不同意性交等致傷罪とは?量刑・時効と不起訴を目指す弁護活動

不同意性交等致傷罪とは、相手が同意していない状態で性交等に及び、その相手にケガを負わせたときに成立する犯罪です。法定刑は「無期または6年以上の拘禁刑」と定められています。

本罪は、起訴されれば一般市民が参加する裁判員裁判で審理され、実刑となる可能性が高い重大犯罪です。それでも、被害者との示談や早期の弁護活動しだいで、不起訴処分や執行猶予の余地は残されています。

とはいえ、「本当に合意がなかったことにされてしまうのか」「勾留された家族はいつ戻れるのか」と、突然の事態に頭が追いつかない方がほとんどでしょう。逮捕から起訴・不起訴の判断までは最大23日間しかなく、この短期間の動き方が処分の分かれ道になります

この記事では、性犯罪事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。

  • 不同意性交等致傷罪が成立するケース
  • 刑罰の重さと公訴時効
  • 逮捕された後はどうなるのか
  • 不起訴・執行猶予を目指す弁護活動

なお、不同意性交等致傷の容疑でお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。

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不同意性交等致傷罪とは

成立要件と該当する行為

不同意性交等罪(その未遂を含む)を犯し、その結果として相手を負傷させたときに成立するのが不同意性交等致傷罪です(刑法第181条2項)。同じ条文は監護者性交等罪も対象としており、その場合の罪名は監護者性交等致傷罪です。前提となる不同意性交等罪(刑法第177条1項)の条文には「婚姻関係の有無にかかわらず」処罰の対象となることが明記されており、夫婦やパートナー間でも本罪は成立し得ます。

この罪は、2023(令和5)年7月13日施行の改正刑法で、従来の「強制性交等致傷罪」と「準強制性交等致傷罪」を整理して一本化した犯罪類型です。

押さえておきたいのは、性交等が最後まで行われたかどうか(既遂か未遂か)は問われない点です。実行に着手した段階で、手段として加えられた暴行や性交等の機会の行為によって相手が負傷すれば、本罪は成立します。

つまり、「途中でやめたから」「最後まで至っていないから」と言い訳しても、被害者がケガをすると、不同意性交等致傷罪による重い刑罰に問われる可能性が高いということです。

そして、刑法改正により、被害者が「同意できない状態」であったかどうかが判断の主軸に据えられ、従来よりも実態に即した基準で処罰されるようになっています。基本となる不同意性交等罪の詳細については「不同意性交等罪とは?旧強制性交・強姦罪との違いや構成要件」で解説しています。

「不同意」とはどのような状態か

本罪における「不同意」とは、条文の言葉では「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じ」ることを指します。

刑法第176条1項は、同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態を招く原因として、以下の8類型を挙げています。

  • ①暴行・脅迫を用いること、又はそれらを受けたこと
  • ②心身の障害を生じさせること、又はそれがあること
  • ③アルコール・薬物を摂取させること、又はそれらの影響があること
  • ④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、又はその状態にあること
  • ⑤同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがないこと(例:不意打ち)
  • ⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させること、又はその事態に直面して恐怖・驚愕していること(例:フリーズ)
  • ⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること、又はそれがあること(例:虐待による無力感・恐怖心)
  • ⑧経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益を憂慮させること、又はそれを憂慮していること(例:祖父母・孫、上司・部下、教師・生徒の関係など)

性交同意年齢についても、改正により13歳から16歳へと引き上げられました。

相手が13歳未満の場合は、同意の有無にかかわらず不同意性交等罪が成立します。さらに、13歳以上16歳未満の場合であっても、行為者が相手より5歳以上年長であれば、同意があったとしても不同意性交等として扱われます(刑法第177条3項)。このように「不同意」といえる状態の相手と性交等に及び、ケガを負わせた場合が、不同意性交等致傷罪にあたります。

