刑事事件の弁護士費用の相場は、約35万円~140万円程度(税抜き)となっております。
ただし、事案によってはこの相場の範囲内に収まらないこともあります。また、弁護士費用の体系や費用は各法律事務所により異なりますので、あくまでも「目安」として参考にしてください。契約前に費用についてよく確認し、不明点を解消してから契約するよう注意しましょう。
この記事では、以下の3点について、刑事事件に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
- 刑事事件の弁護士費用の内訳と相場
- 逮捕の有無別の弁護士費用の相場
- 契約後に追加の着手金が発生する場合と相場
また、わざわざ高い料金を払ってまで私選弁護人に刑事弁護を依頼するメリットはなんなのか?という疑問にもお答えしていますので、最後まで読んでみて下さい。
(※)この記事に記載の金額は全て「税抜き」で表記されていますのでご注意下さい。
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目次
刑事事件の弁護士費用の内訳と相場
刑事事件の弁護士費用(私選弁護人に刑事弁護を依頼した場合に発生する費用)の内訳は以下となります。
- 法律相談料
- 初回接見費用
- 着手金
- 報酬金
- 日当費
- 実費
そして、冒頭でお伝えした、刑事事件の弁護士費用の相場である約35万円~140万円の内訳は以下となります。
内訳 | 相場 |
相談料 | 無料~1万円(1時間) |
初回接見費用 | 3万円~5万円 |
着手金 | 20万円~100万円 |
報酬金 | 10万円~30万円 |
日当 | 1万円~5万円 |
実費 | 事案による |
合計 | 約35万円~140万円 |
以下では、各内訳の内容や相場について細かく見ていくことにしましょう。
法律相談料
法律相談料は、主に契約前に弁護士に法律相談した際に発生する費用です。有料であれば1時間10000円程度が相場ですが、無料で対応している法律事務所もあります。
有料、無料の場合も制限時間を設けられていることが多く、制限時間を超えた場合は追加料金が発生し、追加の相談にも制限時間が設けられています。制限時間は30分〜、追加料金は5000円程度、追加相談の制限時間は30分〜が相場です。
法律事務所に相談に行く前に有料か無料か、制限時間は設けられているか、追加の費用は発生するかなど確認しておくことが必要です。他方で、契約後は、法律相談料という名目での費用は発生しないのが一般的です。
初回接見費用
初回接見費用とは、契約前に、弁護士が身柄拘束されている被疑者・被告人と初めて接見する際に発生する費用です。初回接見費用は日当費と交通費から構成されています。日当費は3万円~5万円程度が相場です。
交通費は弁護士が接見する留置場などへ行くために実際にかかった費用(実費)とされるのが一般的です。交通費は弁護士が勤務する法律事務所を起点として計算されますから、法律事務所から留置場までの距離が遠ければ遠いほど交通費(初回接見費用)は高額となります。
初回接見は被疑者・被告人の関係者(ご家族など)が依頼します。初回接見後は、依頼者が弁護士から接見でのやり取りや事件の見通し、弁護士費用などの説明を受けた後、弁護士に弁護活動を依頼するかどうかを決めます。なお、契約後の接見費用は、後述する日当費として計算されます。
着手金
着手金は、文字通り、弁護士が弁護活動に着手するための費用で、法律事務所と契約した直後に発生します。着手金の相場は、以下のとおり、罪を認める自白事件か認めない否認事件かによって大きく異なります。
- 自白事件 ➡︎ 20万円〜90万円
- 否認事件 ➡︎ 40万円〜100万円
また、事件の性質・規模、共犯者の有無、逮捕前か逮捕後か(在宅事件か身柄事件か)、などによっても金額は大きく異なります。
