このように考えている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、盗撮事件に強い弁護士が、以下の点について詳しく解説していきます。
- 盗撮で刑事裁判になる確率と裁判の流れ
- 盗撮で民事裁判になる可能性と裁判の流れ
- 盗撮事件で裁判を回避する方法
なお、盗撮事件を起こしてしまい、裁判を回避するために早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
盗撮は刑事裁判になる?
結論から申し上げますと、盗撮は比較的軽微な犯罪とされ、示談が成立しやすいことから、不起訴処分となり刑事裁判にかけられない可能性は十分にあります。また、起訴される場合でも、略式起訴によって罰金刑が科されるケースも多いです。ただし、被疑者が盗撮の事実を否認している場合や、前科が多数ある場合などは、公判請求されて正式裁判に進む可能性もあります。以下で詳しく説明します。
盗撮事件で刑事裁判になる確率は?
盗撮事件で検挙された場合、刑事裁判に進む確率はどの程度なのでしょうか?
盗撮事件で検挙された場合、検察官が起訴すると、被疑者は被告人という身分になり、刑事裁判にかけられます。盗撮事件がどの程度の割合で起訴されるかについての具体的なデータは公開されていませんが、2023年の検察統計「罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員」によると、2023年度に処理が完了した検察庁既遂事件のうち、約31%が起訴されています。
ただし、この統計には盗撮事件以外の重大犯罪(殺人や強盗など)も含まれているため、盗撮事件にそのまま当てはめることは難しい点に留意が必要です。盗撮は性犯罪の中でも比較的軽微な部類に位置づけられ、被害者との示談が成立しやすいため、盗撮事件で起訴され、刑事裁判に進む確率は、全体の31%よりも低くなる可能性が高いと推定されます。
略式裁判になるケースも多い
また、盗撮事件では、仮に起訴される場合でも、略式起訴という簡易な手続きが取られることがよくあり、その結果、略式裁判が行われるケースも多いです。
略式裁判とは、100万円以下の罰金や科料に該当する軽微な事件において、被疑者が異議を唱えない場合に、公開の法廷での裁判を省略し、検察官が提出した書類に基づいて裁判所が審査を行う裁判手続きです。これにより、迅速かつ簡易に事件が処理されます。
盗撮事件においては、被害者との示談が成立している場合や、同種の前科がない場合などに、略式裁判が選ばれることが多く、その結果、罰金刑が科されることがよくあります。
公判請求されて正式裁判になるケースは?
一方で、次のような状況に該当する場合には、略式起訴ではなく、公判請求(正式起訴)が行われ、公開の法廷で審理される正式裁判に進む可能性があります。
- 被疑者が盗撮の事実を否定している場合
被疑者が盗撮行為を否認している場合には、より詳しい事実の解明が必要とされ、公判請求が選択される可能性があります。 - 前科が多数ある場合
過去に同種の前科が繰り返されている場合、略式手続ではなく公判請求が行われることがあります。 - 被害の程度が重大な場合
たとえば、被害者が18歳未満で児童ポルノ関連の罪にも該当する場合や、盗撮したデータを販売していた場合など、被害の重大性によっては公判請求が選択されます。
公判請求の結果として、罰金刑が科されることもあれば、懲役刑(執行猶予付きの場合も実刑の場合もあります)が下されることもあります。
なお、盗撮事件で罰金刑が科される場合、初犯であれば罰金相場はおおよそ40万円程度です。ただし、再犯の場合は、前回よりも重い罰金が科されることがあります。また、同種の前科がある場合や、手口が悪質、被害者が多数いるなどの事情がある場合には、懲役刑が科される可能性も高くなります。
盗撮の刑事裁判はどの罪で起訴される?
