
「会社のお金を横領してしまったが、警察に自首すべきか、先に会社に返すべきか」と、一人で迷っている方もいるのではないでしょうか。
業務上横領は、警察に知られる前に自首すれば、逮捕を避けやすくなり、不起訴になったり刑が減軽されたりする可能性があります。ただし、会社が警察に届け出ることを望んでいないうえ、返済のめども立つなら、先に会社との示談を考えたほうがよい場合もあります。
自首とは、捜査機関に犯人だと特定される前に、自分から警察などに罪を申告することです。まだ誰にも気づかれていない段階だけでなく、会社に知られた後でも認められる可能性があります。
この記事では、横領事件に強い弁護士が、次の点について解説します。
- 横領で自首すべきケースと示談を優先すべきケース
- 自首すると逮捕や刑はどう変わるのか
- 自首するときのポイントと当日の流れ
お読みいただくことで、自首と示談のどちらを先にすべきか、自首するなら何を準備すればよいかを判断できます。
なお、どう動くべきか決めかねている方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。ご相談は地域を問わず承っています。
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横領で自首すべきケースと、示談を優先すべきケース
横領してしまったときにとれる道は、大きく分けて2つあります。警察に自首するか、先に会社と話し合って返済や示談(損害の弁償などを当事者の話し合いで取り決めること)を進めるかです。どちらか一方しか選べないわけではなく、会社と話し合いながら自首を準備することもできます。
どちらを先にするかは、会社の意向、返済できる見込み、そして横領がどこまで知られているかで変わります。
自首を検討したほうがよいケース
次のような事情があるときは、早めの自首を考えましょう。
- 横領した額が大きく、返済のめどが立たない
- 会社の処罰感情が強く、被害届や告訴(処罰を求める申し出)の準備を進めている
- 社内で横領の調査が始まり、会社が警察への相談も考えている
- 公務員など、額にかかわらず届け出られやすい立場にある
横領した額が大きく、返せる見込みも乏しいと、会社は示談よりも刑事責任を問う方向に傾きやすくなります。返済のめどが立たないまま会社が被害届や告訴を準備しているなら、自首をせず待っていても状況はよくなりません。会社が告訴したあとに警察や検察がどう動くのかは、「横領で刑事告訴されたらどうなる?流れと取り下げのための対応」でまとめています。
社内で横領の調査が始まっている場合も、調査の結果によっては、会社が警察に相談することも考えられます。ただ、会社が横領に気づいていても、警察が把握する前であれば自首は成立する可能性があります。
公務員が横領した場合は、その額が小さくても所属先から警察に届け出られやすく、示談で収める余地はあまりありません。
自首より会社との示談を優先したほうがよいケース
会社が刑事事件にすることを望んでおらず、返済の話し合いに応じる姿勢を見せているうえ、分割払いを含めて横領した額を返せる見込みもあるなら、自首より先に示談を検討します。示談がまとまれば、会社が被害届や告訴を出さずに済ませることも期待できます。示談でいくら支払うことになるのかは「業務上横領の示談金相場は?示談を成功させる5つのポイント」で解説しています。
ただし、業務上横領は、会社の告訴がなくても起訴(検察官が裁判にかけること)できる罪です。法律上、警察は犯罪があると考えるときは犯人と証拠を捜査するものとされており(刑事訴訟法189条2項)、示談が成立しても、別のきっかけから横領の捜査が始まる可能性はゼロではありません。
自首をしても、横領で会社に生じた損害を賠償する責任はなくならないため、返済や被害弁償、示談の話し合いは別に必要です。解雇などの社内での処分も、刑事手続きとは別に検討されます。
横領した本人が会社と直接話し合うと、会社が示した金額をそのまま認める書面に、内容を確かめないまま署名してしまうことがあります。会社との示談の話し合いは、弁護士を通して進めるほうが安全です。
関連記事:横領で返済できないとどうなる?2つの対処法を弁護士が解説
業務上横領で自首すると得られる4つのメリット
