女性アスリートの盗撮は何罪?撮影罪になる?逮捕回避の方法を解説

性的な意図を持って女性アスリート(スポーツ選手・運動選手)の性的な部位を強調して撮影する盗撮被害が社会問題となっています。

これまで盗撮行為は、各都道府県の迷惑防止条例違反として処罰されてきましたが、2023年7月13日に「撮影罪」が施行されたことにより、同日以降の盗撮事件には撮影罪が適用されることになります。

もっとも、女性アスリートの競技中のユニフォームや水着姿を撮影する行為は、撮影罪の対象外となります。撮影罪は、性的な意図を持って盗撮を行った場合に成立する犯罪ですが、着衣の上からの撮影については、性的意図の有無の線引きが不明確であるため、処罰対象外とされているのです。

では、女性アスリートを盗撮したらどんな犯罪で処罰されるの?

と思われる方もいることでしょう。

そこでこの記事では、盗撮事件に強い弁護士が以下の点について詳しく解説します。

  • 女性アスリートの盗撮で問われる犯罪
  • 女性アスリートの盗撮で逮捕を回避する方法
  • 女性アスリートの盗撮で逮捕された場合の対処法

なお、心当たりのある行為をしてしまった方で、逮捕回避に向けて早急に対応したいとお考えの方は、この記事を最後までお読みいただき、全国無料相談の弁護士までご相談ください

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女性アスリートの盗撮被害問題とは

性的な意図をもってスポーツ競技中の女性アスリートの身体を撮影するという盗撮の被害が社会問題となっています

ユニフォーム姿の女性アスリートの胸や尻など、ことさら性的な部位にフォーカスした盗撮動画や静止画などがひわいな言動とともにSNSなどのインターネット上に拡散されるケースも散見されます。また、盗撮された画像と卑猥な画像が合成されてWEBサイト上に掲載されたり、盗撮動画や画像がオークションで販売されるなどの被害も発生しています。

特に、競技用のユニフォームが身体に密着している陸上、新体操、水泳競技などにおいて、女性アスリートの盗撮被害が多発しているとして問題となっています。また、中学生や高校生などの未成年者が出場する上記のような競技を狙って盗撮行為を行う者も後を絶ちません。

このような女性アスリートの盗撮被害は、近年、社会問題と認識されるようになりました。

その結果、女性アスリートが身に着けるユニフォームの見直しが行われたり、一般人による競技の撮影を規制・禁止したり、入場制限を設けて盗撮被害の防止に努めています。

女性アスリートの盗撮に撮影罪は適用される?

盗撮は従来、各都道府県の迷惑防止条例によって規制されていましたが、2023年7月13日に施行された性的姿態撮影等処罰法により、正当な理由なく、性的な意図を持って性的姿態等を撮影した場合は、より重い刑罰が科される「撮影罪」として全国一律に処罰の対象となりました

この性的姿態等とは、性的な部位や身に着けている下着、わいせつな行為・性交等の人の姿のことを指します。女性アスリートの盗撮被害についても、更衣室内の女性アスリートを盗撮した場合や、下着姿の女性アスリートを盗撮した場合などは処罰の対象となります。

しかし、競技中の女性アスリートのユニフォーム姿や水着姿を撮影する行為については、通常他人に見られることを想定している着衣の上からの撮影であり、性的な部位やそれを覆っている下着を撮影したと評価することができません。また、性的な意図の有無の線引きが不明確であることから、撮影罪の処罰対象外とされています

他方で、競技中の女性アスリートの姿であっても、赤外線カメラにより透過撮影した場合には、通常他人に見られる着衣の上から撮影しているとは言えないため、現行の撮影罪でも処罰の対象になります。

撮影罪とは?該当する行為を弁護士がわかりやすく解説

女性アスリートの盗撮で問われる犯罪

上記の通り、女性アスリートの盗撮は撮影罪の処罰対象から除外されていますが、以下の犯罪に問われる可能性があります。

迷惑防止条例違反

競技中の女性アスリートの姿を盗撮する行為は、各都道府県が定めている迷惑防止条例に問われる可能性があります。

例えば、東京都では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(迷惑防止条例)が定められており、盗撮に関して次のように規定しています。

