
協議離婚できなかった場合に利用する裁判手続きが離婚調停です。
では、離婚調停が不成立となった場合のその後はどうなるのでしょうか?
離婚の話し合いを進めていく上では、離婚調停が不成立となった後のことも考えておかなければならない場合もでてきます。
そこでこの記事では、離婚調停の不成立や離婚調停が不成立となった後の進め方などについて、離婚に詳しい弁護士が詳しく解説してまいります。
ぜひ最後までご一読いただき、離婚調停の不成立について参考にしていただけると幸いです。
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目次
①離婚調停(夫婦関係調整調停(離婚))の「不成立」とは?
離婚調停(夫婦関係調整調停(離婚)(※))の不成立とは、調停委員会(※)が「当事者間に合意が成立する見込みがない」又は「成立した合意が相当でない」と認めた場合に、調停が成立しないものとして、手続きを終了させることをいいます。
なお、相場をはるかに超えた金銭の支払いを要求するなど「合意が相当でない」場合は、あらかじめ調停委員から修正案が提示されるでしょうし、そもそも夫婦で合意しない場合が多いです。
したがって、離婚調停が不成立となるのは、多くの場合、調停委員会に「当事者間に合意が成立する見込みがない」と判断された場合です。
具体的には、離婚調停において相手方が離婚に合意しない場合や、離婚の条件(親権、財産分与、養育費、面会交流、慰謝料)を巡って合意できない場合、或いは、そもそも相手方が調停期日に出席しないといった場合です。
※夫婦関係調整調停(離婚)
離婚前の離婚調停のこと。離婚するかどうかはもちろん、どんな条件で離婚するかについても話し合うことができます。
※調停委員会
裁判官1人及び調停委員2人以上で構成される組織。
②不成立以外の離婚調停の終了
不成立以外でも離婚調停が終了することがあります。
それが「申立ての取下げによる終了」、「調停をしない場合の終了」、「当事者死亡による終了」の3種類です。
申立ての取り下げによる終了
申立ての取り下げとは、離婚調停を申立てた申立人が申立てを取り下げることです。
手続きは「調停申立て取下書」を申立て先の家庭裁判所へ提出するだけで済みます。
取り下げるにあたって相手方の同意は必要ありません。
「これ以上、話し合いを続けても埒が明かない」、「相手方が調停期日に出席しない」などという他、「調停外で合意が成立した」という場合にも申立てを取り下げます。
申立てを取り下げて離婚調停が終了した場合でも、基本的には調停前置(※)したことになり、その後、離婚訴訟を提起することができます。
調停をしない場合の終了
調停をしない場合の終了とは、たとえば、相手方が精神障害者、薬物乱用者等で調停期日における冷静な受け答えが期待できないなど、調停委員会が「性質上調停を行うのに適当でない」と認めた場合、又は調停不成立となった後ただちに離婚調停が申立てるなど「当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをした」と認めた場合に、調停を終了させることです。
当事者死亡による終了
申立人又は相手方が申立て後に死亡した場合は、調停を継続する意味が失われますから、調停は当然に終了します。
※調停前置(主義)
離婚訴訟を提起するには、必ず離婚調停を経なければならないというもの。
原則、離婚調停を経ずして、いきなり離婚訴訟を提起することはできません。
もっとも、裁判所が離婚調停を行うことが相当でないと認めるときは、例外的に、離婚訴訟の提起を受け付けてもらえることがあります。
③離婚調停が「不成立」となるまでの流れ
すでに述べたとおり、離婚調停を不成立と決めるのは調停委員会です。
まずは、調停委員会で裁判官、調停委員が協議し、離婚調停を不成立とするかどうかの決議を行います。
ここで過半数の者が、離婚調停を不成立とすることに同意した場合に、離婚調停を不成立とすることが調停委員会の意見となります。
なお、調停委員が奇数名おり、可否同数となった場合は、裁判官の意見が調停委員会の意見となります。
申立人、相手方が調停期日に出席する場合は、基本的に申立人、相手方、裁判官、調停委員、裁判所書記官が同席の上、裁判官より離婚調停を不成立とした旨の説明がなされます。
また、申立人、相手方を同席させることが適当でない場合は、相互に、あるいは別々の部屋で、離婚調停を不成立とした旨の説明を受けます。
申立人、相手方が調停の継続を望んだとしても、調停委員会の判断で離婚調停を不成立とされてしまうこともあります。
また、離婚調停を不成立とした調停委員会の判断に対して不服を申し立てることはできません。
④離婚調停が不成立となった後はどうなる?