着手金は一括支払いが基本で、支払いが確認できない以上、弁護士が弁護活動に着手してくれません。もっとも、分割支払いできる法律事務所もあり、できない場合でも、緊急に弁護活動する必要があるケースでは分割支払いできる場合もあります。
着手金は、トータルで発生する弁護士費用の中に充当されます。すなわち、「着手金>弁護士費用」の場合は残金を(着手金の一部は)返金されますが、「着手金<弁護士費用」の場合は、弁護活動の成果にかかわらず返金されない点に注意が必要です。
報酬金
報酬金は、契約後に、弁護活動の成果に応じて発生する費用です。報酬金は大きく次の報酬金に区分されます。
- 身柄に関する報酬金
- 刑事処分に関する報酬金
- 裁判結果に関する報酬金
- 接見禁止解除に関する報酬金
- 示談に関する報酬金
- 告訴・被害届に関する報酬金
そして、被疑者・被告人にとってメリットの大きい成果ほど、報酬金は高くなります。たとえば、身柄に関する報酬金では「逮捕回避」が最も高くなり、刑事処分に関する報酬金では「不起訴」が最も高くなり、いずれも30万円程度が相場です。また、報酬金の中でも比較的低額な「示談成立」、「被害弁償」でも10万円程度が相場です。
なお、保釈が必要となった場合は別途保釈保証金を、示談が成立した場合は別途示談金を準備する必要があります。
日当費
日当費は弁護活動ごとに設けられた固定費です。日当費が発生することが多い代表的な弁護活動と費用の相場は以下のとおりです。
- 裁判活動 ➡︎ 50000円程度
- 接見 ➡︎ 10000円程度
- 示談交渉(事務所外) ➡︎ 10000円程度
起訴された場合は裁判出廷、身柄拘束が継続する場合は接見が必要となります。裁判や身柄拘束が長期化すればするほど裁判への出廷や接見回数は多くなり、日当費は高くなります。
実費
実費は、弁護士が弁護活動するにあたって実際にかかった費用です。裁判出廷するため裁判所へ、接見するため留置場・拘置所へ行く際には交通費が発生します。また、交通費のほか、各種関係機関へ文書を発送する際の郵送費、裁判の証拠資料を謄写する際にかかる謄写費などがあります。
実費は案件内容によるので相場を示すことはできません。また、実費が着手金に含まれていたり、接見費用に交通費が含まれている事務所もありますので、契約前に法律事務所に確認した方が良いでしょう。
【逮捕の有無別】弁護士費用の相場
私選弁護人は逮捕される前でも選任できます(※)。そこで、以下では、逮捕前と逮捕後に発生する弁護士費用についてみていきましょう。
※弁護士費用が原則無料の国選弁護人は逮捕後、勾留決定が出た後でなければ選任されません。
逮捕前の弁護士費用
前述のとおり、法律相談料は有料と無料の場合があります。有料の場合は回数が多くなればなるほど高くなります。また、無料の場合も、2回目以降は有料であることがほとんどです。
着手金は逮捕前でも発生します。逮捕直前など緊急性が高いケースではない限り、一括支払いを求められることが多いです。前述のとおり、着手金は20万円~100万円が相場です。
逮捕前の報酬金は、弁護活動によって、
- 逮捕されてもおかしくないケースで逮捕回避できた場合
- 示談が成立して刑事事件化しなかった場合
- 刑事事件化したものの不起訴を獲得できた場合
などに発生することが多いです。
前述のとおり、報酬金は逮捕を回避できた場合が最も高く30万円程度が相場です。また、逮捕回避以外にも成果が発生した場合は、その分報酬金は高くなります。日当費、実費は主に事務所外での示談交渉により発生することが多いです。
逮捕後の弁護士費用
逮捕後は、身柄拘束された被疑者・被告人自身が法律相談することはできません。また、被疑者・被告人以外のご家族などが弁護活動を依頼する場合は法律相談ではなく、初回接見を依頼することを求められます。そのため、逮捕後は法律相談料の代わりに初回接見費用が発生します。
