
境界損壊罪とは、境界標を損壊し、移動し、もしくは除去し、またはその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした場合に刑事責任を問われる罪です。刑法第262条の2に規定されています。罰則は5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰です。
境界損壊罪(きょうかいそんかいざい)は、第40章の「毀棄及び隠匿の罪」の1つとして規定されています。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 境界損壊罪の構成要件
- 境界損壊罪の立証責任
- 境界損壊罪の時効
- 境界損壊罪で警察が動くのか
などについてわかりやすく解説していきます。
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境界損壊罪の構成要件
境界損壊罪の構成要件(成立要件)は次のとおりです。
- ①境界標を
- ②損壊し、移動し、もしくは除去し、またはその他の方法により土地の境界を認識できないようにすること
以下、それぞれの要件につき解説します。
①境界標
「境界」とは土地に対する権利の場所的範囲を画する線をいい、「境界標」とは境界を示す標識のことをいいます。柱・杭・柵などの工作物のほか、立木などの自然物も境界標に含まれます。
境界損壊罪の保護法益は所有権ではなく「境界の明確性」ですので、虚偽の境界標、自分が所有する境界標も本罪の保護の対象です。土地に対する権利の「権利」とは、所有権・地上権などの物権のみならず賃借権などの債権でもよいとされています。
境界は、必ずしも正しい法律関係によるものである必要はなく、現に事実上存在するもので足りるとされています。したがって、古くから一般に承認されてきた境界、関係者の明示または黙示の合意に基づいて定められた境界は、たとえ法律上あるべき境界と一致しなくても、ここにいう境界にあたります。
②損壊、移動、除去、その他の方法で境界を認識できなくすること
次に、境界標を損壊・移動・除去、あるいはその他の方法で土地の境界を認識することができなくすることが必要です。
土地の境界を認識することができなくなったことを必要とし、境界標の損壊・移動・除去はその方法の例示にすぎないとされています。たとえば、境界にある川の流れを変えるのも、方法の一つです。したがって、境界標を損壊しても、いまだ境界が不明にならない場合は、器物損壊罪が成立する可能性はありますが、境界損壊罪は成立しません(最高裁判所昭和43年6月28日)。
なお、境界標を移動させた上で、他人の土地を占有した場合には、不動産を侵奪する手段として境界損壊罪を犯したと評価できますから、境界損壊罪のほか不動産侵奪罪(刑法第235条の2)が成立し、両罪は牽連犯として処断されます。
境界損壊罪の立証責任
境界損壊罪は故意犯であり、過失犯は処罰されません。例えば、工事業者が隣家との境界付近の工事の際に誤って(過失で)境界標を除去してしまったようなケースでは境界損壊罪は成立しません。
そして、刑事事件における立証責任は原則として検察側にあります。したがって、境界損壊の故意があったことを検察官が立証しない限り罪に問われることはありません。
境界損壊罪の時効
境界損壊罪の公訴時効期間は「5年」です。
公訴時効の期間は、刑事訴訟法250条により、犯罪の法定刑を基準として定められています。人を死亡させた罪以外の罪については、法定刑の上限が長期5年以上10年未満の拘禁刑に当たる罪の公訴時効期間は「5年」とされています(刑事訴訟法250条2項4号)。
境界損壊罪は人を死亡させた罪ではなく、罰則は「5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」ですから、法定刑の上限が「長期5年以上10年未満の拘禁刑に当たる罪」に該当します。
したがって、境界損壊罪の公訴時効期間は「5年」です。
境界損壊罪で警察は動く?
警察庁公表の「犯罪統計書」によると、令和6年における境界損壊罪の認知件数は36件、そのうち16件が検挙されていますので、検挙率は44.4%となります。警察庁公表の「令和6年の犯罪情勢」によると令和6年の刑法犯全体の検挙率が38.9%ですので、検挙件数自体は少ないものの境界損壊罪で警察に検挙される可能性は刑法犯全体の検挙率と同程度といえます。
令和4年5月には、隣家との境界にある木製の杭を引き抜いたうえ、置いてあったプランターやコンクリートブロックを投げ捨てて損壊させ、土地の境界を認識することをできなくした52歳会社員女性が境界損壊の容疑で警察に逮捕されています。
なお、境界損壊罪は非親告罪(被害者等の告訴権者の告訴がなくても検察官が起訴できる犯罪のこと)ですが、実務上は、被害者が被害届や告訴状を提出することにより捜査機関が捜査に乗り出すというケースがほとんどです。
境界損壊罪を犯してしまったら当事務所にご相談ください
この記事では、境界損壊罪の構成要件や立証責任、公訴時効、警察による検挙の実態について解説してきました。
境界損壊罪は発生件数こそ多くありませんが、隣人トラブルがきっかけで思わぬ形で刑事事件に発展することがあります。「まさか自分が逮捕されるとは思わなかった」というケースも少なくありません。もし境界損壊にあたる行為をしてしまい、今後の対応に不安を感じていらっしゃるのであれば、早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
境界損壊罪では、被害者との示談が成立すれば、逮捕・検挙を回避できる可能性が高まります。また、既に逮捕されてしまった場合でも、示談の成立は不起訴処分を獲得するための重要な要素となります。ただし、加害者本人が被害者に直接連絡を取ることは、かえって事態を悪化させるおそれがあるため、示談交渉は弁護士を通じて行うことが不可欠です。
当事務所は刑事事件を専門的に取り扱っており、被害者との示談交渉、逮捕の回避、不起訴処分の獲得について豊富な経験と実績があります。ご相談者様の状況を丁寧にお伺いした上で、最善の対応策をご提案いたします。
当事務所では全国どこからでも無料相談を受け付けております。境界損壊罪にあたる行為をしてしまい逮捕のおそれがある方、既に逮捕されたご家族がいらっしゃる方は、当事務所の弁護士までご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