「性交等」に含まれる行為

不同意性交等致傷罪における「性交等」には、以下のような行為が含まれます。

  • 性交
  • 肛門性交(陰茎を肛門に挿入する行為)
  • 口腔性交(陰茎を口に挿入する行為)
  • 膣や肛門に身体の一部(陰茎を除く。)や物を挿入する行為であってわいせつなもの

2023年の改正では、「指や物を挿入する行為」が新たに「性交等」の範囲に加えられました。挿入に用いたものが陰茎でなくても、ケガを負わせれば本罪の成立を免れません。

なお、これらの行為は異性間に限らず、同性間で行われた場合であっても不同意性交等致傷罪の対象です。

致傷罪が成立する場面とケガの範囲

不同意性交等致傷罪における「傷害(ケガ)」の範囲は広く、物理的な外傷だけにとどまりません。

以下では、本罪がどのような場面で成立するのかを、「ケガの種類」「ケガが生じた場面(3パターン)」「未遂」の観点から解説します。

ケガの種類

「傷害」とは、被害者の身体の生理的機能を毀損するものを指します。

ケガの種類として、打撲や骨折などの典型的な外傷はもちろん、性交等そのものによって生じた膣壁・肛門・口腔内の裂傷も含まれます。

性病の感染も「傷害」とみなされるほか、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神的な疾患も、傷害として認められる傾向にあります。

ケガが生じた場面

  • 性交等自体によるもの:強引な挿入や行為中の摩擦、無理な体位により被害者の性器や肛門などに傷を負わせた場合
  • 手段としての暴行によるもの:被害者の自由な意思決定を困難にするほど強く殴る、蹴る、押さえつけるといった行為によって生じた打撲や骨折
  • 性交等の機会に発生したもの:被害者が抵抗して逃走を図る際に階段から転落した、揉み合いの中で家具にぶつかって負傷したなど、性交等に密接に関連する行為から生じたケガ

未遂でも成立

基本犯である「不同意性交等罪」が未遂に終わっていたとしても、その過程で相手にケガを負わせていれば、致傷罪の成立は妨げられません。

不同意性交等致傷罪のように、基本となる罪を犯したことで重い結果が生じた場合に成立する罪は「結果的加重犯」と呼ばれます。被害者の性的自己決定権だけでなく身体・生命の安全が侵害された点が重く見られ、1つの重い犯罪として扱われています。なお、基本犯である不同意性交等罪自体の未遂の処罰や減軽の仕組みについては「不同意性交等罪(旧強制性交)は未遂も処罰?刑罰と減軽の仕組み」で詳しく解説しています。

法定刑と量刑の実勢からみる処分の見通し

不同意性交等罪の法定刑は、「5年以上の有期拘禁刑」と定められています(刑法第177条1項)。これに対し、不同意性交等致傷罪の法定刑は「無期または6年以上の拘禁刑」です(刑法第181条2項)。

有期刑となる場合の法定刑の幅は、6年以上20年以下です。下限の6年は、基本となる不同意性交等罪(5年以上)をさらに上回る重い水準です

拘禁刑に執行猶予が付くのは、言い渡される刑が「3年以下」の場合に限られるため、本罪で起訴されると、酌量減軽(裁判所の判断による刑の軽減)の事由がない限り、実刑判決を免れることは極めて困難です。逆にいえば、酌量減軽などによって言い渡される刑が3年以下まで下がれば、執行猶予の余地が生まれます。執行猶予の可能性について詳しくは「不同意性交等罪(強姦)は懲役実刑確定?執行猶予はつく?」をご参照ください。

刑事処分の見通しを数値で押さえると、令和7年版犯罪白書によれば、不同意性交等罪全体の起訴率(起訴の構成比)は2024年(令和6年)で35.5%、つまり6割超が不起訴で終局しています。ただし、致傷の結果が伴う事案は被害が客観的に重く、通常の不同意性交等よりも起訴・実刑に傾きやすいのが実情です。同じ法定刑だった旧法の強制性交等致傷罪でも、被害結果の重大性が反映され、6〜10年程度の実刑判決が下る例が多く見られました。

