業務上横領は少額でも逮捕や解雇される?取るべき対処法

「会社のお金を少しだけ着服してしまった…業務上横領は少額でも逮捕されるのだろうか…会社を解雇されてしまうのだろうか…」と、不安を抱えていませんか。

業務上横領罪は金額が少なくても成立するため、会社が被害届を出せば少額でも逮捕されることがあり、懲戒解雇される可能性もあります。もっとも、必ずそうなるわけではありません。被害届が出される前に全額を弁償して示談できれば、逮捕や重い処分を避けられる可能性が高まります。

この記事では、横領事件に強い弁護士が、次の点について解説します。

  • 横領は少額でも罪になるのか
  • 横領した額が少なくても逮捕・起訴されるのか
  • 少額でも会社を懲戒解雇されるのか
  • 逮捕や重い処分を避けるには何をすべきか

お読みいただくことで、ご自身のケースで何が起こりうるのかを見通し、今日から何をすべきかを判断できます。

なお、お困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。ご相談は地域を問わず承っています。

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業務上横領罪とは?少額でも成立する?

業務上横領罪は、わずかな額の横領でも成立します。法律に「いくら以上なら罪になる」という線が引かれていないためです。

業務上横領罪の意味と刑罰

「業務上自己の占有する他人の物を横領した」場合には、業務上横領罪が成立します(刑法253条)。仕事として預かっている会社のお金や物を、自分のものとして使ったり処分したりすると、この罪にあたります。

業務上横領罪では、法定刑が「10年以下の拘禁刑」だけで、罰金刑は定められていません。

※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。

仕事として預かっていたのでなければ、単純な横領罪(刑法252条1項)となり、刑は「5年以下の拘禁刑」です。業務として預かっている人の横領は、任された信頼を裏切る程度が大きいため、重く罰せられると考えられています。

ここでいう「業務」は、判例では「委託を受けて物を管理することを内容とする事務」とされています。従業員が会社の経費や備品などを着服する行為が業務上横領罪の典型例です。

一方、お金や物の管理を任されていない従業員が会社の財産を持ち出した場合は、横領ではなく窃盗罪にあたる可能性があります。横領が成立する要件や具体的なケースについて詳しくは「業務上横領罪とは?刑罰の重さと判例を解説」をご覧ください。

金額の下限はなく少額でも成立する

刑法253条には、横領した金額について何の条件も書かれていません。つまり、業務上横領罪に金額の下限はなく、1円であっても成立します。

「少額」「多額」という言葉にも法律上の決まった意味はありません。この記事では、数千円から数万円程度の着服を想定して説明します。

たとえば、集金したお金の一部を会社に渡さずに使った場合や、管理を任されている会社の現金を使い込んだ場合は、金額が数千円でも業務上横領罪が成立しえます。

「横領はいくらから捕まるのか」と不安に思う方も多いですが、罪が成立するかどうかと、警察が事件として動くかどうかは別の問題です。少額の場合は、会社が警察に被害届(犯罪の被害を申告する書類)を出すかどうかが大きな分かれ目になります。

業務上横領は少額でも逮捕される?

少額の業務上横領でも逮捕されることはありますが、必ず逮捕されるわけではありません。分かれ目になるのは、会社が警察に被害を届け出るかどうかと、逮捕の必要があるかどうかです。

会社が被害届や告訴をすれば少額でも逮捕されることがある

会社のお金を横領した場合の業務上横領罪は、被害者の告訴(犯人の処罰を求める申告)がなければ検察官が裁判にかけられない(起訴できない)「親告罪」ではありません。警察は、犯罪があると考えるときは捜査するものとされており(刑事訴訟法189条2項)、被害者の届け出は捜査を始めるための条件ではありません。

もっとも実際には、会社が警察に被害届や告訴を出したことをきっかけに捜査が始まるのが一般的です。

被害が数千円から数万円の少額で、本人が事実を認めてすぐに全額を返した場合は、会社が警察に届け出ず、社内の処分だけで終わらせることもあります。

一方で、金額にかかわらず不正には厳しく臨む方針の会社もあります。その場合は、数千円から1万円程度の業務上横領でも被害届が出され、刑事事件として扱われることがあります。

被害届が出されても、すぐに逮捕されるとは限りません。逮捕状は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときに出されますが、明らかに逮捕の必要がないときは出されません(刑事訴訟法199条)。

逮捕の必要とは、主に、逃げたり証拠を隠したりするおそれがあることを指します。住む場所が決まっていて、業務上横領の事実を素直に認めている場合は、逮捕されずに「在宅事件」(身柄を拘束されないまま捜査が進む事件)として扱われることもあります。

告訴された後に捜査がどのように進むのか、どのような対応を取れるのかは「横領で刑事告訴されたらどうなる?流れと取り下げのための対応」で解説しています。

会社に業務上横領が発覚した後の流れは、被害届が出されるかどうかで、次のように大きく2つに分かれます。

少額の業務上横領が会社に発覚した後の流れ(A 全額を返して示談すれば被害届が出されず社内で終わることも/B 被害届・告訴があると警察が捜査し、逮捕されることも在宅で捜査されることもある→検察官が不起訴〈起訴猶予など〉か正式な裁判かを判断)

