- タクシー運転手に暴行してしまった…どんな犯罪が成立するのだろう…
- 後から警察が家に来て逮捕(後日逮捕)されるのだろうか…
- 酔っていたから罪にならないのでは…
この記事では、このような疑問や悩みを、暴行事件に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
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目次
タクシー運転手に対する暴行の際に成立し得る犯罪は?
タクシー運転手に対する暴行の際に成立し得る犯罪は、
- 暴行罪
- 傷害罪
- 脅迫罪
- 強要罪
- 強盗罪
- 器物損壊罪
が考えられます。
暴行罪
暴行罪とは、人に対して暴行を加えたものの、その人に傷害が生じなかった場合に成立する犯罪です(刑法第208条)。罰則は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
暴行とは人の身体に対する有形力を行使することをいい、タクシー運転手に対する暴行では、
- タクシー運転手の(背中、頭など)を殴る
- タクシー運転手の髪の毛を引っ張る
- タクシー運転手に物を投げつける
など、タクシー運転手の身体に直接触れる行為が典型ですが、他にも、
- タクシー運転手に唾をかける
- タクシー運転手の運転席を蹴る
など、タクシー運転手の身体に直接触れない行為も暴行にあたります。
傷害罪
傷害罪は暴行罪の「暴行」に加えて、人に怪我(傷害)を負わせ、かつ、その暴行と怪我との間に因果関係が認められる場合に成立します(刑法第204条)。罰則は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
後部座席からタクシー運転手の運転席を蹴ったところ、タクシー運転手の首に急な衝撃が加わり、タクシー運転手に加療約1週間の頚椎捻挫(むち打ち症)の怪我を負わせた、というのが典型例です。
この例からもおわかりいただけるように、傷害罪は、暴行によって結果的に怪我を負わせてしまった、つまり人に怪我を負わせる意図(故意)がなくても成立しうる犯罪です。
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脅迫罪
脅迫と暴行はまったく種類の異なる行為ですが、暴行の際にやってしまいがちな行為です。
脅迫罪とは、人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加えることを言うこと(害悪の告知)で成立する犯罪です(刑法第222条)。罰則は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。
したがって、タクシー運転手に対して、次のような発言をすれば脅迫罪が成立する可能性があります。
- 「殺すぞ。」と言う→生命に対する害悪の告知
- 「痛い目にあいたいのか。」と言う→身体に対する害悪の告知
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強要罪
強要罪とは、暴行または脅迫を手段として、人に義務のないことを行わせ、または権利行使を妨害した場合に成立する犯罪です(刑法第223条)。罰則は3年以下の懲役です。
- タクシー運転手が謝罪する義務がないのに無理やり謝罪を要求する(強要未遂)
- タクシー運転手を脅して高速運転させる
- タクシー運転手に無理やり土下座させる
などが、強要罪(又は強要未遂罪)が成立する典型例です。
タクシー運転手を脅した上で義務ないことをさせる(あるいはさせようとする)点が脅迫罪と異なります。
強盗罪
強盗罪とは、暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取したり、財産上不法の利益を得るなどした場合に成立する犯罪です。罰則は、5年以上の有期懲役です。
暴行又は脅迫により他人の財物を強取する行為としては、
- タクシー運転手から金銭を奪い取った
- タクシー運転手がひるんだすきに金銭を奪い取った
などが典型例です。
暴行又は脅迫によって財産上不法の利益を得る行為としては、
- タクシー料金を支払わずに逃走した
などが典型例です。
なお、強盗の機会にタクシー運転手が負傷した場合は強盗致傷罪が成立し、無期または6年以上の有期懲役に処せられます。また、強盗の機会にタクシー運転手が死亡した場合や、殺害した場合には、それぞれ強盗致死罪、強盗殺人罪が成立し、死刑または無期懲役に処せられます。
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器物損壊罪
器物損壊罪とは、他人の物を壊したり、その物の用途に従って使えなくしてしまうことで成立する犯罪です(刑法第261条)。罰則は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料に処せられます。
タクシー運転手へ暴行を加えようとして防犯用のアクリル板を壊した場合や、車外に出た後に車体を蹴り飛ばして凹ませたりサイドミラーを折るなどすれば、器物損壊罪(刑法第261条)が成立します。
酔っていた場合は罪にならない?
