盗撮の有名判例を弁護士が解説

着衣の上からでも盗撮として犯罪とされた判例

事案の概要

この事案は、被告人が正当な理由がないのに、某市内のショッピングセンター1階の出入口付近から女性靴売場にかけて、女性客(当時27歳)に対し、その後を少なくとも約5分間、40m余りにわたって付けねらい、背後の約1~3mの距離から、右手に所持したデジタルカメラ機能付きの携帯電話を自己の腰部付近まで下げて、細身のズボンを着用した同女の臀部を同カメラでねらい、約11回撮影したという事案です。

判例文抜粋

最高裁判所は、「以上のような事実関係によれば、被告人の本件撮影行為は、被害者がこれに気付いておらず、また、被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるものといえるから、上記条例10条1項、2条の2第1項4号に当たるというべきである」と判示して有罪とされました(最高裁判所平成20年11月10日決定)。

弁護士の解説

迷惑防止条例では、「衣服等で覆われている身体又は下着を撮影」したり、「写真機等で衣服を透かして撮影」したりすることは禁じられています。

しかし、本件の被告人は「衣服の上」から女性の臀部を撮影しただけであるとして、同条例が禁止する「前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること」に該当するかが争われた事案でした。

判例では、被害者が本件撮影行為に気付いておらず、着衣の上からの撮影行為であっても、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであるとして、要件該当性が認定されています。

盗撮に成功せずとも犯罪になるとされた判例

事案の概要

この事案は被告人が、正当な理由なく、都内B店(以下「本件店舗」という。)において、被害者Aに対し、手に持った小型カメラを使用して、Aの左横又は後方から、Aのブラウス着用の胸部付近やスカート着用の臀部を盗撮したことが東京都の迷惑防止条例に違反する犯罪であると判断された事案です。

第一審では、性的な意味合いのある部位を狙ったり、そのような部位を強調したりして撮影した動画とは認められないこと、被告人が撮影した回数が少なく、Aが撮影されている時間も短いこと、被告人がAを付け狙うなどの執ような行為に及んでいないとして無罪とされましたが、控訴審では有罪が言い渡されています

判例文抜粋

「本件各行為が「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」(本件禁止行為)に当たることは明らかというべきである」と判示しています。

さらに裁判所は、「なお、弁護人は、本件条例5条1項3号にいう「卑わいな言動」とは、同項1号及び2号と同程度の卑わい性を具備していることが必要であると解すべきであって、着衣の上からの撮影行為が同項3号に当たるといえるためには、特に高度な不審性のある外形的態度や特に高度な嫌悪感を催させるような態様を伴うことを要求すべきであると主張するが、そのような主張を踏まえても、本件各行為が本件禁止行為に当たるとの当裁判所の判断を左右するものではない」と念押しをしています(東京高等裁判所令和4年1月12日判決)。

弁護士の解説

多くの迷惑防止条例では、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、人に対し、公共の場所等において、卑わいな言動をするものを禁止しています。

そして裁判所は、「本件禁止行為に当たるか否かの判断に当たっては、対象となる行為そのものが、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言動であって、被害者を著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるものといえるか否かの観点からの評価が重要である」と判示しています。

そのうえで「衣服を着用した身体を撮影し、又は衣服を着用した身体に対して写真機等を構える行為であっても、その意図、態様、被害者の服装、姿勢、行動の状況や、写真機等と被害者との位置関係等を考慮し、被害者や周囲の人から見て、衣服で隠されている下着又は身体を撮影しようとしているのではないかと判断されるものについては、条例が規定する「人を著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような行為であつて、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をする」行為に当たると解するのが相当である」と判断しています。

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