ここで、盗撮で刑事裁判になる場合、どのような犯罪で起訴されるのかについて確認しておきましょう。盗撮で起訴される場合の罪は次の通りです。
- ①撮影罪
- ②迷惑防止条例違反
- ③軽犯罪法違反
- ④住居侵入罪・建造物侵入罪
- ⑤児童ポルノ禁止法違反
①撮影罪
盗撮行為は、2023年7月13日に施行された「性的姿態撮影等処罰法」に基づく撮影罪で起訴されます。
従来、盗撮行為は各都道府県の迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反で処罰されていましたが、2023年7月13日以降は、原則として撮影罪が適用されます。
撮影罪とは、正当な理由なく他人の性的姿態等をひそかに撮影する行為を処罰する法律です。ここでいう「性的姿態等」とは、性器、肛門、その周辺部、臀部、胸部などの性的部位、またはこれらを覆う下着、さらにはわいせつな行為や性交が行われている際の人の姿態を指します。
例えば、駅構内やショッピングモールのエスカレーターで女性のスカートの中を盗撮したり、職場の更衣室で下着姿や衣服を着ていない女性従業員を盗撮した場合、撮影罪が成立します。
また、撮影罪は未遂犯にも適用されます。つまり、最終的に撮影に成功しなかった場合でも、カメラを設置したり、カメラを差し向けたりする行為自体が処罰対象となります。
撮影罪が成立した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されることになります。この新しい法律により、従来よりも厳格な規制が可能となりました。
②迷惑防止条例違反
性的姿態撮影等処罰法に基づく撮影罪が適用される前、すなわち2023年7月12日以前の盗撮行為については、各都道府県が定める迷惑防止条例違反で起訴される可能性があります。
迷惑防止条例違反は主に公共の場所や公共の乗り物での盗撮行為を対象としていますが、条例の内容は都道府県ごとに異なります。例えば、東京都の条例では、公共の場所や乗り物に加え、住居、トイレ、浴場、更衣室など、プライベートな空間での盗撮も規制されています。
盗撮が東京都の迷惑防止条例に該当する場合、処罰として1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。常習的に盗撮行為を行っている場合には、2年以上の懲役または100万円以下の罰金となる可能性もあります。
③軽犯罪法違反
2023年7月12日以前の盗撮行為については、軽犯罪法違反として起訴される可能性もあります。
軽犯罪法は、「正当な理由なく他人の住居、浴場、更衣室、便所など、人が通常衣服を着けない場所をひそかにのぞき見る行為」を処罰対象としています(軽犯罪法第1条23号)。
軽犯罪法違反が成立した場合、刑罰として拘留(1日以上30日未満の身柄拘束)または科料(1000円以上1万円未満の金銭の支払い)が科されます。
なお、盗撮行為に関して、軽犯罪法と迷惑防止条例のどちらを適用するかは、まず罰則が重い迷惑防止条例に該当するかどうかを検討し、該当しない場合には軽犯罪法違反が成立するかどうかを検討することになります。
④住居侵入罪・建造物侵入罪
盗撮目的で住居や建物に立ち入った場合には、住居侵入罪や建造物侵入罪に問われる可能性があります。
建造物等侵入罪とは、正当な理由がないのに、人の住居や人の看守する邸宅、建造物、艦船に侵入し、または要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しない場合に成立する犯罪です(刑法第130条)。
盗撮目的で他人が居住する住居や、公共の施設に立ち入った場合には、管理者の許諾権を侵害する立ち入り行為として、住居・建造物侵入罪に問われる可能性があります。
住居侵入罪・建造物侵入罪が成立した場合には、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。
⑤児童ポルノ禁止法違反
盗撮の被害者が18歳未満である場合、児童ポルノ禁止法違反に問われる可能性があります。
この法律では、児童の性的な姿態を製造する行為を厳しく規制しています(児童買春・児童ポルノ禁止法第2条、第7条参照)。スマホやカメラで、衣服の全部または一部を着けない児童を撮影する行為が「製造」の典型例です。この製造行為には、児童の同意を得ずにひそかに撮影する行為、すなわち「盗撮行為」も含まれます。
児童ポルノを製造した場合には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されることになります。さらに、不特定または多数の者に提供する目的で児童ポルノにあたる写真や動画を製造した場合には刑が加重され、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれを併科されます。
盗撮で刑事裁判となった場合の流れ
盗撮で公判請求(正式起訴)され、刑事裁判となった場合の流れは次の通りです。
- 冒頭手続き
- 証拠調べ手続
- 弁論手続~結審
- 判決の言い渡し
①冒頭手続き
冒頭手続は、裁判が正式に開始される際の手続きで、次のような流れで進みます。
- 人定質問(本人確認):被告人が証言台に立ち、裁判官から名前、生年月日、住所、職業などを尋ねられます。この質問は被告人の本人確認を目的としています。
- 起訴状の読み上げ:検察官が盗撮に関する起訴状を読み上げ、事件の概要や被告人が問われている罪状を明らかにします。被告人はこれを立ったまま聞きます。
