- 「刑事事件を起こしてしまったけど、弁護士なしで示談交渉を自分で行うことはできるのだろうか…」
- 「弁護士なしで示談交渉をすることで何か問題は起きないだろうか…」
このようにお考えではないでしょうか。
示談とは、私人間の民事上の紛争を裁判を介さずに当事者間の合意により解決する手続きをいいます。あくまでも民事上の紛争を解決するための手続きですが、被害者と示談が成立した事実は、警察官が被疑者を逮捕するかどうかの判断、検察官が勾留決定や刑事処分(起訴または不起訴)をする際の判断、裁判官が量刑を決める際の判断で重要視されます。
そのため、刑事事件の被害者と示談を成立させることができれば、逮捕回避、不起訴の獲得、執行猶予付き判決など、加害者にとって有利な結果に結びつく可能性が高くなります。
そこで、自分自身で被害者と示談交渉をしようと考える方もいるかもしれませんが、決してお勧めできるものではありません。自分で示談交渉をして示談を成立させることは可能ですし、弁護士に依頼しないため弁護士費用を負担する必要もありません。しかし、刑事事件の示談交渉を弁護士なしですることには多くのリスクが待ち受けています。
この記事では、刑事事件の示談交渉を得意とする弁護士が、弁護士なしで示談交渉するリスクや注意点についてわかりやすく解説していきます。
刑事事件の被害者との示談交渉を検討している方は、まずはこの記事を最後まで読んでみてください。そのうえで、一度弁護士に相談してから示談交渉を依頼するかどうか考えたい場合には、全国無料相談の弁護士までお気軽にご相談ください。
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目次
弁護士なしで示談する6つのリスク
刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説で詳しく書かれていますが、刑事事件の加害者が被害者と示談を成立させることで様々なメリットを享受することが可能です。
もっとも、弁護士なしで示談をすることで、逆に不利な状況に立たされてしまう可能性も十分あります。
ここでは、弁護士なしで示談をすることによる6つのリスクについて解説していきます。
①被害者の個人情報を入手できないリスク
刑事事件で、被害者との面識がない場合には、被害者の連絡先を入手する方法がありません。
捜査機関は、二次被害の防止やプライバシー権保護の観点から、被疑者やその関係者に被害者の連絡先などの個人情報を教えることはありません。特に、痴漢や盗撮などの性犯罪・わいせつ事案については、加害者が被害者に接触できないように個人情報の漏えいについては細心の注意が払われています。
しかし、弁護士に依頼した場合には、被害者の連絡先が分かる可能性があります。
弁護人に就任した弁護士が、「被害弁償・示談のため」と示して被害者の連絡先を確認した場合には、被害者の意向を確認したうえで、被疑者やその家族には伝えないという条件で弁護士限りで教えてもらえる可能性が高まります。
このように、弁護士が介入することによってはじめて被害者と連絡する道が開かれるというケースも少なくないため、そもそも弁護士なしでは示談交渉を始めることすらできないというリスクがあります。
②被害者に示談を拒否されるリスク
刑事事件の被害者と面識があり、連絡先を知っていたとしても、弁護士を通さなければ示談交渉を含む一切の連絡を拒絶されてしまうリスクもあります。
犯罪の加害者自身が示談交渉をしたいと希望を出しても、被害者やその家族は加害者に対して怒りや恐怖心などの感情を抱いている可能性が高いでしょう。そのような場合には、直接会ったり、電話やメールでやり取りをとることを拒否されてしまうケースがあります。
また、警察が当事者間の示談交渉を取り持ってくれることもありません。
示談交渉とは、一般私人同士の法的なトラブルについて金銭的に解決するという民事手続きであって、基本的に警察などの捜査機関は民事トラブルに関しては介入してくれません。そのため、示談の話し合いについて警察が斡旋・助言をしてくれることはないのです。
これに対して、弁護士が代理人として介入した場合には、被害者が加害者と直接やり取りすることがないため、示談に応じてもらえる可能性が高まります。
③被害者に接触することで別のトラブルに発展するリスク
被害者に接触を図ることで新しい別のトラブルに発展するリスクがあります。
