職場で盗撮がバレたらどうなる?問われる犯罪や解雇処分されるか解説
職場での盗撮がバレたらどうなってしまうのだろう…どんな犯罪に問われるのだろうか…会社から解雇などの処分を下されるのだろうか…

このような不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、盗撮事件に強い弁護士が、

  • 職場内で盗撮して問われる犯罪と罰則
  • 職場内で盗撮して逮捕されるパターン
  • 職場で盗撮して逮捕された後の流れ
  • 盗撮すると会社を解雇されるのか

などについて詳しく解説していきます。

なお、社内で盗撮事件を起こしてしまい、逮捕回避に向けて早急に対応したいとお考えの方は、この記事を最後までご覧いただいた上で、全国無料相談の弁護士にご相談ください

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。

職場内で盗撮して問われる犯罪は?

まず、職場内で盗撮をした場合に問われる可能性がある犯罪について確認しましょう。具体的には、以下の通りです。

  • ①撮影罪|2023年7月13日以降の盗撮
  • ②迷惑防止条例違反|2023年7月12日以前の盗撮
  • ③建造物侵入罪

①撮影罪|2023年7月13日以降の盗撮

職場内での盗撮行為は、「撮影罪」として処罰される可能性があります。

撮影罪は、2023年(令和5年)7月13日に新たに施行された法律で、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(「性的姿態撮影等処罰法」と略称されます)」によって規制されています。

撮影罪では、正当な理由がなく、他人の性器や肛門、下着姿などを撮影する行為を処罰の対象としています。

例えば、職場内で女性従業員のスカートの中にスマホを差し入れて撮影したり、更衣室内で着替え中のスタッフの下着姿などを盗撮する行為は、この撮影罪に問われる典型的な盗撮行為となります。

他にも、職場内のトイレに隠しカメラを設置し、トイレを使用している従業員の姿を盗撮した場合にも、撮影罪に問われることになります。さらに、飲み会などでアルコールの影響で意識が明瞭ではない女性スタッフの下着や裸を撮影した場合にも、撮影罪に該当することになります。

撮影罪が成立した場合には、「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」が科されることになります。

②迷惑防止条例違反|2023年7月12日以前の盗撮

撮影罪が新設される前に発生した盗撮事件については、遡って撮影罪を適用することはできません。そのため、2023年7月12日以前の盗撮事件については、各都道府県が制定している迷惑防止条例により処罰される可能性があります

実際、撮影罪が新設されるまでの盗撮事件については、迷惑防止条例違反の罪で処罰されていました。各都道府県によって条例の内容は多少異なりますが、比較的似た内容の規定となっているため、ここでは東京都の迷惑防止条例をもとに解説します。

東京都の迷惑防止条例では、以下のような場所で「人の通常衣服で隠されている下着や身体をカメラを用いて撮影」したり、「撮影する目的で写真機その他の機器を差し向けたり設置したりする行為」を処罰しています。

  • 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
  • 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物

東京都の迷惑防止条例に違反する盗撮行為を行った場合には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されることになります。

なお、従来、盗撮場所が「公共の場所」や「公共の乗り物」に限定されていた自治体もありましたが、現在では、47都道府県すべての迷惑防止条例で、会社内の事務所での盗撮も規制の対象となっています。

③建造物侵入罪

職場内で盗撮をした場合には、建造物等侵入罪に問われる可能性もあります。

正当な理由がないのに、人の住居、人の看守する邸宅・建造物・艦船に侵入した場合には、建造物等侵入罪が成立します。

仮に、会社で働いている従業員であっても、勤務時間外や立ち入りができない場所などに盗撮カメラを設置するために立ち入る行為は、会社の責任者の意思に反した立ち入り行為として建造物侵入罪に該当する可能性があります

建造物侵入罪が成立した場合には、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」に処せられることになります。

職場内で盗撮して逮捕されるパターン

職場内の盗撮で逮捕されるパターンは次の通りです。

  • ①現行犯逮捕
  • ②後日逮捕

①現行犯逮捕

職場内の盗撮で逮捕されるケースとして現行犯逮捕があります。

現行犯逮捕とは、現に犯罪を行っている、または犯罪を行った直後の犯人を逮捕状なしで逮捕することを指します

現行犯逮捕は、警察官などの捜査機関以外の一般人であってもできます(私人逮捕)。したがって、盗撮行為の瞬間を目撃した、同僚や部下、上司の誰であっても現行犯逮捕することが可能です。

