内縁の妻(夫)に相続権はない!遺産を引き継ぐためには?

内縁の妻(夫)とは、婚姻の届出をしていないため法律上の夫婦とは認められないものの、社会生活を送る上で事実上夫婦同然の生活をする妻(夫)のことです。内縁関係のことを事実婚ともいいます。

ここで、

内縁の妻(夫)には相続権はあるのだろうか?

という疑問をお持ちの方もいるかと思います。

結論から言いますと、内縁の妻(夫)には相続権はありません

しかし、夫婦同然に生活してきたパートナーに先立たれて辛い状況の中で、相続もできないために生活苦に陥るとなると、「内縁の妻(夫)でも遺産を引き継ぐ方法はないだろうか」と思われる方もいると思います。また、内縁関係の夫婦に子どもがいる場合に、その子どもは父親の財産を相続できるのか心配になられる方もいるかと思います。

そこでこの記事では、遺産相続に強い弁護士が、

  • 内縁の妻(夫)が遺産を引き継ぐための方法
  • 内縁関係の夫婦の子の相続権

などについてわかりやすく解説していきます。

記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます
  • ご相談は無料です
  • ご相談やご質問のみでも気兼ねなくご連絡ください
  • 遺言・遺産分割・相続での揉め事を親身誠実に弁護士が対応します

内縁の妻(夫)に相続権はない

相続権とは、配偶者が死亡した場合に、配偶者がそれまで有していた財産を引き継ぐことができる権利のことです。内縁関係は、「婚姻に準ずる関係」として判例(最高裁昭和33年4月11日判決)上も保護されていますが、この相続権は婚姻届をした夫婦を前提としているため、内縁の妻(夫)には相続権は認められていません。何年連れ添っても相続権が認めらえることはありません。

内縁の妻とは?内縁の妻の条件やメリット・デメリット

内縁の夫婦の子は相続権がある?

内縁関係にある男女間に生まれた子を「非嫡出子(または「婚外子」)」と呼びますが、非嫡出子は原則として相続権はありません。ただし、父親に「認知」されることで相続権が発生します

認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、男性が自身の子であると認めることによって、男性とその子との間に親子関係を発生させる行為をいいます(民法779条)。

子の認知については、子供の認知とは?そのメリットと認知されない子供のデメリットに詳しく書かれていますので参考にしてください。

法改正で内縁の妻(夫)は特別寄与料を受け取れるようになった?

特別寄与料の前にまずは「寄与分」について説明します。

「寄与分」とは、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の「財産の維持または増加」について特別の寄与をした者の取得する財産の額を増やすという制度のことです(民法第904条の2参照)。

しかし、この寄与分を主張できる主体として規定されているのは「法定相続人」に限定されています。したがって、相続人ではない内縁の妻(夫)は寄与分を請求することができません

これに関連して、2019年7月1日に民法改正が行われ「特別寄与料」という制度が新設されました

これは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加に寄与した者(特別寄与者)が、相続の開始後に相続人に対し特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができるという制度です。

ただし、この特別寄与料の制度の主体も、被相続人の親族である必要があるため、親族ではない内縁の妻(夫)は含まれていないことになります。

以上より、内縁の配偶者はどれだけ長くパートナーと連れ添って生活に貢献してきたとしても、寄与分や特別寄与料を受け取ることはできないのです。

内縁の妻(夫)が遺産を引き継ぐには?

内縁の妻(夫)に相続権が認められないとはいえ、これまで夫婦同然に暮らしてきたのであれば、相手の財産形成に寄与してきたこともあるはずです。婚姻はしてないものの夫婦として支え合って生活してきたのであれば、今後生活に困窮しないためにも少しでもいいから財産を引き継ぎたいと思うのは当然です。

そこで以下では、相続権のない内縁の妻(夫)が相手の遺産を引き継ぐための方法について解説していきます。

遺言書を作成しておいてもらう

内縁の妻(夫)は相続はできないものの、「遺贈」を受けることはできます

「遺贈」とは、遺言によって相続人や相続人以外の人に財産を引き継がせる行為を言います。遺言は土地・建物、預貯金などのように特定の財産を対象にすることもできますし、「全ての財産を遺贈する」などと包括的に指定することもできます。

遺言書を作成する際には、「公正証書遺言」を作成しておくことがおすすめです。なぜなら公正証書遺言は公証人が作成するため、内容に問題が起こることがありません。遺言者が自署して作成する「自筆証書遺言」では内容に不備があり亡くなったあとに遺言としては無効とされてしまうリスクがあるのです。

なお、内縁の妻(夫)に財産を遺贈する場合には、一定の法定相続人との間で「遺留分」の問題が生じる可能性があります。「遺留分」とは、遺言の自由を制限して一定範囲の相続人のために法律上必ず留保されなければならない相続分の一定割合のことをいいます。

遺留分権利者となるのは、亡くなった人の「兄弟姉妹以外」の相続人で、配偶者、子、直系尊属(親など)です。内縁の場合には前妻との子どもと内縁の妻との間で問題となることが多いでしょう。後々争いとならないように遺留分以外の財産を遺贈する内容で遺言を残しておいたり、遺留分権利者と連絡をとり遺留分を請求しないことを約束してもらったりする方法があります。

生前贈与を受けておく

内縁の妻(夫)が、相手から生前に財産の贈与を受けておくことで財産を受けとることができます

贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思表示をして相手方が受諾することで成立します。生前贈与については、相手が亡くなった後にトラブルにならないように「贈与契約書」を作成しておくべきでしょう。

