執行猶予でも前科はつく!猶予期間が経過したら前科は消える?

執行猶予付き判決を受けた場合でも、有罪判決であることに変わりはなく、前科はつきます。

「執行猶予がついたのに前科がつくのか」「猶予期間が終われば前科は消えるのか」「前科がつくと就職や海外旅行に影響はあるのか」。こうした疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、刑事事件に強い弁護士が、執行猶予と前科の関係について以下の内容を解説します。

  • 執行猶予でも前科がつく理由と猶予期間経過後の扱い
  • 前科による日常生活への影響(就職・海外旅行・資格制限など)
  • 前科があっても再び執行猶予がつくケース
  • 前科をつけないために早期にすべきこと

なお、前科がつくことを回避したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。

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執行猶予でも前科はつく

前科は実刑か執行猶予を問わずつきます。執行猶予はあくまで刑の執行を猶予する制度であり、有罪判決であることに変わりはないからです。

執行猶予とは、有罪判決を受けた被告人に酌むべき事情がある場合に、一定期間、刑の執行を見送る制度です。たとえば「拘禁刑3年、執行猶予4年」という判決の場合、4年間罪を犯さずに過ごせば刑の言渡しの効力が消滅し、拘禁刑3年の刑を受ける必要がなくなります。

※2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。本記事の内容は改正後の法律に基づいて記載しています。

一方、前科とは、刑事裁判で有罪判決を受け、その裁判が確定した履歴のことです。執行猶予も有罪判決の一種であるため、判決が確定した時点で前科がつきます。執行猶予で前科がつくと、前科調書に裁判所、判決の日、「拘禁刑3年 4年間執行猶予」といった判決内容が記録されます。

執行猶予期間の経過で前科は消える?

次に疑問が生じるのは、執行猶予期間が経過したことで前科が消えるのか?ということではないでしょうか。その疑問について解説します。

執行猶予期間の経過で前科は消える?

執行猶予期間の経過とは、上の例でいえば、4年間、何事もなく無事経過したことをいいます。ただ、執行猶予期間を無事経過したとしても前科は消えません。また、経過から何年経過しようが同じです。

つまり、前科は人が生きている限りその人に一生ついてまわる、ということになります。

刑の言渡しの効力消滅とは?

もっとも、無事に執行猶予期間が経過すると以下の効果が発生します。

刑を科されることはない

つまり、上の例でいえば「拘禁刑3年」という刑を科されることはない、ということです。刑を科すのは国家機関(裁判所、執行機関は検察庁)ですが、刑の言渡しの効力が消滅するとは、その国家の刑罰権が消滅することを意味します。

市区町村の犯罪人名簿から抹消される

執行猶予期間が経過すると市区町村が管理する犯罪人名簿から抹消されます。これにより、前科があることを理由に制限されていた免許・資格の取得が可能になり、これらを必要とする職に就けるようにもなります。なお、一般的な犯罪で執行猶予付き判決を受けた場合、執行猶予期間中であっても選挙権・被選挙権は制限されません(公職選挙法第11条第1項第3号)。ただし、選挙犯罪や収賄罪などの場合は執行猶予期間中も選挙権が停止されます。

履歴書の賞罰欄に記載する必要がなくなる

上記のとおり、執行猶予期間を経過すると刑の言渡しの効力がなくなりますから、履歴書の賞罰欄に記載する必要はありません。反対に、執行猶予期間中であれば記載する必要があります。

前科がつくことによる日常生活への支障

では、執行猶予で前科がつくことによって、日常生活にどんな支障が生じるのでしょうか?

精神的プレッシャーを受ける

執行猶予は、刑が科されるのを猶予されただけで免除されたわけではありません。つまり、いつでも刑を科される(刑務所に収容され服役させられる)可能性が残されているわけです。そうした精神的プレッシャーを抱えながら生活しなければなりません。

車を運転できない?

車は運転できます。執行猶予で前科がついたことが、車の運転免許に影響を与えるものではありません。

就職が不利になる?

免許・資格を有する職業には、執行猶予期間が経過した後でなければ就職できない場合があります。また、面接で前科の有無を尋ねられた場合、執行猶予期間中で、履歴書に賞罰欄が設けられている場合は正直に回答する必要があります。前科と就職の関係について詳しくは「前科があると就職できない?様々な疑問に弁護士が解説」をご参照ください。

執行猶予で前科がつくと海外旅行に行けない?

海外旅行に行くにはパスポートの発給を受ける必要がありますが、執行猶予付きの前科を有している場合は、パスポートの発給を受けることができない可能性があります。また、すでに受けている場合は返納を命じられることがあり、命じられた場合はパスポートの効力が失効しますからやはり海外旅行へ行くことができません。執行猶予期間が経過した後は、発給を受けることができます。具体的な手続きについては「前科があっても海外旅行に行ける?パスポートは取得できる?」で解説しています。

執行猶予で前科がつくと戸籍にも残る?

残りません。戸籍はあくまで出生、結婚、離婚、死亡など人の身分にかかわる事項を記録するためのものです。前科は身分事項とは関係ありません。

前科があっても執行猶予はつく?