離婚調停が不成立となった後は、夫婦の一方が何もアクションを起こさなければ現状のまま(離婚は成立しないまま)です。
稀に、離婚調停が不成立となった場合に「調停に代わる審判」がなされることがあります。
調停に代わる審判とは、たとえば離婚することや離婚の条件について大筋で合意できているという場合に、残りの細かい条件については裁判官が一方的に条件を決めてしまう、という手続きのことです。
調停に代わる審判によって成立した離婚を審判離婚といい、離婚調停によって成立した離婚を離婚調停といいます。
もっとも、調停に代わる審判に対しては、夫婦の一方が、審判を告知された日から2週間以内に異議を申し立てることができます。
そして、異議を申し立てられると調停に代わる審判の効力が失われてしまいます。
このように、調停に代わる審判の効力は非常に弱いものです。
また、そもそも離婚の条件等につき合意できなかったため調停離婚が不成立となったわけですから、調停に代わる審判がなされても、夫婦の一方から異議の申し立てがなされる可能性が高いです。
そのため、冒頭でも述べましたとおり、実務では、離婚調停が不成立となった後に調停に代わる審判がなされることは稀です。
⑤離婚調停が不成立となった後の進め方
離婚調停が不成立となった後の進め方は、基本的に
- 夫婦間で再度話し合う
- 離婚訴訟を提起する
の2つです。
夫婦間で再度話し合う
家庭裁判所を通さない話し合い(裁判外での話し合い)は、実現可能かどうかは別として、いつでも可能です。
離婚調停を申し立てる前はもちろん、調停中でも可能ですし、離婚調停が不成立となった後でも可能です。
もっとも、離婚調停が不成立となった後の話し合いは現実的には難しいことが多いことはお分かりいただけるかと思います。
話し合いが実現可能といえるのは、たとえば、離婚調停が不成立となった後に、夫婦の双方が弁護士を付けたなどごく限られた場合ではないですし、この場合でも、最終的に話がまとまるかどうかは不透明です。
話し合いでは離婚調停と同様、譲歩する姿勢を見せなければ結局のところ話はまとまりません。始めから譲歩しない姿勢を取る予定であれば、以下の離婚裁判を提起することを選択すべきでしょう。
また、仮に、話がまとまった場合でも、離婚調停が成立した際に作成される「調停調書」のような判決と同様の強制力のある書類は当然には作成されないことにも注意が必要です。
裁判外で話がまとまった場合は「合意書」が作成されますが、合意書はそれだけでは相手方の財産を差し押さえる強制力を有しません。
合意書に強制力を付与するには、合意書を強制執行認諾文言付き公正証書とする必要がありますが、その場合は相手方の承諾が必要ですし、公証役場に行く手間や時間・費用もかかります。
こうしたことを考えると、離婚調停が不成立後に話をまとめるのであれば、はじめから離婚調停で歩み寄りを見せて離婚調停を成立させ、調停調書を作成した方が精神的、経済的な負担の軽減という観点からもよいと考えます。
離婚訴訟を提起する
離婚調停が不成立となった後、話し合いができない場合は離婚訴訟を提起します。
離婚調停で、相手方と合意する見込みがなく、これ以上離婚調停を続けても無駄と判断した場合は、状況をみて申立てを取り下げて直ちに離婚訴訟を提起する準備に入ることも一つの方法です。
また、家庭裁判所に離婚訴訟を提起したい旨を伝えれば、家庭裁判所側から離婚調停を不成立にしてもらえることも多いです。
話し合いよりも離婚訴訟を提起することの方が、離婚調停が不成立となった後の次のステップとしては最も現実的で、解決できる可能性が高いといえます。
離婚訴訟は離婚調停と異なり、訴訟が不成立となることはなく、裁判所が何らかの形で解決案を提示します。
提示の仕方は判決と和解の2通りがありますが、多くの場合、まずは和解案を提示されます。
和解は夫婦間の合意ですので、離婚調停と変わりがないのではと思われる方がいるかもしれません。
しかし、先ほども述べましたとおり、和解しなければ最終的に判決という形で結論が示されるため、合意に達しやすいという特徴があります。
また、財産分与や面会交流についてよりきめ細やかに解決案を示してくれることも和解の特徴といえます。
⑥離婚訴訟で必要となるもの
離婚訴訟で必要となるものは
- 訴状2部及び添付(証拠)書類
- 訴訟費用(訴えの提起手数料(収入印紙代)、郵便切手代、家事予納金)
- 調停不成立証明書(離婚調停を行った家庭裁判所と異なる裁判所に離婚裁判を提起する場合)
です。
訴状と添付書類について
訴状とは、あなたが相手方に対して何を求めるのか、などについて記載した書面のことです。
訴状の書式は裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
書式は空欄を埋めていく形式となっています。
