
「執行猶予中に再び罪を犯してしまった」「このまま刑務所に入ることになるのか」と強い不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
執行猶予が取り消されると、前回言い渡された刑と、新たな実刑判決の期間を合算して刑務所で服役することになります。さらに2025年6月の刑法改正により、これまで可能だった「執行猶予期間が満了するまで判決を引き延ばす」という対応策も大きく制限されました。
この記事では、刑事事件に注力する弁護士が、執行猶予の取り消しについて以下の内容を解説します。
- 執行猶予が取り消される条件と2025年改正のポイント
- 取り消される場合・取り消されない場合の具体例
- 取り消しを防ぐための3つの対策
なお、執行猶予中に再び罪を犯してしまい早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。
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どのような場合に執行猶予が取り消されてしまう?
令和7年版犯罪白書によると、令和6年における再犯を事由とする全部執行猶予取消人員の全部執行猶予言渡人員に対する比率は9.4%となっており、1割近くの人が再犯を理由に執行猶予を取り消されていることがわかります。
そして、執行猶予の取り消しには、一定の事由が発生した場合に必ず執行猶予が取り消される「必要的取消し」と、一定の事由が発生したものの取り消すかどうかは裁判所の裁量に委ねられる「裁量的取消し」があります。
では、どのような場合に執行猶予が取り消されてしまうのか。必要的取消しと裁量的取消しのケースに分けて解説します。なお、執行猶予中に再犯してしまった場合の全体的な流れについては「執行猶予中に再犯したらどうなる?逮捕後の流れと対策」で詳しく解説しています。
必要的取消しのケース
必要的取消しのケースは刑法26条1項の1号~3号に規定されています。ただし、2号・3号はレアケースですので、ここでは実務上、最も多いケースである1号について解説します。
(刑の全部の執行猶予の必要的取消し)
第26条 次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第3号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第25条第1項第2号に掲げる者であるとき、又は次条第3号に該当するときは、この限りでない。
一 猶予の期間内に更に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられたことが発覚したとき。出典:e-Gov法令検索
そして、この刑法26条1項1号を分解すると、執行猶予が必要的に取り消されるのは次の条件を満たした場合になります。
- ① 執行猶予期間中に罪を犯したこと
- ② その罪で拘禁刑以上の刑の実刑判決を受けたこと
- ③ 執行猶予期間中に、②の判決が確定(※)したこと
①~③の条件を満たすと、執行猶予は必ず取り消されます。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
※ 控訴、上告ができなくなった状態のこと。ただし、2025年の改正により、再犯について執行猶予期間内に起訴されている場合は、判決の確定を待つ間に期間が満了しても執行猶予が取り消される可能性があります(後述)。
なお、執行猶予期間中に再犯すると量刑が加重される可能性があります。詳しくは「累犯・累犯加重とは?再犯との違いや執行猶予との関係を解説」をご参照ください。
裁量的取消しのケース
裁量的取消しのケースは刑法26条の2に3つ規定されています。このうち、実務上で多いのが、1号、2号のいずれかです。
(刑の全部の執行猶予の裁量的取消し)
第26条の2 次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
一 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
二 第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。出典:e-Gov法令検索
このように、執行猶予期間中に罰金刑が確定しても必要的に執行猶予が取り消されるわけではありませんが、裁判官の裁量で任意的に取り消されることがあります。また、執行猶予期間中、保護観察に付された方が保護観察所から指定されたルールを守らなかった場合にも、執行猶予を取り消されることがありますので注意が必要です。
猶予期間が満了しても取り消される場合がある
2025年6月1日に施行された改正刑法により、執行猶予の取り消しに関する重要なルールが追加されました。
改正前は、執行猶予中に再犯しても、その再犯の判決が確定する前に執行猶予期間が満了してしまえば、前回の刑は執行されない取り扱いでした。判決を引き延ばして執行猶予期間の経過を待つ、いわゆる「猶予切れ待ち」が可能だったのです。
ところが、改正後はこの取り扱いが変わりました。執行猶予期間中に犯した罪(罰金以上の刑にあたるもの)について、猶予期間内に起訴されている場合は、期間が満了しても一定期間は刑の言渡しの効力が続き、前の刑の執行猶予が取り消される可能性が生じます(改正刑法27条2項)。
(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
第27条 刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
2 前項の規定にかかわらず、刑の全部の執行猶予の期間内に更に犯した罪(罰金以上の刑に当たるものに限る。)について公訴の提起がされているときは、同項の刑の言渡しは、当該期間が経過した日から(中略)刑の全部の執行猶予の言渡しが取り消されることがなくなるまでの間(中略)、引き続きその効力を有するものとする。(以下略)
出典:e-Gov法令検索
つまり、再犯について猶予期間内に起訴されてしまうと、その後に猶予期間が満了しても安心はできません。なお、この新しいルールが適用されるのは、2025年6月1日以降に執行猶予の言渡しを受けたケースです。
