- 脅迫罪になる言葉や、逆に脅迫罪にならない言葉が知りたい…
- 脅迫罪とは?なにをすれば成立するのだろう…罰則や時効など分からないことだらけ…
この記事では、脅迫・恐喝に強い弁護士がこれらの疑問を解消していきます。
また、脅迫されたら何をすべきかについても合わせて解説していますので、脅迫被害を解決したい方は最後まで読んでみて下さい。
記事を読んでも問題解決しない場合は気軽に弁護士に相談してみましょう。
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目次
脅迫罪になる言葉、ならない言葉
脅迫罪が成立するには、人を畏怖させる(怖がらせる)程度の害悪の告知が必要ですが、被害者が怖がったかどうかではなく、一般人であれば恐怖を抱くだろうと客観的に認められれば良いとされています。つまり、被害者が一切怖がらなかったとしても脅迫罪になる言葉もあれば、逆に、被害者が怖がったとしても脅迫罪にならない言葉もあります。
このことを踏まえ、脅迫罪になる言葉、脅迫罪にならない言葉を以下で解説していきます。
脅迫罪になる言葉
あくまでも一例ですが、以下のような言葉は、一般人を畏怖させる程度の害悪の告知と考えられるため、脅迫罪になる言葉となり得ます。
- 生命に対する害悪の告知:「殺すぞ」「子供をなぶり殺してやる」
- 身体に対する害悪の告知:「殴るぞ」「痛い目に合わせてやる」「しばくぞ」
- 自由に対する害悪の告知:「監禁してやる」「子どもや家族を誘拐してやる」「ここから帰れると思うなよ」
- 名誉に対する害悪の告知:「裸の画像をネットにばら撒いてやる」「不倫してることを会社に言いふらしてやる」
- 財産に対する害悪の告知:「車を破壊するぞ」「飼い犬を蹴り殺してやる」「家に火をつけてやる」
脅迫罪にならない言葉
「天罰を下す」「地獄へ送る」「藁人形で呪い殺す」といったおよそ人間が実現不可能な言葉や、「一生許さない」「一生恨む」といった抽象的な言葉は、一般人は畏怖させる程度の害悪の告知とはいえないため脅迫罪にはなりません。
また、脅迫的な言動があったからといって必ずしも脅迫罪になるとは限りません。
例えば、成人男性から「殺す」と言われた場合には一般人が畏怖する程度の害悪の告知と言えるため脅迫罪になり得ますが、同じセリフを幼稚園児が口にしても脅迫罪にならない可能性が高いでしょう。ほかにも、普段から冗談を言い合っている親しい友人同士で「ぶっ殺す」「ボコボコにする」などのやり取りをしていても脅迫罪にならない可能性が高いと考えられます。
このように、ある言葉が脅迫罪になるのかならないかの判断は、相手との関係性やその場の状況(公の場なのか密室なのか、昼か夜か、性別、年齢差、体格差など)によって左右されるため、どの言葉が脅迫罪に該当する・しないとは一概には言えない点に注意しましょう。
Q&A この言葉は脅迫罪になる?
上記で脅迫罪になる言葉の紹介をしましたが、それ以外にも、「この台詞は脅迫罪になるの?」という疑問をお持ちの方も多いと思われますので、以下で解説していきます。
Q. 「訴えるぞ」「警察呼ぶぞ」「出るとこ出る」は脅迫罪になりますか?
相手の違法・不法な行為に対して、裁判に訴えるなどの法的措置をとることや警察に通報することは正当な権利ですので、それをすることを相手に告げたとしても脅迫罪にはなりません。
ただし、訴える気もないのに「告訴するぞ」と言った事案につき、判例(大判大正3.12.1)では、「真実の追究が目的ではなく、権利行使の意思がないのに相手を畏怖させる目的で告知した場合」は脅迫にあたるとしています。つまり、単に相手を怖がらせる目的で訴えると言って実際に訴えなかった場合は脅迫罪にあたる可能性があります。
「警察呼ぶぞ(言うぞ)」「出るとこ出るぞ」「弁護士に言うぞ(呼ぶぞ)」といった正当な権利の主張をする言葉であっても同様です。
Q. 「会社に言う」は脅迫罪になりますか?
会社に秘匿にしておきたい事実(不倫や金銭の貸し借りなど)を「会社に言う」と脅されるケースがよくあります。
不倫や借金が職場の上司や同僚に知れれば、一般的には社内でのその人の社会的評価は下がりますので、名誉に対する害悪の告知として脅迫罪が成立する可能性があります。
Q. 「覚えとけよ」は脅迫罪になりますか?
「覚えておけよ」だけだと、生命や身体、自由、名誉、財産に対する害悪の告知とまでは言えない抽象的な言葉であるため脅迫罪は成立しません。
ただし、「覚えておけよ」という言葉の前後の会話内容によって全体として害悪の告知と言える場合には脅迫罪になる可能性はあるでしょう。
例えば、「お前には生まれたばかりの子供がいるそうだな。絶対に許さない。覚えておけよ」といった発言であれば、家族に危害が及ぶことも危惧される内容ですので、脅迫罪が成立する可能性もあるでしょう。
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そもそも脅迫罪とは
脅迫罪とは、「相手を怖がらせる目的で、相手や相手の親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害悪を加える旨を告げること」で成立する犯罪です(刑法222条)。
この告げる行為のことを、「害悪の告知」といいます。
第222条
1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
脅迫罪の対象となる人は?