訴状のほかに、夫婦の戸籍謄本及びそのコピー、年金分割に関しては「年金分割のための情報通知書」及びそのコピー、財産分与に関しては預金通帳など、相手方に対して何を求めるかで必要となる添付(証拠)書類は異なります。
また、添付(証拠)書類の数は被告(離婚訴訟を提起される人)の数だけ必要となりますので注意が必要です。
訴訟費用について
訴訟費用のうち、訴えの提起手数料については訴状に必要金額分の収入印紙を貼付して納付します。
訴えの提起手数料(収入印紙代)は、(ア)離婚や親権者の指定のみを求める場合は「13,000円」です。
加えて(イ)財産分与、養育費等の子の監護に関する処分(付帯処分)を求める場合は、各項目につき「1,200円」が加算されます。
さらに、(ウ)慰謝料を請求する場合は、慰謝料請求に関する手数料と(ア)の手数料とを比較して、多額の方に(イ)付帯処分の手数料を合算します。
慰謝料請求300万円の手数料は「20,000円」です。
したがって、20,000円+3,600円(1,200×3(財産分与・養育費・面会交流の付帯処分)=23,600円が訴えの提起手数料となります。
なお、離婚調停が不成立となってから2週間以内に離婚訴訟を提起すれば、離婚調停の申立手数料(印紙代1200円)を離婚訴訟の訴えの提起手数料に充当することができます。
訴えの提起手数料のほか、被告に訴状を郵送する場合などに必要な郵便切手代、鑑定や証人尋問を実施する際に事前に納付することが必要な家事予納金が必要です。
訴状の提出場所について
離婚裁判を提起する裁判所、すなわち、訴状等を提出する裁判所は家庭裁判所です。
離婚調停と異なる家庭裁判所に対して離婚裁判を提起する場合は、離婚調停を行った家庭裁判所で、離婚調停が不成立となったことを証明する「離婚調停不成立証明書」を発行してもらい、訴状等と同時に提出する必要があります。
⑥離婚調停が不成立となり、離婚訴訟を検討するにあたって知っていただきたいこと
離婚訴訟を提起するにあたっては、次の点を頭に入れておく必要があります。
訴訟提起は自ら行う必要がある
離婚調停が不成立となったからといって、自動的に離婚訴訟が始まるわけではありません。
前述のとおり、離婚訴訟するには、自ら家庭裁判所に訴状等を提出する必要があります。
離婚調停の内容は離婚訴訟に引き継がれない
離婚調停が不成立となると、離婚調停で話し合われた内容は振り出しに戻ります。
離婚調停から離婚訴訟に、離婚調停で話し合われた内容が引き継がれるわけではありません。
主張は証拠に基づいて証明する必要がある
離婚訴訟では、主張したい内容を自ら証拠により証明する必要があります。
離婚調停でも証拠資料の提出が必要ですが、離婚訴訟ほど厳格な手続きが求められるわけではありません。
負担が大きい
離婚訴訟は、高額な訴訟費用がかかる、手続きが複雑、公開の法廷で行われる、証明責任があるなど、経済的にも精神的にも大きな負担がかかります。
⑦離婚調停を不成立としないために心がけるべきこと
離婚調停が不成立となった後、離婚訴訟を提起できるとしても前述のとおり負担が大きいもの。
できれば離婚調停で離婚のことを解決したいものです。
離婚調停を不成立としないために大切なことは、
- 主張を裏付ける証拠を事前に集めておく
- 相場を外れた過大な要求、自己の主張に固執しない
という点です。
たとえば、離婚調停で「相手方の不貞行為を理由に離婚したい」と主張しても、相手方の不貞行為を裏付ける証拠がなければ、相手方や調停委員を説得することができず、離婚について合意できずに離婚調停が不成立となってしまいかねません。
なお、証拠集めの大切さは離婚調停に限った話ではありません。
離婚調停前の協議離婚はもちろん、離婚調停後の離婚訴訟でも極めて大切となってまいります。
離婚すると決めた段階で、相手方にはその意思を伏せた上で、様々な証拠を集めておくことが大切です。
また、養育費、財産分与、慰謝料などの財産が関わる場面、あるいは面会交流など子の監護に関わる場面において、過大な要求をする、あるいは条件を提示された際にご自身の主張に固執しないことも大切です。
離婚調停は、あくまで相手方との合意形成を図る手続きですから、相手方の主張にも一定の理解を示し、歩み寄りの姿勢を取ることが、離婚調停を成立させる上では大切となってまいります。
まとめ
離婚調停が不成立となった後は、再度、相手方と話し合いを続けるか離婚訴訟を提起するかの2つの方法を取ることが基本となります。こ
のうち離婚訴訟を提起するのが現実的と考えますが、離婚訴訟は裁判ゆえに負担が大きいです。
そこで、離婚訴訟については弁護士に委ねた方が、ご自身の負担を軽減させながら手続きを進めることができます。お困りの場合は弁護士に相談しましょう。
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