
不同意性交等罪では、「被害者が本当に同意していなかったのか」が裁判の最大の争点になります。「抵抗していなかったのだから同意があったはずだ」という被告人の主張が通るかどうかは、具体的な状況や証拠によって判断されます。
このページでは、令和7年に言い渡された不同意性交等罪(不同意性交等致傷罪を含む)に関する3件の裁判例を取り上げ、弁護士が判決のポイントをわかりやすく解説します。16歳未満の被害者に対するケース、身体障害を持つ被害者に対するケース、男子中学生に対するケースと、それぞれ異なる争点を含む事例です。
なお、不同意性交等事件への対応について早急にお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をご利用ください。
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16歳未満の者に対する不同意性交等罪が認定された判例
事案の概要
被告人は、公園で声をかけた当時15歳の少女(Aさん)に対し、「寒いから車で話そう」と誘惑して自宅へ連れ込みました(わいせつ目的誘拐)。そして、自宅において、被告人はAさんの下着に手を入れ、指や舌を挿入するなどの性交等を行いました。
被告人は「Aさんは18歳だと言った」、「同意があると思っていた」と反論したため、裁判では、Aさんの「同意の有無」や、被告人が「Aさんの年齢(15歳)」を認識していたかが争点となりました。
判例文抜粋
裁判所は、以下のように判示した原判決を支持しました。
「Aから「やめて」「ストップ」と言われたことにより、この時点でAの同意がないことを認識したにもかかわらず、引き続きAの膣に手指を挿入する暴行を加えたことにより、同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせて性交等をし、さらに、両手でAの両足を引っ張ってAのズボンと下着を下ろす暴行を加えたことにより、同意しない意思を全うすることが困難な状態を継続させ、Aの膣に舌を挿入して性交等をした」。
さらに、以下のように判示し、被告人の「わいせつ目的」を認定しました。
「(現に被告人宅においてわいせつな行為に出たことは被告人も認めるところであり、また、被告人の供述も、Aが先行して性的行為を誘発するような言動をしていたというものではないから、Aを自己の支配領域である自宅に連れて行こうとして、被告人車両に乗車させた時点において、被告人は、Aと会話することに加えて、わいせつな行為に出ることをも目的として有していた」(福岡高等裁判所那覇支部令和7年9月10日判決)。
弁護士の解説
改正刑法では、16歳未満の者に対し、5歳以上の年齢差がある者が性交等を行った場合、暴力や脅迫がなくても「不同意性交等罪」が成立します。
本件では、Aさんが「15歳」と伝えていた点や、服装(学校指定のジャージ)から、被告人が年齢を認識していたと認定されました。
また、車に乗り自宅までついてきた状況から、指を挿入する直前までは、被告人が「同意がある」と誤信していた可能性を一部認めました。しかし、Aさんが「やめて」「ストップ」と明確に拒絶した後は、もはや同意がないことは明らかであるため、不同意性交等罪が成立すると結論付けました。
16歳未満への性交等に適用されるこの規定を含む不同意性交等罪の構成要件全体については、不同意性交等罪とは?旧強制性交・強姦罪との違いや構成要件で詳しく解説しています。
身体障害者に対する不同意性交等致傷が認定された事例
事案の概要
この事案は、被告人が、市内のバス待合所において、当時53歳の女性(Aさん)に対し、腕を掴んで引き倒す、頭を殴打する、首を絞めるといった暴行を加え、「殺すぞ」などと脅迫した不同意性交等致傷事件です。
被告人は、Aさんが抵抗できない状態に乗じて、口腔性交や指を用いた性交等を行い、全治約2週間の傷害を負わせました。
被告人は公判で「暴行脅迫はしておらず、Aさんは同意していた」と無罪を主張しました。
判決文抜粋
裁判所は、被害者の具体的な証言と、それを裏付ける客観的証拠を重視し、被告人の弁解を退けました。
「当裁判所は、Aの証言に基づき、・・・暴行脅迫があったこと(争点①)及びAの同意がなかったこと(争点②)を認定した。そして、被告人は自らAに対して暴行及び脅迫を加えていることに加え、Aが「助けて」と叫んだり、体をよじったり太ももに力を入れたりして抵抗したり、杖を被告人に向けて逃げようとする状況を認識していたのであるから、被告人はAが性交等に同意していないことを当然認識していたというべきであり、被告人はAの同意がなく、同意をしない意思を全うすることが困難な状態にあることの認識があった(争点③)と認定した」(新潟地方裁判所令和7年7月16日判決)。
