相続税対策には毎年贈与を|贈与税の非課税枠を活用する2つのコツ

ある程度以上財産のある人が死亡した場合、相続人に対して相続税がかかることがあります。実際の相続税がいくらになるのかは、相続財産の額によって異なりますが、場合によっては驚くほどの金額になることも珍しくはありません。
しかし、相続税は生前から対策を行うことによって節税することが可能です。

今回は、相続税の節税対策として利用することのできる贈与税の非課税枠を使った毎年の贈与をテーマに解説させていただきます。

この記事を読むことで、簡単に相続税の節税対策ができるようになりますので、ぜひ最後までお読みください。

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1.相続税とは?

被相続人から財産を相続した場合、相続財産の額によっては国税として「相続税」が課されることになります。

相続財産が多ければ多いほど相続税の税率は高くなり、その結果として課される税金が多くなります。そのため、将来家族や親族などに相続が発生した場合に、相続税がどれくらいかかるのかを事前に知っておくことは非常に大切です。

相続税が発生することが予想される場合には、被相続人の生前から相続税対策を講じておくとよいでしょう。

2.相続税の税率

相続税の税率は、相続財産の額に応じて10%~55%までと8段階に分かれて定められています。
相続財産が高額である場合には、最高55%もの税金が課され、手元に残るのは半分以下になることもあるのです。

【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額(基礎控除を超える額)税率控除額
1000万円以下10%なし
3000万円以下15%50万円
5000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1700万円
3億円以下45%2700万円
6億円以下50%4200万円
6億円超557200万円

3.相続税の基礎控除額について

相続財産をもらったからといって、かならず相続税が課せられるわけではありません。
相続税を計算する場合には「基礎控除額」というものが設定されており、相続財産の総額が、相続税の基礎控除額以内であれば相続税はいっさい発生しないのがルールです。

基礎控除額の計算方法

相続税の基礎控除額は、つぎの計算をすることによって求めることができます。

相続税の基礎控除額の計算式
基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

たとえば、ある人の相続に関して相続人が2人いる場合、相続税の基礎控除額の計算は次のようになります。

基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 2 = 4200万円

計算の結果、基礎控除額は4200万円となります。よって、相続財産が4200万円以内であれば相続税は1円も発生しないということになります。

仮に、この事例で相続財産が5000万円だった場合、相続税はどうなるでしょうか?
相続財産が基礎控除額4200万円を800万円上回っているため、800万円に対して相続税がかかることになります。

上記の表によると基礎控除額を上回る相続財産の額が1000万円以下の場合、税率は10%とされていますので、相続税は80万円になることが分かります。

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4.場合によっては2割加算される!

相続財産が基礎控除額を超えた場合、上記のように控除額をオーバーする額によって最高55%もの相続税が発生することになります。
しかし、ここで注意していただきたいポイントがあります。
この税率によって計算される相続税は、あくまでも相続人が被相続人の子供や配偶者の場合に限るという点です。

民法では相続人に第1位から第3位まで順位を定めており、先順位の相続人が1人でもいる場合には、それより後の順位の相続人には相続権が一切認められないルールとなっています。
そして、被相続人の子供は第1順位の相続人となります。
相続人が第1順位の者となる場合、相続税を計算する際の税率は上記の表のものとなりますが、第2順位または第3順位となる場合には税金がさらに増額されることになっているのです。

第1順位の相続人がいないか相続放棄をしたことによって、第2順位または第3順位の相続人によって相続が行われた場合、相続税は上記税率で計算した金額にさらに2割もの額が上乗せされることになっています。

このように、相続税は場合によっては非常に高額となる可能性が高いものなのです。
相続財産がある程度以上高額である場合には、生前からの節税対策がいかに大切かお分かりいただけるのではないでしょうか?

