強制わいせつ致傷罪・致死罪の構成要件・罰則と量刑を解説

強制わいせつ致傷罪とは、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪もしくは監護者わいせつ罪の既遂罪を犯した、又は、これらの罪の未遂罪を犯したことによって被害者に怪我を負わせた場合に成立しうる罪です。死亡させた場合には強制わいせつ致死罪が成立します(刑法181条1項)。両罪とも罰則は「無期又は3年以上の懲役」です。

以下では、強制わいせつ事件に強い弁護士が、

  • 強制わいせつ致傷罪・致死罪の構成要件
  • 強制わいせつ致傷罪・致死罪の罰則と量刑
  • 強制わいせつ致傷罪の弁護活動

についてわかりやすく解説していきます。

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強制わいせつ致傷罪・致死罪の構成要件

強制わいせつ致死傷罪の構成要件(成立要件)は、大きくわけると次の3つから構成されます。

  • ①強制わいせつ罪(※)の既遂又は未遂を犯したこと
  • ②死傷の結果を生じたこと
  • ③①と②との間に因果関係があること

以下、それぞれについて詳しく解説します。

※強制わいせつ罪のほか、準強制わいせつ罪監護者わいせつ罪も含まれますが、便宜上、この記事では強制わいせつ罪に絞って解説していきます。

① 強制わいせつ罪の既遂又は未遂を犯したこと

強制わいせつ致傷罪・致死罪が成立するには、強制わいせつ罪の既遂または未遂を犯したことが必要です。

強制わいせつ罪は暴行又は脅迫を手段として、人にわいせつな行為を行った場合に問われる罪です。

暴行は人の身体に対する有形力の行使をいい、殴る、蹴る、押し倒す、羽交い絞めにするなどが暴行の典型例です。

脅迫は人の生命、身体、名誉、自由、財産に対して害を加える旨を告知することをいい、凶器ちらつかせながら「~に応じなければ殺すぞ」、「~をネットに公開するぞ」などと脅す行為が典型例です。

わいせつな行為は、徒に性欲を興奮又は刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為と解されており、無理やりキスをする、胸をもむ、陰部を触る、腿・尻を触る、撫でまわす行為などが典型例です。

また、被害者の背後からいきなり抱き付き、両手で両胸をもむ場合のように、暴行それ自体がわいせつな行為にあたる場合も強制わいせつ罪が成立します。

なお、被害者にわいせつな行為を行う意図で暴行又は脅迫行為に及んだものの、何らかの原因でわいせつ行為を行うことができなかった場合に強制わいせつの未遂罪が成立する可能性があります。

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② 死傷の結果が生じたこと

次に、死傷の結果が生じたことが必要です

被害者が死亡した場合は強制わいせつ致死罪に傷害を負わせた場合は強制わいせつ致傷罪に問われます。

傷害とは人の身体の生理的機能を害することで、健康状態を不良にした場合も含むと解されています。

したがって、いわゆる怪我のほか、意識障害、睡眠障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)なども傷害にあたります。

③ ①と②との間に因果関係があること

最後に、強制わいせつの既遂又は未遂によって、人の死傷を発生させたといえることが必要です。反対に、強制わいせつの既遂又は未遂がなくても、あるいは別の因果によって人の死傷が生じたといえる場合、因果関係は認められず、強制わいせつ致死傷罪は成立しません。

死傷の結果は、わいせつな行為からはもとより、その手段である暴行又は脅迫から生じたものでもよく、さらには、強制わいせつに随伴する行為から生じたものであればよいとされています。

したがって、強制わいせつの加害行為から逃げようとした被害者が、数メートル先のブロックに脚をひっかけて転倒し怪我をした場合でも、強制わいせつ致傷罪が成立する可能性があります。

なお、死傷を生じさせることまでの認識は不要ですから、被害者にわいせつな行為をしようと思って手を出した際、知らず知らずのうちに被害者に怪我を負わせたり、被害者を死亡させてしまった場合でも強制わいせつ致死傷罪が成立する可能性があります。

強制わいせつ致傷罪・致死罪の罰則と量刑

罰則

強制わいせつ致傷罪・致死罪の法定刑は「無期又は3年以上の懲役」です。つまり、判決で有罪との認定を受けると、無期か有期懲役かを選択され、有期懲役を選択された場合は、基本的には最短でも3年の懲役を科されることになります。両罪とも法定刑は同じですが、強制わいせつ致傷罪よりも強制わいせつ致死罪の方が結果が重大なため刑が重たくなります。

量刑の傾向

では、実際の裁判ではどのような量刑を科されているのでしょうか?