- 黙秘権の告知:裁判官が被告人に「黙秘権」の権利について説明します。これにより、被告人は不利になるような供述を強要されないことが保障されます。
- 罪状認否:裁判官が被告人に対し、「起訴状の内容に間違いがあるかどうか」を尋ねます。
被告人は自身の認識を述べ、その後、弁護人が法律的な見解を述べ、冒頭手続きは終了します。
②証拠調べ手続き
証拠調べ手続きでは、検察官と弁護人がそれぞれ証拠を提示し、裁判所に事件の内容を立証します。証拠取調べ手続きの流れは次の通りです。
- 検察官の証拠提示:検察官は盗撮に関連する証拠を提出します。具体的には、盗撮された画像や動画や、被害者や目撃者の証言、防犯カメラの映像などを示して盗撮行為の事実や被告人の動機、状況を説明します。
- 弁護人の証拠意見と提示:検察官の提示した証拠に対し、弁護人が意見を述べます。必要に応じて弁護人側も独自の証拠を提出し、被告人に有利な状況や情状を主張します。
- 被告人質問:検察官、弁護人、裁判官が被告人に対して質問を行います。質問内容は、盗撮行為の詳細や動機、反省の有無、被害者との示談の進展状況など多岐にわたります。被告人は正直に、かつ冷静に答えることが求められます。
③弁論手続き~結審
証拠調べが終了すると、弁論手続きが始まります。この段階では、検察官と弁護人がそれぞれの立場から意見を述べ、裁判を結審へと進めます。弁論手続の流れは次の通りです。
- 論告:検察官が、盗撮行為に関する事実関係や被告人の責任、情状について説明します。その後、検察官は適切と考える刑罰(求刑)を提案します。
- 弁論:弁護人は被告人の立場から意見を述べます。被告人が反省している場合や再犯防止策を講じている場合など、刑罰を軽減するための主張を行います。
- 最終陳述:被告人自身が意見を述べる場面です。「申し訳ありません」「二度とこのようなことはしません」など、反省の気持ちを述べることが一般的です。
弁論手続きが終了すると裁判は「結審」となり、次回公判で判決が言い渡されます。
④判決の言い渡し
結審から1〜2週間後、または場合によっては当日中に判決が言い渡されます。判決では主文において、裁判官が結論を述べます。有罪・無罪の判断や刑罰の内容(罰金、懲役、執行猶予など)がこの段階で明らかになります。そして、裁判官がどのような証拠や事実に基づいて判決を下したのかという判決理由が示されます。
盗撮事件で刑事裁判にかけられた場合には、以下のような判決の言い渡しを受ける可能性があります。
- 罰金刑:比較的軽微な盗撮事件の場合に適用されることが多いです。
- 懲役刑(執行猶予付き):再犯可能性が低い場合や情状酌量の余地がある場合に科されます。
- 懲役刑(実刑):被害が大きい場合や常習性がある場合に科されることがあります。
- 無罪:証拠が不十分な場合などに判断されることがあります。
盗撮の刑事事件の裁判例
盗撮には合理的な疑いが残るとして無罪が言い渡された裁判例
この事案は、被告人が正当な理由がないのに、女性A(当時24歳)の下着を盗撮する目的でワンピースの下から携帯電話機を差し入れたことが、福岡県の迷惑防止条例違反の罪にあたるとして起訴された事案です(求刑:罰金40万円)。
しかし、被告人はAの身体等を撮影しようと動画の撮影をしていたこと自体は認めているものの、実際に撮影されていた動画は約12秒と7秒の手振れが大きい2つの動画だけであり、誰のどの部部が映っているのか不明であり、撮影対象も判別できませんでした。
このことから、Aのワンピース下方に携帯電話を差し入れたという事実を認めるには合理的疑いが残ると判断され、犯罪の証明がないとして、被告人に対して無罪が言い渡されています。
常習的な盗撮で1年6月の実刑判決が言い渡された裁判例
この事案は、被告人が京都市内の駅など23か所で計71回にわたり100名の女性(うち1名は17歳)に対して、カバンに仕込んだ携帯電話のカメラをスカートの中に差し入れて、動画撮影した事案です。また、被告人は、大阪市内でも、同様にカバンに仕込んだ携帯電話のカメラを使い、複数の女性のスカート内を撮影する行為を繰り返しました。
被告人による上記盗撮行為が、京都府及び大阪府の迷惑防止条例違反に違反するとして、懲役1年6月の実刑判決が言い渡されています。
被告人は過去に同じような盗撮行為で2回罰金刑を受けていたにもかかわらず、1年半以上にわたり、さまざまな場所で複数の女性の下着を盗撮しているため強い常習性が認められています。また、過去の盗撮動画や自分で制作した盗撮風の動画を販売して生計を立てていたことから、被告人に対して実刑を科すのが適切であると判断されています。
盗撮で民事裁判を起こされる可能性と実際の状況
結論を申し上げますと、盗撮行為は不法行為(民法第709条)に該当するため、盗撮の被害者が慰謝料請求を求めて民事裁判を起こすことは法的に可能です。しかし、現実的には、盗撮事件で訴訟が提起されるケースは多くありません。以下で詳しく説明します。
盗撮は不法行為に該当する
盗撮行為は、他人のプライバシーや人格権を侵害する不法行為に該当します。民法第709条では、「故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した場合、その損害を賠償する責任を負う」と規定されており、被害者は精神的苦痛を理由に慰謝料を請求できます。
たとえば、盗撮された映像が被害者のプライバシーを大きく侵害する場合や、更衣室やトイレなど、プライバシーが特に守られるべき場所で盗撮が行われた場合、慰謝料を請求する根拠は強くなります。そのため、盗撮行為に対して被害者が民事裁判を起こすことは法的に十分に考えられる手段です。
民事裁判で認められる慰謝料相場は?