第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

(省略)

二 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

三 前二号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例

そして、競技中の女性アスリートを性的な目的で盗撮する行為は、同条例第5条1項3号にいう「卑わいな言動」に該当する可能性があります。「卑わいな言動」とは、判例(最高裁平成20年11月10日判決)によると、「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語または動作」を指します。

したがって、競技中の女性アスリートの胸、尻、股間などの性的部位をことさらに拡大・強調して撮影したり、執拗に撮影した場合には、「卑わいな言動」に該当し、迷惑防止条例違反になる可能性があります。

東京都の迷惑防止条例に違反した場合には、6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになります(同条例第8条1項2号)。

常習として同条例違反の罪を犯した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになります(同第8条8項)。

建造物侵入罪

正当な理由がないのに、人の住居や看守する邸宅・建造物・艦船に侵入した場合、建造物侵入罪に問われる可能性があります(刑法第130条)。

建造物侵入罪は、看守者や管理権者の許諾に反して立ち入る行為を処罰する犯罪です。

一般人が広く立ち入りを許可されている公共の競技場や体育館であっても、盗撮目的で立ち入る行為は、許諾権者の明示または黙示の意思に反することになります。

したがって、女性アスリートを盗撮する目的で施設に立ち入る行為は、建造物侵入罪に問われる可能性があります。

この罪が成立した場合、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されることになります。

名誉毀損罪

盗撮した動画や写真を動画投稿サイトやSNSにアップロードした場合、名誉毀損罪に問われる可能性があります。

名誉毀損罪とは、事実を摘示し、公然と人の社会的評価を低下させる行為によって成立する犯罪です(刑法第230条)。

女性アスリートのわいせつな盗撮動画や画像を不特定多数の人が閲覧できるインターネット上に公表した場合、女性アスリートの社会的評価を低下させたとして名誉毀損罪に問われる恐れがあります。

名誉毀損罪が成立した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになります。

著作権法違反

テレビ番組やネットニュースなどに載っていたアスリートの動画や画像をキャプチャーしてインターネット上に投稿した場合には、著作権法違反の罪に問われる可能性があります。

著作権法違反の被害者は、アスリート個人ではなく、当該テレビ番組やネットニュースを作成しているテレビ局や各種報道機関などの制作会社になります。

著作権法違反の場合には、無許可で動画や画像を転載したことが問題となるため、性的な目的があったか否かは問題とはなりません。

著作権法に違反してアスリートの動画・画像を無断転載した場合には、10年以下の懲役または100万円以下の罰金またはその両方が科される可能性があります(著作権法第119条1項)。

実際、女性アスリートの動画をアダルトサイトに掲載した男性(サイト運営会社員・36歳)が、著作権法違反の疑いで逮捕され、名誉毀損容疑で書類送検された事案もあります。

参考:アスリート画像の転載、名誉毀損容疑を適用 全国2例目:朝日新聞デジタル

女性アスリートの盗撮で逮捕された事例

ここでは、ニュース報道された女性アスリート盗撮の逮捕事例を紹介します。

女子高生の陸上競技を盗撮して逮捕された事例

この事案は、2023年5月に市内で開催された高校生の陸上競技大会で、客席から4回にわたり女性生徒3人にデジタルカメラを向けて下半身をことさらに拡大して撮影したとして、男性(会社員・56歳)が県の迷惑防止条例違反の疑いで逮捕された事案です。

競技中に大会関係者からの通報があったことから、警察は男性から事情を聴くなどして捜査を続けていました。男性の自宅から押収されたハードディスクからは、3000本以上の動画が見つかっており、常習性や余罪の可能性のある事案です。

この逮捕事案では、2023年7月に施行される性的姿態撮影等処罰法の施行前であったことから、県の迷惑防止条例違反が適用されています。

参考:“アスリート盗撮” 容疑で男(56)を逮捕 3000本以上の動画見つかる | TBS NEWS DIG

女子駅伝で選手を盗撮したとして逮捕された事例

この事例は、2023年1月に開催された全国都道府県対抗女子駅伝で選手の下半身を執拗に撮影したとして、迷惑行為防止条例違反の疑いで、男性(小学校教諭・39歳)が書類送検された事案です。