被害者や目撃者に私人逮捕された場合には、直ちに検察官または司法警察職員に引き渡される必要があるため、そのまま警察を呼ばれ警察署に連行されることになります。

②後日逮捕

職場内で盗撮行為を行ったとしても、その場では犯行がバレないこともあります。しかし、このような場合であっても、後日、警察官によって通常逮捕される可能性があります

特に職場内の盗撮行為は、一定の期間にわたって反復継続して行われることがあり、それに応じて被害者や不審に感じる目撃者も増えていく傾向があります。そのため、職場内の盗撮行為を繰り返していると、被害の相談や目撃情報などから犯人がどんどん絞り込まれていくということもあり得ます。

後日逮捕される場合には、裁判官が発行した逮捕許可状に基づいて、警察が被疑者の自宅を訪れて逮捕されることになります。まずは任意で事情聴取をした結果、被疑者が犯行を認めた段階で後日逮捕されるパターンもあります。

職場内での盗撮がバレて事件となった事例

職場内での盗撮がバレて事件となり、その後マスコミで報じられた事例を紹介します。ここでは、盗撮行為がどのようにして発覚し、その後どのような法的措置が取られたのかについて、いくつかの実際の事例を取り上げます。

トイレでの盗撮事例

経営する歯科医院のトイレで複数の従業員を盗撮したとして、当時の院長が10月に書類送検されていたことが分かりました。当時の従業員は、盗撮被害を訴えたことをきっかけに解雇されたと主張しています。

関係者によりますと、熊本市中央区にある歯科医院で院長をしていた40代の男性は、去年5月から今年5月までの約1年間、院内の従業員用トイレにカメラを設置し、女性従業員の様子を撮影したとして、10月に性的姿態等撮影などの疑いで書類送検されました。

今年5月末、従業員がトイレでUSBメモリー型のカメラを見つけ、一部の従業員が警察に被害届を提出していました。

院長は当初関与を否定していましたが、数日後、従業員向けの説明会で盗撮を認め、後日文書で「運営の継続が困難で廃業する」として、当時勤めていた従業員のほぼ全員、13人を整理解雇を伝えたということです。

【独自】歯科院長が盗撮か「1年以上も…」元従業員の訴え 発覚後に従業員13人を解雇した元院長は今 熊本 | 熊本のニュース|RKK NEWS|RKK熊本放送

更衣室での盗撮事例

静岡市立静岡病院の職員が職場内で盗撮行為を行ったとして9月30日付けで懲戒処分を受けました。

懲戒処分を受けたのは地方独立行政法人静岡市立静岡病院の29歳の臨床検査技師です。

病院によりますと、この臨床検査技師は2024年8月3日、病院内の女子更衣室に侵入して動画撮影状態のスマートフォンを設置。その後、女性職員が撮影中のスマートフォンを発見し、検査技師は8月7日に警察に逮捕され、28日に起訴されました。

また、検査技師は3年ほど前から合わせて10回程度、職場内で盗撮を行ったと認めているということです。

病院は懲戒事由について定めた規則に該当するとして、9月30日付けでこの検査技師を懲戒処分としました。

静岡市立静岡病院 盗撮の疑いで逮捕、起訴された職員を懲戒解雇処分に(2024年10月1日掲載)|Daiichi-TV NEWS NNN

会議室での盗撮事例

金融庁の同僚職員のスカート内を盗撮したとして、警視庁麴町署が性的姿態撮影処罰法違反(撮影)の疑いで、金融庁総合政策局の男性課長補佐(45)を任意で事情聴取していることが13日、捜査関係者への取材で分かった。「下着を撮りたかった」と話しており、容疑が固まり次第、書類送検する方針。

捜査関係者によると、課長補佐は5日夜、東京・霞が関の中央合同庁舎7号館の会議室に、エクササイズをするとして女性職員を呼び出し、運動中に小型カメラでスカート内を盗撮した疑いがある。

