
酔った勢いでタクシー運転手を殴ってしまった、蹴ってしまった。翌朝、酔いがさめて「自分はどんな罪に問われるのだろう」「後日逮捕されるのだろうか」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
タクシー運転手への暴行は、暴行罪・傷害罪にとどまらず、状況によっては恐喝罪や強盗罪のような重い犯罪が成立する可能性もあります。一方で、早い段階で被害者との示談を成立させることができれば、逮捕の回避や不起訴処分につながるケースも少なくありません。
この記事では、タクシー運転手への暴行事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。
- タクシー運転手への暴行で成立する犯罪と刑罰
- 逮捕のパターンと逮捕された後の流れ
- 示談金の相場と示談の進め方
なお、タクシー運転手への暴行でお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。
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タクシー運転手に対する暴行の際に成立し得る犯罪は?
タクシー運転手に対する暴行の際に成立し得る犯罪は、
- ①暴行罪
- ②傷害罪
- ③脅迫罪
- ④恐喝罪
- ⑤強盗罪
- ⑥威力業務妨害罪
- ⑦器物損壊罪
が考えられます。
①暴行罪
暴行罪とは、人に対して暴行を加えたものの、その人に傷害が生じなかった場合に成立する犯罪です(刑法第208条)。罰則は、2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
暴行とは人の身体に対する有形力を行使することをいい、タクシー運転手に対する暴行では、
- 背中や頭を殴る
- 胸ぐらをつかむ
- 髪の毛を引っ張る
- 物を投げつける
など、身体に直接触れる行為が典型ですが、他にも、
- 唾をかける
- 運転席を蹴る
など、身体に直接触れない行為も暴行にあたります。
②傷害罪
傷害罪は暴行罪の「暴行」に加えて、人に怪我(傷害)を負わせ、かつ、その暴行と怪我との間に因果関係が認められる場合に成立します(刑法第204条)。罰則は、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
後部座席からタクシー運転手の運転席を蹴ったところ、タクシー運転手の首に急な衝撃が加わり、タクシー運転手に加療約1週間の頚椎捻挫(むち打ち症)の怪我を負わせた、というのが典型例です。
この例からもおわかりいただけるように、傷害罪は、怪我をさせるつもりがなくても暴行の認識があれば成立しうる犯罪です。
③脅迫罪
脅迫と暴行はまったく種類の異なる行為ですが、暴行の際にやってしまいがちな行為です。
脅迫罪とは、相手やその親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知して脅迫した場合に成立する犯罪です(刑法第222条)。罰則は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です。
したがって、タクシー運転手に対して、次のような発言をすれば脅迫罪が成立する可能性があります。
- 「殺すぞ。」と言う→生命に対する害悪の告知
- 「痛い目にあいたいのか。」と言う→身体に対する害悪の告知
脅迫罪の成立要件や該当する言葉の具体例については「脅迫罪になる言葉・ならない言葉は?成立要件と刑罰を解説」で詳しく解説しています。
④恐喝罪
恐喝罪とは、暴行または脅迫によって相手を畏怖させ、財物を交付させたり財産上不法の利益を得たりした場合に成立する犯罪です(刑法第249条)。罰則は、10年以下の拘禁刑で、罰金刑は定められていません。
タクシー運転手に対する恐喝罪では、
- 運転手を殴る、胸ぐらをつかむなどの暴行を加えて、タクシー料金の支払いを免れた
- 「払わないぞ。文句があるなら降ろせ。」などと脅して、タクシー料金の支払いを免れた
などが典型例です(刑法第249条2項、いわゆる2項恐喝)。
暴行の程度が軽くても、運転手を怖がらせて料金の支払いを免れれば恐喝罪が成立し得る点に注意が必要です。なお、暴行・脅迫の程度が強まり、運転手の反抗を抑圧する程度にまで達すると、恐喝罪ではなく次に説明する強盗罪が成立することになります。
⑤強盗罪
強盗罪とは、暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取したり、財産上不法の利益を得るなどした場合に成立する犯罪です。罰則は、5年以上の有期拘禁刑です。
暴行又は脅迫により他人の財物を強取する行為としては、
- タクシー運転手から金銭を奪い取った
- タクシー運転手がひるんだすきに金銭を奪い取った
などが典型例です。
暴行又は脅迫によって財産上不法の利益を得る行為としては、タクシー運転手に暴行・脅迫を加えて反抗できない状態にしたうえで、タクシー料金を支払わずに逃走するケースが挙げられます(刑法第236条2項、いわゆる2項強盗・強盗利得罪)。