また、起訴された場合の審理は裁判員裁判です。一般市民が裁判員として審理に加わるため、社会的にも厳しい目が向けられる中で刑事裁判を受けなければなりません。具体的にどのような事案でどのような量刑が下されたのか、判例ベースで把握したい方は「不同意性交等罪(致傷罪含む)の3つの判例を弁護士が解説」もあわせてご確認ください。

公訴時効は20年・被害者が18歳未満なら特例で延長

不同意性交等致傷罪における公訴時効は「20年」です(刑事訴訟法第250条3項1号)。

旧法における「強制性交等致傷罪」の公訴時効は15年でしたが、2023年6月の刑事訴訟法改正に伴い5年延長されました。これは、性犯罪の被害者が負う精神的ダメージが深く、被害申告に踏み切るまでに長い時間を要することを考慮した結果です。

さらに、被害者が18歳未満であった場合には特例が適用されます。「被害者が18歳に達するまでの期間」が、時効期間の20年に加算されます(刑事訴訟法第250条4項)。

例えば、被害者が12歳の時に事件が起きた場合、18歳になるまでの6年間が時効期間に加算されます。その結果、時効期間は26年となり、被害者が38歳になるまで起訴が可能です。

このように、かなり長期間にわたって刑事責任を追及される可能性があるのが本罪の特徴です。なお、致傷結果を伴わない基本の不同意性交等罪では、公訴時効は15年です。詳細は「不同意性交等罪(旧強制性交等罪・旧強姦罪)の時効は15年です」をご覧ください。

不同意性交等致傷罪と強制性交等致傷罪の違い

2023(令和5)年7月13日の刑法改正により、不同意性交等致傷罪をはじめとする性犯罪の規定は大きく変わりました。もっとも、刑罰法規は原則として行為時の法律によるため、法改正以前に発生した事件には旧法の「強制性交等致傷罪」や「準強制性交等致傷罪」が適用されます。

以下のセクションでは、新旧の法律における成立要件や対象行為、時効期間の主な変更点について詳しく解説していきます。

成立要件の違い

旧法の「強制性交等致傷罪」が成立するためには、性交等の手段として「暴行・脅迫を用いたこと」が要件となっていました。

そのため、物理的な暴行や生命を脅かすような言葉がない場合、同罪に問うことが困難になるケースがありました。泥酔や睡眠などの心神喪失・抗拒不能の状態を利用した場合は「準強制性交等致傷罪」という別の罪状で扱われていました。

これに対し、新設された「不同意性交等致傷罪」では、これら2つの犯罪が統合され、広く「相手が同意できない状況」での性交等が1つの犯罪類型に整理されました。

具体的には、不同意の状態を招く原因として暴行・脅迫、アルコール、経済的・社会的地位の利用など8類型が明文で規定され、旧法よりも判断基準が明確化されています。

したがって、暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の有無だけでなく、被害者が「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態」であったかどうかが本質的な争点となります。なお、わいせつな行為にとどまった場合の致傷罪については「不同意わいせつ等致死傷罪(旧強制わいせつ等致死傷罪)とは?」で解説しています。

対象行為と時効期間の違い

旧法の強制性交等致傷罪における「性交等」は、性交・肛門性交・口腔性交の3つの行為に限定されていました。指や物を挿入する行為は、旧法では強制わいせつ等の罪として扱われ、ケガを負わせても法定刑のより軽い旧強制わいせつ致傷罪(無期または3年以上の懲役)にとどまりました。改正後は正式に「性交等」へ含まれ、無期または6年以上の拘禁刑という重い不同意性交等致傷罪で処罰されます。

公訴時効も、前述のとおり旧法の「15年」から「20年」へと延長されています。注意したいのは、この延長が刑事訴訟法改正の施行時点(2023年6月23日。刑法本体の施行日とは異なります)で時効の完成していない事件にも適用される点です(改正法附則第5条2項)。つまり、法改正前に発生した強制性交等致傷の事件でも、施行時に時効が残っていれば公訴時効は20年として扱われます。被害者が18歳未満のときの期間加算とあわせ、事件から数十年後に捜査が始まる可能性も否定できません。旧法については「強制性交等致傷(旧強姦致傷)とは?構成要件や罰則を解説」に詳しくまとめています。

不同意性交等致傷の容疑で逮捕されたらどうなる?

