「養育費を受け取っているけど、それだけだと生活が厳しい…生活保護を受けることはできるのだろうか…」
このようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
結論から言いますと、養育費を受け取っていても生活保護を受けることは可能です。
とはいえ、
とお考えになる方もいることでしょう。
そこでこの記事では、
- 生活保護とは
- 生活保護と養育費の関係
につき、養育費問題に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。この記事を読むと養育費と生活保護の権利の本質からそれぞれの優劣について理解できるようになるでしょう。
生活保護とは?
「生活保護」とは、生活に困窮する人を対象に困窮している程度に応じて必要な給付を支給する国の制度です。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とする憲法25条生存権規定に基づく生活保護法により支給されます。
この生活保護法により支給される保護費については、「最低限度の生活」を保障する制度趣旨ですので、最低生活費と世帯収入を比較して、前者から後者を差し引いた「足りない分」が支給されます。このことは、厚生労働省のホームページで以下のように書かれています。
世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、保護が適用されます。
最低生活費の額については、生活保護を受ける人が住んでいる地域や世帯の人数によって変わります。また、世帯収入には、就労収入、年金、失業保険等の公的な手当、児童扶養手当、親族からの仕送り等のほか、養育費も含まれます。
養育費を受け取りながら生活保護の受給も可能
最低生活費から養育費を含む世帯収入を差し引いてもなお最低生活費に満たない場合に生活保護が受けられるわけですから、養育費を受け取っていても生活保護の受給も可能です。
例えば、最低生活費が15万円で、シングルマザーが元夫から毎月5万円の養育費を受け取っているとします。そして、シングルマザーにその養育費以外に収入がない場合は、15万円-5万円=10万円の生活保護費が受け取れることになるのです。
ただし、裏を返せば、受け取っている養育費の額が多いほど、受け取れる生活保護費は少なくなります。上の例で言えば、シングルマザーが養育費を毎月10万円受け取っていれば、最低生活費15万円-養育費10万円=5万円、の生活保護費しか支給されないことになります。
なお、生活保護費を多く貰いたいからと養育費を受け取っていることを申告しないことは不正受給にあたります。生活保護を受ける人は福祉事務所に収入状況を申告する義務があるからです。不正受給が発覚すると、養育費の返還(生活保護法第63条)、強制徴収(生活保護法第78条1項)のペナルティーが科せられますので絶対にやめましょう。
収入認定除外を利用しましょう
生活保護の受給の場面において、養育費は収入と見做されることをお伝えしましたが、以下のような費用については、収入認定除外を求めることができます。
- 参考書等の購入代金
- 学習塾の費用
- 私立学校の授業料
- 通学用自転車の購入費
- 修学旅行費
入園・入学・通学・就学に伴って通常必要と認められる費用につき、何に幾らの額を使うかを自立更生計画書に書いて福祉事務所に提出して認められることで、養育費(収入)からこれらの費用を除外して、生活保護費を支給してくれるということです。
例えば、最低生活費が15万円で5万円の養育費しか収入がないシングルマザーが10万円の生活保護費を受給しているケースで、月に2万円の学習塾の費用が収入認定除外されたと仮定します。その場合、15万円-(5万円-2万円)=12万円の生活保護費が受給できるようになります。
ただし、上記の費用が全て収入認定除外されるわけではなく、住んでいる地域の同年齢の子供に通常必要とされる最小限度額のみが除外の対象となります。詳しくは、ケースワーカーや福祉事務所に確認するようにしましょう。
生活保護を受けると養育費が減額されるのでは?
生活保護を受けていることが、養育費を支払っている元配偶者に知れると、「生活保護で家計が楽になったのだから、支払う養育費を減らして欲しい」と主張されることがあります。
この点、養育費の額について父母間で争いがある場合には、家庭裁判所より作成・公表されている「養育費算定表」に基づき算出されることが一般的です。この「養育費算定表」から算出される養育費の額は、子供の年齢、子供の人数に加え、父母双方の収入状況により変化します。そして、養育費を受け取っている側(権利者)の収入が多くなれば、受け取れる養育費の額もそれに応じて少なくなります。
上記の元配偶者の主張は、「生活保護費という収入が増えたのだから、養育費を減額しろ」というものです。
しかし、結論を言えば、生活保護費は収入として考慮されないため、生活保護を受けても養育費は減額されません。
養育費とは、親が未成熟の子に対して負っている扶養義務のことです(民法第877条1項)。そして、厚生労働省のホームページで、生活保護を受ける要件として以下のように記載されています。
世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。
このように、養育費(扶養義務者の扶養)やその他の収入をまずは生活維持のためにあて、それでも最低限度の生活に満たない場合に補充的に支払われるのが生活保護費ですから、養育費の算定において生活保護費が収入として扱われることはないのです。
まとめ
以上この記事では、養育費と生活保護の関係についてそれぞれの権利の法的性質からその優先順位などについて解説してきました。
離婚の際に養育費の受け取りを検討している方や生活保護を受給したいまたはしている方で養育費との関係について不安がある方は是非離婚問題に精通した弁護士に一度相談してみましょう。
あなたのケースで最適な解決策を提示してくれるはずです。
誰でも気軽に弁護士に相談できます |
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