本人またはその親族が対象です。そのため「お前の彼女(友達)を刺し殺してやる」といった、恋人や友人に対する害悪の告知は脅迫罪になりません。
また、対象となるのは、自然人である”人”であって、”会社などの法人”は対象外です。
脅迫罪の手段は?
電話、メール、LINE、手紙(脅迫文などの文書)、ネット(ブログ、掲示板、SNSなど)で害悪の告知をした場合も脅迫罪になり得ます。
無言でナイフを突きつける、殴る素振りを見せる等、言葉でなくとも態度で示す場合も脅迫罪になることもあります。
「うちの若い衆も君を八つ裂きにしたいと意気込んでいる」などと、告知者以外の第三者が害悪をもたらすことを告げる場合(「間接脅迫」といいます)も脅迫罪に該当することがあります。
火事が起きていないのに「出火見舞い申し上げます。火の元に御用心」と書かれた手紙を送ったり、「夜道には気をつけて」「月夜の晩ばかりじゃない」「ただじゃおかない」など、暗示的に害悪の告知をした場合も脅迫罪に該当することがあります。
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脅迫罪はどんな刑罰が課されるの?
脅迫罪の法定刑は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑」となります。
ただし、前科がなかったり(初犯)、悪質性が低い場合には、不起訴、または、罰金刑や執行猶予付き判決となることが多いでしょう。
脅迫罪は親告罪?
親告罪とは、被害者側が刑事告訴をしなければ検察が起訴をすることができない犯罪のことです。
脅迫罪は「非親告罪」ですので、被害者が刑事告訴しなくても警察に逮捕され、検察に起訴されて被告人となる可能性もあります。
脅迫罪の時効は?
脅迫罪の刑事事件の時効(公訴時効といいます)は、最後の脅迫行為があった日から3年で時効が完成します。民事事件(慰謝料請求)の時効は、脅迫された時から同じく3年で時効が完成します。
脅迫罪と強要罪、恐喝罪との違い
強要罪との違い
強要罪(刑法223条)は、相手(または親族)の生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対する害悪の告知をして、義務のないことを行わせる犯罪です。
脅迫罪との大きな違いは、単に脅すだけでなく、義務のないことを相手に行わせたかどうかという点です。
例えば、「土下座しなかったら店が営業できないようにしてやる」と脅して土下座させたり、「不倫をばらされたくなければ職場を辞めろ」と脅して退職に追い込めば、強要罪が成立する可能性があります。
また、脅迫罪の法定刑が、懲役2年以下または30万円以下の罰金であるのに対し、強要罪は3年以下の懲役刑です。脅迫罪が未遂規定がないのに対し、強要罪は強要未遂罪があります。
恐喝罪との違い
恐喝罪(刑法249条)とは、人を恐喝(暴力を振るったり脅迫すること)して財物を交付させたり、財産上の不法な利益を得る犯罪です。
脅迫罪との大きな違いは、財産を交付させたり財産上の利益を得たかどうかという点です。
例えば、「財布の中身を出せ。さもないと蹴り飛ばす」と脅してカツアゲしたり、「横領を会社に知られたくなければ分け前を寄こせ」と脅して金銭を交付させる行為が恐喝罪となります。
また、脅迫罪の法定刑が懲役2年以下または30万円以下の罰金であるのに対し、恐喝罪は10年以下の懲役刑です。脅迫罪と違い、恐喝罪には未遂規定があります。
なお、脅迫や暴行の態様が、相手の抵抗を抑圧するレベル(首にナイフを突きつけて金品を要求する行為など)であれば、恐喝罪ではなく強盗罪(5年以上の有期懲役)が成立します。
脅迫されたら何をすべき?
加害者を警察に逮捕してもらい刑事処罰を与えたいのであれば警察に被害届または告訴状の提出を行います。
ただし、脅された証拠がないと被害届が受理されない可能性が高いため、以下のような証拠を準備してから警察署に出向くようにしましょう。
- 脅された時の会話を録音したデータ
- メール・LINE・チャット等で脅された場合のメッセージ
- SNSや掲示板での脅迫的な投稿 など
証拠の集め方や証拠がない場合の対処法については、脅迫罪の証拠となる5つのもの|証拠がない場合はどうすればいい?を参考にしましょう。
他方で、事情があって警察に相談に行けない場合は弁護士に対応を依頼すべきでしょう。
具体的には、ご自身が犯した犯罪をネタに脅迫されている場合や、警察沙汰にすることで人に知られては困る事実が周囲に知られてしまう恐れがある場合です。
この点、弁護士に依頼すれば、加害者への警告や交渉次第で脅迫被害を穏便に解決することも可能です。
警察に事件として立件してもらうべきか、弁護士に穏便に解決してもらうべきか迷った場合には、恐喝・脅迫された時の目的別の相談先と対処法|警察と弁護士の使分けを読まれてから判断しても良いでしょう。
弊所では、脅迫被害を家族や勤務先に知られることなく解決することを得意としており実績があります。親身誠実に依頼者を全力で守りますのでまずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が解決へと繋がります。
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