服の上からでも執拗に胸や尻を撮影する行為は迷惑防止条例の「卑わいな言動」にあたるとして、警察は同駅伝で沿道に捜査員を配置して警戒にあたっていました。

警察によると、男性は走り終えた選手が倒れこんだり出場前にストレッチ運動したりする場面で望遠レンズ付きのカメラを使って集中的に撮影していたと見られています。警察が男性宅を捜索したところ、県内外で女子選手を隠し撮りしたとされる画像が約3万点弱発見されています。

参考:小学校教諭が全国女子駅伝で「アスリート盗撮」 下半身を執拗に、容疑で書類送検|京都新聞

女性アスリートの盗撮で逮捕された場合のリスク

女性アスリートの盗撮で逮捕された場合のリスクは以下のとおりです。

長期間身柄を拘束される

まず、長期間身柄拘束される可能性があることです。

女性アスリートの盗撮で逮捕された後、引き続き身柄拘束が必要と判断された場合は、勾留という身柄拘束の処分を受けます。勾留期間ははじめ10日間で、期間延長が必要と判断された場合は最大で10日間期間が延長されます。逮捕→勾留が約3日間、勾留期間が最大で20日間ですから、逮捕されると最大で約23日間は留置場での生活を余儀なくされます。さらに、身柄拘束期間中に起訴されるとはじめ2か月間、その後は1か月ごとに期間が更新されます。身柄拘束の期間が長くなればなるほど精神的にも肉体的にも辛くなってきますし、仕事やあなたや家族の生活にも大きな悪影響を及ぼしかねません。

なお、起訴前の上記23日間は準抗告、起訴後は保釈請求という手段で、裁判所に対し早期釈放を求めていくことが可能です。裁判所に抗告・請求が認められた場合には期間の途中で釈放されることはあります。

実名報道される

次に、実名報道される可能性があることです。

逮捕された際に実名報道されるのは、何も有名人・著名人に限った話ではありません。一般の方でも事件で逮捕されると実名報道される可能性は十分にあります。特に、女性アスリートの盗撮は社会的にも耳目を集めやすい事件ですし、近年盗撮を処罰する法律が新設されるなど、以前にもまして社会の目も厳しくなっているため、逮捕されると実名報道される可能性はあるといってよいでしょう。実名報道されると、あなたが盗撮をしたこと、逮捕されたことが家族や親族、職場の同僚・上司、友人などに知られてしまう可能性があります。

前科がつく

次に、前科がつく可能性があることです。

逮捕されたからといって即前科がつくわけではありません。ただ、起訴され、裁判で有罪の判決を受け、その裁判が確定したときは前科がつきます。逮捕されなかった、あるいは逮捕されたもののその後途中で釈放された場合も、上記の過程をたどった場合には前科がつきます。

女性アスリートの盗撮で逮捕を回避するには?

女性アスリート盗撮で逮捕を回避するために考えられる方法は次のとおりです。

ネットにアップロードした画像・動画は全て削除する

まず、すでにネットにアップしている女性アスリートの盗撮画像や動画を削除することです。

ネットにアップしていると、あっという間に拡散し、被害者である女性アスリートに与える損害が甚大になります。被害や後に請求されうる賠償金を最小限に抑える意味でも、速やかに対応する必要があります。

なお、スマートフォン等の電子機器の中に保存している画像や動画の削除については慎重な対応が求められます。仮に、削除したとしても、あとで簡単に復元されてしまう可能性があります。削除したことが判明すれば、それを逮捕するかどうかの判断材料にされてしまう可能性があります。

被害者への謝罪と示談交渉

次に、被害者である女性アスリートとコンタクトを取れる状況であれば、謝罪と示談交渉を行うことが重要です

通常、示談交渉では示談金の支払いを条件に、被害者に警察に被害届を出さないことに合意してもらうことを求めます。被害者が合意すれば、警察に被害届が出されることはありません。