少額の横領が会社に知られたら、被害届が出される前の段階で、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。横領が会社に発覚した後に起こりうるリスクは「横領した人の末路は?10個のリスクと回避策を解説」にまとめています。

逮捕された後の流れ

業務上横領で逮捕されると、次の流れで手続きが進みます。

  1. 警察で取調べを受け、逮捕から48時間以内に検察官へ送られる(送致)
  2. 検察官が、送致を受けてから24時間以内に、勾留(引き続き身柄を拘束すること)を裁判官に請求するか決める
  3. 裁判官が勾留を認めると原則10日間拘束され、やむを得ない事由があれば最大10日間延長される(認められなければ釈放)
  4. 検察官が勾留の期間内に、起訴するか不起訴にするかを決める
  5. 起訴されると刑事裁判を受ける(起訴後も、保釈が認められなければ勾留が続く)

業務上横領で逮捕された後の流れ(警察が48時間以内に検察官へ送致→検察官が24時間以内に勾留を請求するか判断→勾留は原則10日・延長で最大10日→勾留されたときは逮捕から最長23日までに起訴・不起訴を判断)

勾留されると、起訴か不起訴かが決まるまで、逮捕から最長23日間身柄を拘束されることになります。

逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間は、原則として家族も面会できず、自由に会えるのは弁護士だけです。

少額なら刑罰は軽くなる?刑事責任と返済の責任

少額で全額を返していれば、不起訴や、執行猶予(一定の期間、刑の執行を見送ること)付きの判決で終わることも少なくありません。ただし、刑事の処分がどうなっても、横領したお金を会社に返す責任は別に残ります。

刑事責任は被害額や弁償の有無で変わる

起訴するかどうかは検察官が決めます。検察官は、本人の境遇や犯罪の重さ、犯行の事情、犯罪後の状況などから起訴の必要がないと考えれば、起訴しないことができます(刑事訴訟法248条)。この処分を「起訴猶予」といいます。起訴猶予は不起訴処分の一つで、不起訴になれば前科は付きません。

実務上は、被害金額が少額であることや、全額の被害弁償や示談(会社と話し合い、弁償などの条件で解決すると合意すること)が済んでいることが、起訴猶予とするかを判断するうえで大きな事情になります。

検察統計(2025年)では、業務上横領(被害額を問わない全体の数字)で起訴された人は596人、不起訴となった人は703人(うち起訴猶予397人)で、起訴の割合は約46%でした(起訴と不起訴の合計1,299人をもとに当事務所で計算)。

罰金刑が定められていない業務上横領罪では、起訴されると、罰金を納めて終わる略式の手続は使えず、正式な裁判を受けることになります。実際に、上の596人はすべて正式な裁判にかけられています。

裁判になった場合の結果について、最高裁判所の司法統計(2025年)では、横領の罪(単純・業務上・遺失物等の3つの横領罪の合計で、被害額を問わない全体の数字)で懲役・拘禁刑・禁錮の有罪判決を受けた526人のうち、執行猶予が付いたのは317人(約60%)、実刑(執行猶予が付かない判決)は209人(約40%)でした。

初犯で被害額が少額で、弁償も済んで反省していれば、執行猶予が付く可能性は高まります。もっとも、少額でも何度も繰り返して被害額が積み重なっている場合や、長い期間続けていた場合は、悪質と判断されて重く扱われるおそれがあります。

なお、執行猶予が付いても有罪判決であることに変わりはなく、前科が残ります。初犯の場合の刑の見通しは「業務上横領は初犯でも実刑?刑罰と執行猶予の条件を弁護士が解説」で詳しく解説しています。

起訴できる期間には限りがあり、少額の横領で処罰される可能性がいつまで続くか(時効)は「横領罪の時効は何年?いつから進行するかを弁護士が解説」で取り上げています。

横領したお金は全額を返す責任がある

刑事の処分とは別に、民事上、業務上横領をした本人は、たとえ少額でも、会社に与えた損害を賠償する責任を負います(民法709条の不法行為)。

返済は、刑事の処分を軽くするうえでも重要な事情です。まとまったお金をすぐに用意できない場合は、分割で返したいと会社に相談する方法もあります。分割返済の計画をどのように示せばよいかなど、具体的な進め方は「横領で返済できないとどうなる?2つの対処法を弁護士が解説」を参考にしてください。

少額の業務上横領でも懲戒解雇される?