ただし、贈与額が年間110万円を超える場合には受贈者(贈与を受ける者)は贈与税を支払う必要があります。ケースによっては高額な贈与税を負担しなければならない可能性がありますので事前に税理士と相談しておくようにしましょう。

生命保険の受取人となっておく

生命保険について、保険会社によっては内縁の妻(夫)を生命保険金の受取人として指定することができる場合があります

内縁の妻(夫)を保険金の受取人に設定しておくには、保険会社の定める基準を満たす必要があります。基本的に生命保険の保険金受取人の範囲は「配偶者・2親等の以内の血族」とされていることが多いです。ただし、双方に戸籍上の配偶者がおらず、保険会社が定める期間同居しており、生計を共にしている場合には内縁の妻(夫)でも受取人にできる可能性があります

上記を証明するためには、戸籍謄本・住民票・収入証明などの公的な書類を保険会社に提出する必要があるでしょう。

しかし最終的な判断は各保険会社が行うことになりますので、会社によって基準や付加される条件が異なります。そのため具体的には保険会社に確認する必要があるでしょう

遺族年金を受給する

内縁の妻(夫)であっても、遺族年金を受給できる「配偶者」に該当する場合があります

内縁の妻(夫)が遺族年金を受け取るためには内縁配偶者と生計を共にしていたといえる必要があります。上記を証明するためには内縁関係を証明できる住民票・戸籍謄本や、税制上の扶養であることを証明する源泉徴収票や生命保険の証書などを提出することになるでしょう。

遺族年金を内縁(事実婚)の妻が受給する条件と必要な証明書類

特別縁故者として遺産を受け取る

内縁のパートナーが死亡した場合、相続人として権利を主張する者がいないとき、内縁の妻(夫)は「特別縁故者」として相続財産の分与を受けることができます

特別縁故者とは、

  • 亡くなった人と生計を同じくしていた
  • 亡くなった人の療養監護に努めていた
  • 亡くなった人と特別の縁故があった

のいずれかに該当する人を指します。

特別縁故者の請求によって、家庭裁判所が清算後残存する相続財産の全部または一部の財産を与える判断をすることになります。

ただし、一人でも内縁の妻(夫)側の相続人が生存している場合には特別縁故者として請求することはできません

内縁の妻(夫)が負担する相続税についての注意点

内縁の妻(夫)であっても、遺贈や死因贈与などによって財産的な利益を得た場合には相続税を納める必要があります。生命保険金を受け取った場合も同様です。

内縁の配偶者が遺産を受け取った場合にかかる相続税は、戸籍法上の届け出をしている配偶者の税額の1.2倍、つまりは2割増しと定められています

内縁の妻(夫)は、配偶者の税額軽減制度を利用することができません。また内縁の配偶者は生命保険金等の非課税限度額も適用されないため、内縁の配偶者が受け取った保険金は全額相続税の対象となります。

内縁の妻(夫)に賃借権は認められる?

内縁関係の一方が死亡した場合、その者が賃貸借契約を結んでいる住居に残された内縁の妻(夫)は住み続けることができるのでしょうか。

この点、残された内縁の妻(夫)には相続権がないため賃借権(賃料を払って借りたものを使用する権利)も相続できず、内縁のパートナーの死亡後に家を退去しなくてはならないようにも思えます。

しかし、死亡した内縁のパートナーに相続人がいない場合、内縁の妻(夫)は借地借家法の規定を利用して賃借人の権利を承継したと主張することができます(借地借家法第36条1項)。

また、死亡した内縁パートナーに相続人がいる場合でも、内縁の妻(夫)は相続人が相続した賃借権を援用(代わりに使う)して住居に住み続けることができるとするのが判例です。

家屋賃借人の内縁の妻は、賃借人が死亡した場合には、相続人の賃借権を援用して賃貸人に対し当該家屋に居住する権利を主張することができる

裁判例結果詳細 | 裁判所

もっとも、相続人が賃貸人と賃貸借契約を合意解除するなどして、賃貸人が建物の明け渡しを求めてきた場合には、内縁の妻(夫)には対抗策がありません。

ただしそのような場合であっても、相続人側に明け渡しを求める必要性や内縁の妻(夫)の経済的不利益などを総合考慮した結果、相続人側の請求が権利濫用として否定される可能性は残されています。

まとめ

以上のように、内縁の妻(夫)には相続権がないものの、亡くなった内縁パートナーの遺産を引き継ぐための方法はいくつか存在します。

とはいえ、そのほとんどが、生前に何かしらの対策や準備を必要としますので、内縁のパートナー死亡後の自分の生活を守りたい、あるいは、自分が死亡したときに相手が生活苦に陥らないよう今のうちに適切な対策をとっておきたいという方はまずは弁護士に相談しましょう。

弊所では、残された内縁配偶者が安心して暮らすためのサポートに力を入れています。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でバックアップしますので、まずはご相談ください。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます
  • ご相談は無料です
  • ご相談やご質問のみでも気兼ねなくご連絡ください
  • 遺言・遺産分割・相続での揉め事を親身誠実に弁護士が対応します
相続問題で悩んでいる方は弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による相続問題の無料相談を受け付けております

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

ご相談のみで問題が解決する方も多くおられますので、電話、メール、LINEにてお気軽にご相談下さい。