- 重過失致死傷罪とはどんな罪?罰則や時効は?
- 重過失致死傷罪と過失致死傷罪とはどう違うの?
- 重過失致死傷罪の判例(自転車事故を含む)にはどのようなものがある?
この記事では、これらの疑問を刑事事件に強い弁護士が解消していきます。
近年、ながらスマホによる自転車事故が多発しており、重過失致死傷罪が適用される事例も出ています。例えば、令和3年5月26日に、横断歩道を自転車で渡っていた女性医師が右側から走って来たスポーツタイプの自転車に追突され頭を打って死亡した事案で、追突した自転車の運転手の男が重過失致死の容疑で逮捕されています。
自転車で通勤・通学されている方や趣味でサイクリングをされている方は特に、いつ自分が加害者の立場に置かれるかわかりません。記事を読むことで重過失致死傷罪についての理解を深めることができますので、最後まで読んでみて下さい。
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重過失致死傷罪とは?
重過失致死傷罪とは重大な過失(重過失)によって人を死傷させた場合に成立する罪です(刑法211条1項後段)。法定刑は5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。公訴時効は5年です。
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。刑法 | e-Gov法令検索
前段では業務上過失致死傷罪について規定されており、重過失致死傷罪と同じ罰則です。
過失致死傷罪とはどう違う?
過失致死傷罪の刑罰は罰金または科料のみで懲役刑がないのに対し、重過失致死傷罪(及び、業務上過失致死傷罪)は懲役・禁錮刑が設けられています。これだけ刑罰に開きがあるのは、重過失致死傷罪の場合、単なる注意義務違反(軽過失)を超える「重大な過失(重過失)」があるからにほかなりません。
では、「重過失」があるとはどのような場合を指すのでしょうか。以下で解説します。
重過失とは?
重過失とは行為者の注意義務に違反した程度(過失の程度)が著しい場合、すなわち、わずかな注意さえ払えば結果の発生を回避できた場合をいいます。
たとえば、自転車を運転する場合、ハンドルを適切に操作し、前をよく確認しながら運転すること、これが自転車運転者に課される注意義務です。しかし、たとえば、Aが片手でスマホを操作しながら自転車を運転した結果、自転車を歩行者に衝突させ、歩行者に怪我をさせるか、あるいは死亡させたとします。
この場合、Aがスマホを操作しながら自転車を運転することは、ハンドルを適切に操作しておらず、かつ、前をよく見て運転していない、すなわち、自転車運転者に課される注意義務に明らかに違反しています。さらに、歩行者に怪我をさせる(あるいは死亡させる)という結果の発生は、Aさんがスマホを操作しないで通常どおり(交通ルールに従って)自転車を運転する、というわずかな注意義務さえ払えば回避できははずです。そうすると、Aさんには重過失があったと認められてしまうというわけです。
重過失致死傷罪の判例
ここで重過失致死傷罪が適用された判例をご紹介します。
自転車事故に関する判例
- 自転車を運転中の男性が信号を無視して交差点に進入。折から青信号で横断歩道を左から右に向けて渡ってきた女性に自転車を衝突させ、その場に女性を転倒させ、女性を脳挫傷で死亡させた事例(東京地方裁判所判決平成22年11月12日)
- 左手でスマホを操作しながら、右手で飲料カップをもち、左耳にはイヤホンをした状態で電動自転車を運転していたところ、前方を歩いていた高齢男性に自転車を衝突させ、男性をその場に転倒させるなどして死亡させた事例(横浜地方裁判所川崎支部判決令和元年8月27日)
その他の判例
- 多量に飲酒するときは病的酩酊に陥って他人に危害を及ぼす素質をもつ被告人が、飲酒を抑止・制限すべき注意義務があるのに、多量に飲酒して乱酔に陥った点に重大な過失があるとされた事例(福岡高等裁判所判決昭和28年2月9日)
- 冬場の午後5時ころに泥酔していた内妻を風呂場に追いやり、衣服を着させたまま水風呂に入れ、その日の午後11時ころ、風呂の水を抜いただけで内妻を放置した重大な過失により、内妻を心臓衰弱により死亡させた事例(東京高等裁判所判決昭和60年12月10日)
- 被告人が自宅から単身赴任先に向かうことに不安を覚え、同居していた家族の気をひこうと家の玄関の土間に灯油を撒布し、さらにライターを点火し、その火を直接又は媒介物を介して撒布した灯油に引火させるなどした重大な過失により、子ども4名を焼死させるなどした事例(大分地方裁判所判決平成28年4月11日)
重過失致死傷の解決は示談交渉が重要
著しい注意義務違反で人を死傷させると重過失致死傷罪に問われる可能性があります。しかも重過失致死傷罪は過失致死傷罪と異なり懲役刑も設けられています。
また、過失犯とはいえ逃亡や証拠隠滅のおそれがあると捜査機関が判断すれば逮捕もあり得ます。逮捕と勾留で最大23日間身柄拘束されますので、学校や仕事への影響もあるでしょう。さらに、起訴されて刑事裁判で有罪判決となれば前科もついてしまいます。
もっとも、逮捕前に被害者と示談を成立させ、被害届の提出や告訴をしないよう確約してもらえれば逮捕を回避することも可能です。逮捕後であっても、検察官が起訴・不起訴を判断するにあたり示談の成立が考慮されるため不起訴処分となる可能性も高まります。また、起訴された場合でも執行猶予判決や減軽も期待できます。
ただし、加害者に嫌悪感を抱いている被害者(または遺族)も多く、加害者との直接的な示談交渉に応じてくれないことがほとんどです。そこで、示談交渉は弁護士に一任することをお勧めします。
弁護士であれば示談交渉に応じてくれる被害者も多く、事案に応じた適切な示談金の額を被害者に提示することもできます。
弊所では、被害者との示談交渉を得意としており実績もあります。親身誠実に、弁護士が依頼者を全力でサポートしますのでまずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が解決へと繋がります。
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