5.相続税対策として贈与が利用できる

比較的メジャーな方法として、相続税の節税対策として贈与が利用できることをご存じでしょうか?
所有者が死亡した場合に相続の対象となる財産を、被相続人の生前から相続人などに贈与する方法です。

この方法は、将来発生するかもしれない相続税を節税するという点で非常に効果的な方法ですが、一定額以上の財産を贈与した場合には、相続税と同様「贈与税」がかかることになるので注意が必要です。

6.「贈与」とは?

「贈与」は民法によって、つぎのように定義されています。

「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」(民法549条)。

つまり、「贈与」とは、自分の財産を相手方に対してタダで与え、相手方もそれに合意することによって成立する契約です。

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7.贈与税とは?

相続と同様、贈与に対しても税法上、税金が課せられることになっています。それが「贈与税」です。
贈与税は、贈与の対象財産の金額ごとに税率が定められており、高額になるほど税率が高くなるようになっています。

(1)贈与税の税率について

贈与される金額が非課税枠である110万円を超えた場合、超えた額に応じて、つぎのような税率によって贈与税が発生することになります。

一般的な贈与の場合
基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%なし
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1000万円以下40%125万円
1500万円以下45%175万円
3000万円以下50%250万円
3000万円超55%400万円
直系卑属への贈与の場合
基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%なし
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1000万円以下30%90万円
1500万円以下40%190万円
3000万円以下45%265万円
4500万円以下50%415万円
4500万円超55%640万円

※その年の1月1日において20歳以上の直系卑属への贈与の場合の税率

(2)贈与税には非課税枠110万円がある!

贈与した場合、このように最高で55%もの税金が課されることがあります。
しかし、贈与税に関しても相続税と同様、非課税枠(控除額)が認められています。
毎年合計110万円までであれば、贈与税が課されないというのがルールなのです。

このため自分の死亡後の相続税対策として、生前から毎年110万円以下の範囲で親族などに贈与が繰り返されることがあります。
110万円以下の財産を小分けして、毎年贈与することを何年間も繰り返す方法です。

こうすることで贈与税の負担をなくしながら、将来発生する相続税の負担をも抑えることが可能になるのです。

8.相続財産を減らすために毎年贈与することはNG?

相続税の節税対策として、贈与の非課税枠を利用して毎年贈与を繰り返す方法がありますが、この方法については税務署的に問題なのではないかという都市伝説的なうわさがあります。

特に毎年同じ時期に同額の贈与を繰り返した場合、税務署に問題視され、結局贈与税が課税されてしまうのでは?という疑問をお持ちの方も多いでしょう。

しかし、そのような心配は無用です。
きちんとした対策を取っておけば、毎年同時期に同額の贈与を繰り返したとしても税務署に指摘されるようなことはありません。

ただし、そのためには、贈与を実行する際に抑えておくべきポイントがあるので注意してください。

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9.贈与税の非課税枠を活用するために知っておくべきこと

税務署に文句を言われないように相続税の節税対策をするためには、ぜひ知っておきたいポイントがあります。
具体的には、つぎのような3つのポイントについて、あらかじめ意識しておくことが大切です。

(1)贈与税がかかるケース・かからないケース

大切なことなので、ここでもう一度確認しておきましょう。
贈与があった場合、原則として贈与税がかかることになりますが、贈与の対象物が非課税枠である110万円以下の場合には税金がかかることがありません。また、贈与税の申告をする必要もありません。

贈与を利用して相続税対策を行う場合には、毎年110万円以下の財産の贈与を行う必要があります。
非課税枠を超えてしまった場合には、贈与税が発生することになるので注意してください。

(2)「定期金給付契約」とみなされるとアウト!