「エクササイズの効果が高まる」などとアイマスクを勧め、着用させていたという。女性が撮影に気付き、麴町署に届け出た。

金融庁職員を書類送検へ 同僚のスカート内盗撮疑い 「効果高まる」とアイマスクさせる - 産経ニュース

職場内で盗撮して逮捕された後の流れ

職場内で盗撮して逮捕された後の流れは次の通りです。

  1. 逮捕
  2. 送検
  3. 勾留
  4. 起訴
  5. 判決

①逮捕

職場内の盗撮の犯人と特定され、被疑者が逃亡・罪証隠滅をする恐れがある場合には、逮捕されることになります。被疑者が逮捕された場合には、逮捕から48時間以内に取り調べが行われ、検察官に事件を送致(送検)する必要があります

なお、犯罪事実が極めて軽微で、かつ検察官から送致の手続きをとる必要がないとあらかじめ指定されている事件については、送致を行わず刑事手続きを終了させることができます。しかし、撮影罪や迷惑防止条例違反の罪などについては微罪処分の対象とはならないため、検察官に送致されることになります。

②送検

最初に逮捕されたときから48時間以内に事件に関するすべての資料と被疑者の身柄が検察庁に送られることになります。この手続きを送検と言います。

送検を受けた検察官は、被疑者の勾留すべきかを判断するために、取り調べを行います。検察官は、24時間以内、かつ最初の身体拘束から72時間以内に勾留を請求するか釈放をするかを判断しなければなりません

職場内での盗撮で、すでに被害者との示談が成立している事案や、常習性がない事件などの場合には、在宅事件として釈放される可能性もあります。

③勾留

検察官が被疑者の勾留が必要であると判断した場合には、裁判所に勾留を請求することになります。請求を受けた裁判官は被疑者に対面で勾留質問を行ったうえで、勾留決定を判断することになります。勾留が認められるためには、次のような勾留の要件を満たしている必要があります。

  • 被疑者が定まった住居を有していたい
  • 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある
  • 逃亡または逃亡するにと疑うにに足りる相当な理由がある

勾留決定が出された場合には、逮捕に引き続き原則として10日間の身体拘束が継続することになります。さらに、捜査のため必要がある場合には、さらに10日間を上限として勾留の延長が認められます

したがって、被疑者が逮捕に引き続き勾留された場合には、最長で23日間(48時間+24時間+10日+10日)の身体拘束を受ける可能性があります

④起訴

逮捕されてから最大で23日以内に、検察官は起訴・不起訴の決定をする必要があります。

不起訴処分となると、刑罰を受けずに釈放されますが、起訴されると裁判が行われて有罪・無罪の判決が下されます。

盗撮で逮捕されても、初犯で被害者との示談が成立していれば、ほとんどのケースは不起訴になります。しかし、被害者との示談が成立していない場合や、被害者が多数にのぼるような場合には、起訴される可能性が高まります

起訴される前の段階での勾留は、延長を含めて20日間しか許されませんが、起訴された後の段階での勾留は、保釈されない限り、判決が出るまで勾留が続くことになります

⑤判決

検察官に起訴された場合には、刑事裁判にかけられることになります。

起訴から約1〜2か月後に裁判が開かれ、審理を経て判決の言い渡しを受けます。盗撮事件の場合、否認しているなどの事情がなければ1回目の裁判で審理が終了し、その約2週間後には判決が言い渡されるケースが多いです

刑事裁判では、当事者による弁論や証拠調べが行われ、最終的には判決によって被告人の処遇が決定されます。被告人が有罪の場合には刑罰の言渡しを受けることになります。

盗撮事件で言い渡される刑罰として多いのが、罰金刑です。罰金刑が確定すると自宅に罰金の納付書が送られてきますので、指定された金融機関に罰金を納付します。あるいは検察庁での直接納付も可能です。資力がなく罰金を支払えない場合は、2年を限度として労役場に留置され、所定の作業に従事することになります。

なお、後述しますが、罰金刑でも有罪である以上、前科がついてしまいます

職場内の盗撮で逮捕された場合のリスク

職場内で盗撮して逮捕された場合のリスクは次の通りです。

  • ①実名報道される可能性がある
  • ②前科がついて就職活動に影響が出る可能性がある
  • ③損害賠償請求される可能性がある

なお、職場内で盗撮をして逮捕されると、「会社を解雇される」というリスクも生じますが、こちらについてはこの記事の最後で詳しく説明します。

①実名報道される可能性がある

職場内での盗撮が発覚して逮捕されると、実名が報道されるリスクがあります

一般人の盗撮事件では「〇〇代会社員」や「市職員」といった形で匿名にされる場合もありますが、社会的地位が高い職業の人物が関与した場合や、悪質な手口で多数の盗撮を行った場合などには、実名報道がされる可能性が高まります。