少額の業務上横領でも、会社を懲戒解雇される可能性があります。

業務上横領を理由に解雇される場合は、会社が制裁として行う「懲戒解雇」となるのが一般的です。

就業規則で「刑事罰を受けたこと」が懲戒の理由として定められていることがありますが、刑事事件にならなくても、会社の財産を着服する行為は「重大な非違行為」(職場の規律に反する重い行い)として懲戒の理由にあたる可能性が高いと考えられます。

下級審判例の中には、少額の業務上横領行為であっても従業員の懲戒解雇や公務員の懲戒免職が有効とされた事例が複数あります。

  • 550円の着服で懲戒解雇が有効と認められた事例(水戸地方裁判所昭和47年11月16日判決)
  • 1100円の着服で懲戒免職処分が有効とされた事例(東京地方裁判所平成23年5月25日判決)
  • 1万円の着服で懲戒解雇が有効と認められた事例(東京高等裁判所平成元年3月16日判決)

懲戒解雇が認められるかどうかは、行為の性質やいきさつ、会社の事業の種類や規模、本人の地位や職種などを総合的に考えて判断されます。懲戒が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、会社が懲戒の権利を濫用したものとして無効になります(労働契約法15条)。

会社が懲戒解雇をするには、帳簿などの資料で業務上横領の事実を確かめ、解雇の理由を本人に示すことが求められます。十分な証拠や理由なく懲戒解雇を行った場合には、そのような解雇は無効と判断される可能性もあります。

就業規則に定めがあれば、懲戒解雇にあわせて退職金が支払われなかったり、減額されたりすることもあります。

業務上横領について会社から懲戒解雇を言い渡され、納得できない場合は、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

会社のお金を横領してしまったときに取るべき対処法

業務上横領をしてしまったときは、金額が少額でも、早く動くほど選べる手段が増えます。主に次の3つの対応を考えてください。

会社に事実を伝えて謝罪する

会社にまだ知られていない場合も、すでに知られている場合も、まずは横領した事実を認め、会社に謝罪することが出発点になります。少額の横領を隠したまま続けてしまうと被害額が膨らみ、後で発覚したときに、かえって厳しい処分を受けるおそれがあります。

会社に知られていても、警察などの捜査機関に発覚する前であれば、自首(自分から捜査機関に罪を申し出ること)が成立する可能性があり、刑が軽くなることがあります(刑法42条1項)。

自首をすれば警察が事件として扱うことになるため、会社との示談を先に進めたほうがよい場合もあります。自首と示談のどちらを先にすべきかの考え方は「業務上横領で自首すべき?示談を優先するケースと4つのメリット」で解説しています。

全額を弁償して示談を成立させる

少額でも、会社にとって大きな関心事は、失ったお金が戻ってくるかどうかです。横領した額を全額弁償し、会社との示談を成立させることが、処分を軽くするための中心になります。示談で支払う金額の目安は「業務上横領の示談金相場は?示談を成功させる5つのポイント」をご参照ください。

会社が警察に被害届や告訴を出す前に示談が成立すれば、業務上横領の事実が捜査機関に伝わらないまま終わりやすくなり、逮捕される可能性を大きく下げられます。ただし、会社に対する業務上横領罪は親告罪ではないため、示談をしても事件になる可能性が完全になくなるわけではありません。

逮捕された後に示談が成立した場合でも、勾留の必要がないと判断され、早く釈放される可能性があります。

起訴される前であれば、示談の成立は起訴猶予の判断で有利な事情になります。起訴された後でも、示談の成立は被告人に有利な情状となるため、量刑が軽くなる可能性があります。

示談で合意した内容を書面に残す方法やひな形は「業務上横領の示談書の書き方【テンプレートのダウンロード可】」で紹介しています。

示談交渉を弁護士に任せる

会社のお金に手を付けた本人がいくら謝罪を重ねても、会社が本人の話を信用せず、話し合いに応じてくれないことがあります。

また、少額でも、横領額について会社側と本人の認識がずれていると、示談の条件がなかなか決まりません。

そのため、業務上横領の示談交渉は弁護士に依頼すべきでしょう。弁護士が間に入れば、会社も話し合いに応じやすくなり、帳簿や入出金の記録といった資料をもとに金額を確かめながら交渉を進められます。

本人が逮捕されている場合でも、弁護士であれば面会して事情を聞き、本人に代わって会社との示談を進められます。

少額横領のケースでどのように対処すべきかについては「【相談事例】バイト先で横領がバレた…逮捕されたくありません」も参考になります。弁護士にどこまで任せられるのか、費用がどのくらいかかるのかについては「横領事件に強い弁護士とは?依頼するメリットと費用を解説」もあわせてご確認ください。

少額の業務上横領でお困りの方はすぐに弁護士にご相談ください

業務上横領は、横領した額が少額でも成立し、会社の対応しだいで逮捕や懲戒解雇に至ることがあります。一方で、会社が警察に届け出る前に弁償と示談を進められれば、刑事事件にならずに済む可能性もあります。

弁護士が間に入ることで、会社との話し合いを落ち着いて進めやすくなり、横領した金額の確認や示談書の作成も任せられます。

「会社に知られてしまった」「警察から連絡が来た」という段階でも、早めに相談いただければ取れる手段は残っています。一人で抱え込まず、まずは状況をお聞かせください。

当事務所では、業務上横領の示談交渉、逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動き、依頼者を全力で守ります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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