
強制わいせつ罪の刑罰は懲役のみで、罰金刑の規定がありません。有罪になれば必ず懲役刑が科されますが、事件の内容や被告人の事情次第では執行猶予がつく可能性があります。
「強制わいせつで有罪になったら実刑は避けられないのか」「どうすれば執行猶予を獲得できるのか」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、強制わいせつ罪の量刑の仕組みや執行猶予がつく条件、量刑判断で考慮される情状、そして執行猶予を獲得するために具体的に何をすべきかを刑事事件に強い弁護士が解説します。
なお、強制わいせつ事件について早急に弁護士へ相談したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をご利用ください。
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強制わいせつの刑罰は懲役のみ|罰金刑はない
強制わいせつ罪は、13歳以上の者に対して暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(13歳未満の者に対しては暴行・脅迫がなくても成立します)。
強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」です。罰金刑の規定はありません。つまり、強制わいせつ罪で起訴されて有罪判決を受けた場合、必ず懲役刑が科されることになります。
罰金刑で済む可能性がない以上、有罪判決を受ければ懲役実刑か執行猶予付きの懲役刑かのいずれかです。だからこそ、執行猶予を獲得できるかどうかが極めて重要なポイントとなります。
なお、強制わいせつの際に被害者に怪我を負わせた場合は強制わいせつ致傷罪、死亡させた場合は強制わいせつ致死罪が適用されます。これらの法定刑は「無期又は3年以上の懲役」で、有期懲役の上限は20年ですから、「3年以上20年以下の懲役、又は無期懲役」という重い刑罰が科される可能性があります。
なお、2023年7月13日の刑法改正により、強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」に統合されました。同日以降の行為には不同意わいせつ罪が適用されますが、法定刑は同じ6月以上10年以下です。本記事の量刑や執行猶予に関する解説は、不同意わいせつ罪にもそのまま当てはまります。不同意わいせつ罪の詳細については「不同意わいせつ罪とは?旧強制わいせつ罪との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。
強制わいせつは懲役実刑?執行猶予がつくことは?
強制わいせつ罪で起訴され裁判で有罪の認定を受けても、必ず実刑となるわけではありません。判決を受ける時点で執行猶予の条件を満たしていれば、実刑ではなく執行猶予付きの判決を受けることができます。そこで、以下では、執行猶予付きの判決を受けるための条件について解説していきたいと思います。
執行猶予がつく条件
執行猶予付き判決を受けるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
●3年以下の懲役の判決の言い渡しを受けること
まず、判決で言い渡される懲役の刑期が3年以下であることが条件です。強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役ですから、3年以下の判決を受ける可能性は十分にあります。
●判決より前に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと
次に、判決より前に禁錮以上の刑(懲役・禁錮・死刑)に処せられたことがないことが条件です。罰金や科料の前科があっても、この条件には影響しません。なお、過去に禁錮以上の実刑を受けた方でも、刑の執行終了から5年以内に禁錮以上の刑に処せられていなければ、執行猶予の対象となります。ただし、同種の前科がある場合は初犯と比べて量刑が重くなる傾向が強く、執行猶予の獲得は難しくなります。前科がある場合の量刑への影響については「強制わいせつで前科があると量刑は重くなる?軽くするには?」で解説しています。
●有利な情状があること
上記の条件に加え、被告人に有利な情状があることも必要です。情状は犯罪そのものに関する犯情と、犯情以外の一般情状にわけられます。具体的にどのような事情が考慮されるかは、次のセクションで解説します。
執行猶予制度の詳しい仕組みや条件については「執行猶予とは?実刑との違いや認められる条件をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
執行猶予の量刑の可能性を高める事情(情状)
裁判官が判決で言い渡す刑罰を決めることを「量刑」といいます。そして、刑期はどれくらいにするか、懲役実刑にするか執行猶予にするか、といった量刑判断において考慮されるのが「情状」です。
では、強制わいせつ事件において、執行猶予の量刑になる可能性を高める情状にはどのようなものがあるのか。以下では、「情状」を犯情と一般情状にわけて解説します。
犯情
まず、犯情には、次のようなものがあります。
- 犯行の計画性
- 犯行態様
- 結果の有無及びその程度
犯行の計画性とは、犯行が計画的か偶発的かということです。計画的な犯行に比べ、偶発的な犯行であれば量刑が軽くなり、執行猶予がつきやすくなります。
犯行態様とは、犯行の手段や実際の犯行がどれほど悪質だったかということです。暴行やわいせつ行為の回数・程度が軽いほど、量刑上は有利に働きます。
結果の有無及びその程度とは、犯行の結果、被害者に与えた損害の有無及びその程度のことです。たとえば、わいせつな行為の結果、被害者に精神的ダメージを与え、人と接すること、学校に行くこと、仕事に行くことを困難にしたなどという場合は執行猶予となることが難しくなります。
また、余罪の有無も量刑に影響します。同種の余罪が複数ある場合、常習性があると判断されて刑が重くなる可能性が高まります。
一般情状
次に、一般情状には、次のようなものがあります。
- 被告人の反省の有無
- 被害弁償・示談成立の有無
- 被害者の処罰感情
- 再犯可能性の有無
- 更生可能性の有無
被告人の反省の有無とは、罪を認めて反省の態度を示しているか否認を貫いているかということです。否認を貫いている場合よりも、当初から罪を認め反省の態度を示している方が執行猶予となる可能性は高くなります。
被害弁償・示談成立の有無とは、被害者に対して被害弁償し、かつ示談を成立させたかどうかです。被害者に被害弁償し、かつ示談を成立させた方が執行猶予となる可能性は格段に高くなります。
被害者の処罰感情とは、被害者の被告人に対する処罰感情が厳しいのか緩和されているのかということです。示談の成立などによって犯行直後より処罰感情が和らいでいれば、量刑上プラスに評価されます。
再犯可能性とは、被告人の前科・前歴、性癖、性的嗜好などから今後も再犯に及ぶおそれがあるかどうかということです。再犯のおそれが低いと評価されれば、執行猶予の判断に傾きやすくなります。
更生可能性とは、被告人の更生の意欲、家族など周囲のサポート体制の有無などから、被告人が更生していけるかどうかということです。家族の監督体制が整っている場合など、更生の見込みが高いと判断されれば執行猶予が選択されやすくなります。
強制わいせつで執行猶予がつく確率は?