特に実名が公表されるタイミングとしては、逮捕後、書類送検時、起訴後、判決確定時などが挙げられます。中でも、逮捕直後に実名が報道されるケースが最も多いとされています。

実名が報道されると、盗撮を行った事実が家族や親族、友人、また、まだ事件を知らない職場の同僚にも伝わる可能性が高くなります

また、実名がインターネット上のニュース記事に掲載されることで、その情報がネット上に半永久的に残り、社会的な影響が長期間続くリスクも避けられません。

②前科がついて就職活動に影響が出る可能性がる

職場内で盗撮事件が発覚し、逮捕・起訴された場合、最終的に有罪判決を受けると、前科が残るおそれがあります。

前科とは、刑事裁判で有罪となり、刑事罰が確定した経歴のことを指します。仮に罰金刑で済んだ場合や執行猶予が付された場合でも、有罪判決であることには変わりなく、前科が付くことになります。

就職活動や転職活動で作成する履歴書の賞罰欄には、前科の有無を記載する必要があります。前科があるのにそのことを黙って・嘘をついて就職すると、経歴詐称を理由として懲戒事由に該当してしまうおそれがあります。

なお、前科記録は検察庁や各市区町村が管理・保管しており、一般の人が自由に閲覧できるわけではありません。しかし、前科がつくことで以下のような権利や資格が制限されることになります。

  • 一定期間、選挙権・被選挙権を有さない(公民権停止)
  • 公務員、弁護士、医師など特定の資格・職業に就くことができない
  • 国外渡航、永住等の制限 など

③損害賠償請求される可能性がある

盗撮事件を起こした場合には、被害者から損害賠償請求される可能性があります

盗撮行為は、民法上の不法行為に該当するため、被害者は加害者に対して、生じた損害を賠償を請求することができます(民法第709条)。盗撮事件の被害者は、盗撮行為により精神的なショックを受けたと考えられるため、そのような精神的な苦痛を補償するために慰謝料を請求することができます。

盗撮の慰謝料の相場としては、10万円から50万円程度ですが、事案によっては100万円を超えることもあります

職場内の盗撮で逮捕を回避するには?

盗撮事件では「犯人が逮捕された」との報道が目立ちますが、これは事件の一部に過ぎず、実際には逮捕に至らないケースも少なくありません。通常、逮捕が行われるためには、被疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがあることが条件となります。

これらの要件が満たされない場合、逮捕されることなく「在宅事件」となります。

これまで説明した通り、盗撮事件で逮捕されてしまうと、長期間身柄を拘束されたり、実名報道される可能性があります。そのため、逮捕を回避し、在宅事件として扱ってもらうために、次の2つの対処法を検討していきます

  • ①被害者と示談を成立させる
  • ②自首する

①被害者と示談を成立させる

盗撮のように被害者がいる犯罪では、被害者との間で示談が成立すると、逮捕の可能性が低くなる傾向があります。示談が成立することで、「逃亡する恐れはない」と判断される場合が多く、逮捕の必要性が薄れるためです。

一方で、盗撮被害は被害者にとって非常に深刻な心理的負担を伴うことから、示談の成立は容易ではありません。特に、職場内のような想定外の環境で盗撮被害を受けた場合、被害者の処罰感情が非常に強くなることが予想されます

このように示談が難しいケースでは、経験豊富な弁護士によるサポートが欠かせません

熟練した弁護士であれば、被害者の心情に配慮しながら丁寧に交渉を進めることが可能です。また、示談交渉に成功した実績を持つ弁護士は、盗撮事件特有の困難さを熟知しているため、より効果的な交渉が期待できます。

示談を希望する場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談してください。早期に依頼することで、迅速かつスムーズな交渉が進められるでしょう。

②自首する

自首とは、犯行が明るみに出る前に自ら捜査機関へ出向き、犯罪を申し出る行為です。

自ら捜査機関に犯人として名乗り出て、自らの処罰を求めることで、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがないことを警察に主張して、逮捕を回避できることがあります。

ただし、自首をしたことで逮捕のリスクを完全に回避できるわけではありません。前科・前歴や被疑者の監督環境などによって、逮捕の要否について判断が変わってくる可能性も十分にあります。

「自首を考えているが不安」という方は、刑事事件の経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。経験豊かな弁護士であれば、盗撮事件の見通しを具体的に説明し、不安を軽減することができます。弁護士が自首に同行することで、適切なサポートを受けながら手続きを進め、被疑者に逃亡・罪証隠滅のおそれが存在しないことを捜査機関に上申してもらえます。

取り調べを受けている間も、弁護士が待機しているため、取調べへの対応に困った場合には、すぐに中断して弁護士に助言を得ることもできます。

職場内で盗撮したら解雇される?

