
暴力行為等処罰に関する法律は、集団的・常習的な暴力行為や凶器を用いた犯罪を刑法よりも重く処罰する特別法です。
本記事では、暴力行為等処罰法違反が実際にどのような事案で適用され、裁判所がどのような判断を下しているのか、近年の判例を4つ紹介します。障害児童施設での集団暴行、スポーツ指導者による暴行・脅迫、常習的なDV、病院での患者虐待など、多様な事案における量刑や裁判所の判断のポイントを解説しています。
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①障害児童施設の職員から集団暴行を受けた事件
事案の概要
この事例は、障害児通所支援事業所の管理責任者であった被告人が、同事業所に通所する重度の自閉症および知的障害を有する被害児童(当時15歳)に対し、約1週間のうちに複数回にわたり暴行を加えた事件です。
被告人は、バランスボールを顔面に投げつける、平手で顔面を殴る、バインダーで顔面を殴るなど単独で行った行為に加え、他の複数の職員と共同して、被害児童の髪をつかんで床に頭部を打ち付けたり、頭部や顔面を拳骨で殴ったり蹴ったりしました。
判決文抜粋
「被告人は、約1週間のうちに多数回にわたり被害者に暴行を加えており、その態様も被害者の頭部を拳骨で殴ったり、顔面を蹴るなどの強度なもので、悪質な犯行である。(中略)そして、暴行、暴力行為等処罰に関する法律違反(略)については…被害を訴えることが困難で暴行を受けるしかなかった被害者の肉体的苦痛や精神的苦痛も軽視することはできない。」
弁護士の解説
裁判所は、被害者が障害により抵抗・訴えが困難であったこと、被告人が施設の責任者という立場にありながら、被害者の障害特性に立腹し、強度な暴行を繰り返した点から、犯行の動機に酌むべき点がないと厳しく指摘しています。
裁判所は、複数の従業員が共同して暴行を加えた行為について、「数人共同して暴行を加えた」ものとして、暴力行為等処罰に関する法律違反の成立を認定し、最終的に被告人には懲役1年10月、執行猶予4年が言い渡されました(大阪地方裁判所令和6年12月23日判決)。暴力行為等処罰法の構成要件や罰則の全体像については「暴力行為等処罰に関する法律とは?構成要件・罰則・時効を解説」で詳しく解説しています。
②野球チームの指導者による児童らに対する暴行・脅迫事件
事案の概要
野球チームの指導者であった被告人が、複数の被害者に対し、短期間のうちに暴行や凶器を示しての脅迫に及んだ事案です。
具体的な事件の内容は、以下のとおりです。
・チーム運営関係者(A)に対し、包丁を示して「殺すぞ」「刺すぞ」と脅迫し、腕で頸部を絞め付けたり、足で大腿部を蹴ったりする暴行を加えた(示凶器脅迫・暴行)。
・チームに所属する中学生児童2名(B、C)に対し、顔面を拳や平手で多数回殴り、腹を殴り、顔や胸を足で踏みつけるなどの執拗かつ強度の暴行を加えた。
・中学生児童の一人(C)に対し、さらに包丁の刃先を首付近に突き付け、「刺したろか」、「人刺すのは簡単やから」などと脅迫した。
判決文抜粋
「暴行態様は、いずれも執拗かつ強度なものであり、・・・脅迫態様は、包丁を示しながら「殺す」や「刺す」などの文言を用いた苛烈なものである。・・・合宿中の夜間ないし未明の時間帯に、児童らが指導者である被告人に逆らえないことを悪用し、体格差もある中で、無抵抗の児童らに犯行に及んだものであり、卑劣で悪質というほかなく、関係者らに口止めを指示した点も犯行後の情状として良くない。」
弁護士の解説
被告人の行為のうち、凶器(包丁)を示して脅迫または暴行を加えた行為について、暴力行為等処罰に関する法律違反が認定されました。
裁判所は、卑劣で悪質な犯行であり、刑事責任は重いとしながらも、被告人が事実を認めて反省の態度を示し、野球の指導から離れ、実家に居住して家族の支援を受けること、前科がないことなどを考慮し、最終的に懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡しています(大津地方裁判所令和6年10月15日判決)。
③恋人に対する常習的なDV事件
事案の概要
この事案は、被告人が当時交際していた被害女性(A)に対し多数回の暴行を行ったDV事案です。