重大犯罪である不同意性交等致傷罪では、逮捕されると身柄拘束が長期化しやすく、起訴されれば裁判員裁判の対象となります

逮捕から判決までの流れと、各段階で何が決まるのかを順に確認していきます。

  1. 逮捕から48時間以内の送検判断
  2. 送検から24時間以内の勾留判断
  3. 起訴・不起訴の判断
  4. 裁判員裁判による審理

①逮捕から48時間以内の送検判断

逮捕された被疑者は、警察署の留置場に身柄を留め置かれ、取調べを受けます。

警察は、逮捕の時点から48時間以内に、被疑者の身柄と一件記録を検察官のもとへ送る「送検」を行うかどうかを判断しなければなりません(刑事訴訟法第203条1項)。送検が見送られれば、被疑者は釈放されます。

②送検から24時間以内の勾留判断

事件が検察官に送られた後、検察官は被疑者の取調べを行ったうえで、24時間以内に裁判官へ「勾留請求」をするかどうかを決めます(刑事訴訟法第205条1項)。

裁判官が勾留を認めると、勾留請求の日から10日間の身柄拘束が始まります。やむを得ない事由があると認められた場合は、さらに10日間を上限に延長されることがあり、合計で最大20日間勾留される可能性があります(同法第208条)。

逮捕から勾留満期までを通算すると、起訴・不起訴が決まる前の身柄拘束は最長で23日間に及びます。この期間内に被害者との示談を成立させられるかどうかが、その後の処分に大きく影響します。

一方、逮捕されずに在宅のまま捜査が進む事件では、こうした時間制限はありません。起訴・不起訴の判断まで数ヶ月かかることもありますが、処分が決まる前の示談などの準備が結果を左右する点は同じです。

③起訴・不起訴の判断

勾留期間の満了までに、検察官は不同意性交等致傷罪で起訴するか不起訴とするかを決定します。判断材料はおおむね、被害の重さ、被疑者の反省の程度、示談の成否、再犯のおそれなどです。

不起訴処分となれば、刑事手続はその時点で終了し、前科は付きません。一方で起訴された場合、裁判で有罪判決が言い渡される確率は司法統計上99%以上に達します。起訴されて有罪となれば前科が付くため、起訴前に弁護活動の成果を出せるかどうかが分かれ目です。

④裁判員裁判による審理

起訴された場合、不同意性交等致傷罪は法定刑に無期拘禁刑が含まれているため、裁判員裁判(裁判員法第2条1項1号)の対象になります。

公判に先立ち、争点や証拠を整理する「公判前整理手続」が必ず行われ、初回公判が開かれるまでに半年から1年程度、事案によってはそれ以上かかることも珍しくありません。保釈が認められない限り、その間も勾留が続くため、被告人の負担は大きくなります。

不同意性交等致傷罪に問われたときの弁護活動

不同意性交等致傷罪は法益侵害の程度が大きい重大犯罪であり、早期に弁護活動を開始することが不可欠です。

不起訴の獲得から裁判対応まで、弁護活動の中身を順に見ていきます。

不起訴を目指すには被害者との示談が最重要

不同意性交等致傷罪のような重大な容疑であっても、被害者のケガの程度が比較的軽微である場合、被害者と示談を成立させられれば、不起訴処分となる余地があります

「示談」とは、加害者が被害者に対して心からの謝罪を行い、慰謝料を含めた示談金を支払うことで、被害者から「許し(宥恕:ゆうじょ)」を得る和解手続のことです。

検察官は、起訴・不起訴を判断する際、被害者の処罰感情を強く重視するため、示談が成立して被害者から「処罰を望まない」との意思(宥恕)が示されれば、刑事罰を科す必要性が低いと判断しやすくなります。