令和6年版犯罪白書によると、令和5年(2023年)に通常第一審で有期の懲役刑又は禁錮刑を言い渡された人のうち、全部執行猶予付き判決を受けた人の割合は65.3%でした。
また、強制わいせつ事件に限ったデータとしては、「平成27年版犯罪白書」に掲載された平成26年の科刑状況が参考になります。これによると、強制わいせつ事件では約64.7%に執行猶予がついています。
ただし、執行猶予付き判決を受けられるかどうかは、前述の条件を満たしたうえで、個別の事情によって左右されます。上記の数字はあくまで統計上の参考値であり、実際の結果は事案ごとに異なる点にご留意ください。
強制わいせつで執行猶予を獲得するには何をすべき?
強制わいせつ罪で執行猶予を獲得するには、判決までに被告人にとって有利な情状をどれだけ作ることができるかにかかっています。そこで、以下では、強制わいせつ罪で執行猶予を獲得するために、判決までにやるべきことをご紹介していきます。
被害弁償、示談を成立させる
前述のとおり、被害弁償と示談の成立は情状に大きな影響を与えますから、まずは被害者に対して被害弁償し、示談を成立させることが何より先決です。
示談では、被害者に対する謝罪の意思を伝えたうえで、慰謝料を含む示談金を支払い、被害者から「加害者の処罰を望まない」旨の意思表示(宥恕)を得ることが理想です。宥恕つきの示談が成立していれば、裁判官が執行猶予を選択する大きな判断材料となります。
ただし、強制わいせつのような性犯罪では、被害者が加害者本人と直接やり取りすることを拒否するのが通常です。そもそも被害者の連絡先は、捜査機関から弁護士にしか開示されません。そのため、示談交渉は必ず弁護士に依頼する必要があります。弁護士が間に入ることで、被害者の心理的負担を軽減しながら、適切な条件での示談成立を目指すことができます。
示談金の具体的な相場や交渉の進め方については「不同意わいせつ(旧強制わいせつ)の示談金相場や示談の進め方」で詳しく解説しています。また、実際に示談が成立して不起訴となった事例については「飲酒後に不同意わいせつを疑われ示談成立で不起訴となった事例」をご参照ください。
家族などの周囲の協力を得る
強制わいせつ罪をはじめとする性犯罪は再犯率が比較的高い犯罪です。そのため、裁判では更生可能性も重要視されます。更生可能性があると判断されるためには、まずは本人が更生の意欲を示し、家族などの適切な監督者に協力を得て、裁判で情状証人として出廷してもらうことなどが必要です。
治療・カウンセリングを受ける
性依存症の傾向が顕著な場合は、専門機関で治療やカウンセリングを受けることも重要です。治療を継続していることは、裁判において再犯防止に向けた具体的な取り組みとして評価され、再犯可能性が低いと判断される材料になります。身柄を拘束されている場合は、専門機関への入通院のため、釈放に向けた活動も必要です。
強制わいせつ事件でお悩みの方は早めに弁護士へご相談ください
強制わいせつ罪は罰金刑がなく、有罪になれば必ず懲役刑が科されます。しかし、被害者との示談成立をはじめとする有利な情状を積み重ねることで、執行猶予付き判決を獲得できる可能性は十分にあります。
強制わいせつ事件では、被害者の連絡先は捜査機関から弁護士にしか開示されないため、示談交渉を進めるには弁護士への依頼が不可欠です。逮捕直後の早い段階から弁護士が動くことで、示談の成立だけでなく、不起訴処分や早期釈放につながるケースもあります。
ご自身やご家族が強制わいせつ事件の当事者となり、今後の処分に不安を感じている方、すでに警察から連絡を受けている方は、できるだけ早い段階でのご相談が今後の結果を左右します。当事務所は刑事事件に注力しており、全国どこからでも無料でご相談いただけます。一人で抱え込まず、まずはお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