前述のとおり、着手金の相場は30万円~100万円ですが、逮捕前に比べて高くなります。また、弁護活動する緊急性が高いとはいえ、一括支払いが原則です。一括支払いが難しい場合は、分割支払いが可能な法律事務所を探すか、分割支払いを認めてもらうよう交渉する必要があります。
逮捕後の報酬金は、弁護活動によって、
- 勾留請求されずに釈放された場合
- 勾留請求されたものの、却下された場合
- 勾留決定が出たものの、不服申し立てによって釈放された場合
- 示談が成立し不起訴となった場合
- 起訴されたものの、執行猶予を獲得できた場合
などに発生することが多いです。
釈放された場合の報酬金は20万円程度で、その他、不起訴などの成果が発生した場合は報酬金が加算されます。日当費、実費は事務所外での示談交渉はもちろん、弁護士の接見や起訴された後の裁判活動などで発生することが多いです。
契約後に追加の着手金が発生する場合と相場
契約後、
- 新しい被害者が判明した場合
- 再逮捕された場合
は、追加の着手金の支払いが必要となる場合があります。
上記の事情は依頼者はもちろん弁護士も、契約時には予測できない事情です。そのため、被害者の数や再逮捕の回数によっては、契約時に弁護士から説明を受けていた金額をはるかに超える弁護士費用となってしまう可能性もありますので注意が必要です。
新しい被害者が判明した場合
契約時には被害者が一人だったものの、警察の捜査で余罪が明らかとなり、その余罪にも被害者がいた、というケースが典型例です。
事件としては、
- 窃盗
- 強盗
- 詐欺
- 恐喝
などの財産犯のほか、
- 盗撮
- 痴漢
- 強制わいせつ
- 強制性交等
などの性犯罪で上記のようなケースとなりやすい傾向にあります。
追加の着手金は20万円程度が相場です。最初の着手金と異なり、発生時に一括支払いする必要はありませんが、弁護活動が終わった後、報酬金などに上乗せされて請求されるのが通常です。なお、「示談に関する報酬金」は被害者1名ごとに発生しますから、余罪の被害者とも示談できた場合は報酬金も高くなります。
再逮捕された場合
再逮捕とは、今現在身柄拘束を受けている罪の被疑事実について釈放された(あるいは起訴された)後に、異なる被疑事実で逮捕されることです。つまり、余罪がある場合ということになります。余罪があるからといって、必ずしも再逮捕されるわけではありませんが、逃亡・罪障隠滅が疑われる場合、すなわち、
- 重大事件の場合
- 実刑が見込まれる場合
などは再逮捕されやすいです。
追加の着手金は30万円程度が相場です。再逮捕された事実で釈放された場合、示談が成立した場合などは、別途、報酬金が発生します。
弁護士費用をかけてでも私選弁護人を選ぶする理由
これまで見てきたように、私選弁護人に刑事弁護を依頼した場合の弁護士費用は決して安い金額ではないことはおわかりいただけたかと思います。
では、決して安くはない弁護士費用を負担してまで、私選弁護人を選ぶ理由とは何なのでしょうか?私選弁護人を選ぶ理由、メリットについて見ていきましょう。
逮捕前・刑事事件化する前から選任できる
私選弁護人を選ぶ最大の理由は、いつでも選任できるという点です。
刑事事件では私選弁護人のほかに当番弁護士、国選弁護人を選べますが、
- 当番弁護士 ➡︎ 逮捕後
- 国選弁護人 ➡︎ 勾留決定後
と、いずれも身柄拘束されてからでしか選ぶことができません。
これに対して、私選弁護人は身柄拘束受ける前、あるいはそれよりもっと前の刑事事件化(※)する前から選任することが可能です。
身柄拘束されると仕事、学校、家族など、日常生活に大きな影響が出る可能性があります。また、マスコミに最も報道されやすいタイミングが逮捕されたときです。報道されると仕事や学校にはもちろん、近所との付き合いや知人・友人関係などにも影響が出て、これまでの生活を大きく変化せざるをえなくなるかもしれません。そのため、刑事事件における不利益を必要最小限に抑えるためには逮捕を回避することですが、そのためにあなたの味方になってくれるのが私選弁護人というわけです。