盗撮に関する慰謝料の金額は個別のケースによって異なりますが、一般的には10万円~50万円程度が相場となることが多いとされています。慰謝料額は、刑事事件における罰金刑や賠償金を参考にして決められることが多く、そのため示談交渉や裁判で解決される場合もこの範囲内での解決が一般的です。
ただし、被害者が未成年であったり、盗撮映像が第三者に販売されたりインターネットにアップロードされたりした場合、また盗撮行為に加えて住居侵入などが行われた場合には、慰謝料が増額される可能性があります。こうした要素がある場合、慰謝料は通常よりも高額になる傾向があります。
実際に裁判を起こされる可能性は低い
現実的には、盗撮の被害者が加害者に対して民事裁判を起こすケースは多くありません。その理由は以下の通りです。
- 被害者にとっての精神的負担
盗撮は性犯罪の一種であり、被害者が加害者と接触すること自体が大きなストレスになります。示談交渉を進める場合でも、被害者が加害者と直接話し合うのは避けたいと感じることが一般的です。 - 時間と費用の負担
民事裁判を起こすには、法的な手続きに関する知識や多大な労力が必要です。弁護士に依頼する場合、弁護士費用が発生しますが、盗撮における慰謝料の相場が30万円程度であるため、弁護士費用が慰謝料を上回る可能性があります。このような経済的負担の観点からも、被害者が裁判を選ぶのは難しいといえます。 - 示談による解決の優先
被害者が加害者に直接請求を行い、話し合いで解決する「示談」は、裁判に比べて負担が軽く迅速です。そのため、盗撮事件では示談で解決するケースが圧倒的に多い傾向にあります。加害者も示談に応じることで刑事裁判での減刑を期待できるため、双方にとってメリットが大きいといえます。
盗撮で民事裁判になった場合の流れ
上記の通り、盗撮事件が民事裁判に発展する可能性は高くはありませんが、万が一訴訟が提起された場合、次のような流れで裁判が進行します。
- 民事訴訟の提起
- 口頭弁論期日
- 続行期日
- 当事者および証人尋問
- 和解の検討
- 判決
①民事訴訟の提起
民事訴訟は、被害者(原告)が裁判所に訴状を提出することから始まります。訴状には、盗撮の被害内容や損害賠償額などが記載されます。裁判所が訴状を受理すると、被告(加害者)に訴状が送達されます。
②口頭弁論期日
訴状が受理されると、裁判所は「口頭弁論期日」を指定します。この期日には、原告と被告が裁判所に出廷し、それぞれの主張を証拠に基づいて行うことになります。
被告側が事前に答弁書を提出している場合、第1回期日に限り欠席することが認められます。この場合、被告の出席なしに手続きが進むことになります。
また、被告が原告の請求を一切争わないと判断した場合、欠席裁判となり、比較的短期間で手続きが終了することもあります。
③続行期日
被告が原告の請求を争う場合は、続行期日が設定されます。続行期日はおおよそ1か月に1回のペースで開かれ、原告と被告がそれぞれ証拠を提出し、主張を繰り返します。
もし、盗撮事件が既に刑事事件として処理されている場合、民事裁判では主に被害者が受けた精神的苦痛の程度や、それに応じた慰謝料の金額が争点となることが一般的です。
④当事者および証人の尋問
書証による証拠調べが行われたあとは、当事者や証人の尋問が行われることが一般的です。被害者自身が公開の法廷に立ち、自らの口で盗撮の被害状況を証言しなければなりません。
⑤和解の検討
続行期日を重ね、裁判所がある程度の判断を下せる段階に至ると、和解案が提示されることがあります。和解することができれば、民事訴訟はその時点で終了します。
和解案に当事者が合意しない場合は、審理が続行され、最終的に判決が言い渡されることになります。
⑥判決
最終的に、裁判所は当事者双方の主張や証拠を踏まえ、判決を言い渡します。判決に不服がある当事者は、判決を受け取った翌日から14日以内に控訴する必要があります。この期限を過ぎると、判決は確定します。確定した判決に基づき、被告は賠償金の支払い義務を負います。