110万円以下の贈与であったとしても、それが税務署によって定期金給付契約とみなされてしまった場合には贈与税が発生することになるので注意が必要です。

「定期金給付契約」とは、贈与する財産の総額があらかじめ決められているけれど、それを一定額に分割して定期的に与えるという内容の契約のことを言います。

たとえば、当事者で行われた契約の内容が「総額1100万円を10年間にわたり毎年110万円ずつ与える」というものだった場合、定期金給付契約とみなされることになります。

税務署によって贈与が定期金給付契約とみなされた場合には、契約によって支払われる財産の総額が課税対象とされることになります。
この場合、定期金給付契約の総額に関して110万円(非課税枠)を超えた部分について贈与税が課せられます。
上記の例では、990万円(1100万円-110万円)に贈与税が課されます。

外形的には同じ「110万円」の贈与であったとしても、定期金給付契約とみなされた場合には高額な贈与税が発生することになるので十分注意することが必要です。

(3)贈与税課税の立証責任は税務署側にある

贈与が一過性のものでないと判断された場合、つまり定期金給付契約とみなされた場合には、たとえ毎年110万円以内の贈与であったとしても贈与税が課される可能性があります。
しかし、毎年繰り返される贈与が定期金給付契約に該当するのかどうかに関しては、税務署側に立証責任があります。

通常の場合、定期金給付契約書などが存在しなければ、税務署としては贈与の総額について贈与税を課税することはできません。

しかしその場合でも、念のために贈与を行う際には、毎年新しく贈与契約をすることをおすすめします。

10.確実に相続税を節税するための2つのポイント

贈与の非課税枠を上手に利用して、将来発生する相続税の節税対策を確実に行うためには2つのポイントを押さえることが大切です。

(1)毎年贈与契約を締結する

贈与が定期金の給付ではなく、一過性のものであることを明示するためには、毎年新たに贈与契約を交わしておくことが大切です。

たとえ贈与契約の当事者である贈与者・受贈者、贈与の金額などがまったく同じであったとしても、毎年新しく贈与契約を締結するようにしましょう。

贈与契約書を作ることが大切

贈与が一過性のものであることを明らかにするためには、贈与契約した際に「贈与契約書」を作成しておく必要があります。
贈与契約書があれば、いざ税務署の調査が入った場合でも一過性の贈与であること証明することができます。

(2)贈与契約書を作る

毎年の贈与が定期金給付契約とみなされないようにするためには、贈与契約を締結する際に契約書を作っておくことが大切です。
毎年「110万円」以内の財産を贈与するという契約書があれば、税務署も定期金給付契約とみなすことは非常に難しくなるからです。

贈与契約書は、つぎのようなポイントを押さえておけば、自分たちだけでも作ることが可能です。
ぜひ、チャレンジしてみてください。

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11.贈与契約書の書き方

贈与契約書には決まった形式はありませんが、1つの例としてつぎのようなイメージで作成するとよいでしょう。
たとえば、現金110万円を配偶者に贈与する場合、契約書の内容はつぎのようなイメージとなります。

贈与契約書

第1条 贈与者甲野太郎は、受贈者甲野花子に対して現金110万円を贈与し、甲野花子はこれを受諾する。

令和〇〇年〇〇月○○日

○○県○○市○○町〇〇丁目〇〇番地
贈与者 甲野太郎 (印)

○○県○○市○○町〇〇丁目〇〇番地
受贈者 甲野花子 (印)

贈与契約書を作る場合のポイント

贈与契約書を作る場合のポイントは……

  • ①贈与者が誰なのか?
  • ②受贈者(財産をもらう人)が誰なのか?
  • ③何を贈与するのか?
  • ④当事者が贈与について合意していること

以上を書面上、明確にしておくことが重要です。

12.不動産の贈与の仕方

将来発生するであろう相続税対策としては、毎年贈与を繰り返すことが有効ですが、贈与の対象となる財産は金銭だけではありません。
不動産を贈与することも可能です。

しかし、一般的に見て不動産は110万円以上の価値があるものですので、不動産の所有権すべてを贈与した場合、上記のような税率によって贈与税が発生してしまうことになります。

そのようなことを避けるためには、不動産に関する所有権の「持分」を贈与することが大切です。

「持分」とは?

