私用文書等毀棄罪(しようぶんしょとうききざい)とは、権利又は義務に関する他人の文書または電磁的記録を毀棄した場合に問われる罪です。刑法の第259条に規定されています。罰則は5年以下の懲役です。なお、私用文書等毀棄罪の公訴時効は5年です。また、私用文書等毀棄罪は、検察官が起訴するにあたって被害者の告訴を必要とする親告罪です。
(私用文書等毀棄)
第二百五十九条 権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の懲役に処する。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、私用文書等毀棄罪の構成要件(成立要件)についてわかりやすく解説していきます。
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私用文書等毀棄罪の構成要件
私用文書等毀棄罪の構成要件は次のとおりです。
権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録
毀棄の対象は権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録です。
「権利又は義務に関する文書」とは、権利・義務の存否・得喪・変更などを証明する文書、すなわち、これらを証明するために作られた文をいいます。たとえば、
- 各種契約書
- 債務証書
- 株券
- 領収書
などが権利又は義務に関する他人の文書にあたります。有価証券が私用文書等毀棄罪の「文書」にあたるかが問題になりますが、判例は、約束手形(大判大14年5月13日)、小切手(昭和44年5月1日)とも権利又は義務に関する他人の文書にあたると判示しています。
一方、学校の成績通知表、試験の答案用紙、免許証など単なる事実を証明するための文書は、私用文書等毀棄罪における権利又は義務に関する他人の文書にはあたりません。もっとも、これらの文書を毀棄した場合は「他人の物」を損壊したとして、刑法第260条の器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料)で処罰される可能性があります。器物損壊罪も私用文書等毀棄罪と同じく親告罪です。
また、「他人の文書」とは、他人が所有している文書を指します。ただし、自己所有の文書であっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は配偶者居住権が設定されたものについては私用文書等毀棄罪の客体となります。なお、「他人」とは、行為者以外の私人(法人も含む)を指しますので、役所などの公務所が使用する目的で保管している文書は公用文書等毀棄罪の客体となります。
また、「権利又は義務に関する電磁的記録」とは、一定のシステムにおいて権利・義務に関するものとして用いられる情報を記録した電磁的記録をいいます。たとえば、銀行のオンラインシステムにおける預金元帳ファイルなどがこれにあたります。
毀棄
次に、権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄することです。
毀棄とは、文書等の本来の効用を害する一切の行為をいいます。物質的、すなわち、有形的に毀損することはもとより、その文書を利用できない状態にする行為も毀棄に含まれます。したがって、文書の一部を抜き取った場合、他人が所持する自己名義の文書の日付を改ざんした場合、借用証書・小切手をポケットに突っ込んで隠しそのまま所有者に返還しなかった場合は私用文書等毀棄罪に問われる可能性があります。
まとめ
私用文書等毀棄罪とは、権利又は義務に関する他人の文書または電磁的記録を毀棄した場合に問われる罪です。刑法の第259条に規定されています。罰金刑がなく、有罪となれば5年以下の懲役に処されることから決して軽い罪ではありません。
そのため、心当たりのある行為をしてしまった方は、できるだけ早急に弁護士に相談し、その後の対応方法についてアドバイスをもらうようにしましょう。
当事務所では、犯罪被害者との示談交渉、逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており多数の実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守ります。私用文書等毀棄罪で逮捕のおそれがある方や、既に逮捕された方のご家族の方は、当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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