社内ストーカーの被害に遭ったら?被害者と会社がとるべき対応

「これは社内ストーカーではないか」。同じ職場の人からの視線や待ち伏せに気づきながら、「自意識過剰だと思われたくない」と誰にも言えずにいる方は少なくありません。

見分ける手がかりは、あなたが拒んだあとも同じことが繰り返されているかどうかです。続いているなら、記録を残して会社や警察に相談する段階に来ています。

相手が同僚や上司であるがゆえに被害を訴えにくく、我慢しているうちに深刻になりやすいのが、この被害の特徴です。

ストーカー被害の解決実績が豊富な弁護士が、次の点を解説します。

  • 社内ストーカーと呼べるのはどこからかの線引き
  • 職場で実際に起きている被害の事例
  • 被害者がとるべき5つの対処法
  • 会社が問われる法的責任と、とるべき対応

お読みいただくことで、今の状況が相談できる段階にあるのか、次に何をすべきかを整理できます。

被害にお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へご相談ください。

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社内ストーカーとは?どこからが「つきまとい行為」にあたるのか

社内ストーカーとは、上司や同僚など同じ職場の人から、視線や待ち伏せ、しつこい連絡といったつきまといを繰り返し受けることを指す呼び方です。法律上の用語ではありません。

ただし、行為の中身がストーカー規制法の「つきまとい等」にあたれば、職場内の出来事であっても同法の規制を受けます。

ストーカー規制法が禁止する「つきまとい等」とは

職場での行為も含め、つきまといを取り締まっている法律がストーカー規制法です。条文上の名称はストーカー行為等の規制等に関する法律といいます。

同法は、相手への恋愛感情や好意、あるいはその気持ちが受け入れられなかった腹いせの気持ちを満たす目的で、本人だけでなく、その配偶者や直系・同居の親族、職場の同僚のように社会生活で密接な関係にある人に対して、次の行為をすることを「つきまとい等」と定めています(同法2条1項)。

  • つきまとい・待ち伏せ・進路に立ちふさがる・住居や勤務先の付近での見張り・押しかけ・うろつき
  • 行動を監視していると思わせる事項を告げること
  • 面会や交際など、義務のないことの要求
  • 著しく粗野または乱暴な言動
  • 無言電話、および拒んだあとも連続する電話・文書・ファクシミリ・メール・SNS
  • 汚物や動物の死体など、著しく不快な物の送付
  • 名誉を害する事項を告げること
  • 性的羞恥心を害する事項・画像等を告げたり送りつけたりすること

これとは別に、GPS機器や紛失防止タグを使って承諾なく位置情報を取得する行為や、所持品にこれらを取り付ける行為も「位置情報無承諾取得等」として規制されています(同法2条3項)。

つきまとい等や位置情報無承諾取得等を同じ相手に繰り返すと、「ストーカー行為」にあたります(同法2条4項)。ただし上の8類型のうち、はじめの4つと、メールやSNSの送信については、身体の安全や住まいの平穏、名誉が害される、行動の自由が著しく害されるといった不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限られます。類型ごとの詳しい説明は警察庁のストーカー情報ポータルでも公開されています。

なお、規制の対象になるのは恋愛感情や腹いせの気持ちを満たす目的の行為です。そうした目的が認められない嫌がらせでも、お住まいの地域の迷惑防止条例でつきまとい行為として規制される場合があります。条例の内容は都道府県ごとに異なるため、実際の扱いは地域によって変わります。

社内ストーカーはどこから?分かれ目は「拒絶したあとも続くか」

条文は、電話やメールについて「拒まれたにもかかわらず、連続して」行うことを対象に挙げています。一度きりの誘いや、社交辞令の範囲の会話であれば、「ストーカー行為」には至りません。