この点、令和3年度犯罪白書「裁判員裁判対象事件 第一審における判決人員(罪名別、裁判内容別)」によると、令和2年中に全国の地方裁判所に強制わいせつ致傷罪又は同致死傷罪で起訴され、刑事裁判にかけられた人の数は66人で、量刑の内訳は次のとおりです。無罪判決を受けた人はいません。

20年以下15年以下10年以下7年以下5年以下3年以下
なしなし1人5人23人37人

なお、判決で3年以下の懲役を言い渡されると執行猶予の可能性があります。3年以下の懲役の人員を実刑と執行猶予にわけると次のとおりとなります。

実刑全部執行猶予
6人(一部執行猶予を受けた者はなし)31人(うち18人は保護観察付)

確かに、強制わいせつ致死傷罪は重い罪ですが、判決で有罪の認定を受けた人の約半数近くの人が執行猶予付きの判決を受けていることがわかります。もっとも、結果の重大性から考えると、強制わいせつ致死罪で執行猶予付きの判決を受けることは考え難く、専ら強制わいせつ致傷罪で執行猶予付きの判決を受けることが多いものと考えられます。

量刑を左右する要素

刑事裁判では、検察官と弁護士のそれぞれが証拠によって証明した諸情状を、裁判官が総合的に勘案して量刑を決めることになっています。

この情状には犯罪そのものの情状と犯情以外の情状があります。前者を犯情、後者を一般情状といいます。

犯情には、

  • 犯行動機
  • 犯行に至る経緯
  • 犯行の悪質性(計画的か偶発的かなど)
  • 犯行態様(犯行が単発か執拗かなど)
  • 被害の結果(死亡か傷害か、後遺症を患ったかなど)

があります。

一方、一般情状には、

  • 被告人の反省の有無及びその程度
  • 被害弁償、示談成立の有無
  • 被害者の処罰感情の程度
  • 再犯可能性(同種前科、前歴の有無、常習性の有無、顕著な性癖の有無、性や異性への考え方、向き合い方など)
  • 更正可能性(被告人の意欲、専門機関への通院歴周囲のサポート体制の充実度、適切な監督者の有無、就労可能性の有無など)

などがあります。

一般情状のうち、量刑を軽くする上で重要な情状は「被害弁償、示談成立の有無」です。判決までに被害弁償が終わり、示談が成立していれば、被告人にとって有利な量刑を科される可能性が高くなります。

強制わいせつ致傷罪の弁護活動

以下では罪を認める場合と認めない場合にわけてご紹介します。

罪を認める場合

罪を認める場合の弁護活動は被害者への謝罪と示談交渉です

強制わいせつ致傷罪(致死罪)は裁判員裁判対象事件で、起訴されると裁判員(裁判官ではない一般市民)が参加する裁判を受ける必要があります。

裁判員裁判は、殺人・強盗致死傷・身代金目的誘拐など重大な犯罪が対象となる裁判ですので、被害者へ真摯に謝罪して示談を成立させたとしても、起訴されて刑事裁判にかけられる可能性も十分あります。

もっとも、起訴前に被害者に謝罪し示談が成立すれば、不起訴処分を受け、裁判を受けなくて済むこともあります。一方、起訴後に示談が成立した場合でも量刑にプラスの影響が働き、実刑ではなく執行猶予となる可能性もあります。

ただし、強制わいせつ致傷は被害者の人格、個人の性的尊厳を著しく踏みにじる重大な犯罪行為であり、精神的・肉体的な被害は計り知れません。そのため、示談に応じてくれるかどうかは被害者の意向という点も否めません。誠意をみせるためには、弁護士を介して一刻も早く被害者に反省と謝罪の気持ちを伝えることが重要です。そのうえで弁護士が被害者の精神的負担とならないよう示談交渉を行います。

また、強制わいせつ致死傷罪をはじめとする性犯罪では、不起訴処分や執行猶予を獲得する上で再犯可能性がないことを検察官や裁判官にアピールすることも重要です。特に性犯罪の傾向が進んでいる場合は専門の治療機関で治療やカウンセリングを受ける、自助グループに参加することなどが必要です。弁護士はこれらが実現できるようサポートします。

罪を認めない場合

一方、罪を認めない場合は、取調べで不利な供述をしてしまわないように接見を繰り返して(身柄拘束されている場合)取調べのアドバイスをします。仮に起訴された場合は、検察官に集めた証拠の開示を求め、証拠を精査して裁判に臨みます。裁判では被害者や目撃者の証言の不自然さや不合理さを追及して無罪獲得に努めます。

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