不動産は単独で所有されるだけでなく、複数の人によって所有されることもあります。この状態を「共有」といいます。

不動産が複数の人によって共有されている場合、不動産に対してそれぞれの共有者が持つ所有権に対する割合を「持分」または「持分権」といいます。

たとえば、2000万円の不動産をAさんとBさんが、それぞれ1000万円ずつお金を出して購入した場合、AさんとBさんの持分は2分の1ずつとなるのが一般的です。

不動産の「持分」を贈与する

相続税対策として不動産を贈与する場合には、不動産の所有権の「持分」を移転することによって行われるのが一般的です。

不動産の価値を金銭に見積もり、贈与の対象となる持分の価値が110万円以下となるように持分割合を設定します。

たとえば、5000万円の不動産を毎年贈与する場合、持分割合100分の1は50万円に相当します。
このため、この不動産の持分100分の2(50分の1)は100万円相当の価値があるということになります(110万円ギリギリでは、あとで問題とされる可能性があるので、ある程度低めの設定をしておくほうが無難でしょう)。

この場合、毎年50分の1の持分を相続人などに贈与することによって、毎年その分だけ、将来における相続税の節税対策ができることになります。

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13.不動産の持分を贈与した場合の贈与契約書の書き方

不動産に関する持分を贈与する場合には、つぎのような贈与契約書を作っておくことが重要です。
一例として、自宅不動産に関する持分権を配偶者に贈与する場合をご紹介します。

贈与契約書
第1条 贈与者甲野太郎は、受贈者甲野花子に対して後記記載の不動産に関する持分50分の1を贈与し、甲野花子はこれを受諾する。

1. 所在 ○○県○○市○○町〇〇丁目
地番 〇〇番
地目 〇〇
地積 〇〇・○○平方メートル2. 所  在 ○○県○○市○○町〇〇丁目〇〇番地
家屋番号 ○○番
種  類 ○○
構  造 ○○
床 面 積 ○○・○○平方メートル
以上
令和〇〇年〇〇月○○日○○県○○市○○町〇〇丁目〇〇番地
贈与者 甲野太郎 (印)○○県○○市○○町〇〇丁目〇〇番地
受贈者 甲野花子 (印)

不動産を贈与したら登記を!

不動産を贈与した場合、法務局で登記を受ける必要があります。
登記は法律上の義務ではありませんが、当事者の権利関係や相続開始後の相続人間の法律関係を明らかにするためにも登記しておくことをおすすめします。

なお、将来的に相続が発生した場合には、不動産に関して相続登記をすることになります。
本記事執筆時点では、相続登記は法律上の義務ではありませんが、将来的には義務化される可能性もあるので注意が必要です。

また、相続関係者の権利関係を複雑化させないためにも、相続発生後には早い段階で遺産分割協議を行い、数次相続などが発生しないようにすることをおすすめします。

14.節税対策は弁護士に相談を

ご覧いただいたように、生前に対策を行うことによって相続税は節税することが可能です。
しかし、節税対策もうまく行わないと、あとで税務署から指摘を受けるなど不具合が生じる可能性があります。

そのようなことを避け、スムーズ且つ安全に節税するためには弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

15.まとめ

今回は相続税の節税対策として利用できる贈与税の基礎控除の活用方法をご紹介しました。

毎年110万円までの財産の贈与は、非課税枠内の贈与となるため贈与税がかかりません。
しかし、その贈与を毎年繰り返した場合、きちんとした対策を取っておかないと税務署によって定期金給付契約とみなされ贈与税が課せられる恐れがあります。

そのようなことがないように、今回ご紹介した知識を活用し、相続税の節税対策をしていただければ幸いです。

相続は、一生のうちに誰にでも必ず訪れる身近な法律問題です。相続に関して疑問や不安などがおありの場合には、ぜひ当事務所にお気軽にご相談ください。

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