強要罪とは?構成要件・未遂の処罰・事例・時効を解説

強要罪とは、暴行又は脅迫を手段として、人に義務のないことを行わせ、又は人の権利行使を妨害した場合に問われる罪です。刑法第233条に規定されており、法定刑は3年以下の懲役で罰金刑が設けられていない比較的重い罪となります。

最近では、新型コロナウイルス蔓延防止のためマスクを着用しないお客の入店を拒否する飲食店が多いですが、法律で義務付けられていないマスクの着用を入店の条件にすることが強要罪にあたるのではといった芸能人の発言がネットで話題となりました。

強要罪はあまり聞きなれない犯罪ですので、どのような行為が該当するのか、あまり詳しく知らない方も多いかと思われます。

そこでこの記事では、刑事事件に強い弁護士が、

  • 強要罪の成立要件(構成要件)
  • 強要罪になる具体例
  • 強要罪で逮捕された後の流れと対応方法

などについてわかりやすく解説していきます。

強要罪にあたる行為をしてしまい逮捕されそうな方、既に逮捕された方のご家族の方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。

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強要罪について

それでは、強要罪がどういう罪なのか解説していきます。

強要罪とは

強要罪とは、暴行又は脅迫を手段として、人に義務のないことを行わせ、又は人の権利行使を妨害した場合に問われる罪で、刑法第223条に規定されています。

(強要)
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

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また、被害者本人ではなく、被害者の親族に対して脅迫又は暴行を加え、よって、被害者本人に義務のないことを行わせ、又は被害者本人の権利行使を妨害した場合も同様に強要罪に問われる可能性があります(同条第2項)。

強要罪の法定刑は3年以下の懲役です。罰金刑は規定されていませんので有罪判決となれば必ず懲役刑となります。

未遂も処罰される?

強制罪は未遂も罰する規定が設けられています(刑法第223条第3項)。

強要未遂罪が成立するのは、たとえば、暴行を手段として人に土下座を強要したところ、周囲の人が割って入って土下座させることを止めさせた、という場合のように、人に義務のないことを行わせることを認識・認容して暴行を行ったものの、その目的を果たせなかった場合と、強要罪の暴行・脅迫と因果関係なくして結果が発生した場合があります。

なお、強要未遂の法定刑は既遂と同じく3年以下の懲役です。

脅迫罪との違い

脅迫罪とは、相手や相手の親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害悪を加えることを告知する犯罪です。

強要罪も脅迫罪も脅迫を手段とする点、脅迫行為の対象が本人のみならず本人の親族も含まれる点は共通しています。一方、強要罪は人に義務のないことを行わせ、又は人の権利行使を妨害した場合に成立しますが、脅迫罪の場合はそこまでの結果は必要とされていない点が異なります

恐喝罪との違い

恐喝罪とは、暴行や脅迫を用いて相手を畏怖させて金銭その他の財産を脅し取る罪です。

強要罪も恐喝罪も暴行又は脅迫を手段とする点で共通していますが、強要罪は人の自由に対する罪であるのに対し、恐喝罪は人の財産に対する罪という点で異なります。強要罪はやりたいことをやる、権利を行使したいときに行使できるという人の意思決定の自由を保護する罪です。一方、恐喝罪は人の財産そのものを保護する罪です。

時効は何年?

刑事犯罪の(公訴)時効は、法定刑によって異なります。この点、刑事訴訟法第250条第2項6号では、「長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪」については「3年」と定められているところ、強要罪の法定刑は3年以下の懲役ですから、強要罪は「長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪」にあたります。したがって、強要罪の時効は3年となります。

強要罪の成立要件

強要罪は以下の要件がそろった場合に成立します。

強要の手段として暴行、脅迫を加えたこと

暴行とは人を殴る、蹴る、叩く、などのように人の身体に対して有形力を行使することが典型ですが、強要罪の暴行はこれに限られず、暴行が物や第三者に加えられる場合でも、それが同時に被害者本人に対する暴行として意味をもつ場合は強要罪の暴行に当たります。

強要罪の脅迫は脅迫罪の脅迫と同じです。すなわち、被害者本人又は本人の親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加えることを告知することをいいます。告知の内容は、一般に人を怖がらせるものでなければなりませんが、内容自体が犯罪にかかわるものとか違法なものである必要はないとされています。したがって、捜査機関に告訴する意思がないのに告訴すると言った場合も脅迫に当たる可能性があります。

人に義務のないことを行わせたこと又は人の権利行使を妨害したこと

次に、暴行又は脅迫の結果、人に義務のないことを行わせたこと又は人の権利行使を妨害したことが必要です

義務のないことを行わせるとは、加害者において何ら権利・権能がなく、被害者本人に何ら義務がないのに、被害者本人に何らかの行為をさせ、あるいはさせないことを余儀なくさせることをいいます。土下座をさせる、会社の上司が部下にプライベートで面会を強要する、一気飲みを強要する、不合理な指示に従うことを強要する、などが典型例です。

また、人の権利行使を妨害するとは、被害者本人が法律上許されている行為を行うこと、あるいは行わないことを妨害することをいいます。告訴しようと思っていた器物損壊罪の被害者に対し、その加害者が脅迫して告訴することを思いとどまらせた場合などが典型例です。

