- 「逮捕されたらどのような弁護士を呼べるのだろう…」
- 「逮捕後に弁護士を呼ぶタイミング、費用についても知りたい…」
このようにお考えではないでしょうか。
結論から言いますと、逮捕後に呼べる弁護士には、当番弁護士・国選弁護人・私選弁護士の3種類があります。当番弁護士は逮捕直後から、国選弁護人は逮捕に引き続き勾留請求された後から、私選弁護人はどのタイミングからでも呼ぶことができます。当番弁護士と国選弁護人は費用がかかりませんが、私選弁護人は費用がかかります。法律事務所により異なりますが、相場としては、着手金と報酬金を合わせておおよそ60万円~200万円程度となります。
この記事では、上記内容に加え、
- 逮捕後に呼べる当番弁護士・国選弁護人・私選弁護人とはなにか
- 逮捕後の弁護士の呼び方
などについても、刑事事件に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
なお、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には、全国無料相談の法律事務所までご相談ください。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|
目次
逮捕後すぐのタイミングで弁護士を呼ぶべき理由
逮捕後はいかに早く弁護士に弁護活動を開始してもらうかが重要となります。その理由について以下で解説します。
早期に身体拘束から解放される可能性があるから
警察に逮捕された場合には、弁解の機会が与えられ取り調べ調書が作成されます。そして留置の必要があると判断された場合には、身体拘束から「48時間以内」に検察官に送致されることになります。
検察官が取り調べを行った結果、さらなる留置の必要があると考えた場合には、被疑者の身柄を受け取った時から「24時間以内」かつ身体拘束時から「72時間以内」に裁判所に勾留を請求することになります。
そして裁判官により勾留決定がなされた場合には、最長20日の身体拘束が継続するおそれがあります。
ここで、なぜ「勾留」の前に短期の「逮捕」が先行しているのかというと、捜査の初期段階は捜査の進展によって事実が流動的であるからです。つまり、よくよく話を聞いてみると犯罪事実はなかった・これ以上身体拘束を継続する必要がないと捜査機関が判断して勾留まで至らずに釈放される可能性を残しているのです。
したがって、逮捕された直後に被疑者に有利な事実や証拠を提出できれば勾留までいかずに早期に身体拘束から解放される可能性があるのです。このような弁護活動を適切に、かつ迅速に行ってもらうためには、逮捕直後に弁護士に依頼して行動してもらう必要性が高いでしょう。
弁護士とは自由な面会が認められているから
身体拘束されても家族や知人と「接見」して助けを求めたらいい、と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
この「接見」とは、身体拘束中の被疑者が外部者と直接面会することをさいい、書類や物の授受を含めた外部との連絡手段全般のことを「接見交通」と呼ばれます。
この接見交通に関しては、検察官は勾留されている被疑者と弁護人以外の者との接見禁止を請求することができる旨が規定されています(刑事訴訟法第81条)。そのため、身体拘束を受けている場合には家族や友人・知人とは接見ができない可能性があるのです。
これに対して、「身体拘束を受けている・・・被疑者は、弁護人・・・と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる」として、権利として弁護人との接見交通権が認められています(刑事訴訟法39条1項)。
したがって、被疑者の権利を保護・実現するためには、弁護士と接見して本人の言い分や弁護方針を固める必要があるのです。
捜査機関や裁判所の判断に適切に不服申し立てを行うことができるから
裁判官の勾留決定には、「準抗告」という不服申し立てを行うことができます(刑事訴訟法第429条)。裁判官の「勾留に対する裁判」に対する不服がある場合には、裁判所に取り消し・変更を請求することができます。
さらに勾留された被告人やその弁護人は、裁判所に勾留理由の開示を請求することもできます(同法第82条参照)。
また、弁護人には証拠保全請求をすることもできます。この証拠保全請求とは、「あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第1回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求すること」です(同法第179条参照)。