しかし、性犯罪の特性上、被害者が加害者本人やその家族との接触を強く拒否することが一般的です。警察や検察も二次被害を防ぐため、加害者側に被害者の連絡先を教えることはありません。

こうした事情から、示談交渉には弁護士の介入が欠かせません。具体的な交渉の流れについては「不同意性交(強制性交・強姦)の示談金相場と流れ・メリットを解説」で詳しく紹介しています。

前述のとおり、起訴・不起訴の判断までに使える時間は限られています。この厳しいタイムリミットの中で誠意を尽くして合意を得るには、事件発生直後から速やかに弁護士へ依頼することが不可欠です。

不同意性交等致傷罪の示談金相場と決定要素

不同意性交等致傷の示談金は、100万〜500万円程度で合意されるケースが多いといえます。ただし、この金額はあくまで目安であり、被害者が負ったケガの程度や治療期間、精神的苦痛の大きさ、事件の態様などによって大きく変動します。

被害が重大であるうえ、実刑を避けるために示談を成立させる必要性も高いことから、一般的な性犯罪よりも示談金は高額化する傾向にあります。適正な金額で合意し、早期解決を図るためには、弁護士を通じた冷静な交渉が欠かせません。

示談ができない場合の対応策

不同意性交等致傷罪は重大犯罪のため、被害者の処罰感情が非常に強く、「示談交渉自体に応じてもらえない」「金銭での解決は望まない」といったケースも少なくありません。

その場合でも、反省と賠償の意思を客観的に示すため、以下の方策をとることができます。

供託(きょうたく)

被害者が示談金の受け取りを拒否している場合に、法務局へ示談金相当額を預け入れる制度です。これにより、加害者に賠償の意思があり、いつでも支払い可能な状態にあることを公的に証明できます。

贖罪寄付(しょくざいきふ)

被害者への賠償が叶わない代わりとして、犯罪被害者支援団体や弁護士会などに寄付を行うことです。反省の意を形にする行為として、検察官や裁判官の判断に影響を与える場合があります。

再犯防止への具体的な取り組み

二度と同じ過ちを繰り返さない決意を行動で示すため、性犯罪再犯防止プログラムの受講や、専門の医療機関でのカウンセリング・治療を開始します。単なる口頭の反省ではなく、具体的な行動を伴う更生の意欲を示すことが、処罰の軽減に繋がることがあります。

裁判員裁判では裁判員に伝わる弁護活動が必要

起訴された場合の手続の流れは前述のとおりですが、不同意性交等致傷罪の裁判員裁判には、弁護方針を立てるうえで押さえるべき特徴があります。

裁判員は法律の専門家ではないため、性犯罪、とりわけ被害者を負傷させた事案に対して厳しい印象を抱きやすく、裁判官のみで審理される場合と比べて量刑が重くなりやすい傾向があります

そのため弁護人は、難解な法律論ではなく、犯行に至った背景や被告人の更生計画、被害者との示談状況などを、裁判員にも理解しやすい形で立証していくことが求められます。証拠の選別や尋問の組み立て方も、裁判員の心証に直接働きかけるものでなければなりません。

加えて、裁判員裁判の自白事件では、評議が2段階で進む点も押さえる必要があります。第1段階では行為の計画性・犯行の手口・継続時間・凶器の有無・ケガの程度といった「犯情」を踏まえて刑罰の大枠が決まり、第2段階で被害者との示談状況・反省・家族のサポートなどの「一般情状」によってその枠内で量刑が絞り込まれます。有利な事情を犯情・一般情状のどちらに位置づけて主張するかで、最終的な量刑が大きく変わってきます

認めている場合は情状弁護で執行猶予を目指す

起訴された事実関係を認めている場合は、少しでも刑罰を軽くするための「情状弁護」に注力します。情状弁護とは、被告人に有利な事情を丁寧に積み上げ、前述の酌量減軽を目指す活動です。