2項強盗が成立するためには、暴行・脅迫が「相手の反抗を抑圧する程度」に達している必要があります。そこまでの強さに至らない暴行・脅迫でタクシー料金の支払いを免れた場合には、強盗罪ではなく前述の恐喝罪(刑法第249条2項)が成立し得ます。
なお、強盗の機会にタクシー運転手が負傷した場合は強盗致傷罪が成立し、無期または6年以上の拘禁刑に処せられます。また、強盗の機会にタクシー運転手が死亡した場合や、殺害した場合には、それぞれ強盗致死罪、強盗殺人罪が成立し、死刑または無期拘禁刑に処せられます。
強盗罪の構成要件や量刑の見通しについては「強盗罪とは?構成要件や刑罰を弁護士が解説」をご参照ください。
⑥威力業務妨害罪
タクシー運転手は乗客を輸送する営業活動の最中にあります。暴行や脅迫によってその業務を妨げた場合には、威力業務妨害罪に問われることがあります(刑法第234条)。罰則は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
たとえば、酔った乗客が車内で暴れて運転手が安全に走行できなくなった場合や、タクシー乗り場で他の利用者がいる前で暴行騒ぎを起こして営業に支障を生じさせた場合などに成立しうる犯罪です。
⑦器物損壊罪
器物損壊罪とは、他人の物を壊したり、その物の用途に従って使えなくしてしまうことで成立する犯罪です(刑法第261条)。罰則は、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料です。
タクシー運転手へ暴行を加えようとして防犯用のアクリル板を壊した場合や、車外に出た後に車体を蹴り飛ばして凹ませたりサイドミラーを折るなどすれば、器物損壊罪が成立します。
器物損壊の示談金相場や示談しなかった場合のリスクについては「器物損壊とは?成立要件と示談金相場・示談しないとどうなるのかを解説」で詳しく紹介しています。
タクシー運転手への暴行は酔っていても罪になる?
飲み会の後、深夜に帰宅する際にタクシーを利用するという方も多いでしょう。飲酒によって気が大きくなり、タクシー運転手に対して暴行を加えてしまうケースは珍しくありません。酔いがさめた際にはタクシー運転手に暴行を加えたことを覚えていないという方もおられます。
では、タクシー運転手に暴行を加えた記憶がないからといって罪には問われないかといえば、答えは「NO」の場合が多いです。
ここで問題なのは、タクシー運転手に暴行を加えた際に罪に問える能力(責任能力)が備わっていたかどうかです。もちろん、本当に備わっていなかったのであれば争う必要があります。
しかし、多くの場合は、タクシー運転手やタクシーに乗り込む前に一緒に行動していた人の証言をはじめ、タクシーに搭載されている車載カメラなどから、タクシー運転手に暴行を加えた際に能力が備わっていたことを示す事情(たとえば、支離滅裂ではなく論理的な話をしていたなど)が明らかになってきます。そうすると、もはや「酔っていた」、「事件当時の記憶がない」という理由で罪を免れることは難しくなってきます。
泥酔状態での暴行と逮捕リスクについては「泥酔中の犯罪は記憶がなくても刑事責任を問われる?逮捕と前科を解説」でも詳しく解説しています。
タクシー運転手への暴行で逮捕されるパターン
タクシー運転手に対する暴行での逮捕には現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕の3通りがあります。
現行犯逮捕されるパターン
タクシー運転手に暴行を加えた後、タクシー運転手から警察に通報され、警察官が現場に駆け付けた際にその場にとどまっていた場合は現行犯逮捕されることがあります。通報がなくても、騒ぎを聞きつけた周囲の通行人や近隣住民が110番通報するケースも少なくありません。
タクシー運転手への暴行事件は現行犯逮捕が最も多いパターンです。ただし、被害が軽微で容疑を認めている場合には、その場で逮捕されず、警察署で事情聴取を受けた後に帰宅を許されることもあります。
後日逮捕(通常逮捕)されるパターン
また、現場から逃走するなどして、その場で現行犯逮捕されない場合でも後日逮捕されることもあります。自分でタクシーを呼んだ場合は携帯電話番号の履歴から、他の人に呼んでもらった場合は一緒に行動していた人や飲食店従業員の証言から、あるいは車載カメラなどから身元が判明します。
緊急逮捕されるパターン
緊急逮捕は、長期3年以上の拘禁刑にあたる罪について認められる逮捕方法で、ひとまず逮捕状なしに身柄拘束し、直ちに逮捕状を請求する逮捕です。前述した罪のうち、傷害罪、恐喝罪、強盗罪、威力業務妨害罪、器物損壊罪は緊急逮捕の対象となります。一方、暴行罪と脅迫罪は長期が2年のため緊急逮捕の対象外です。現場から逃走したものの、警察官が現場周辺を捜索していたところ、被疑者と思われる人物を発見したため緊急逮捕するというパターンが考えられます。
タクシー運転手への暴行で逮捕されるとどうなる?