例えば、被害者と面識があり、連絡先がわかる場合であっても、不同意わいせつ罪や侵入盗の加害者が被害者にコンタクトをとると、更なる加害行為とみなされてしまう可能性があります。
加害者側にそのような意図が無かったとしても、「加害者から不法な圧力をかけられている」「何度も連絡が来て怖い」などと受け取られた結果、警察に通報されてしまうというケースも想定されます。
このようなケースでは、捜査機関から被害者を脅迫するおそれがある・事件を反省していないなどと誤解され、加害者側に不利な事情として逮捕・勾留、起訴につながるおそれもあります。このように、被害者への直接的な連絡は、心情的・感情的な問題があることから、新たなトラブルとなる危険性を孕んでいるのです。
上記に対して、弁護士は加害者側の味方ですが、法律の専門家として相手方の心情を侵害しない形で交渉を進めることができるため、新たなトラブルに発展するリスクを回避することができます。
④適切な内容で示談の交渉ができないリスク
弁護士を介さずに示談交渉をする場合、適切な内容で示談交渉できないおそれがあります。
示談で支払う示談金や解決金と呼ばれるもののメインは、民法上の賠償金としての性質を有しています。
賠償金の費目としては、経済的損害と精神的損害があります。経済的損害については、壊れた物の弁償や医療費、休業損害など計算することで算定できるものも多くあります。
他方で、精神的損害とは、加害行為によって被害者に生じた精神的な負担のことで、精神的損害に対して支払われる金銭は慰謝料と呼ばれます。この慰謝料については、明確な算定基準が決まっているわけではなく、過去の事例や被害の内容などによってケースバイケースで判断されることになります。
したがって、弁護士なしでは適切な示談金がわからず、被害者が要求する示談金額が不相当に過大なのかどうかも判断できません。示談を成立させたい加害者は、立場上被害者に対して強く交渉することが難しいため、示談交渉では被害者の意向が強く反映された結果、著しく被害者に有利な示談内容となってしまうおそれもあるのです。
これに対して、刑事事件の経験が豊富な弁護士であれば、過去の同種事例や裁判例などから、示談金の適切な金額の相場を示すことができます。そのため、事案に応じた示談金を相手に示して交渉することができ、また相手が提示してくる示談金の妥当性についても判断することができます。
⑤法的に有効な示談書を作成できないリスク
弁護士なしで示談をすることで、法的に有効な示談書を作成できないリスクがあります。
被害者との示談は意思の合致があった場合には口頭でも成立しますが、それでは、示談内容を客観的に証明することができません。示談の成立を検察官や裁判官に提示して有利な事情として考慮してもらうためには、当事者双方が署名・押印した示談書を作成する必要があります。
示談書に記載すべき内容としては、「宥恕(しゅうじょ)条項」と「清算(せいさん)条項」があります。
「宥恕条項」とは、示談成立によって被害者が加害者を許すという内容の条項で、「寛大な処分を希望します」「刑事処分は望みません」などの文書を記載することで、被害感情・処罰感情が減少したことを示すことができます。
そのため、示談書に宥恕条項がない場合には、たとえ示談金を支払ったとしても、被害弁償を受けたという事実にとどまり、被害者の処罰感情が減少したということまでは示せません。つまり、示談書に宥恕条項を盛り込むことができなかった場合には、宥恕条項がある場合と比べて重い刑事処分を受ける可能性が高まるということです。
「清算条項」とは、「被害者と加害者の間には、本示談書に記載した事項以外には、何らの債権債務がないことを相互に確認する」といった内容の条項です。清算条項を記載することで当事者間の民事紛争は解決済みで、加害者はこれ以上何の民事責任を負わないということを明らかにすることができます。
そのため、清算条項がない場合には、せっかく示談を成立させて示談金を支払ったとしても、被害者側から「受け取った示談金は賠償金の一部である」と主張されて紛争が蒸し返されるおそれがあるのです。
一般の方が作成した示談書では、このような重要な条項が抜け落ちていることも少なくありませんし、加害者が直接交渉した場合には「宥恕条項」を示談書に盛り込むことに難色を示す被害者も多いです。
他方で、刑事事件に精通した弁護士に依頼すれば法的に不備のない示談書を作成してくれます。また、刑事事件を得意とする弁護士であれば、被害者の心情に配慮した示談交渉が可能であるため、示談書に宥恕条項を入れてもらえるよう被害者を説得できる可能性も高くなります。