弁護士の解説
被告人は「同意があった」と主張しましたが、裁判所は以下の点からこれを否定しました。
- 身体的傷害:Aさんの耳の挫創や外陰部の裂傷、肘の打撲などは、激しい暴行や転倒があったことを示していること
- 第三者の証言:付近の住民が「助けて」という絶叫を聞いており、平穏な合意形成があったとする被告人の供述と真っ向から矛盾していること
- 被害直後の行動:Aさんは脳梗塞の後遺症で右半身が不自由でしたが、杖や荷物を現場に置いたまま必死に弟の車へ逃げ込んでいた
そのうえで、杖をついて歩く身体障害のある被害者を約1時間も付け狙った「計画性」や、約2時間にわたる「執拗な犯行」が厳しく評価されました。
障害という弱みに付け込み、性的自由を著しく侵害した結果として、懲役8年という重い実刑判決が言い渡されています。
暴行・脅迫を伴う不同意性交等致傷罪の量刑傾向や時効については、不同意性交等致傷罪とは?量刑・時効と不起訴を目指す弁護活動をあわせてご確認ください。
16歳未満の男子中学生に対する不同意性交等が認定された判例
事案の概要
この事案は、当時54歳の被告人が、SNSで「中高生に甘えてほしい」と書き込み、連絡してきた中学3年生の男子生徒(当時15歳)を自宅に招き入れ、口腔性交を行ったとして起訴された不同意性交等事件です。
本件では、被害者が性的行為に同意していたかのようなメッセージを事前に送っていましたが、法律上は「16歳未満の者に対し、5歳以上の年齢差がある者が行った性交等」に該当するため、同意の有無にかかわらず「不同意性交等罪」として処罰の対象となりました。
判決文抜粋
「被害者の年齢や被告人との年齢差に照らすと、本件犯行は、性的行為の意味を理解し、意思決定する能力が不十分な被害者に対してなされた悪質な犯行というべきである。被害者の健全な成長に及ぼす悪影響も懸念される。被告人は、小学校教師として働いていた平成20年に青少年にわいせつな行為をした条例違反により罰金刑に処され懲戒免職となり、児童館で働いていた令和3年に児童ポルノの所持により罰金刑に処され辞職している。その後、市の児童虐待対応支援員として児童を守るべき立場にあったにもかかわらず、年少者への性的欲望の赴くまま本件犯行に及んだことは強い非難に値する」(名古屋地方裁判所令和7年5月2日判決)。
弁護士の解説
この事件の被告人は、過去に小学校教師としてわいせつ事件を起こし、その後も児童ポルノ所持で処罰されていました。
それにもかかわらず、本件当時は「児童虐待対応支援員」という、本来子供を守るべき職業に就きながら犯行に及んでいた点で、再犯の危険性が高い事案であったと評価できます。
また、被告人は200万円の被害弁償を行い、カウンセリングも受けていました。通常、これらは執行猶予(刑務所に行かなくて済む措置)に繋がる有利な事情となりますが、本件では「過去の性犯罪歴」と「立場を悪用した悪質性」により、執行猶予なしの懲役2年6ヶ月という実刑判決が言い渡されています。
このように不同意性交等罪で執行猶予が認められにくい理由や、例外的に執行猶予がつく条件については、不同意性交等罪(強姦)は懲役実刑確定?執行猶予はつく?で具体的に解説しています。
不同意性交等罪でお困りの方へ
今回ご紹介した3件の判例が示すように、裁判所は被害者の証言だけでなく、身体的な傷害の状況、周囲の証人、被害直後の行動といった客観的証拠を総合して「同意の有無」を判断します。被告人の「同意があったと思っていた」という主張は、こうした証拠に裏付けられた反論がなければ認められません。
不同意性交等罪は法定刑の下限が5年と重く、起訴されれば実刑判決になる可能性が高い事件です。早期に弁護士が介入することで、被害者との示談交渉や捜査段階での対応など、処分の結果に関わる対策を講じる時間が生まれます。逮捕後は最大23日間という短期間で起訴・不起訴が決まるため、初動の対応が非常に重要です。
ご本人が逮捕された、あるいは警察から事情聴取を求められているという状況は、ご家族にとっても大きな精神的負担です。「どう対応すればいいかわからない」という状態のまま時間が経過すると、選択肢が狭まってしまいます。すでに警察から連絡が来ている場合や、被害届が出されたと聞いている場合は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
当事務所は、性犯罪事件の弁護活動に豊富な実績を持つ弁護士が対応します。全国対応・初回無料相談を実施しておりますので、状況の整理だけでもお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

