輪は買ってもらったが、その当時は本気で結婚しようと考えていた」
- 無銭詐欺:「サービス(飲食や乗車)の提供は受けたが、手持ちのお金が足りると思っていた」
このように犯罪の故意が争われる場合には、証拠によって被疑者・被告人の欺罔の意図を立証していく必要があります。
しかし、犯人の内心は凶器や被害物品などの物的証拠とは異なり、目で見てわかる状態で存在しているものではありません。
そのため、捜査段階で被疑者が詐欺罪の故意を否認するような弁解があった場合には、捜査機関は取り調べによって被疑者の自白を引き出そうとします。
内心は客観的に証明できる必要がある
被疑者が「最初から騙す意図があった」と自白した場合であっても、その自白のみで有罪とすることはできません。
なぜなら、憲法38条3項には「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と規定されており、これを受けて刑事訴訟法第319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない」と規定されているからです。
したがって、有罪認定をするためには、自白以外に有罪を支える証拠(これを「補強証拠」といいます)が必要となります。
このように自白について補強証拠が要求されている趣旨は、一般的に自白には信用性や証拠価値が抜群に高いと考えられていることから「自白さえあれば有罪と判断してよいのだ」と自白の価値を過大評価してしまい誤判に陥る、という危険を回避することにあります。
したがって、本人の自白が存在している場合でも、以下のように内心を客観的も立証できる証拠が必要となります。
- 事実に反する電話やメールを送付した事実
- 犯人が経済的に困窮していた事実
- その他詐欺を疑わせる発言・行動があった事実 など
詐欺事件を起こした場合にすべきこと
詐欺罪の立証が困難であることは上記の通りです。もっとも、冒頭でもお伝えしたように、詐欺罪の検挙率・起訴率ともに約50%程度ありますので、「立証が困難=立件されない」というわけではない点に注意が必要です。
「詐欺は立証が難しいから逮捕されることはないだろう」と高を括っていると、ある日突然、自宅に警察が訪れてきて後日逮捕(通常逮捕)されないとも限らないのです。
そのため、詐欺事件を起こしてしまった場合には、速やかに以下でお伝えする対応をとることをお勧めします。
被害者との示談交渉
詐欺事件を起こしてしまった場合には、被害者と示談を成立させることが最も重要であり、最優先事項となります。
被害者が警察に被害申告する前の段階であれば、示談書に「捜査機関に被害届、告訴状を提出しない」という条項を盛り込むことで、示談成立後に捜査機関に事件が発覚することはありません。つまり、逮捕される可能性が消滅します。
被害届や告訴状が提出された後に示談が成立した場合でも、詐欺の被害者に被害届や告訴を取り下げてもらうことで逮捕を回避できる可能性が高まります。
また、逮捕されてしまった後でも、示談するということは被疑者が自分の犯した罪を認めていることになりますので、逃亡・証拠隠滅のおそれがないとして早期釈放につながりやすくなります。また、検察官が刑事処分を判断するにあたり被害者との示談成立を重要視しますので、不起訴処分になる可能性も高くなります。
もっとも、詐欺の被害者は犯人に対して強い不信感を抱いていますので、「また騙されるのでは…」という思いから示談交渉に応じないケースも多いです。また、詐欺の示談交渉では、騙し取ったお金だけではなく、不法行為にもとづく慰謝料も請求されるケースが多いため、示談に応じる条件として高額な慰謝料を請求されてしまうこともあります。
そのため、詐欺被害者との示談交渉は弁護士に任せるべきです。弁護士であれば示談の話し合いのテーブルについても良いという被害者も多く、また、詐欺事件に精通した弁護士であれば、事案に応じた適切な慰謝料額で示談を成立させることも可能です。
自首する
振り込め詐欺などの特殊詐欺の受け子・出し子・かけ子など、詐欺グループの末端の立場にある者は被害者の連絡先を知らないため、示談交渉をしたくても出来ないケースもあります。
その場合には、警察に自首することも検討する必要があります。
自首とは、犯罪を犯した者が、事件が発覚していない又は事件は発覚しているが犯人が特定されていない段階で自発的に捜査機関に名乗り出てその処分を求める行為をいいます。
この点、自首に関する規定(刑法第42条)には「刑の減軽をすることができる」と書かれており、逮捕の回避は直接的な効果ではありません。
しかし自首をするということは詐欺の罪を認めることですので、逃亡や罪証隠滅のおそれがないことを自ら証明できます。そのことが捜査機関に有利に勘案してもらえ、逮捕の回避に繋がることも期待できます。
もっとも、自首は自身の犯罪事実をわざわざ捜査機関に認めに行く行為ですので、もしかしたら放置しておけば事件化されずに済んだかもしれないところを自身で刑事事件化することになります。
そのため、自首すべきかどうかは自己判断せずに事前に弁護士に相談する必要があるでしょう。
当事務所では、詐欺被害者との示談交渉による逮捕の回避・早期釈放・不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、いつ逮捕されるか不安な日々を送られている方や逮捕された方のご家族の方は、当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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