業務上横領を警察に知られる前に自首すると、主に次の4つのメリットがあります。
- 逮捕や勾留をされにくくなる
- 不起訴で終わる可能性が高まる
- 刑が減軽される可能性がある
- いつ発覚するかという不安から解放される
逮捕や勾留をされにくくなる
逮捕は、本人が逃げたり証拠を隠したりするおそれがあると判断されたときに行われやすくなります。自首した人はそのおそれが小さいとみられやすく、自首後も身柄を拘束しない在宅事件として捜査が進むこともあります。在宅事件とは、逮捕されずに普段どおり生活しながら、呼び出しに応じて取調べを受ける形で進む事件のことです。
そのため、自首をすると、逮捕や勾留(逮捕に続いて身柄を拘束する手続き)を避けられる可能性が高まります。ただし、逮捕されないとは限りません。横領の被害額が大きい場合など、事案によっては自首をしても逮捕・勾留されることがあります。逮捕から勾留まで続くと、起訴するかどうかが決まるまでの身柄の拘束は、最長で23日間に及ぶ可能性があります。
不起訴で終わる可能性が高まる
不起訴とは、検察官が事件を裁判にかけないと決めることです。自首後に不起訴になれば前科はつきません。
検察官は、犯罪後の情況なども考えて起訴しない判断をすることができ、自首はその事情の一つになります。刑事訴訟法248条は、犯人の性格や境遇、犯罪の軽重などとあわせて「犯罪後の情況」を考えて、起訴しないことができると定めています。このように、罪を犯したことが明らかでも、事情を考えて起訴を見送る処分を起訴猶予といいます。
もっとも、自首だけで不起訴が決まるわけではありません。被害額や横領の期間に加えて、会社に横領分を弁済したか、示談が成立したかも考慮されます。自首したうえで返済や示談が進んでいれば、不起訴の可能性はさらに高まります。反省の気持ちや、横領した額を今後どう返していくかの計画を具体的に示すことも、判断の材料になります。
刑が減軽される可能性がある
自首が成立すると、裁判所の判断で刑が減軽されることがあります。根拠は刑法42条1項です。
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
出典:e-Gov法令検索
刑法42条1項は「減軽することができる」と定めており、自首しても刑が必ず軽くなるわけではありません。横領の被害額が大きく、返済も進んでいないといった事情があれば、自首をしていても実刑(執行猶予がつかず、刑務所に入る刑)になることがあります。
業務上横領罪の法定刑は10年以下の拘禁刑で、罰金刑は定められていません。拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法で、懲役と禁錮を一本化した刑罰です。
自首で有期拘禁刑が減軽されると、刑の上限と下限がそれぞれ半分になります(刑法68条3号)。業務上横領罪であれば、刑の上限は10年から5年になります。初めての場合にどのくらいの刑になりやすいかは「業務上横領は初犯でも実刑?刑罰と執行猶予の条件を弁護士が解説」をご覧ください。
いつ発覚するかという不安から解放される
横領を隠したまま働き続けると、帳簿の確認や人事異動のたびに、発覚を心配することになります。いつ会社や警察に知られるかとおびえながら働き続ける負担から抜け出せることも、自首を選ぶ理由になります。
自首をすれば、その後の手続きの見通しを立てたうえで、返済や横領後の生活の立て直しに向き合えるようになります。
横領で自首するときに押さえたい3つのポイント
自首すると決めたら、次の3つを押さえておきましょう。
- 警察に知られる前に出頭して自首する
- 横領した金額・時期・使い道を整理しておく
- 当日の流れを確認し、持ち物を準備する
警察に知られる前に出頭して自首する
自首は、捜査機関が犯罪の事実をつかむ前か、つかんでいても犯人が誰か分かっていない段階で申し出た場合に成立します。警察が横領事件をまだ知らない段階なら、社内で横領が発覚した後でも自首は成立しえます。
反対に、会社が横領の被害届を出し、警察が犯人を割り出した段階で名乗り出た場合は、自首は成立しません。警察から事情を聞きたいと連絡が来た段階では、犯人として把握されている可能性が高く、自首は成立しにくくなります。自首と出頭がどう違うのかについては「出頭と自首の違いとは」をご参照ください。