仮に示談が成立すれば、捜査機関に女性アスリートを盗撮したことが知られず、逮捕を回避できる可能性があります。また、実名報道も回避できます

もっとも、被害者は加害者との直接の交渉を拒否することが多いため、示談交渉は弁護士に依頼した方が良いでしょう。感情的にならず冷静に交渉を進め、適切な形で示談を成立させることができます。

自首を検討する

次に、自首を検討することが重要です

自首することで逃亡の恐れがないと判断され、逮捕を回避できる可能性があります。もっとも、自首と思っていても、自首が成立しないケースもあります。最悪の場合、自ら出頭したために逮捕される可能性もあるので、女性アスリートの盗撮で自首するかどうか迷ったら弁護士に相談した方が良いでしょう

弁護士に自首の同行を依頼すれば、弁護士の指示の下で自首の準備を進めることができます。また、面倒な警察とのやり取りは弁護士に任せることができ、自首当日も弁護士が同行してくれます。取調べなどで不安なときも、いつでも相談できるため、精神的にも安心です。

女性アスリートの盗撮で逮捕された場合の対応方法

万が一、女性アスリートの盗撮で逮捕された場合は以下の対応をとることが考えられます。

被害者と示談を成立させる

まず、盗撮したことを認める場合には、被害者である女性アスリートに謝罪し、示談交渉を進めることが重要です

通常、逮捕後の示談交渉では、示談金の支払いを条件に被害者に被害届を取り下げていただくよう働きかけます。したがって、被害者がその条件に合意すれば、被害届を取り下げてもらうことが可能です。被害者が被害届を取り下げると、釈放され、刑事処分は起訴猶予での不起訴となるでしょう。

もっとも、逮捕された場合の示談交渉は弁護士に依頼する必要があります。逮捕直後から示談成立に向けて動いてもらいたい場合は私選の弁護士に頼むことができますが、勾留された後は国選の弁護士にも依頼することができます。なお、被害者が示談交渉を拒むなどして示談を成立させられなかった場合は、慈善団体などに示談金相当額を寄付する方法(贖罪寄付)も考えられます。

再犯防止に取り組む

次に、再犯防止に取り組むことを誓約することが重要です

女性アスリートを盗撮してきた場合、その行為を繰り返してやめられなくなっていると、再犯防止の観点から不起訴よりも起訴される可能性が高くなります。起訴されると、身柄拘束期間も長くなる可能性があります。そのため、まずは起訴か不起訴かの刑事処分を決める検察官に対し、再犯可能性が低いことを示す必要があります

具体的には、盗撮専門のクリニックなどに通院することが挙げられます。ただし、身柄拘束期間中は現実的ではありません。そこで、弁護士や家族の協力を得て、クリニックに通う予約をし、治療に向けた具体的な計画を立てることなどが考えられます。

実名報道を控えるよう弁護士に意見書を提出してもらう

次に、実名報道を控えるように弁護士から報道機関に意見書を提出してもらうことです

報道機関は被疑者の詳細な事情を把握しないまま実名報道してしまう可能性があります。そこで、被疑者をよく知っている弁護士に、被疑者の事情や実名報道によって受ける不利益などを報道機関に伝えてもらうことが考えられます。

まとめ

以上、解説してきたように、女性アスリートの動画や写真を性的な目的で撮影した場合には、なんらかの犯罪に問われる可能性があります。

近年は女性アスリートの盗撮被害が社会問題化しているため、警察も取り締まりを強化している傾向があります。現状、競技中の女性アスリートの盗撮に撮影罪が適用されないとはいえ、迷惑防止条例違反や建造物侵害罪などの疑いで逮捕され、重い刑事罰が科されてしまうおそれがあります

女性アスリートの盗撮行為をしてしまった場合には、被害者に謝罪し、被害の拡大や再犯の防止に努める必要があります。

女性アスリートの盗撮行為で刑事事件になりそうな場合には、刑事事件に詳しい弁護士に相談して対応を依頼するようにしてください。弁護士に依頼することで、被害者との示談交渉を行ってもらい、身体拘束を回避できる可能性があります。

当事務所では、盗撮事件の被害者との示談交渉、逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、女性アスリートを盗撮してしまい逮捕のおそれがある方、既に逮捕された方のご家族の方は当事務所の弁護士までまずはご相談ください。お力になれると思います。

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