「前科持ちが罪を犯したら執行猶予はつかないのではないだろうか…」と思われる方もいるかもしれませんが、前科があっても執行猶予がつく場合があります。

ここでは、まずは執行猶予がつく条件を確認したうえで、前科があっても執行猶予がつくケースをみていきましょう。

執行猶予がつく条件

まず、以下の条件をすべて満たす場合は執行猶予がつく可能性があります。

  • ①今回の判決で「3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」の言い渡しを受けたこと
  • ②次のいずれかにあたること
    ㋐今回の判決より前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない
    ㋑前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない
  • ③執行猶予をつけることが相当といえるような情状があること

前科があっても執行猶予がつくケース

前科があっても次のケースでは執行猶予がつく可能性があります。

前科が罰金、拘留、科料

罰金、拘留、科料は「拘禁刑以上の刑」にはあたりませんので、前科が罰金、拘留、科料の場合は執行猶予がつく可能性があります。これは、罰金、拘留、科料の刑を科された後、間もなくして今回の罪を犯した場合でも同じです。

前の前科の執行猶予期間が経過した

前の前科の執行猶予期間が経過すると刑の言い渡しの効力がなくなり、②㋐の「前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない」ことになります。そのため、他の条件も満たしていれば再び執行猶予を受けられる余地があります。

出所から5年が経過した

前の前科の刑で服役し、その刑務所を出所した日から今回の判決まで何の犯罪も犯さず5年間経過した、あるいは犯罪は犯したものの罰金以下の刑に済んだ、という場合は、②㋑の「前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、執行を終わった日(略)から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない」ことになります。したがって、その他の条件も満たしていれば執行猶予が認められることがあります。

再度の執行猶予がついた

再度の執行猶予とは、執行猶予中の前科がある者がその猶予期間中に新たに罪を犯し、その新たな罪の判決で再び執行猶予を受けることです。

再度の執行猶予を受けるためには、その刑について、以下の4つの要件をクリアする必要があります。

  • ①今回の判決時に執行猶予中であること
  • ②2年以下の拘禁刑の言い渡しを受けること
  • ③情状に「特に」酌量すべき点があること
  • ④前の罪の執行猶予中の刑について、再度の執行猶予で保護観察に付されたうえ、その保護観察期間内に更に罪を犯したものでないこと

この4つの要件をクリアできれば、前の罪の執行猶予が取り消されることもなく、新たに犯した罪にも執行猶予が付きますので、実刑で刑務所に収監されることなくこれまで通り通常の生活を送ることができます。

ただし、執行猶予期間中の前科を持つ間に再犯した場合に再度の執行猶予を獲得することは非常に難しいです。「再度の執行猶予(ダブル執行猶予)とは?要件・条文・確率」に書かれていますが、新しい罪の判決時に執行猶予中の人の約4パーセントしか再度の執行猶予を受けることができていません(参考:2024年 検察統計(e-Stat))。

再度の執行猶予が認められない場合には、前の執行猶予が取り消され、前の罪と新たに犯した罪の刑期を合わせて拘禁刑に服することになります。そのため、執行猶予期間中は再び罪を犯さぬよう注意して生活する必要があります。

前科をつけないためには何をすべき?

前科をつけないためには次のことをやる必要があります。

刑事事件化を回避する、不起訴処分を獲得する

まず、被害者から警察に被害届を提出されて事件のことが警察に認知されることを回避する、捜査機関に事件が認知された場合は不起訴処分を獲得することです。

前述のとおり、前科は裁判で有罪と認定され、その裁判が確定してはじめてつきます。そのため、刑事裁判にかけられないこと、すなわち、不起訴処分を獲得することが前科をつけないための対策といえます。

また、そもそもまだ事件が警察に認知されていない場合は、警察に認知されること自体を回避することも一つの対策です。事件が警察に認知されていない段階で認知を回避できれば、警察から検察に事件が送られることはなく、事件を裁判にかけられることはありません。

弁護士に相談、依頼する

次に、弁護士に相談し、依頼することも欠かせません。

刑事事件化を回避する、不起訴処分を獲得するために有効な方法は示談です。被害者と示談できれば、被害者に警察に被害届や告訴状を提出しないことに合意してもらうことができ、事件化そのものを防ぐことにつながります。

また、検察官が起訴、不起訴の判断をするにあたっては示談成立の有無も考慮します。検察官が起訴、不起訴の判断をする前に示談できれば、被疑者に有利な事情として考慮してもらい、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。示談の具体的な流れやメリットについては「刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説」で詳しく紹介しています。

もっとも、被害者と示談交渉するには弁護士の力が必要不可欠です。そもそも弁護士でなければ示談交渉に応じない被害者もおられます。刑事事件を回避するため、不起訴処分を獲得するためには示談交渉以外にもやることはありますので、困った場合は早めに弁護士に相談、依頼しましょう。

前科がつくことに不安を感じている方は弁護士にご相談ください

執行猶予付き判決であっても前科はつきますが、猶予期間を無事に経過すれば刑の言渡しの効力が消滅し、資格制限などの不利益は解消されます。一方、前科がつくこと自体を避けるには、起訴される前の段階で不起訴処分を獲得することが最も有効な手段です。

不起訴を獲得するためには、被害者との示談交渉や、検察官に対する意見書の提出など、早期の段階から適切な弁護活動を行うことが重要です。特に示談交渉は、被害者が加害者本人との直接のやり取りを拒否されることも多いため、弁護士を通じて進める必要があります。

「逮捕されるかもしれない」「警察から連絡が来ている」「すでに取調べを受けている」など、状況はさまざまかと思いますが、早い段階で弁護士に相談することで、前科を回避できる可能性は高まります。

当事務所では、被害者との示談交渉や不起訴処分・執行猶予の獲得を得意としており、豊富な実績があります。全国どこからでも24時間無料でご相談いただけますので、前科をつけたくない方、あるいは前科がある中で執行猶予を獲得したい方は、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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