強要罪になる例

では、強要罪は個人間、家庭内、職場内など、あらゆる場面で起こりうることが考えられます。以下で、どのような場合に強要罪に問われる可能性があるのか、具体例を使ってみていきましょう。

店員に土下座を要求

接客対応が悪かったとして、コンビニや飲食店などの店員に無理やり土下座をさせる場合です。仮に、店員に何らかの落ち度があったとしても、土下座までさせるのは行き過ぎた行為ですから、「人に義務のないことを行わせた」とし強要罪に問われる可能性があります。

なお、店員に土下座を強要する行為によって、店舗の経営に支障が生じるおそれが出た場合には、威力業務妨害罪(刑法第234条:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)に問われる可能性もあります。

セクシャルハラスメント

会社の上司が部下に「もし、僕と仕事終わりに会ってくれなければ、仕事を干すぞ」などと脅して、部下に自分との面会を強要したような場合です。たとえ、上司とはいえ、仕事外に面会する義務はありませんから、「人に義務のないことを行わせた」として強要罪に問われる可能性があります。仮に、部下が上司に会う前に警察などに相談したため、実際に会うことができなかった場合でも強要未遂罪に問われる可能性があります。

また、上司が部下に対して暴行または脅迫をもちいてわいせつな行為をすれば強制わいせつ罪が、性交渉を強いれば暴行や脅迫の程度によっては強制性交等罪が成立します。

アルハラ・パワハラ

たとえば、飲み会の席で、上司が部下に「オレの言うことが聞けないのか。男なら一気飲みしろ!」などと語気鋭く言って部下に一気飲みを強要させた場合や、「オレの指示に従えないなら降格させる、左遷させる」などと言って部下に土下座させた場合などです。相手が上司とはいえ、社会通念上、一気飲みにも土下座にも従う義務はないといえますから、これらを強要させる行為は「人に義務のないことを行わせた」とし強要罪に問われる可能性があります。

強要罪で逮捕された後の流れとすべきこと

強要罪は現行犯逮捕されるケースは少なく、被害者が被害届や告訴状を出して警察が捜査を開始し、ある日突然、自宅に令状を持った捜査員が訪れて通常逮捕(後日逮捕)されるケースが多いです。

では、強要の容疑で逮捕された場合、その後、どのような流れとなるのでしょうか。また、逮捕された場合にどう対応すべきでしょうか。以下で確認していきましょう。

逮捕された後の流れ

強要罪で警察に逮捕されると、警察から弁解録取・取り調べを受け、逮捕から48時間以内に検察官に事件と身柄が送致されます(送検)。検察官は送致から24時間以内に被疑者を釈放するか勾留請求するかを判断し、勾留の必要があると判断した場合には裁判官に勾留請求します。

裁判官が検察官の勾留請求を許可した場合には原則10日間、最大で20日間、身柄を拘束されます。この勾留期間中に、検察官が刑事処分(起訴または不起訴)を決定しますので、逮捕から刑事処分が決定するまで最大23日間も身柄を拘束されてしまいます

また、起訴された場合には公開の法廷で刑事裁判を受けますが、強要罪には罰金刑がありませんので、有罪判決となれば懲役刑を科されます。もっとも、強要罪は初犯であれば執行猶予付き判決となることが多いです。とはいえ、有罪判決であることに変わりはありませんので前科はついてしまいます。

被害者との示談が重要なポイント

罪を認める場合は、被害者に真摯に謝罪の気持ちを伝え、出来るだけ早急に示談を成立させることが重要となります。

示談をすることはすなわち強要したことを認めたことになりますので、逃亡や証拠隠滅のおそれがなくなったと捜査機関に判断されやすくなりますので、早期釈放に繋がりやすくなります

また、警察から検察に送検された後でも、強要の被害者と示談が成立することで「被害者の処罰感情が低下した」と検察官が判断し、不起訴処分になる可能性が高まります。不起訴処分を得れば前科もつきませんので実質的に無罪を獲得したのと同様の効果を得ることができます。

さらに、起訴されたとしても、裁判官は示談を有利な情状として勘案しますので、懲役の期間が求刑よりも短くなったり、実刑のところが執行猶予になるなど量刑が軽くなることも期待できます

示談交渉は弁護士に依頼

被害者との示談がいかに重要かを説明しましたが、そもそも逮捕された後は、被疑者は外部と自由に連絡を取ることが禁止されますので自分で示談交渉することはできません。

そのため、逮捕・勾留されてしまった場合には、刑事事件の示談交渉に強い弁護士に依頼して、謝罪文等で被害者に反省の気持ちを伝えてもらい、示談成立に向けて動いてもらう方が良いでしょう。また、取り調べで不利な供述調書に署名捺印させられないよう法的なアドバイスもしてくれます。

弊所では、弁護士のこれまでの経験から強要の被害者の心情に配慮した示談交渉を得意としており、強要被害者との示談を数多く成立させてきた実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、警察から容疑をかけられておりいつ逮捕されるのかご不安な方、強要で逮捕されてしまった方のご家族の方は弁護士までご相談ください。

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