このように刑事弁護人を選任することで、捜査権の濫用をけん制し裁判所に適切に不服申し立てなどの請求をしていくことができるのです。
逮捕後に弁護士を呼ぶメリット
高圧的な取り調べに対して適切に対応することができる
逮捕後にすぐに弁護人を選任することで、違法・不当な取り調べを回避できる可能性があります。
前提として被疑者には黙秘権が保障されており、自己の意思に反して供述しないことができます(刑事訴訟法第198条参照)。
被疑者に取り調べに応じる義務があるか否かについては解釈に争いがありますが、身体拘束されている被疑者についても黙秘権は保障されていること、身体拘束の目的は、逃亡・罪証隠滅の防止であり供述証拠の収集・保全ではないことから、弁護人は行き過ぎた取り調べには適切に抗議していくことになります。
例えば、管轄する検察庁や警察署に弁護人名義で抗議文を送付して、権利侵害的な取り調べをやめるように求めていくケースもあります。
なぜ最初の取り調べの対応が大事なのかというと、捜査の初期段階で不利な調書をとられてしまった場合には事後的に真相を語ったとしても信用性が低いと一蹴されてしまうおそれがあるからです。
そして逮捕されてしまった場合には、混乱やプレッシャーの中で、捜査機関が描いた筋書きどおりになんでも認めてしまう方もいますので、弁護士をつけて適切にアドバイスを受け対応する必要があるのです。
解雇や退学させられることを回避できる可能性がある
逮捕されてしまうと、最長で23日間にわたる身体拘束が継続する可能性もあります。公訴が提起された場合にはさらに身体拘束が継続してしまいます。
そのため逮捕・勾留された場合には、弁護士以外のものとは自由に接触・連絡することができませんので、無断欠勤や無断欠席の状態に陥ってしまうおそれがあるのです。
弁護士と接見した場合には、弁護方針について打合せをするだけではなく、手続きの間に解雇・退学にならないように対処しておくことも被疑者の私生活を守るという観点では重要です。
具体的には、弁護士に家族や連絡が必要な人物に伝言をお願いし、仕事や学校をしばらく休む必要がある旨の連絡を入れてもらうことになるでしょう。このように対応しておくことで、在宅事件として処理されたり不起訴処分となったりした場合には、これまで通り日常生活に復帰することも期待できます。
被害者と示談交渉を進めてもらえる
また早期に弁護士を選任して弁護活動を進めてもらうことで、被害者との間の示談が成立する可能性が高まります。
刑事事件の場合、検察官が起訴・不起訴の判断をするよりも前の時点で示談を成立させておくことが非常に重要となります。
示談が成立した場合には、被疑者が被害者に対して謝罪し示談金を支払うことを条件に、被害届や告訴の取り下げに同意をしてくれるケースがあります。親告罪の場合には、被疑者の告訴がなければ公訴を提起することがありませんので、起訴されることはありません。不起訴処分となった場合には刑事裁判に進むことがないため前科が残ることを回避できます。
これに対して親告罪以外の犯罪については、被害者の告訴がない場合であっても検察官は公訴を提起することができます。
しかし、被害者と示談が成立した場合には、一定程度被害の回復が実現され、犯罪の違法性が減少したと判断される可能性もあります。
したがって、示談が成立した場合には、初犯や行為の悪質性、結果の重大性などに照らして不起訴相当であるとして不起訴処分になる可能性があるのです。さらに公訴が提起され刑事裁判手続に移行したとしても、被害者との示談は被告人にとって有利な事情として考慮され、減刑や執行猶予付きの判決を得られる可能性も高まります。
逮捕後に呼べる当番弁護士・国選弁護人・私選弁護人について
当番弁護士
逮捕直後に原則1回、無料で呼ぶことができるのが「当番弁護士」です。
「当番弁護士制度」は、弁護士を通じた被疑者の防御権を保障するために、日本弁護士連合会(日弁連)により提唱・設置されている制度です。逮捕された人が警察を通じて、または家族や知人などが所管の弁護士会へ依頼することによって、当番弁護士による初回の接見を無料で受けることができます。
当番弁護士に対しては、防御の手段等のアドバイスや法律相談を受けたり、弁護の依頼を行うことができますが、弁護士会により派遣されるため弁護士を選ぶことはできません。
このような当番弁護士制度が用意されているのは、次に説明する国選弁護制度が起訴前勾留や起訴後の期間にしか対応していないため、逮捕~勾留までの期間については、被疑者が自分の権利を正当に主張することができない可能性があるためです。
このように逮捕直後の期間は、刑事手続きの流れや自分自身の権利を十分に理解することができないまま、不本意な供述調書が作成され署名させられてしまうというリスクが存在しています。