飲み会の後、帰宅する際にタクシーを利用するという方も多いでしょう。そのため、タクシー運転手に対する暴行の際にはお酒に酔っていて、酔いがさめた際にはタクシー運転手に暴行を加えたことを覚えていないという方もおられます。
では、タクシー運転手に暴行を加えた記憶がないからといって罪には問われないかといえば、答えは「NO」の場合が多いです。
ここで問題なのは、タクシー運転手に加えた際に罪に問える能力(責任能力)が備わっていたかどうかです。もちろん、本当に備わっていなかったのであれば争う必要があります。
しかし、多くの場合は、タクシー運転手やタクシーに乗り込む前に一緒に行動していた人の証言をはじめ、タクシーに搭載されている車載カメラなどから、タクシー運転手に暴行を加えた際に能力が備わっていたことを示す事情(たとえば、支離滅裂ではなく論理的な話をしていたなど)が明らかになってきます。そうすると、もはや「酔っていた」、「事件当時の記憶がない」という理由で罪を免れることは難しくなってきます。
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タクシー運転手への暴行で逮捕されるパターン
タクシー運転手に対する暴行での逮捕には現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕の3通りがあります。
現行犯逮捕されるパターン
タクシー運転手に暴行を加えた後、タクシー運転手から警察に通報され、警察官が現場に駆け付けた際にその場にとどまっていた場合は現行犯逮捕されることがあります。
後日逮捕(通常逮捕)されるパターン
また、現場から逃走するなどして、その場で現行犯逮捕されない場合でも後日逮捕されることもあります。自分でタクシーを呼んだ場合は携帯電話番号の履歴から、他の人に呼んでもらった場合は一緒に行動していた人や飲食店従業員の証言から、あるいは車載カメラなどから身元が判明します。
緊急逮捕されるパターン
前述した罪のうち、強盗罪だけは緊急逮捕できます。緊急逮捕はひとまず逮捕状なしに身柄拘束し、後日、発布を受けた逮捕状で正式に身柄拘束する逮捕のことです。現場から逃走したものの、警察官が現場周辺を捜索していたところ、被疑者と思われる人物を発見したため緊急逮捕するというパターンが考えられます。
タクシー運転手への暴行で逮捕されるとどうなる?
警察に逮捕されると警察署内の留置場に収容されます。釈放されるまでは留置場が生活の場となります。
留置場内での生活は集団生活で、自由やプライベートはありません。日常生活を送ることもできなくなります。
もっとも、逮捕後は警察官、検察官、裁判官の3者から事件のことで話を聴かれる機会を設けられ、そこで逃亡のおそれがない、罪証隠滅のおそれがないと判断された場合には釈放されます。一方、逆の判断をされると身柄拘束は継続し、最終的には勾留されてしまいます。
勾留期間ははじめ10日間で、その後、最大10日間まで延長されることもあります。ただ、この勾留期間中でも釈放されることがあります。
タクシー運転手と示談する必要性
タクシー運転手に対する暴行を認める場合は示談するのが先決です。逮捕前に示談できた場合は逮捕を回避できる可能性が高くなります。
逮捕されても示談できれば早期釈放や不起訴処分となる可能性が高くなります。強盗罪など重い罪を犯して起訴されてしまった場合でも、量刑が軽くなる(実刑ではなく執行猶予となる)可能性が高くなります。
もっとも、逮捕された場合は直接示談できませんし、逮捕されなかった場合でも加害者との示談交渉に対応する被害者は少ないです。仮に、応じてくれた場合でも交渉がうまく進展しないでしょう。
そこで、示談交渉は弁護士に任せた方が安心です。適切な内容で示談してくれますし、示談の結果を逮捕回避、早期釈放、不起訴処分などにつなげてくれます。
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