「重婚罪って普段聞きなれないけどどんな犯罪だろう…」
この記事では、刑事事件に強い弁護士がこの疑問を解消していきます。
具体的には、
- 重婚罪とは
- 重婚罪の構成要件
- 重婚罪の刑罰・罰金刑の有無
- 重婚罪の保護法益
- 重婚罪になるケース
- 事実婚(内縁)でも罪に問われるのか
などについてわかりやすく解説していきます。
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目次
重婚罪とは
「重婚罪」とは、配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときに成立する犯罪です(刑法第184条参照)。
(重婚)
第百八十四条 配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。刑法 | e-Gov法令検索
重婚罪の構成要件
「配偶者のある者」
「配偶者のある者」が、重婚罪の主体となります。
重婚罪は法律上の婚姻制度を保護するために規定されている刑法犯です。
したがって重婚罪が規定している「配偶者のある者」とは、適式に婚姻届けを提出し戸籍上の配偶者が存在している者のことを指します。
「重ねて婚姻をしたとき」
「重ねて婚姻を」することが、重婚罪の犯罪行為に該当します。
ここでいう「婚姻」とは、適式に婚姻届けを提出し戸籍上記載されている法律婚のことを指します。
つまり既に法律婚関係にある人物が、事後的に別の婚姻届けを提出して受理されることで重婚罪が成立することになります。
重婚罪については未遂犯を処罰する規定がありません。そのため重婚にあたる婚姻届けを提出したものの市区町村役場の職員に発覚して阻止されたという場合や、既婚者が浮気相手と法律婚の約束をしたというだけでは犯罪は成立しないことになります。
「その相手方となって婚姻をした者」
刑法には重婚罪について「その相手方となって婚姻をした者も、同様とする」と規定されています(刑法第184条参照)。
既婚者の相手方として重婚をした者も重婚罪の主体となり得ます。しかし、相手方に法律婚上の配偶者がいることを知らなかった場合には、犯罪の故意を欠くことになりますので重婚罪は成立しません。
重婚罪の罰則は?罰金刑はある?
重婚罪が成立した場合には、「2年以下の懲役」が科されます(刑法第184条参照)。
旧刑法では罰金刑もありましたが、現行刑法では法定刑としては有期懲役のみが規定されており、罰金刑はありません。
そのため法律上有期懲役を減軽すべき事由がある場合にも、長期及び短期の2分の1を減ずることになるため「6か月以上1年以下」の懲役とはなりますが、罰金刑が科されることはありません(刑法第68条3号参照)。
重婚罪の保護法益は?なぜこの規定があるの?
重婚が犯罪として規定されている理由は、一夫一婦制という婚姻制度を維持するためです。
制度を保護することが重婚罪が規定されている趣旨であり、円満な夫婦関係を維持するために規定されている犯罪ではありません。
そのため重婚または重婚的内縁によって婚姻関係を破壊されたと主張する者は、民法上の損害賠償請求・離婚請求などによって解決を図ることになります。
さらに民法においても「配偶者のある者は、重ねて婚姻することができない」として重婚を禁じています(民法第732条参照)。
そして婚姻届けが民法の規定に違反してる場合には受理することができず、民法に違反した婚姻は各当事者・親族・検察官が重婚の取り消しを家庭裁判所に請求することができます(民法第740条、744条1項参照)。
戸籍を確認することで法律婚関係にあるかどうかはすぐに確認することができますので、重婚の状態が発生するというのは非常にレアケースであると考えられます。
重婚罪の時効は?
重婚罪の公訴時効は「3年」です。
「公訴時効」とは、時効が完成することで公訴を提起しても免訴判決が言い渡されるという制度です(刑事訴訟法第337条4号参照)。この公訴時効の時効期間については法定刑の上限を基準に決定されています。
重婚罪の法定刑は、「2年以下の懲役」です(刑法第184条参照)。そしてこれは「人を死亡させた罪であって禁固以上の刑に当たるもの以外の罪」であり、「長期5年未満の懲役…にあたる罪」であるため、公訴時効は「3年」となります(刑事訴訟法第250条2項6号参照)。
重婚罪が適用されるケース
偽造した離婚届を提出し再婚するケース
偽造した離婚届を提出して再婚の届出をするケースは重婚罪が成立する可能性があります。
妻との協議離婚届を偽造して市町村役場に提出し、戸籍簿原本にその旨不実の記載をしたうえで、女性との婚姻届を提出してその旨戸籍簿原本に記載させたときは、重婚罪が成立すると判断した裁判例があります(名古屋高等裁判所昭和36年11月8日判決)。
同判決の中では、前婚の解消が当事者の一方の真意に合致しないものである以上、仮にそれが文書偽造などの犯罪的手段によって戸籍上の婚姻記載が抹消されたとしても、そのような婚姻の解消は無効であるため、適法に解消されない限りは法律婚として有効に存続していると述べています。
このような前提から、重ねて婚姻関係を成立させると2個の法律婚が重複して成立することになるため法律が定める一夫一婦婚制度が破壊されることになると判示しています。
失踪者の生存を知りながら失踪宣告後に再婚するケース
失踪宣告を受けた者は、以下のように死亡したものとみなされます。
- 不在者の生死が7年間明らかでないとき:期間が満了した時に死亡したものとみなす(民法第30条1項、31条参照)
- 死亡の原因となる危難に遭遇した者の生死が危難が去った後1年間不明なとき:危難が去った時に死亡したものとみなす(同法30条2項、31条参照)
ただし、失踪者が生存する場合や異なるときに死亡したことが明らかになった場合には請求により家庭裁判所が失踪宣告を取り消します(同法第32条1項前段参照)。
失踪宣告の取り消しの効果については、「失踪の宣告後その取り消しの前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない」とされています(同条項後段参照)。
したがって、後婚の当事者の一方が失踪者の生存を知っていた場合には、失踪宣告時の婚姻関係が復活することになるため重婚罪が成立する可能性があります。
事実婚でも重婚になる?
重婚罪は前婚も後婚もいずれも法律婚でなければ要件を満たしません。
そのため既婚者が不倫相手と事実婚を形成している場合(これを「重婚的内縁」といいます)であっても重婚罪が成立するわけではありません。
このような場合には、刑事手続きではなく民事手続きにより解決を図ることになりますので、弁護士に相談するのがおすすめです。
なお、中国では重婚はもちろん、重婚的内縁も法律で禁止されています。また、アメリカでも重婚は禁止されています。ただし、海外では一夫多妻制を採用している国もあり、とりわけイスラム教徒が多い国では重婚が認められている傾向が強いです。
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