逆に、拒絶の意思を伝えたのに毎日メッセージが届く、席を離れても視線が追ってくる、といった状態が続いているなら、行為の内容は規制の対象に近づいています。

「まだ何もされていないのに騒ぐのは自意識過剰ではないか」と感じて言い出せない方もいます。ただ、規制の対象に挙がっているのは暴力や脅迫だけではありません。

見張りやうろつき、監視していると思わせる言動も、それ自体が条文に並んでいます。「決定的なことをされていないから相談できない」と考える必要はありません。

加害者側は好意の表現のつもりで距離を詰めてくるため、こちらが我慢するほど「受け入れられている」と受け取られてしまいます。

どのような人がストーカー化しやすいのかについては、「ストーカーになりやすいのはどんなタイプ?その特徴と心理を徹底解説」で解説しています。

職場の内と外で起きている社内ストーカーの事例

職場では毎日同じ人と長時間関わるため、ストーカー行為なのか業務上の行動なのか判断がつきにくく、周りからも「仕事の一環」と見られて発覚が遅れがちです。

実際にどのような形で現れるのかを、職場の内と外に分けて見ていきます。

職場のなかで起きる被害

勤務時間中には、たとえば次のような形で現れます。

  • 特定の人からの視線を毎日感じる。見返すとすぐに視線をそらされる
  • いつも近くにいて、同僚との会話に聞き耳を立てられている
  • 用事がないのに話しかけられ、休憩のたびに隣に座られる
  • 教えた覚えのない連絡先に、業務と無関係な電話やメールが頻繁に届く
  • 社内データベースや履歴書から住所・電話番号などの個人情報を抜き取られる

一つひとつは些細に見えても、毎日繰り返されれば精神的な負担は積み上がります。同じ社員という立場なら、出退勤の時間も休日の予定も、不自然に見えない形で集められてしまいます。

関連記事:元同僚からのストーカー被害に弁護士が介入し100万円で解決

職場の外まで続く被害とネットストーカー

社内ストーカーの被害は、退勤時刻を境に終わるわけではありません。

  • 退社後に出口で待ち伏せされる
  • 偶然を装って同じエレベーターや同じ電車に乗ってくる
  • 帰宅時に自宅までつきまとわれる
  • 休日に最寄り駅の周辺をうろつかれる
  • SNSの投稿を監視され、行動パターンを把握されている

「自分の勘違いかもしれない」と放置しているうちにプライベートな情報を把握され、待ち伏せや自宅への押しかけへ発展した例もあります。

退職すれば職場内での被害はなくなりますが、すでに自宅の住所や連絡先を知られている場合、つきまといや無言電話が続くおそれがあります。逃げるだけでは根本的な解決にはなりません。

SNSやチャット、メールを通じた監視・嫌がらせが続いている場合の対処法については、「ネットストーカー被害の対策は?5つの対処法と被害を防ぐ方法」で詳しく解説しています。

社内ストーカーの被害に遭ったときにとるべき5つの対処法

相手の行為が不快だと感じるなら、我慢する必要はありません。取り返しのつかない事態へ発展する前に、次の対策を講じましょう。

  • ①できるだけ接触を減らす
  • ②ストーカーの証拠を集める
  • ③会社や上司に相談する
  • ④警察に相談する
  • ⑤弁護士に相談する

①できるだけ接触を減らす

やめてほしいという意思は、記録に残る形で一度はっきり伝えます。そのうえで大切なのは、それ以上は刺激しないことです。

あからさまに避けたり嫌ったりする態度は、当てつけと受け取られ、逆にストーカー行為をエスカレートさせることがあります。

相手はあなたの気を引きたいと思っています。嫌うのではなく無関心でいることのほうが、相手にはダメージが大きいのです。

接触の減らし方を間違えると逆効果になる場合もあるため、「ストーカーを無視し続けると危険?正しい対策とNG行動」もあわせてご確認ください。

②ストーカーの証拠を集める

送られてきたメールや着信履歴、手紙などは保管しておきましょう。警察へ被害を申し出るときに証拠となります。

監視や接触、つきまといといった行為は物理的な証拠が残りにくいため、メモや、自分が受けたやり取りの録音を残しておくことが大切です。

防犯カメラの映像が残っている場合は、上書きされる前に保存を依頼しておくと有効です。ただし、自分で相手を尾行したり隠し撮りをしたりする方法は、相手を逆上させる危険があるため避けてください。

いつ、どのような行動があり、どのように感じたかを記録し、自分の気にしすぎではないことを示せるものを残す必要があります。

証拠の集め方について、詳しくは「ストーカー被害に遭ったらすぐすべき8つの対処法と対策」にて解説していますので、参考にしてください。

③会社や上司に相談する

会社は、労働契約法5条により、従業員が生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っています。

この配慮には、従業員間のつきまといやハラスメントから被害者を守ることも含まれると考えられています。

まずは直属の上司に相談し、加害者が上司の場合はそのさらに上の上司に相談しましょう。社内にハラスメント相談窓口がある場合は、そちらも活用できます。

ただし、会社から注意を受けても相手が聞き入れなかったり、相談したこと自体が相手を刺激したりするおそれもあります。

会社への相談と並行して、警察や弁護士への相談も検討しておくことが大切です。

④警察に相談する

つきまとい等をして不安を覚えさせている相手に「これ以上繰り返してはならない」と警告できるのは、警視総監・道府県警察本部長または警察署長です(ストーカー規制法4条1項)。

