離婚のことで弁護士に相談するとしても、弁護士や法律事務所って「敷居が高く、相談しづらい」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、そんな方々のために、離婚のことで弁護士に相談する前に準備しておくべき5つのこと、を中心に解説してまいります。
ぜひ最後までご一読いただけると幸いです。
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目次
①弁護士への相談先と一般的な相談時間
弁護士への相談先としては主に、法律事務所、法テラス、お住いの市区町村役場が定期的に主催している法律相談などです。
法律事務所の法律相談
法律事務所の法律相談の相談時間は法律事務所ごとに異なりますので、法律相談に行く前に法律事務所のホームページなどで確認しておきましょう。
相談時間は30分から60分としている法律事務所が多いですが、稀に時間制限を設けていない法律事務所も存在します。
法律相談料についても無料としている法律事務所もあれば、有料としている法律事務所まで様々です。
有料の場合の料金は5,000円が相場です。
また、無料の場合でも「1回限り」などと回数制限が設けられ、制限時間を超過すると超過した時間分だけ料金を支払わなければならない場合もありますので注意が必要です。
法テラス(日本司法支援センター)の法律相談
法テラスの法律相談は、法テラスが行う業務の一つの「民事扶助業務」の中の「法律相談援助」という制度に基づくものです。
法テラスの法律相談は、3回まで無料です。
もっとも、1回の法律相談は30分までです。
また、「民事扶助」という名が付いているとおり、誰でも利用できるわけではなく、利用するには「収入、資産が一定額以下であること」、「民事法律扶助の趣旨に適すること(宣伝目的、権利濫用などとは認められないこと)」の2つの条件を満たす必要があります(源泉徴収票等の資料で証明する必要があります)。
また、前記の「法律事務所の法律相談」と異なり、法律相談に対応する弁護士を選べないこともデメリットといえます。
市区町村役場の法律相談
市区町村役場の法律相談の相談時間は、通常、30分と設定されていることが多いです。
法律相談料は無料ですが、相談回数は1回限りの場合が多いです。
市区町村役場の法律相談は前記2つの法律相談と異なり、毎日受け付けているわけではありません。
そのため、利用したいときに利用できない、という点もデメリットです。
法律相談がいつ開催されるかは、毎月ご自宅に配布される市報や市区町村役場のホームページなどであらかじめ告知されますので注意してみておくとよいでしょう。
弁護士に相談する前に準備、検討しておくべき5つのこと
前述のとおり、弁護士との初回の法律相談には時間制限が設けられていることが多いです。
したがって、法律相談を有効に活用するためには、弁護士に相談する前の事前準備が極めて重要です。
①離婚しようと思った原因を明確にしておく
まずは、何が原因(きっかけ)で「離婚しよう!」という思いに至ったのか明確にすることです。
離婚の原因として挙げられることが多いのは、「性格の不一致」、「配偶者の異性関係(不倫、浮気)」、「暴力・暴言(DV)」、「飲酒、浪費、ずさんな生活態度」などです。
もっとも、「原因がいろいろありすぎて明確にできない」という場合は、ご自身の中で一番影響が大きかった、インパクトがあったと考えるものを挙げるとよいでしょう。
なお、上記で挙げた離婚原因のうち「配偶者の異性関係(不倫、浮気)」、「暴力・暴言(DV)」、「飲酒、浪費、ずさんな生活態度」は法律上の離婚事由(※)に当たる可能性がありますが、「性格の不一致」は基本的には当たりません。
そもそも「性格の不一致」という言葉に含まれる意味は広いです。
性格が合わないということはもちろん、性の不一致、価値観の相違、コミュニケーションが取れない、なども性格の不一致に含まれるでしょう。
しかし、性格の不一致を理由に相手方に離婚を切り出しても、相手方が離婚に合意しない限り、基本的には離婚できないことは頭に入れておくべきでしょう(離婚できるのは協議、調停での離婚のみで裁判上の離婚は不可)。
※法律上の離婚事由とは
離婚の手続きが協議→調停→訴訟(裁判)と進んだ場合に、訴訟の段階において、裁判所が強制的に離婚させることができる事由(理由)。
法律上の離婚事由は次の5つ。
- 配偶者に不貞な行為があったとき(=不倫、浮気など)
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき(=飲酒、浪費、ずさんな生活態度など)
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
弁護士は、離婚の手続きが訴訟まで進んだときのことを考えて、相談時にまず、この法律上の離婚事由があるかどうかを探っていきます。
②離婚の原因となったきっかけ、出来事、経緯を時系列順に整理する
離婚しようかな、離婚しようと思う原因を明確にできたら、今度は、その原因となったきっかけ、出来事、現在に至るまでの経緯(事実)を整理して、それを弁護士に伝えます。
相手方の不倫、浮気を離婚原因とする場合は、不倫、浮気を疑うことになったきかっけ、出来事から、現在に至るまでの経緯、その間に発覚した出来事について日記(メモ)をつけておくと、より正確に事実を弁護士に伝えることができるでしょう。
なお、できれば日記は記憶が鮮明なうちに付けておくのが望ましいです。
そして、このとき大切なことは、時系列順に整理していくということです。
時系列順に整理すると、何よりご自身の頭の整理につながりますし、弁護士にも分かりやすく伝えることができます。
時系列順に整理した日記などは、離婚調停や離婚裁判で資料・証拠として使える可能性があります。
また、ご自身の感情や意見を記載することはNGです。
誰しも離婚のこととなれば悔しいですし、腹立たしいですし、感情的になることは当然のことですし、相談を受ける弁護士もそのことは十分理解しています。