職場内で盗撮行為が発覚した場合、解雇されることになるのでしょうか?

「解雇」とは、従業員と会社との間の雇用契約を、当事者の合意なしに会社が一方的に終了させることを指します。話し合いによる退職や従業員自身の辞職とは異なり、解雇は会社の意思によるものです。

解雇には、懲戒解雇や普通解雇といった種類があり、それぞれ手続きや条件が異なります。

解雇の種類

解雇の種類は次の通りです。

  • ①懲戒解雇
  • ②普通解雇
  • ③退職勧奨

①懲戒解雇

「懲戒解雇」とは、懲戒処分としての解雇のことです

懲戒処分とは、会社が従業員の企業秩序違反行為に対して課す制裁罰のことを指します。懲戒処分の種類としては、「戒告」、「けん責」、「減給」、「出勤停止」、「降格」、「諭旨解雇(諭旨退職)」、「懲戒解雇」などがあり、懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重い処分です

企業は、多数の労働者を組織し円滑に企業活動を行っていくためにも就業規則に服務規律を定めることが一般的です。多くの企業では、就業規則や服務規程に「犯罪を行い刑に処せられたとき」や「著しい非行により会社の秩序を乱したとき」などには懲戒解雇することができると規定していることが一般的です。そのため、従業員が職場内での盗撮事件を起こした場合には、懲戒解雇となる可能性が高いでしょう

懲戒解雇となった場合には、退職金が不支給となったり、離職票上の退職理由に「重責解雇」と記載され再就職に影響したりするなどのデメリットがあります

②普通解雇

職場内で盗撮事件を起こしたことで、会社を普通解雇される可能性もあります。

「普通解雇」は、雇用契約違反を理由に雇用契約を終了させるものであり、懲戒(ペナルティ)としての性質を有していません

撮事件を起こしたとしても、懲戒事由への該当性は慎重に判断されることになり、その結果、懲戒解雇ではなく普通解雇により雇用契約が終了するというパターンもあり得ます

そして、会社が授業員を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に解雇予告通知をするか、30日分以上の平均賃金の支払いをしなければなりません。解雇の理由が分からないという場合には、会社に解雇理由証明書を請求することができます。

解雇の理由については、就業規則などで解雇事由を明記している企業がほとんどであると思われます。

なお、理由のない解雇や根拠の基礎となる事実に誤りのある解雇は、解雇権の濫用として無効となる可能性もあります。

③退職勧奨

職場内での盗撮事件を起こした場合には、会社から退職を勧告されるケースもあります。

会社から自主的な退職を勧められることを、「退職勧奨(かんしょう)」といいます

退職勧奨は、あくまでも雇用契約を合意解約するための会社側からの申し込みや誘引です。

そのため、従業員は、原則として退職勧奨に応じる義務がないため、自由に合意解約に応じるか否かを決定することができなければなりません。

会社は従業員の自由な意思の形成を阻害するような勧奨行為を行うことはできません

仮に、退職勧奨の態様が、退職に関する従業員の自由の意思の形成を促す行為として許容される限度を逸脱し、従業員の退職について自由な意思決定を困難にするものである場合には、従業員の自己決定権を侵害することになります。

なお、退職勧奨を拒否する自由があるとしても、その場合、会社側は従業員を解雇できるケースもあるため、事案によっては退職勧奨に応じた方が良いという可能性もあります

解雇を免れるためには?