警告より強い措置として、同じ行為を繰り返してはならないと命じる「禁止命令」を、都道府県公安委員会が出すこともできます(同法5条1項)。どちらも被害者の申し出を受けて動くのが基本のため、入口は警察への相談になります。

罰則も定められています。ストーカー行為をした人には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、禁止命令に違反してストーカー行為をした人には2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が科されます(同法18条・19条)。

ストーカー行為に至らなくても、禁止命令そのものに違反すれば6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(同法20条)。

※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」を一本化した新しい刑罰です。刑事施設に拘置したうえで、改善更生のために必要な作業や指導を行うことができます。

ただし、証拠が不十分な場合には緊急性を感じてもらえず、動いてくれないこともあります。刑事事件として扱ってもらうには、説得力のある被害の主張と明確な証拠の提示が欠かせません。

警察への相談に関しては、「ストーカーを警察に相談したらどうなる?相談後の流れを解説」にも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

⑤弁護士に相談する

弁護士は、具体的な対策法を提示してくれます。どんな状況であれば警察は動いてくれるのか、どういう証拠を提示すれば被害を主張できるかを熟知しています。

弁護士費用がかかるという面がありますが、相手と直接顔を合わせることなく、代理人を通じて話し合いを進められます。

弁護士に相談した場合の具体的なサポート内容は、「ストーカー被害に強い弁護士に無料相談|費用と相談の流れを解説」にまとめています。

放置した会社が問われる法的責任とリスク

社内ストーカーを「社員同士の個人的なトラブル」として様子を見ていると、会社自身が責任を問われる立場に回ることがあります。相談を受けながら動かなかった場合に生じる2つのリスクを整理します。

安全配慮義務違反として損害賠償を請求されるリスク

先に触れた安全配慮義務(労働契約法5条)は、機械や設備の危険を防ぐことに限られません。この「安全」には心身の健康も含まれると解されており、社内でのつきまといを把握しながら何もしなかった場合には、安全配慮義務違反として被害者から損害賠償を請求されるおそれがあります。

とくに、以前からセクハラなどの問題が起きていた場合は、つきまといへの発展を会社が予見できたとして、予防を怠ったと評価されやすくなります。

加害者の言動に性的な内容が含まれる場合には、男女雇用機会均等法11条1項の措置義務も関わってきます。

同項は、職場の性的な言動により従業員の就業環境が害されることのないよう、相談に応じて適切に対応するための体制整備その他の措置を講じることを事業主に義務づけています。

具体的にどのような措置が求められるかは、厚生労働省の「職場におけるハラスメントの防止のために」で公表されています。

会社にとって「知らなかった」は言い訳になりにくく、被害を認識した時点で対応の必要が生じると考えるべきです。

被害者だけでなく周囲の社員の離職につながるリスク

ストーカー被害が長引くと、被害者は精神的な負担を抱えたまま働き続けることになります。

加害者が同じフロアにいれば、顔を合わせるたびに緊張を強いられます。出社そのものが苦痛になり、離職という選択に追い込まれることもあります。

影響を受けるのは当事者だけではありません。対応しない会社の姿勢は周囲の社員にも伝わり、職場全体への不信感につながります。

被害を訴えても動いてもらえなかったという話が広まれば、相談窓口そのものが機能しなくなり、周囲の社員の離職を招くこともあります。

社員から相談を受けた会社がとるべき対応

社内ストーカーの相談を受けた会社が最初にすべきことは、事実関係を白黒つけることではなく、被害者を危険から遠ざけることです。初動から再発防止までを5つの段階に分けて解説します。

被害者の安全確保を最優先に動く

ストーカー被害の申告を受けたら、調査が終わるまで対応を保留するのではなく、被害者の身を守ることを先に考えます。

ストーカー規制法9条3項も、被害者を雇用する者に対して、被害者への援助に努めるよう求めています(努力義務)。

座席の位置や退勤時間をすぐに調整できるかどうかを、その日のうちに検討します。ただし、本人の意向を確かめないまま席替えや異動を進めると、かえって被害者に不利益が生じることがあります。措置の内容は本人の希望を聞きながら決めてください。

