「盗撮をすると軽犯罪法違反になるようだが、どのような行為が具体的に軽犯罪法違反となるのだろうか?」
「盗撮は迷惑防止条例違反にもなるようだが、軽犯罪法違反との違いは何だろうか?」
このように考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、2023年7月13日に「性的姿態撮影等処罰法」が施行され、新たに撮影罪が設けられました。そのため、同日以降の盗撮行為は原則として「撮影罪」で処罰されることになります。しかし、2023年7月12日以前に行われた盗撮行為については、軽犯罪法違反または迷惑防止条例違反が適用されるため、これらの違反について理解しておくことが重要です。
この記事では、盗撮事件に強い弁護士が以下の点について解説します。
- 軽犯罪法違反となる盗撮とは
- 軽犯罪法違反と迷惑防止条例違反の違い
- 新設された撮影罪について
- 盗撮で起訴を回避する方法
なお、盗撮行為をしてしまい、逮捕や起訴の回避に向けて早急に対応したいとお考えの方は、この記事を読まれた上で、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
軽犯罪法違反の盗撮とは?迷惑防止条例違反との違いは?
軽犯罪法違反の盗撮とは
軽犯罪法では、公共の場所ではないプライベートな空間における盗撮行為を規制しています。
軽犯罪法第1条23号では、正当な理由なく人の住居、浴場、更衣場、便所など、人が通常衣服をつけないでいるような場所を「のぞき見る行為」を禁止しています。
軽犯罪法では私的な空間での盗撮が規制されていますので、たとえば他人の家の風呂場やトイレ、脱衣所などをのぞき見る行為が処罰の対象となります。そのため、肉眼でのぞき見る行為のほか、スマホやカメラの望遠機能を利用してのぞき見る行為も、軽犯罪法違反として処罰される可能性があります。
盗撮行為が上記のような軽犯罪法に違反する罪に該当する場合、拘留または科料という刑罰が科されることになります。拘留とは、1日以上30日未満の身体拘束を指します。これに対して、科料とは、1000円以上1万円未満の範囲でお金を納付するという刑罰のことを指します。
迷惑防止条例違反の盗撮とは
盗撮行為は、各都道府県が制定している迷惑防止条例違反の罪に該当する可能性があります。
特に、後述の性的姿態撮影等処罰法の撮影罪が制定される2023年(令和5年)7月12日以前の盗撮事件については、各都道府県の迷惑防止条例の罰則が適用されることが一般的でした。
また、条例の規定の仕方は各迷惑防止条例ごとに異なります。
たとえば、東京都の迷惑防止条例では、一定の場所・乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を「撮影すること」や、撮影する目的で写真機その他の「機器を設置すること」が処罰の対象となっています(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第5条1項2号)。
東京都の条例で撮影が禁止されている場所としては、以下のような場所・乗り物です。
- 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
- 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物
以上のとおり、迷惑防止条例が規制している盗撮行為については、公共の場所や乗り物での盗撮行為が対象となっていることが多いです。
しかし、都道府県によっては、住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所などの公共の場所・乗り物以外の場所での盗撮行為を規制しているケースもあるため、規制範囲は条例によって異なることになります。
そして、盗撮行為が東京都の迷惑防止条例違反の罪に該当する場合、「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」が科されることになります。さらに、常習として盗撮行為をしている場合には、「2年以上の懲役」または「100万円以下の罰金」が科される可能性があります(同条例8条2項2号、7項)。
軽犯罪法と迷惑防止条例のどちらが適用される?
それでは、盗撮事件については軽犯罪法と迷惑防止条例のどちらが適用されることになるのでしょうか。
上述のとおり、軽犯罪法と迷惑防止条例違反の罪については、規定されている刑罰の重さが異なります。そして、迷惑防止条例違反の罪の方が、軽犯罪法違反の罪よりも重い刑罰が科されています。
そのため、発生した盗撮事件について、いずれの法令を適用すべきかを考える際には、まずは、迷惑防止条例の処罰対象となっているのか(公共の場所・乗り物での盗撮事件か否か)を検討することになります。そのうえで、盗撮した場所が条例の規制範囲外であるため迷惑防止条例違反の罪が適用できない場合には、軽犯罪法違反の罪に該当するか否かを検討することになります。
以上のとおり、問題となっている盗撮行為が迷惑防止条例の規制範囲内であれば、同条例違反の罪で逮捕され、他方、迷惑防止条例の規制範囲外である場合には、軽犯罪法違反の罪で逮捕される可能性があるのです。
なお、盗撮やのぞき目的で他人の住居やトイレ、敷地などに立ち入った場合には、管理者の意思に反する立ち入りであるとして、住居侵入罪・建造物侵入罪に問われる可能性もあります。建造物等侵入罪が成立した場合には、「3年以下の懲役」または「10万円以下の罰金」が科されることになります。
軽犯罪法と迷惑防止条例の法定刑の違いは?
