リベンジポルノ防止法の有名判例を弁護士が解説

①女性8人との性行為動画をインターネット上に公開した事例

事案の概要

この事例は被告人が、複数回にわたり多数の女性との性行為・性交類行為をインターネット上で公表した事件です。

被害者は18歳~31歳の8人の女性で、被告人は自宅で被害女性らの顔貌および同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを、サーバーコンピュータに送信して記録・保存し、不特定多数のインターネット利用者が同動画を閲覧可能な状態に設定しました。

このように第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、性交または性交類行為にかかる人の姿態である「私事性的画像記録物」を公然と陳列し、わいせつな電磁的記録の記録媒体を公然と陳列したことが、リベンジポルノ防止法に違反するとして起訴された事件が本件です。

リベンジポルノ防止法とはどんな法律?構成要件と成立犯罪を解説

判例分抜粋

「被告人は、専ら利欲目的から、被害者の人格を何ら顧みることなく、その名誉や私生活の平穏を著しく侵害する本件各犯行に及んだものである。被害者数は8名、訴因の数は17にも及んでおり、本件は常習性が明らかに認められる職業的犯行というべきである。被害者らは、本件各犯行によって多大な精神的苦痛を被るとともに、性交場面の動画がインターネット上に拡散したことで、現在もなお不安な日々を送っているのであって、生じた結果は重大である。これらによれば、被告人の刑事責任を到底軽視することはできず、その責任を服役によって果たさせることも十分に考えられる。しかしながら他方で、8名の被害者のうち、7名との間で示談が成立していること、罪を素直に認め、反省の態度を示していること、母親が情状証人として出廷し、監督を誓約していること等の事情も認められる。これらの被告人にとって酌むべき事情をも考えると、自由刑の前科がない被告人に対しては、なお懲役刑の執行を猶予することも許されるというべきである」と判示しました。

裁判所は、被告人に懲役3年および罰金100万円を言い渡し、懲役刑の執行を法定の最長期間である5年間猶予し、今回に限り社会内で反省と更生の日々を送らせる機会を与えました(神戸地方裁判所令和2年3月9日判決)。

弁護士の解説

この事案は、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)」に違反する、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の事例です。

特に本件は、被害者数は8人・犯罪事実の数は17件にも及ぶものであり、被害者との性行為や性交類似行為をインターネットで配信して不当な利益を得ていたこともあり、非常に悪質なリベンジポルノ事件であると言えます。

性交場面の動画がインターネット上に公開されてしまい、被害女性たちは不安な日々を送っていることから被害結果は重大であると判断されています。

そのうえで被告人に有利な点として以下のような事情を考慮して執行猶予判決が下されています。

  • 被害者8名のうち、7名とは示談が成立していること
  • 犯罪を素直に認め、反省の態度を示していること
  • 母親が情状証人として監督を誓約していること
  • 自由刑の前科がないこと

②SNSで被害女性の性的画像を投稿した事例

事案の概要

この事例は、被告人が自宅においてスマートフォンを使用してインターネットを介して、被害者の顔及び同人が男性器を口淫する姿が撮影された画像データをサーバーコンピュータに送信して記憶させ、不特定多数のインターネット利用者が閲覧できるような状態に設定しました。このような行為が、私事性的画像記録物を公然と陳列した罪にあたるとして起訴されたのが本件です。

さらに被告人は、女性を装って被害男性にホテルで会う約束をして、その後女性の夫になりすまして因縁をつけて、慰謝料名目で現金を脅し取った疑いでも起訴されています。

判例分抜粋

「各犯行は、各被害女性にとって、私的な性的画像が自身の知らないところで拡散する危険性を有するものであり、各被害女性の私生活の平穏を害し、大きな精神的苦痛を与えている。また、・・・被害男性に対し、既婚女性の夫になりすまして金銭を要求するメールを繰り返し送信し、4回にわたり合計21万円を振り込ませたものであって、執拗かつ卑劣な犯行であり、被害男性に与えた不安、畏怖も大きい。・・・以上によれば、被告人の刑事責任は相応に重いといわざるを得ない。被告人が各事実を認めて反省の言葉を述べていること、前科がないこと等を考慮し、今回に限り社会内で更生する機会を与えることとする」と判示しています。

裁判所は被告人に懲役3年、執行猶予5年を言い渡しました(名古屋地方裁判所令和2年1月16日判決)。

弁護士の解説

この事例は、被害者の性的な画像をSNS上にアップロードした「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」違反2件と、既婚女性を装って電子メール等でやり取りしていた被害男性から、同女性の夫になりすまして慰謝料名目で現金合計21万円を脅し取った恐喝1件の事案です。

被告人は、数百万円の借金の返済に窮することになり、私的に撮影していた性的動画の購入を募集しはじめ、性的動画の売り上げを上げるためSNSに投稿するようになりました。

このような被告人の行為については、「各被害者の心情を何ら顧みず、身勝手な理由から犯行を重ねたものであり、経緯、動機に酌量の余地はなく、強い非難を免れない」と裁判所も判断しています。

そのうえで、以下のような事情を考慮して、被告人には執行猶予付の判決が言い渡されました。

  • 被告人が各事実を認めて反省の言葉を述べていること
  • 前科がないこと
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