被告人による暴行は、裸で正座させて暴行を加える、妊娠中の腹部を含む全身を殴る・蹴る、頭部をドアに打ち付ける、馬乗りになって首を両手で絞めるなど凄惨なもので、被害女性は全治約3か月の左肋骨骨折および全身打撲症の傷害を負いました。
判決文抜粋
「被告人は平成19年には交際相手に対する傷害,平成26年には交際相手に対する傷害,恐喝,令和元年には交際相手に対する傷害で,それぞれ有罪判決を受けており,その内容も,交際相手と口論をしたり,過去の異性関係を問い質したりして,暴力を振るったというものであり,被告人が,以前から,交際相手が自分の思いどおりにならないと暴力を振るう習癖を有していることがうかがえる。本件各暴行も,前記のようないきさつで及んだもので,その動機は十分了解可能である上,被告人が,前記習癖に基づき,交際相手であるAに対する支配欲や嫉妬心から日常的に行っていた暴行の一環として位置づけられ,被告人の平素の人格に基づくものといえる。」
弁護士の解説
裁判所は、被告人の一連の行為について、暴力行為等処罰法の常習傷害罪の成立を認定しました。裁判所は、犯行態様の危険性・悪質性と、被害結果の重大性、そして被告人の根深い暴力傾向から、刑事責任は重いと判示しています。
しかし、被害者との間で合計500万円という高額な被害弁償を行い、被害者との間に示談が成立している点を考慮し、求刑(懲役4年10月)に対し、懲役2年6月の実刑判決を言い渡しています。
示談による被害回復が量刑判断に与える影響力の大きさがうかがえます(佐賀地方裁判所令和3年12月21日判決)。DV事件で逮捕される基準や逮捕後の対処法については「DVで逮捕される基準は?逮捕された場合の対処法を弁護士が解説」もあわせてご確認ください。
④病院の看護師による入院患者の虐待事件
事案の概要
病院に勤務する看護師である被告人が、同僚の看護助手らと共謀し、入院中の高齢患者(当時79歳、車椅子利用)に対して悪質かつ卑劣な暴行を加えた事件です。
具体的には、職員数人で、全裸でシャワーチェアーに座らせた被害者に対し、顔面などにホースで水を掛け、洗面器やポリバケツで湯を浴びせ掛ける暴行などを行いました。
判決文抜粋
「(被告人は)共犯者である看護師と共にそのボールを被害者の身体に強く投げ付けて怯えるなどする様子を見て面白がり,その1時間余り後には,便失禁をした同被害者の体を洗った際に,同共犯者と共に,シャワーホースで顔面に水を掛けたり,洗面器やポリバケツでお湯を掛けたりし,悲鳴を上げて嫌がる被害者の反応を見て楽しんでいたのであって,いずれも看護助手である共犯者がスマートフォンで動画撮影をしている中での犯行であり,患者の人としての尊厳を守らなければならない看護師の使命をないがしろにし,被害者を辱めた悪質な行為である。また,家族や医師に被害を訴えることができないような精神症状の患者に対して行った点も卑劣である。こうした事情に照らすと,被告人に対しては強い非難を免れ得ない。」
弁護士の解説
本件では、被告人である看護師と看護助手らの合計3名で被害患者に水を浴びせた行為について、暴力行為等処罰法が適用されています。
裁判所は、本件が一夜の間の犯行に限られていることや、看護師の職を失ったという社会的制裁、前科がなく反省の意を表していることなどを考慮して、懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡しています(神戸地方裁判所令和2年8月25日判決)。
暴力行為等処罰法違反でお困りの方は弁護士にご相談ください
今回紹介した4つの判例からもわかるように、暴力行為等処罰法違反の量刑は、犯行の悪質性だけでなく、示談の成否や反省の態度、前科の有無といった情状面が大きく影響します。特に、被害者との示談交渉や裁判での情状立証は、刑事事件に精通した弁護士のサポートがあるかどうかで結果が大きく変わり得るものです。
暴力行為等処罰法違反の疑いをかけられている方や、ご家族が逮捕されて不安を感じている方は、できるだけ早い段階で弁護士にご相談ください。当事務所は刑事事件を専門に扱っており、暴行・傷害事件の弁護実績も豊富です。全国どこからでもご利用いただける無料相談を実施しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