このような被疑者の不利になる事態を回避し、被疑者の権利を守るために当番弁護士制度が用意されているのです。
当番弁護士についてより詳しく知りたい方は、当番弁護士とはどんな制度?費用や呼び方を分かりやすく解説をご覧になってください。
国選弁護人
「国選弁護人」とは、被疑者・被告人が経済的な困窮などの理由で私選弁護人を選任できない場合に、国費で裁判所が選任する弁護人のことをいいます。
国選弁護人は、起訴前勾留の「被疑者国選弁護制度」と、起訴後の「被告人国選弁護制度」の2つにわけることができます。
被疑者に対して勾留状が発せられた場合、裁判官に対し、国選弁護人の選任の請求をすることができますが、対象は勾留による身体拘束を受けている被疑者に限られています。
したがって、前述のように勾留以前の逮捕により身体拘束を受けている状態の被疑者は対象になりません(この場合、当番弁護士制度の対象になります)。
国選弁護人の費用については訴訟費用に該当しますが、貧困などの理由により被告人に資力がないことが明白である場合には、原則として負担させられることはありません。
国選弁護人についてより詳しく知りたい方は、国選弁護人とは|私選弁護人との違いは?依頼費用は全額免除?をご覧になってください。
私選弁護人
私選弁護人は、被疑者やその親族によって選ぶ弁護士のことをさします。逮捕されて被疑者が留置場にいる場合は、ご家族等の親族が私選弁護人を選ぶことになるでしょう。
私選弁護人は、当番弁護士や国選弁護人とは異なり、個人が弁護士・法律事務所と契約して選任することになりますので、弁護士費用は自己負担となります。
しかし私選弁護人の場合には、国選弁護制度と異なり、選任のタイミングには制限がありません。
そのため、逮捕された直後に私選弁護人として選任することはもちろん、事件を起こしてしまい警察が具体的な捜査に動き出すよりも以前に選任して、事件解決に向けて動いてもらうことも可能になります。
さらに私選弁護人の場合には、国選弁護人・当番弁護士と異なり、選任したい弁護士を依頼人が自由に選ぶことができます。
したがって、刑事事件の弁護実績が豊富な弁護士・法律事務所にお願いして、私選弁護人として就任してもらうことも可能になるのです。
逮捕されたら当番・私選・国選のどの弁護士を選べばいい?
当番弁護士を選ぶべきケース
当番弁護士を呼ぶべきケースは、逮捕された直後の初回接見の段階です。
逮捕された場合には、捜査機関は3日以内に勾留請求をするか否かを判断します。刑事手続きは厳格な時間的制約の中で進むことになるため、逮捕直後の初回接見によって、今後の手続きの流れや取り調べ対応などのアドバイスを受けることは非常に重要です。
したがって、逮捕直後にすぐに対応したいこと(家族、職場・学校などに連絡して欲しいなど)がある場合や、今後の防御の手段やアドバイスを受けたいケースでは当番弁護士を呼ぶことになります。
国選弁護人を選ぶべきケース
経済的な事情から弁護士費用の負担に不安がある場合には、国選弁護人を選任すべきでしょう。
当番弁護士と同じく原則として弁護士費用を負担する必要はありませんが、当番弁護士と異なり、勾留以降の継続的な弁護活動を行ってもらうことができます。
ただし、国選弁護人は機械的に割り振られるため、必ずしも刑事弁護の経験が豊富な弁護士が選任されるとは限りません。さらに、勾留より以前の段階で国選弁護人を選任することもできません。
したがって、逮捕されることを回避したい・逮捕すぐに勾留決定を防ぎたいというような場合には私選弁護人を選任する方がよいでしょう。
私選弁護人を選ぶべきケース
私選弁護人を選任した場合、弁護士費用は自己負担となってしまいます。
そのため、弁護士の報酬・費用をご自身で支払える場合には、私選弁護人を選任することがご本人の希望に沿うケースがあります。
私選弁護人の場合には、どれだけ早いタイミングであっても依頼でき、さらに弁護士を依頼人自身で選べるため委任契約に応じてきめ細かいサポートを受けられる可能性があります。
具体的には、刑事事件に注力している弁護士事務所に依頼したい場合、依頼人の希望どおりに弁護活動を行ってもらいたい場合、自分と相性がよく信頼できる弁護士かどうかを確かめてから依頼したいといような場合には、私選弁護人を選任すべきでしょう。
まだ逮捕されていないが今後逮捕されるかもしれないと不安な方は、当番弁護士制度も国選弁護人制度も利用することができません。そこで私選弁護人を選任し、警察が具体的に動き出す前に問題解決のために動いてもらえたことで、事件化には至らず終わせられたというケースも少なくありません。
逮捕後の弁護士の呼び方は?