盗撮事件における軽犯罪法と迷惑防止条例の法定刑の違いは、次の表のとおりです。
適用法令 | 対象となる行為 | 法定刑 |
迷惑防止条例違反(東京都の場合) | 下着や身体を撮影・撮影機器を設置すること | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
軽犯罪法 | 正当な理由なく人の住居、浴場、更衣場、便所など、人が通常衣服をつけないでいるような場所を「のぞき見る行為」 | 拘留(1日以上30日未満身体拘束)または科料(1000円以上1万円未満のお金を納付) |
2023年7月13日以降、盗撮には「撮影罪」が適用される
近年、盗撮行為を厳罰化するために、性的姿態撮影等処罰法(正式には、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」といいます。)が新たに制定されました。これまで迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反の罪として取り締まられてきた盗撮行為について、2023年(令和5年)7月13日以降は、性的姿態撮影等処罰法の「撮影罪」が適用されることになります。
撮影罪とは、正当な理由がないのに、ひそかに、「性的姿態等」を撮影する犯罪のことです。
「性的姿態等」とは、以下のようなものをさします。
- 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)
- 人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられているもの)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
- わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
同法が制定されたことで、迷惑防止条例とは異なり全国一律で盗撮等の行為を処罰できるようになり、また軽犯罪法違反や迷惑防止条例違反の罪よりも重い刑罰が科されるようになりました。
撮影罪が成立した場合には、「3年以下の拘禁刑」または「300万円以下の罰金」が科されることになります。
撮影罪とは?該当する行為や条例違反との違いをわかりやすく解説
盗撮で逮捕された後の流れ
盗撮で逮捕された後の流れは次の通りです。
- 逮捕・勾留
- 検察官による起訴・不起訴の判断
- 刑事裁判
【① 逮捕・勾留】
盗撮が発覚した場合、その場で警察官や周囲の人々による現行犯逮捕が行われることがあります。また、後日の捜査で証拠が揃い、裁判所が逮捕状を発行した場合には、通常逮捕(後日逮捕)が行われます。
逮捕後、被疑者は警察署に連行され、取り調べを受けます。この段階で、警察は逮捕から48時間以内に事件を検察官に送致するかどうかを判断します。その後、送致を受けた検察官は、24時間以内(逮捕から合計で72時間以内)に裁判所へ勾留請求を行うかどうかを決定します。
裁判所が勾留を認めた場合、被疑者は最長で20日間(10日間+延長10日間)の身体拘束を受ける可能性があります。
したがって、逮捕から勾留終了までの間に、最大で23日間拘束されることがあります。
【② 検察官による起訴・不起訴の判断】
勾留期間中、検察官は証拠や状況を基に起訴か不起訴を判断します。盗撮事件では、被疑者の反省態度や被害者との示談成立、再犯の可能性などが重要な要素となります。検察官が不起訴処分を決定した場合、被疑者は釈放され、刑事裁判が行われないため、前科がつくリスクはなくなります。
【③ 刑事裁判】
検察官が起訴を決定すると、被疑者は「被告人」となり、拘置所に移送されます。その後、裁判が開かれ、証拠や証言を基に裁判官が有罪か無罪かを判断します。日本の刑事裁判の有罪率は約99%と高く、盗撮事件で無罪を勝ち取るのは難しいのが現状です。
ただし、有罪判決が下された場合でも、執行猶予がつくことがあります。執行猶予がつくと刑務所への服役は免れますが、前科が記録され、社会的信用や就職活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
盗撮で逮捕されたらどうなる?その後の流れや逮捕回避方法を解説
盗撮事件で逮捕や起訴を回避するには?
盗撮事件では、最終的に処罰されるかどうかにおいて、被害者との示談成立が大きな影響を及ぼします。
示談とは、被害者に謝罪を尽くし、慰謝料や示談金を支払うことで、被害者から許しを得る行為を指します。示談が成立することで、被害者が被害届や告訴を取り下げてくれることがあります。また、示談が成立している場合、捜査機関は「被害者への被害弁償が完了している」という点を重視し、逮捕や起訴が不要と判断する可能性が高まります。
しかし、盗撮事件の場合、加害者と被害者が知り合いであるケースはほとんどなく、加害者が直接被害者に連絡を取る手段はありません。また、直接の接触は被害者にさらなる負担を与えかねないため、捜査機関は被害者の個人情報を加害者本人には教えません。
ただし、弁護士が代理人となっている場合には、検察官に対して被害者と示談を進めたい旨を伝えることで、連絡先を教えてもらえる可能性があります。検察官は、被害者の同意を得た上で、被害者の連絡先を弁護士に提供します。弁護士が被害者と連絡を取り、示談交渉を進めることが可能になるのです。
盗撮事件を起こしてしまった場合、示談交渉を成功させるためには、弁護士の関与が不可欠です。法的手続きや交渉をスムーズに進めるためにも、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
盗撮事件を起こした場合には、軽犯罪法違反や各都道府県が制定している迷惑防止条例違反の罪に問われる可能性があります。2023年7月13日以降の盗撮事件については、性的姿態撮影等処罰法の撮影罪が適用される可能性が高いでしょう。
近年、盗撮事件が厳罰化されたことで、逮捕・起訴される可能性が高いです。
盗撮事件を起こして、逮捕や起訴を回避するためには、すぐに弁護士に相談したうえで、弁護活動に動いてもらうことが重要です。被害者との示談が成立した場合には、早期釈放や不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。
当事務所では、盗撮事件の逮捕や起訴の回避を得意としており豊富な実績があります。親身かつ誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、盗撮事件を起こしたてしまった方や、ご家族が逮捕されてしまった方は、是非当事務所の弁護士までご相談ください。
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