社内で盗撮行為がバレた場合、会社としても当該従業員に対して厳正な処分をせざるを得ません。解雇という処分については、従業員である地位をはく奪する重大な処分であるため、適法性や相当性に問題があれば、解雇の無効を争われてしまいます。

他方で、盗撮をした従業員についても、再就職の観点などから、解雇だけは避けたいという可能性があります。それでは、社内での盗撮行為で、解雇を回避するためには、どうすればいいのでしょうか。ここでは、解雇を免れるための対処法を解説していきます。具体的な対処法は次の通りです。

  • ①反省の態度を示す
  • ②示談を成立させる
  • ③弁護士に相談する

①反省の態度を示す

職場内での盗撮事件で解雇を回避するためには、反省文などの犯行の動機や経緯を説明したうえで事件について謝罪し、反省の態度を示す必要があります

反省の態度を示すことは、二度と同じような事件を起こすことがないことを説得的に示すためです。解雇を適法に行うためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められなければなりません。対象者が事件について真摯に反省し、再犯のおそれがないことを約束している場合には、解雇相当の事案ではないと判断される可能性があります

会社に提出する始末書や反省文には、転勤や降格など、解雇以外のいかなる不利益な処分に対して一切の異議を申し立てない、という誓約文言を入れておくことも効果的でしょう。

ただし、事件について反省の態度を示したからといって、法的な拘束力があるわけではないため、解雇が回避できるとは限りません。「解雇以外の処分であれば甘んじて受け入れる」という態度を示すことで、配転や降格・減給などの処遇を検討しやすくなります

②示談を成立させる

職場内の盗撮で解雇を回避するためには、被害者との示談を成立させることが、もっとも重要です

被害者との示談が成立することで、当事者間では本件について紛争が解決していることを意味します。示談が成立する場合、事件の被害者に対して、加害者が事件について謝罪し、示談金・解決金を支払うことで、許しを得たことになります。

被害者が、「加害者に対して厳しい処分は望まない」という意思を表明している場合には、会社としても加害者に有利な事情として考慮しなければなりません

事件の当事者間で示談が成立しているにもかかわらず、加害者を解雇する必要があるか、が問われることになるため、会社としても解雇を選択しない可能性が高まります。

③弁護士に相談する

職場内での盗撮行為により解雇を回避したい場合は、弁護士に相談することをお勧めします

弁護士に相談することで、盗撮事件によって会社から解雇される可能性がある場合に、解雇の有効性を判断してもらうことができます。解雇の理由や就業規則、解雇手続きなどを踏まえ、解雇の問題点を明確に検討してもらえます。

また、解雇が無効であると評価できる場合、弁護士が会社に解雇の撤回を求めて交渉を行うことができます。労働者個人による交渉では、会社がまともに対応しない可能性もありますが、弁護士が代理人として交渉する場合、会社は適当に対応することができません。

弁護士は、従業員の代理人として解雇事由の該当性や解雇権の濫用など、解雇の違法性を指摘することによって、解雇撤回の可能性を高めます。

さらに、必要な手続きについてはすべて弁護士に任せることができるため、精神的な負担を軽減することができます。

まとめ

職場で盗撮を行った場合、その結果は非常に深刻です。撮影罪や迷惑防止条例違反などの罪に問われ、最悪の場合、逮捕や起訴される可能性もあります。さらに、前科がつけば今後の就職や社会生活に多大な影響を及ぼすだけでなく、被害者からの損害賠償請求も考えられます。こうした問題を回避するためには、専門的な知識を持つ弁護士のサポートが欠かせません

弁護士は、逮捕や起訴を避けるための適切な対処法を提案し、示談交渉や自首の手続きなどをサポートします。特に示談が成立すれば、刑事責任を軽減できる可能性が高くなります。また、弁護士は法律に基づいた的確なアドバイスを提供し、迅速かつ適切に問題を解決する手助けをしてくれます。盗撮の問題が発覚した場合、早期に弁護士に相談することが、最悪の事態を防ぐための最善の方法と言えるでしょう。

当事務所では、盗撮事件の逮捕回避、不起訴獲得を得意としており豊富な解決実績があります。親身かつ誠実に、弁護士が依頼者を全力で守りますので、職場で盗撮をしてしまいお困りの方は、ぜひ当事務所の弁護士までご相談ください。

気軽に弁護士に相談しましょう
  • 全国どこからでも24時間年中無休でメールや電話での相談ができます。
  • 逮捕回避・早期釈放・起訴猶予・不起訴・執行猶予の獲得を得意としております
  • 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。
刑事事件に強い弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による刑事事件の無料相談を受け付けております

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に刑事事件の解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

逮捕の回避・早期釈放・不起訴・示談を希望される方は、刑事事件に強い当法律事務所にメールまたはお電話でご連絡ください。