執行猶予取り消しの事例
以下では、刑法26条1項1号によって執行猶予が取り消されるケースと取り消されないケースを具体的な事例を使ってご紹介します。
| 前回の事件 | |
| 2025年8月1日 | 窃盗で検挙される |
| 2026年3月1日 | 拘禁刑6月、3年間執行猶予の判決を受ける |
| 2026年3月16日 | 上記判決が確定する→執行猶予期間が始まる(執行猶予期間は2026年3月16日から2029年3月15日まで) |
| 執行猶予が取り消される例(執行猶予期間は2026年3月16日から2029年3月15日まで) | |
| 2027年11月1日 | 窃盗で検挙される(再犯) |
| 2028年3月1日 | 拘禁刑1年の実刑判決を受ける |
| 2028年3月16日 | 上記判決が確定する →拘禁刑1年の刑で刑務所に服役する →執行猶予の取り消し事由発生(刑法26条1号) |
| 2028年4月1日 | 検察官が執行猶予の取り消し請求をする |
| 2028年4月10日 | 裁判所が執行猶予の取り消し決定を出す |
| 2029年3月15日 | 拘禁刑1年での服役が終わる →引き続き、拘禁刑6月の刑で服役する |
| 執行猶予が取り消されない例(執行猶予期間は2026年3月16日から2029年3月15日まで) | |
| 2029年2月20日 | 窃盗で検挙される |
| 2029年3月15日 | この日までに起訴されないまま執行猶予期間が満了する |
| 2029年4月以降 | 窃盗について起訴され、後日実刑判決を受ける →新たな窃盗の刑だけで服役する ※執行猶予期間が満了するまでに起訴されていなかったため、刑の言渡しの効力は満了時に失われており、前回の拘禁刑6月の刑はもはや執行されません。 |
2025年の改正により、再犯について執行猶予期間内に起訴されたかどうかが、取り消しの大きな分かれ目になりました。期間内に起訴されていれば、その後に判決が確定するのを待つ間に期間が満了しても、前回の執行猶予が取り消される可能性があります。一方、期間内に起訴されなければ、満了によって前回の刑の言渡しの効力は失われます。
執行猶予の取り消しを防ぐ3つの対策
執行猶予の取り消しを防ぐためにできることは次の3つです。
不起訴処分を獲得する
前述のとおり、執行猶予が取り消されるケースで最も多いのが、執行猶予期間中に再犯して裁判で実刑判決を受けるケースです。そこで、執行猶予の取り消しを防ぐには裁判を受けない、すなわち不起訴処分を獲得することが必要です。不起訴処分を獲得するためには被害者との示談が重要になります。不起訴処分の詳しい内容や獲得方法については「不起訴とは|無罪との違いと不起訴になる理由・前科前歴の有無」で解説しています。
罰金刑にとどめる
起訴されてしまった場合でも、罰金刑が定められている罪であれば、宣告刑を拘禁刑ではなく罰金刑におさえることで取り消しを回避できる可能性があります。罰金刑の場合、執行猶予の取り消しは必要的取消しではなく裁量的取消しの対象にとどまるため、裁判所の判断によっては前回の執行猶予が維持されることもあるからです。
ただし、罰金刑であれば必ず執行猶予が維持されるというわけではありません。再犯までの期間が短い、前科前歴が多いなど悪質性が高いと判断されれば、検察官が取り消しを請求し、裁判所が執行猶予を取り消すこともあります。被害者がいる事件では示談を成立させるなど、刑を軽くする事情を積み重ねることが重要です。
再度の執行猶予を獲得する
不起訴処分を獲得できずに起訴され、拘禁刑が見込まれる場合でも、再度の執行猶予が認められれば、刑務所に入ることなく前回の執行猶予も維持されます。再度の執行猶予を獲得するには次の条件をクリアする必要があります。
- 今回言い渡される刑が2年以下の拘禁刑であること
- 情状に特に酌量すべき事情があること
2025年6月施行の改正刑法により、再度の執行猶予が認められる刑の上限は「1年以下」から「2年以下」へと引き上げられています。さらに、これまで前回の執行猶予に保護観察がついていると再度の執行猶予は認められませんでしたが、改正後は保護観察付き執行猶予中の再犯でも再度の執行猶予が可能になりました。ただし、「情状に特に酌量すべき事情」が必要という厳しい要件は改正後も維持されており、再度の執行猶予が認められるハードルは依然として高いままです。詳しくは「再度の執行猶予とは?条文や要件、獲得確率を解説」をご参照ください。
執行猶予中に再び罪を犯してしまった方は弁護士にご相談ください
執行猶予中の再犯で実刑判決が確定すれば、前回の執行猶予は取り消され、もとの刑と新たな実刑を合算して服役することになります。これを回避する方法は、不起訴処分の獲得、罰金刑にとどめること、再度の執行猶予の獲得という3つの選択肢に集約され、いずれも刑事事件に精通した弁護士の早期介入が不可欠です。
特に2025年6月の刑法改正後は、執行猶予期間内に起訴されていれば、期間が満了しても刑の言渡しの効力が継続する仕組みが導入され、判決を待つ間に猶予切れを期待することができなくなりました。被害者がいる事件であれば、起訴前に示談交渉を急ピッチで進めて不起訴を引き出すこと、仮に起訴された場合でも情状弁護を尽くして罰金刑や再度の執行猶予を狙うことが、刑務所行きを回避する現実的な方法となります。
「このまま刑務所に入ることになるのか」という不安は、状況が動き出す前ほど大きく感じられるものです。執行猶予中の再犯は対応の遅れが致命的になるため、捜査が本格化する前に弁護士に相談することが重要です。
当事務所は刑事事件を多数取り扱ってきた実績があり、執行猶予中の再犯事件についても豊富な相談実績があります。依頼者の不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動き、全力を尽くして対応します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
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