被害の内容と証拠を時系列で記録する

被害者からは、ストーカー行為の内容・頻度・手段について具体的に聞き取ります。メールやメッセージの履歴、着信記録など、証拠の提出も求めます。

社内の人間が相手である以上、被害者が萎縮して話しにくい状況に置かれていないか配慮しながら進めることが必要です。

聞き取った内容は、日付と場所を添えて時系列で記録に残します。この記録が、後の処分の相当性を判断する材料になります。

加害者への事実確認と処分は慎重に進める

社内ストーカーをした社員への事実確認や処分は、慎重に進める必要があります。

ヒアリングの事実が伝わること自体が、ストーカー行為のエスカレートや被害者への報復を招くおそれがあるためです。

当事者が同じ部署であれば、配置転換や在宅勤務を活用して物理的な接触の機会を減らすことが有効です。配置転換は被害者ではなく加害者側で検討するのが基本です。

懲戒解雇を含む懲戒処分を検討する場合は、就業規則との整合性や処分の相当性を確認する必要があります。

重すぎる処分は加害者の逆恨みを招くリスクがある一方、軽すぎる処分は被害者の信頼を損ないます。判断に迷う場合は弁護士に相談したうえで進めることをお勧めします。

警察への相談と法的手段を検討する

加害者の行為がストーカー規制法に該当する場合や、暴力的な言動で被害者の身が危ないと判断される場合は、ためらわず警察へ相談しましょう。

警察が介入することで、加害者への警告や禁止命令といった法的な抑止力が働きます。

被害者が希望する場合には、会社の担当者が一緒に警察署へ出向くことで、被害者の心理的な負担を軽くできます。

なお、加害者が退職した後も被害が続く場合があります。退職によって会社の法的責任がなくなるわけではないため、在職中に適切な措置を講じたかどうかが問われる点には注意が必要です。

就業規則と相談窓口を整え、顧問弁護士と連携する

個別の事案への対応と並行して、再発を防ぐ社内体制を整えることも会社の責務です。

就業規則につきまとい行為を明確に禁止する条項を盛り込み、違反した場合の処分内容を定めて全社に周知しておくことが第一歩になります。

ハラスメント相談窓口の設置や外部カウンセラーの活用など、被害者がためらわずに相談できる環境をつくることも欠かせません。

加害者への処分は労働法との兼ね合いが避けられないため、顧問弁護士など、いつでも法的な助言を求められる相手を確保しておくと判断を誤りにくくなります。

ストーカー被害は、被害者が声をあげなければ第三者が気づきにくい性質があります。定期的な社内研修を通じて「こうした行為は見過ごさない」という会社の姿勢を示し続けることが、有効な抑止力になります。

社内ストーカーの被害を一人で抱え込んでいる方へ

社内ストーカーは、個人情報やスケジュールを把握されやすい環境で起こるため、放置すれば行為が激しくなり、退職しても解決しないことがあります。

弁護士に相談すれば、どの証拠を残すべきか、会社にどう対応を求めるか、警察にいつ相談するかを、状況に応じて組み立てられます。

警察がすぐに動けない段階でも、相手への警告書の送付や、裁判所に申し立てて接近・面会を差し止める仮処分といった法的手段を検討できます。

「相手を刺激したくない」「職場で大ごとにしたくない」という気持ちから我慢を続けている方も、すでに相談したものの状況が変わらない方もいるでしょう。

毎日顔を合わせなければならない職場での被害は、想像以上に大きなストレスになります。

当事務所はストーカー被害の対応実績が豊富にあります。弁護士が窓口となり、相手との直接のやり取りを減らしながら解決に向けて動きます。

全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずは現在の状況をお聞かせください。社内でのつきまといに悩む企業のご担当者からのご相談も承っています。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

ストーカー被害の解決に豊富な実績を持つ。元交際相手からのつきまとい、ネットストーカー、職場でのストーカー被害など、警察に相談しても動いてもらえないケースにも弁護士として毅然と対応。「報復が怖い」「大事にしたくない」という被害者の心情に寄り添い、穏便かつ確実にストーカー行為を止めさせることに全力を注いでいる。

ストーカー被害 ネットストーカー つきまとい・待ち伏せ 元交際相手の嫌がらせ 犯人特定・慰謝料請求
メディア掲載 フジテレビ「とくダネ」/ ダイヤモンド・オンライン / @DIME / サイゾー 他多数
講演実績 「不当要求対応の基礎」「犯罪組織によるマネー・ロンダリングと投資詐欺への法的処置」等
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