盗撮の民事裁判の裁判例
慰謝料として残金250万円の支払いが明示られた裁判例
この事案は、カラオケ店で働いていた原告Xが、同店の店長であった被告Yからトイレ内を盗撮されたり、仮眠中にスカートをめくられ下着を盗撮されたりするなどの被害を受けました。XとYとの話合いで被告が原告に慰謝料を支払う旨を「覚書」にて合意したにもかかわらず、Yは一部しか支払っていないためYに対して上記合意に基づく残額の支払いを求めた事案です。
「覚書」には、下着の盗撮及びトイレの盗撮による精神的苦痛に対する慰謝料として計300万円を支払うことが約束され、XとYそれぞれが署名・押印がされていました。
裁判所は、合意の内容がYにとって一方的な債務を負担させるものではなく、有効な合意が成立していると判断しました。
話合いはXがYと直接話をするような形で進められ、Yが主張する強迫や畏怖、金額や支払時期についての錯誤はなく、金額も過大なものではないとし、残金である250万円及び遅延損害金の支払い請求を容認しました(東京地方裁判所令和2年6月17日判決)。
盗撮DVDを販売した会社と代表者に660万の支払いが命じられた裁判例
この事案は、公衆浴場における盗撮映像をもとにDVDを制作・販売した行為が、当該盗撮映像に係る被撮影者のプライバシー権・肖像権を侵害し不法行為を構成するため、DVDを制作・販売した会社A及びその代表者Bの損害賠償責任が認められた事案です。
被告Aは、全裸姿を盗撮した映像を使用することについて原告の承諾を得ていないことを認識・認容しつつ制作・販売を行っているため、不法行為の成立が認められました。また、代表者Bについても、その職務を行うについて悪意又は少なくとも重大な過失があるとして、不法行為責任が認められています。結果として、被告A・Bには、660万円の損害賠償が命じられました(大阪地方裁判所平成21年3月27日判決)。
盗撮で裁判になるのを回避するには?
盗撮行為を起こしてしまった場合、被害者との示談を成立させることで民事裁判を回避できます。
示談とは、当事者同士が話し合いで解決を図る方法で、賠償金や謝罪を通じて被害者の納得を得ることが目的です。示談書には、通常「これ以上の請求はしません」という内容の「清算条項」を盛り込むため、示談後に訴訟を起こされて賠償金の支払いを求められる心配はなくなります。
また、示談が成立している場合、検察が不起訴処分を下す可能性が高まり、刑事裁判を回避できる場合もあります。特に、示談書に被害者が加害者の刑事処罰を求めない旨の「宥恕条項」を盛り込むことができれば、不起訴の可能性はさらに高まります。
ただし、示談交渉を進める際には弁護士のサポートが不可欠です。盗撮をはじめとする性犯罪の被害者との接触や交渉は非常に繊細で、加害者が直接行うとトラブルを悪化させる恐れがあります。
このため、弁護士が代理人として示談交渉を行うことで、被害者の心情に最大限配慮し、適正な示談金額でスムーズな解決を目指すことができます。
まとめ
盗撮事件においては、事案の内容に応じて結果が異なりますが、刑事手続きでは不起訴処分を得られる可能性もあり、また、略式起訴による罰金刑で済むことも多いです。民事事件においては、訴訟前に示談が成立するケースが多く、訴訟に発展することは比較的少ないといえます。
そのため、盗撮事件を早期に解決したい場合は、速やかに被害者と示談を成立させ、適切な対応を取ることが重要です。
当事務所では、盗撮被害者との示談交渉、不起訴の獲得を得意としており豊富な実績があります。親身かつ誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、盗撮事件で裁判に発展することを避けたい方は、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。
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