具体的には、以下のような事情を証拠と共に主張・立証していきます。

  • 被害者への賠償・示談の状況:示談書や、示談に至るまでの誠実な交渉経過の報告
  • 深い反省の態度:贖罪寄付の実施、自筆の反省文、被害者への謝罪文
  • 更生意欲の具体化:専門病院での継続的な治療や、自助グループへの参加
  • 社会的背景と役割:家族を養っている、あるいは職務上の重要な責任を担っているなどの事情
  • 更生を支える環境:家族が同居して厳格に監督することを誓約しているなど、再犯を防ぐサポート体制

特に、被害者から「処罰を望まない」「寛大な処分を希望する」といった宥恕の言葉を得られている場合は、実刑が原則の不同意性交等致傷罪においても、執行猶予判決の獲得へ向けた強力な事情となります

否認している場合は無罪や罪の軽減を目指す

不同意性交等致傷の容疑について「合意があったと思っていた」「そもそも行為自体に身に覚えがない」など、事実関係や合意の有無を争うケースでは、徹底して無罪を主張する弁護活動を行います。

性犯罪は密室で行われることが多く、客観的な目撃者がいない事案では、捜査機関は被疑者の自白調書を最大の証拠として立証を組み立てようとします。身に覚えのない内容で自白調書が作成されてしまうと、その後の公判で覆すことは極めて困難になります。否認事件では、取調べで安易に署名・押印せず、必要に応じて黙秘権(取調べで供述を拒む権利)を行使することが基本方針となります。弁護士はそのために頻繁に接見を行い、取調べでの受け答えを協議します。

合意の有無が争点となる場合、弁護士は当時の状況を精査し、合意があったことを推認させる間接事実を積み上げます。

例えば、被害者とのそれまでの関係性、事件直前・直後のやり取り(SNSのメッセージなど)、現場での双方の言動などを詳細に分析し、被害者の訴えと矛盾する証拠を提示します。合意を示す証拠をどれだけ確保できているかが勝負を分けます。具体的な集め方は「不同意性交罪は証拠がなくても逮捕される?同意の証明と対処法」で紹介しています。

供述が対立する事案では、法廷での「反対尋問」も重要になります。弁護士が被害者や目撃者に対して記憶の曖昧な点や証言の不自然な箇所を突き、供述の信用性を揺るがすことで、検察側の立証を崩していきます。

一方、行為の存在自体を争う場合は、アリバイや客観証拠との食い違いを示して立証を弾劾する方針をとります。

このほか、完全な無罪までは難しい事案でも、ケガと性交等との結び付き自体を争う方針があります。負傷が性交等やその手段の暴行と密接に関連しない行為から生じたと認められれば、本罪ではなく不同意性交等罪と傷害罪などが別個に成立するにとどまる可能性があります。この主張が起訴前に通れば、裁判員裁判も避けられます。

不同意性交等致傷の容疑でお困りの方はすぐにご相談ください

ここまで解説したとおり、不同意性交等致傷罪には無期または6年以上の拘禁刑が定められており、起訴後は一般市民が加わる裁判員裁判で審理されます。それでも、起訴前に示談をまとめられるか、法廷で有利な事情を尽くせるかによって、不起訴処分や執行猶予という結果は現実に変わり得ます。

性犯罪では、被害者との示談交渉を本人や家族が直接進めることはまずできません。窓口になれるのは弁護士だけであり、依頼が遅れるほど、最大23日間しかない起訴前のタイムリミットは削られていきます

「警察から突然連絡があった」「すでに家族が身柄を拘束されている」「合意があったのに被害届を出された」。そのような状況では、精神的なご負担も大きいはずです。お話を伺ったうえで、状況に応じた最適な弁護方針をご提案いたします。

当事務所は性犯罪事件の示談交渉や裁判員裁判への対応に豊富な実績があります。依頼者の不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動き、全力を尽くして守ります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

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刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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