執行猶予の取り消しとは?具体例と取り消しを防ぐ3つの対策

執行猶予の取り消しとは、前の判決で言い渡された執行猶予が取り消されることです

執行猶予の取り消しには、一定事由の発生で必ず取り消される必要的取消し(刑法第26条)と、取り消すかどうかが裁判所の裁量に委ねられる裁量的取消し(刑法第26条の2)の2種類があります。執行猶予が取り消されると、前の判決で言い渡された懲役または禁錮の期間を刑務所で服役しなければならなくなります

例えば、「懲役1年、執行猶予3年」の判決を受け、その執行猶予期間中に新たな犯罪を犯し「懲役1年6月」の実刑判決を受けたとします。この場合、新たに犯した罪の「懲役1年6月」の服役に引き続き、執行猶予が取り消される「懲役1年」の刑に服さなくてはなりません。つまり、トータルで「2年6月」服役することになります(未決勾留日数、仮釈放期間を除く)。

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どのような場合に執行猶予が取り消されてしまう?

令和2年度版犯罪白書によると、平成元年における全部執行猶予を言い渡された人員に占める全部執行猶予を取り消された人員の割合は約12%(正確には11.9%)となっており、1割以上の者が執行猶予を取り消されていることがわかります。

そして冒頭でお伝えしたように、執行猶予の取り消しには、一定の事由が発生した場合に必ず執行猶予が取り消される「必要的取消し」と、一定の事由が発生したものの取り消すかどうかは裁判所の裁量に委ねられる「裁量的取消し」があります。

では、どのような場合に執行猶予が取り消されてしまうのか。必要的取消しと裁量的取消しのケースに分けて解説します。

必要的取消しのケース

必要的取り消しのケースは刑法26条1項の1号~3号規定されています。ただし、2号・3号はレアケースですので、ここでは実務上、最も多いケースである1号について解説します(以下の条文の黄色のマーカーの箇所だけ目を通して下さい)。

刑法26条(刑の全部の執行猶予の必要的取消し)

次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第3号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第25条第1項第2号に掲げる者であるとき、又は次条第3号に該当するときは、この限りでない。

1号.猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき
2号.猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
3号.猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

そして、この刑法第26条1項1号を分解すると、執行猶予が必要的取消しをされるのは次の条件を満たした場合になります。

  • ① 執行猶予期間中に罪を犯したこと
  • ② その罪で禁錮以上の刑(懲役刑を含む)の実刑判決を受けたこと
  • ③ 執行猶予期間中に、②の判決が確定(※)したこと

①~③の条件を満たすと、執行猶予は必ず取り消されます

※ 控訴、上告ができなくなった状態のこと。したがって、判決日に執行猶予期間中でも、控訴、上告ができる間にその期間が経過した場合は、取り消されることはありません。

裁量的取消しのケース

裁量的取消しのケースは刑法26条の2に3つ規定されています。このうち、実務上で多いのが、1号、2号のいずれかです。

刑法第26条の2(刑の全部の執行猶予の裁量的取消し)
次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる
1号.猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき
2号.第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき
3号.猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。

このように、執行猶予期間中に罰金刑が確定しても必要的に執行猶予が取り消されるわけではありませんが、裁判官の裁量で任意的に取り消されることがあります。また、執行猶予期間中、保護観察に付された方が保護観察所から指定されたルールを守らなかった場合にも、執行猶予を取り消されることがありますので注意が必要です。

執行猶予取り消しの事例

以下では、刑法26条1項1号によって執行猶予が取り消されるケースと取り消されないケースを具体的な事例を使ってご紹介します。

前回の事件
2019年2月1日窃盗で検挙される
2019年9月1日懲役6月、3年間執行猶予の判決を受ける
2019年9月16日上記判決が確定する→執行猶予期間が始まる(執行猶予期間は2019年9月16日から2022年9月15日まで
執行猶予が取り消される例(執行猶予期間は2019年9月16日から2022年9月15日まで)
2021年5月1日窃盗で検挙される(再犯)
2021年9月1日懲役1年の実刑判決を受ける
2021年9月16日上記判決が確定する
→懲役1年の刑で刑務所に服役する
→執行猶予の取り消し事由発生(刑法26条1号)
2021年10月1日検察官が執行猶予の取り消し請求をする
2021年10月10日裁判所が執行猶予の取り消し決定を出す
2022年9月15日懲役1年での服役が終わる
→引き続き、懲役6月の刑で服役する
執行猶予が取り消されない例(執行猶予期間は2019年9月16日から2022年9月15日まで)
2022年5月1日窃盗で検挙される
2022年9月10日懲役1年の実刑判決を受ける
2022年9月25日上記判決が確定する
→懲役1年の刑で服役する
※判決時点では執行猶予期間中ですが、判決確定時点では執行猶予期間が経過していますので、刑法26条1号によって執行猶予が取り消されることはありません。

執行猶予の取り消しを防ぐ3つの対策

執行猶予の取り消しを防ぐためにできることは次の3つです。

不起訴処分を獲得する

前述のとおり、執行猶予が取り消されるケースで最も多いのが、執行猶予期間中に再犯して裁判で実刑判決を受けケースです。そこで、執行猶予の取り消しを防ぐには裁判を受けない、すなわち不起訴処分を獲得することが必要です。

≫不起訴と起訴・罰金・無罪の違い|不起訴処分を得るには?前科はつく?

再度の執行猶予を獲得する

不起訴処分を獲得できずに起訴されても、再度の執行猶予を獲得できれば執行猶予が取り消されることはありません。再度の執行猶予を獲得するには次の条件をクリアする必要があります。

  • 判決時に執行猶予中であること
  • 今回の判決が1年以下の懲役または禁錮であること
  • 情状に特に酌量すべき点があること
  • 前回の執行猶予に保護観察がついていないこと

≫再度の執行猶予とは?条文や要件、獲得確率を弁護士が解説

控訴・上告する

前述のとおり、刑法第26条1項1号によって執行猶予が取り消されるには、執行猶予期間中に実刑判決が確定していることが必要です。そして、判決で実刑判決を受けても控訴・上告すれば判決が確定することはありません。そこで、執行猶予期間の満了が迫っている場合はあえて控訴・上告して確定を遅らせる方法を取ることもあります。

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