なお、公訴時効とは、犯罪行為が終わってから一定の期間が過ぎると、検察官が起訴できなくなる制度です。業務上横領罪の公訴時効は7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。ただ、時効の完成を待つのではなく、捜査機関に知られる前に自首することが大切です。
横領した金額・時期・使い道を整理しておく
横領した額について、本人の記憶と会社が把握している額が食い違うこともあります。自首の前に、横領した時期・回数・金額・使途を時系列のメモにまとめ、通帳や伝票などの資料をそろえておきます。弁護士に依頼すれば、整理した横領の内容をもとに上申書(捜査機関に事情を説明するために提出する書面)を作り、自首のときに提出することもできます。
横領に関わる帳簿やメールなどの記録を消したり、同僚に口裏合わせを頼んだりすると、証拠隠滅を疑われるおそれがあります。
詐欺や背任との区別が分かりにくい事案もあるため、自首の前に罪名の見立ても弁護士に確認しておくと安心です。横領と背任がどう区別されるのかは「背任罪とは?成立要件と刑罰、横領罪との違いをわかりやすく解説」で整理しています。
当日の流れを確認し、持ち物を準備する
横領で自首する当日は、おおむね次の流れで進みます。
- 警察署の窓口で自首したいと申し出て、本人確認を受ける
- 取調べを受け、話した内容が供述調書にまとめられる
- 整理したメモや資料を任意で提出する
- 在宅のまま捜査が続き帰宅できるか、逮捕されるかが決まる
取調べのあと、帰宅を認められる場合は、家族などの身元引受人を求められることがあります。身元引受人とは、本人が今後の呼び出しに応じて出頭するよう監督することを約束する人です。家族以外の人に身元引受人を頼めるかどうかは「身元引受人を弁護士に頼むことはできる?頼むメリットはある?」で詳しく紹介しています。
自首の当日の持ち物は、運転免許証などの身分証と、整理したメモや、通帳・伝票などの資料です。その場で逮捕される場合に備えて、数日分の着替えや現金も用意しておくと安心です。
横領で自首するか決める前に弁護士へ相談するメリット
自首を迷っている段階で弁護士に相談すれば、事情を聞いたうえで、自首と示談のどちらを先にすべきかを一緒に判断できます。
弁護士は、自首に向けて横領の事実関係を整理して上申書にまとめるほか、会社との示談交渉の窓口にもなります。本人が会社と直接やり取りしなくて済むため、不利な内容の書面に署名してしまう心配も減らせます。
横領で自首するときに弁護士が同行すれば、警察署まで付き添ってもらえるほか、取調べの合間に助言を受けることもできます。逃げたり証拠を隠したりするおそれがないことを弁護士が説明することで、その場で逮捕される可能性を下げることも期待できます。同行を頼んだときにどのくらい費用がかかるのかは「自首に弁護士が同行するメリットと費用|弁護士なしでも大丈夫?」で解説しています。
家族に横領を知られずに自首を進めたいときも、方法があります。自首の際に弁護士が身元引受人になれば、取調べのあとに家族へ迎えを頼まずに済む場合があります。
自首するか迷っている段階でも、早めに弁護士に相談してください。
関連記事:横領事件に強い弁護士とは?依頼するメリットと費用を解説
横領で自首を迷っている方へ
業務上横領の自首が認められるのは、警察などの捜査機関に犯人として把握される前に申し出た場合に限られます。会社に処罰を求める意思がなく、返済できる見込みもあるなら、示談から始めるという選択肢もあります。
自首と示談のどちらを先にするかによって、逮捕の可能性やその後の処分が変わることがあります。弁護士に相談すれば、会社の意向や返済の見込みを踏まえて方針を立て、上申書の作成、会社との交渉、自首への同行まで任せることができます。
横領を誰にも打ち明けられず、一人で抱え込んでいる方の精神的な負担は小さくありません。すでに内部調査が始まっている場合は、自首も視野に早めに動くことが大切です。
当事務所では、依頼者の不利益を最小限に抑えるため、弁護士が迅速に動きます。家族や職場への影響にも配慮しながら、横領事件の解決を目指します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