警察に逮捕されると警察署内の留置場に収容されます。釈放されるまでは留置場が生活の場となり、自由やプライベートはなく、日常生活を送ることもできなくなります。
早期に釈放される場合
逮捕後、被害が軽微で容疑を認めて反省の態度を示している場合や、身元がしっかりしていて逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断された場合には、警察段階で釈放されるケースも少なくありません。
タクシー運転手への暴行事件では、タクシーに搭載されたドライブレコーダーの映像など、事件の客観的証拠がすでに押収されていることが多く、証拠隠滅のおそれが低いと判断されやすい傾向にあります。釈放後は在宅のまま捜査が進み、後日、検察庁から呼び出しを受けて処分が決まります。
勾留が続く場合
逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断された場合は、逮捕に引き続き勾留されます。勾留期間ははじめ10日間で、その後最大10日間まで延長されることもあり、逮捕から最大23日間にわたって身柄を拘束される可能性があります。
この間、会社に出勤できなくなるため、無断欠勤として解雇されたり、学生であれば退学処分につながったりしかねません。身柄拘束の期間を少しでも短くするには、早い段階で弁護士に依頼し、勾留の回避や釈放に向けた弁護活動を進めてもらうべきです。
タクシー運転手への暴行の示談金相場と示談の重要性
タクシー運転手に対する暴行を認める場合は示談するのが先決です。
タクシー運転手への暴行事件における示談金の相場は、暴行罪(怪我なし)の場合で10万円〜30万円程度です。ただし、傷害罪に該当する場合は怪我の程度や治療期間に応じて50万円を超えるケースもあります。また、タクシーの車内や外装を壊した場合はその修理費用、事件当日に営業を中断したことによる営業損害の賠償をタクシー会社から請求される場合もあります。
逮捕前に示談できた場合は逮捕を回避できる可能性が高くなります。逮捕されても示談できれば早期釈放や不起訴処分となる可能性が高くなります。同種の前科がない初犯であれば、暴行罪の場合は示談成立により不起訴で終わるケースが多く、傷害罪でも怪我が軽ければ罰金刑にとどまる傾向にあります。一方、恐喝罪や強盗罪のように重い罪で起訴された場合でも、示談が成立していれば量刑が軽くなる(酌量減軽により執行猶予がつく)可能性が高くなります。
もっとも、逮捕された場合は直接示談できませんし、逮捕されなかった場合でも加害者との示談交渉に対応する被害者は少ないです。対応が遅れるとタクシー運転手やタクシー会社が被害届を提出し、事態がさらに深刻化するおそれもあります。
そこで、示談交渉は弁護士に任せた方が安心です。弁護士であれば被害者の連絡先を捜査機関から教えてもらえますし、適切な内容で示談をまとめてくれます。示談の結果を逮捕回避、早期釈放、不起訴処分などにつなげてくれます。
暴行罪の示談金の算定方法や示談の具体的な流れについては「暴行罪の示談金・慰謝料の相場は?金額の決まり方も解説」で詳しく解説しています。
タクシー運転手への暴行に関するよくある質問
タクシーを蹴ったら罪になる?
タクシーの車体を蹴って凹ませたりサイドミラーを折ったりした場合は、器物損壊罪に問われるおそれがあります。罰則は3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料です。また、蹴った衝撃が車内のタクシー運転手の身体に伝わった場合は暴行罪や傷害罪が成立することもあります。
タクシー運転手に暴言を吐いたら罪になる?
「殺すぞ」「痛い目にあわせるぞ」など、生命や身体に対する害悪を告知する発言をした場合は脅迫罪が成立する可能性があります。酔った勢いでつい口にしてしまうケースが多いですが、タクシー運転手は素面であることがほとんどであり、発言内容をはっきり記憶しています。車載カメラにも音声が記録されていることが多いため、「覚えていない」という弁解は通りにくくなっています。
酔って記憶がない場合は不起訴になる?
記憶がないこと自体は不起訴の理由にはなりません。タクシーに乗車し行き先を告げるなど一定のやり取りができていれば、責任能力が認められる可能性が高くなります。むしろ「記憶にない」と主張して否認を続けると、反省していないと受け取られ、勾留が長引いたり処分が重くなったりするおそれがあります。早めに弁護士に相談し、適切な対応方針を立てることが大切です。
タクシー運転手への暴行でお困りの方はすぐにご相談ください
タクシー運転手への暴行は、酔った勢いの一瞬の行為であっても、暴行罪・傷害罪・恐喝罪・強盗罪といった犯罪が成立し、逮捕や前科につながるおそれがあります。しかし、早い段階で被害者との示談を成立させれば、逮捕の回避や不起訴処分を得られる可能性は十分にあります。
「酔っていて覚えていない」「後日逮捕されるかもしれない」と一人で不安を抱えている方も多いかと思いますが、対応が遅れるほど事態が深刻になりやすい類型の事件です。
当事務所はタクシー運転手への暴行事件を含む刑事事件を多数取り扱ってきた実績があります。依頼者の不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動き、全力を尽くして守ります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