しかし、弁護士が相談時に最も知りたいのは、あなたの感情や意見ではなく、あなたが今まで何を経験してきたかという「事実」です。
したがって、弁護士に、人から聞いた噂、根拠のない噂などを伝えることもNGです。
あくまであなたが直接見たり、聞いたりした事実を伝えましょう。
以下に相談内容のNG例とOK例の具体例を挙げましたので参考にしてみてください。
NG例は「夫を許せない」という感情が入っています。また、なぜ夫が不倫をしたと考えるのか、不倫を原因に離婚したいのか、具体的な根拠が示せていません。
他方で、OK例は、相談者が直接経験した事実が述べられています。また、不倫を疑うようになったきかっけ、出来事、経緯が時系列順に述べられています。
以上はあくまでも理想形ですが、とにかく弁護士に事実を伝えることが大切だということは繰り返し述べておきたいと思います。
③弁護士にして欲しいこと、依頼したいことを明確にしておく
離婚するにあたっては、離婚するか、できるかはもちろん、親権、養育費、財産分与、慰謝料、面会交流、年金分割など解決しなければならない問題は山ほどあります。
このうち、弁護士に一部を解決してもらいたいのか、全部を解決してもらいたいのか明確にしておきましょう。
たとえば、離婚、親権、面会交流については合意できているけれども、残りのお金にかかわる項目(養育費、財産分与、慰謝料、年金分割)について合意できないので、その項目について依頼したいというのもありです。
また、「法律相談」という名のとおり、相談の主目的は、離婚にかかわる法的問題を解決するための相談です。
つまり、法律相談が「人生相談」、「悩み相談」に終わることがないよう、弁護士に相談する前から、弁護士にどんな法的問題を、いかに解決してもらいたいのか、法律相談の目的を明確にしておくことも大切です。
- 「相手が親権を欲しいと言って譲りません。私も、親権を獲得したいですけど、どうすればよいですか?」
- 「養育費を支払うことには合意できていますが、金額、期間、支払い方法を巡って揉めています。どうしたらよいですか?」
- 「住宅ローンを返済中の家の財産分与のやり方が分かりません」
- 「相手が不倫をしているようです。どのような方法で証拠を掴めばよいですか?」 など
④法律相談で使えそうな資料をそろえておく
法律相談で使えそうな資料をそろえて、法律相談の際に持参するとより有意義な法律相談となります。
そろえるべき資料はご相談内容により異なります。
以下にご相談内容ごとの資料の一例を挙げましたので参考にしてください。
なお、相手方に離婚を切り出してない方は、資料をそろえるまでは離婚を切り出さない方がよいです。
離婚を切り出してから資料をそろえようとしても、相手方に資料を隠滅されるおそれがあります。
すでに切り出してしまってすべてをそろえることができないという場合でも、弁護士照会などの別の方法で取得することは可能です。
諦めずに弁護士に相談しましょう。
以下の事項を記載したメモ
- 離婚を考えているのは誰か(ご自身か、相手方か、双方か)
- 同居日
- 婚姻日
- 家族構成
- 子どもの生年月日
- 離婚しようと思った原因(婚姻を継続できないと思う理由)
- 離婚の原因となったきっかけ、出来事、現在のまでの経緯
- 監護の実績が分かる資料(母子手帳、育児日記、写真など)
- 年収が分かる資料(会社員の場合は給与明細書、源泉徴収票、自営業者の場合は確定申告書の控えなど)
以下の事項を記載したメモ
- 資産の種類
- 資産の評価額
- 負債(借金)の種類
- 負債の額
- 預金通帳
- (不動産を所有している場合)不動産登記簿(全部事項証明書)、不動産購入時の売買契約書、納税通知書、住宅ローンの返済計画書(償還予定表)
- (保険に加入している場合)生命保険証書
- (株、投資信託などをしている場合)証券口座の明細
※共有財産
夫婦共有名義の財産(共有財産)、あるいは、名義はいずれか一方にあっても、婚姻後に夫婦が協力しあって築いたと認められる財産(実質的共有財産)のこと。財産分与の対象となる財産は、この共有財産です。夫名義の口座の預金も、専業主婦である妻の家事労力によって築き上げられたと認められる限り共有財産で、財産分与の対象です。
- 不貞行為に関するもの
- 日記
- メール、SNS上のやり取り
- 写真、動画
- 会話を録音した音声データ
- 探偵会社が作成した調査報告書 など
- DVに関するもの
- 日記
- 診断書
- 警察への相談履歴
- DV場面を撮影した動画、録音した音声データ
- メール、SNS上のやり取り
以上の資料は可能な限り、ご自身で集められるものはご自身で集めておくとよいです。
集め方に困った場合には一度、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
⑤離婚したい気持ちは変わらないのか、もう一度考えてみる
離婚について弁護士に相談、そしてゆくゆくは依頼するという以上、まずは、本当に離婚する意思が固いのかどうか、その気持ちは変わらないのかどうか、もう一度立ち止まって考えてみるべきです。
離婚の話を最後までまとめることは長丁場になることも予想されます。
もしかしたらその途中で気が変わって「やっぱり離婚したくない」という気持ちになるかもしれません。
仮にそうした気持ちになった場合、話し合いや手続きを途中でやめることはできますが、一度、相手に離婚を切り出した以上、元の関係に戻ることは難しいですし時間がかかるでしょう。
また、弁護士費用の面から言っても損をする可能性が高いです。
日々の些細な争いごとやちょっとした喧嘩で、一時的に感情的になってはないでしょうか?また、離婚後の経済面について不安はないでしょうか?
弁護士に相談する前に、今一度、こうしたことを立ち止まって考えてみてください。
まとめ
離婚のことで弁護士に相談するといっても何も準備しないで相談するよりかは準備して相談した方が、弁護士との法律相談を有効に活用できます。ぜひ、これまでご紹介したことを参考にしていただければと思います。
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