当番弁護士の呼び方
当番弁護士を呼ぶためには、捜査機関に対して当番弁護士を呼びたい旨を告げる必要があります。警察が所管の弁護士会に連絡することで名簿に記載されている弁護士が派遣されるという流れになります。また当番弁護士は逮捕された本人だけでなく家族も依頼することができます。
家族が当番弁護⼠の派遣を依頼する場合は、逮捕された場所を管轄している弁護⼠会に電話する必要があります。
国選弁護人の呼び方
国選弁護人の選任については、「国選弁護人の選任を希望する」と捜査機関に申告すると、国選弁護人選任請求書と資力申告書の必要事項への記入を求められます。これらの書類を警察は裁判所にFAXします。
そして裁判所は法テラスに対し、国選弁護人の候補を指名して通知するよう求め、法テラスは国選弁護人契約をしている弁護士の中から、国選弁護人の候補を指名して裁判所に通知します。裁判所は、この指名された候補者を国選弁護人に選任することになります。
このような一連の手続きによって国選弁護人は選任されることになるのです。
私選弁護人の呼び方
逮捕される前から私選弁護人に委任しており、逮捕された段階で私選弁護人がついている場合には、警察官に「〇〇法律事務所の〇〇弁護士に電話してください」と言えばよいだけです。
逮捕前に私選弁護人に委任していない場合には、逮捕された方のご家族の方から依頼をうけて私選弁護人を呼ぶケースも多いです。そのような場合には、以下のような流れで弁護士を呼ぶことになります。
- 家族が依頼したい弁護士事務所に予約して法律相談をする
- 家族が弁護士に依頼する
- 弁護士が被疑者との接見を行う
私選弁護人の選任手続きについて被疑者の場合には、被疑者と弁護士が連署した「弁護人選任届」を当該被疑事件を取り扱う検察官または司法警察員に提出する必要があります。「弁護人選任届」とは、弁護人として特定の事件について被疑者・被告人から弁護人として選任を受けた旨の届け出のことをいいます。
被告人の場合には、弁護人選任届を裁判所に提出することになります。
逮捕された場合の弁護士費用
当番弁護士・国選弁護人の費用
前述のとおり当番弁護士による接見は無料です。
当番弁護士の派遣は弁護士会による自主的な活動であり、担当弁護士の報酬や経費については、弁護士会の予算から支出されています。
また、国選弁護人についても原則として費用がかからないことは前述した通りです。
もっとも、国選弁護士人を選任するには、「資力(現金、預金など)が50万円未満であること」といった条件をクリアする必要があります。また、必ずしも国選弁護人の費用が免除されるものではなく、執行猶予付き判決で釈放された場合などは通常の社会生活に復帰して返済することも可能なため、裁判官の裁量によって支払いを命じられる場合があります。
なお、ごくまれに判決言い渡し時に裁判所から訴訟費用の負担を命じられる場合もあります。具体的にそのような場合とは,被告人に訴訟費用を負担することができるだけの支払い能力があることが裁判上明らになったような場合です。このような場合には貧困等を理由とする国選弁護人制度の趣旨に反しますので被告人に費用負担が命じられるのです。
私選弁護士の費用
私選弁護人に依頼するためには費用体系は、事件の内容や依頼する弁護士・法律事務所によって異なります。
一般的に私選弁護人の弁護士費用の相場は、被疑者が逮捕されたケースで「60万円〜200万円(着手金+成功報酬)」程度ですが、事件の難易度に応じて弁護士費用も高額になる可能性があります。
また、着手金や成功報酬の他、
- 相談費用(無料~1時間1万円。ただし依頼後は無料になる事務所がほとんどです)
- 初回接見費用3万円~5万円
- 日当(被害者との事務所外での示談交渉や裁判活動の費用。1万円~5万円)
- 交通費などの実費
がかかる点にも注意が必要です。
私選弁護人に依頼したいができるだけ費用は抑えたいという方は、まずは複数の法律事務所に費用の見積書を出してもらい、それぞれの費用を比較して実際に依頼する弁護士を選ぶようにしましょう。
逮捕でお困りの方は弁護士法人若井綜合法律事務所に相談を
ご家族が逮捕されてしまってお困りの方はもちろん、罪を犯してしまい逮捕されるおそれのある方も、弁護士法人若井綜合法律事務所までご相談ください。
逮捕=刑務所に収監される、といったイメージをお持ちの方も多いですが、刑事事件に精通した弁護士による適切な弁護活動により、早期釈放、不起訴処分の獲得も望めます。
不起訴処分となれば刑事裁判にかけられることもありませんので前科もつきません。仮に起訴されたとしても執行猶予付き判決を得れば、刑務所に収監されずに日常生活に戻ることもできます。
逮捕されると、厳しい取り調べによる恐怖や緊張、先行きの見えない不安から投げやりになってしまい、捜査機関の思うがままに手続きを進められてしまうこともあります。
しかし決してあきらめないで下さい。あなたの権利を保護するために、当事務所の弁護士が盾となって全力であなたを守ります。逮捕でお困りの方は、まずは当事務所までお気軽にご相談ください。お力になれると思います。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|