※捜査機関に刑事事件の被疑者として特定されること。被害者がいる事件では、被害届や告訴状の提出などがきっかけとなることが多い。
自分で弁護士を選べる
私選弁護人を選ぶ二つ目の理由は、弁護士を選べるという点です。
当番弁護士は弁護士会、国選弁護人は法テラスに登録している弁護士の中から都合がつく弁護士が選ばれる、という仕組みとなっています。そのため、当番弁護士や国選弁護人を自分で選ぶことはできません。
これに対して、私選弁護人は文字通り、自分で弁護士を選ぶことができます。自分で弁護士を選ぶメリットは、
- 刑事事件に精通した弁護士を選べる
- 自分と相性の合った弁護士を選べる
という点です。
弁護士とはいえ、すべての弁護士がしっかりとした経験を積み、刑事事件に精通しているとは限りません。そもそも弁護士としての経験が浅い弁護士、刑事事件の経験が浅い弁護士など様々です。当番弁護士や国選弁護人の場合は、こうした弁護士が選任される可能性も否定はできません。
他方で、弁護士を自分で選べるということは、弁護士としての経験を積んだ弁護士かどうか、刑事事件について熟知した弁護士かどうかを自分の目で見て判断できるということです。また、相談を通じて、弁護士の性格、考え方、話し方、話の聞き方、人柄、顔の表情など細かいことをチェックできます。そして、自分と相性の合う弁護士かどうかを確かめることができます。
弁護士も人により性格、考え方などは様々です。そのため、人によって反りが合う弁護士、合わない弁護士というのは当然でてきます。刑事弁護による満足な結果を得るには弁護士の知識や経験が豊富ということももちろん大切ですが、弁護士と相性が合うかどうか、すなわち、弁護士と円滑に意思疎通を取れるかどうかも非常に大切なポイントです。
なお、弁護士に法律相談した上で自分で選べるのは、逮捕前に限られます。逮捕後は弁護士をじっかり吟味して選ぶ、ということが物理的に不可能となります。逮捕後は、ご家族など身近な方が弁護士を探し、弁護士に初回接見を依頼して、弁護士から報告や費用の説明を受けた上で、弁護士と契約するかどうかを決めます。
逮捕直後から接見できる
私選弁護人を自分で選ぶ三つ目の理由は、逮捕前から私選弁護人を選任していた場合は、逮捕直後から私選弁護人と接見できるという点です。この点は当番弁護士と同じです。逮捕直後に警察官に「(私選弁護人の)〇〇弁護士と接見したい」といえば、警察官が選任している弁護士の法律事務所へ連絡を入れてくれます。
他方で、国選弁護人は勾留後にしか選任されません。そのため、国選弁護人とは逮捕直後から接見することはできません。
熱心に刑事弁護してくれる傾向にある
私選弁護人の弁護活動も国選弁護人の活動も基本的には同じですが、弁護活動に対する熱量が異なる場合があります。
私選弁護人は、少しでも被疑者・被告人のために有利な結果を出して欲しいと依頼者から直接依頼を受けているわけです。そのため、被疑者・被告人、あるいは依頼者のことを第一に考えて、熱心に弁護活動してくれる傾向にあります。
他方で、国選弁護人は依頼者から直接依頼を受けているわけではありません。国選弁護人だと熱心に弁護活動してくれないというわけではありませんが、他の仕事で多忙の場合などは接見を後回するなど、手を抜いていると思われても仕方がないことをしがちとなります。
また、私選弁護人を選任する場合は弁護士としての経験を積んでいるか、刑事事件に精通しているかなどを見極めてから選任することができます。
他方で、国選弁護人の場合はこうした見極めをすることができず、経験の浅い、刑事事件に不慣れな弁護士が選任されてしまうことも否定はできません。そして、その結果、満足な結果を得られない可能性も出てくるでしょう。
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