⑥示談が不成立になった場合の対処ができないリスク
弁護士を立てずに示談交渉を行った場合には、示談交渉が失敗した後の適切なフォローができないリスクがあります。
例えば、被害者の要求する示談金が著しく過大であることが原因で示談ができなかった場合には、そのような経過や加害者側が示した示談内容などを示して検察官・裁判官に報告する必要があります。加害者側が適正な示談金を提示して交渉した事情や、被害者の不当な要求が示談成立を妨げたという事情は、加害者側に有利な事情として考慮される可能性があります。
また、被害者が頑なに示談金の受け取りを拒否する場合には、贖罪寄付や供託などによって、加害者側の反省の意思を明らかにすることもできます。
弁護士に示談交渉を依頼しておけば、上記のような示談不成立の場合においても、適切なフォローを行ってもらうことができます。
弁護士に示談交渉を依頼する場合の注意点
費用がかかる
弁護士に示談交渉を依頼した場合には、弁護士費用が発生します。弁護士費用の費目には次のようなものがあります。
- 相談料:弁護士に事件の相談を行う際に発生する費用です。
- 着手金:弁護士に事件の依頼をする際にかかる費用で、結果に関係なく支払う必要があります。
- 報酬金:成果に対して支払う費用です。
- 実費:交通費や郵券など業務の際に実際にかかった費用です。
- 日当:被疑者との接見や出張・裁判期日への出廷など弁護士が外出業務をした場合に支払う費用です。
ただし、具体的な弁護士費用の相場については、まだ逮捕されていないケースとすでに逮捕されてしまっているケースで異なってくる可能性が高いです。
まだ逮捕されていないケースでは、示談交渉のみで事件を解決できる可能性もあるため、弁護士費用は着手金20万円~50万円、報酬金が30万円~50万円程度が相場と言えるでしょう。刑事事件の示談交渉における報酬金とは、
- 示談が成立したことで刑事事件化を防げた場合
- 示談成立により逮捕を回避できた場合
- 刑事事件化したものの不起訴を獲得できた場合
などに発生します。
なお、当然、弁護士に支払う金銭以外に、被害者に支払う示談金も用意する必要があります。
これに対して、すでに逮捕されてしまったケースでは、被害者との示談交渉に加えて、刑事事件の弁護活動も依頼する必要があります。そのため、着手金・報酬金がそれぞれ30万円~100万円程度となるのが一般的です。さらに、刑事手続きが進み被疑者が起訴された場合には、訴訟対応を依頼する必要があるため、さらに弁護士費用が増えてしまう可能性もあります。
ただし、すでに逮捕されている場合であっても、早期釈放・不起訴を獲得できた場合には、被疑者にとってもメリットが大きくなることは言うまでもありません。
必ずしも示談が成立するとは限らない
弁護士に示談交渉を依頼したとしても必ずしも示談が成立するとは限りません。
示談が成立しなかった場合であっても、着手金は返金されません。
もっとも、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼することで、被害者との示談が成立する可能性は高まります。さらに、示談が不成立になったとしても、逮捕回避、早期釈放、不起訴獲得などに向けた弁護活動を依頼することができます。
したがって、刑事事件について豊富な実績と幅広い専門知識を有している弁護士を選んで、事件を依頼することが何よりも重要です。
まとめ
この記事では、弁護士なしで示談交渉を行うことのリスクや弁護士費用などについて解説してきました。
弁護士に依頼しない場合には、示談が成立しないおそれが高まります。示談に失敗した場合には、逮捕・起訴され、重い刑事処分が科されるおそれもあります。
刑事事件を起こして、被害者との示談交渉を検討されている場合には、速やかに刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。
当事務所では、刑事事件の示談交渉を得意としており多数の実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、示談成立による逮捕回避、不起訴の獲得をお望みの方は、まずは当事務所の弁護士までご相談ください。
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