このような疑問を持つ方もいるかもしれません。
結論から申し上げますと、「盗撮は現行犯以外では逮捕されない」というのは誤りです。確かに、盗撮は現行犯逮捕されるケースが多いですが、それは現行犯逮捕が一般人でも可能で、被害者や目撃者でも逮捕できること、また盗撮の立証が比較的容易であるためです。しかし、盗撮犯がその場で逮捕されなかった場合でも、目撃者や被害者の証言、防犯カメラの映像などから犯人が特定され、後日逮捕されることもあります。
もっとも、「盗撮は現行犯逮捕以外での逮捕が難しい」という意見については、完全に誤りとは言い切れません。
この記事では、盗撮事件に強い弁護士が、以下の点について解説します。
- 盗撮は現行犯逮捕以外での逮捕は難しいと言われる理由
- 盗撮が現行犯以外で逮捕されるケース
なお、盗撮を行い、現行犯逮捕されなかったものの、現行犯以外での逮捕を回避したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた上で、全国無料相談の弁護士にご相談ください。
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目次
盗撮と逮捕についての前提知識
まずは、盗撮と逮捕についての前提知識から解説していきます。
盗撮で逮捕される場合の罪は?
盗撮で逮捕される場合に考えられる主な罪は以下の通りです。
- ①撮影罪
- ②迷惑行為防止条例違反
①撮影罪とは、スマートフォンなどを使用して、ひそかに他人のスカート内や下着、または性的な部位を撮影した場合に成立する罪です。この罪は、2023年7月13日に施行された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(通称「性的姿態撮影等処罰法」)に基づいています。罰則は、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」となります。
②迷惑行為防止条例は都道府県ごとに制定されています。撮影罪が施行される前(2023年7月12日以前)の盗撮については、迷惑行為防止条例違反で処罰されるます。また、撮影罪が適用されないケース(例えば、衣服の上からの盗撮)については、迷惑行為防止条例の「卑わいな言動」として処罰される可能性があります。罰則は、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」となります。
逮捕の種類は?
逮捕の種類は次の3つです。
- ①現行犯逮捕
- ②通常逮捕
- ③緊急逮捕
があります。
①現行犯逮捕とは、現に犯罪を行っているまたは犯罪を行った直後に犯人を逮捕する行為を指します。現行犯逮捕では、逮捕者にとって犯罪と犯人が明白なこと、あらかじめ裁判官が発する令状を受け取る暇がないほど犯人を逮捕しなければならない緊急性が高いことから、令状がなくても犯人を逮捕できるのが特徴です。また、現行犯逮捕は一般人でも行えます(私人逮捕)。
②通常逮捕とは、事前に裁判所から発せられた逮捕状にもとづいて警察や検察官が被疑者を逮捕する行為を指します。犯行行為が終了した後日に捜査機関が被疑者を逮捕することから「後日逮捕」とも呼ばれます。
③緊急逮捕とは、一定以上の法定刑の罪について、逮捕状の請求をする時間がない場合に無令状で緊急に行われる逮捕を指します。逮捕後は直ちに裁判所に逮捕状を請求し発布を受ける必要があります。
盗撮は現行犯以外では逮捕されない?
では、盗撮は現行犯逮捕以外で逮捕されることはないのでしょうか?また、なぜ「盗撮は現行犯逮捕以外では逮捕が難しい」と言われるのでしょうか?
「現行犯以外は逮捕されない」は間違い
まず結論から申し上げますと、「盗撮は現行犯以外で逮捕されることはない」というのは誤りです。
法律上(刑事訴訟法第199条1項、2項)では、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があり、「犯人に逃亡または罪証隠滅のおそれがある」と判断された場合、盗撮に限らずどんな罪でも通常逮捕(後日逮捕)が行われることがあります。そもそも、現行犯以外で逮捕できないといった法律の規定は存在しません。
なお、緊急逮捕については、「死刑、無期懲役、または長期3年以上の懲役または禁錮」に該当する罪が対象となりますが、撮影罪も緊急逮捕の対象です。つまり、盗撮で緊急逮捕される可能性もあるのです。
「盗撮は現行犯以外の逮捕は難しい」と言われている理由
上記の通り、「盗撮は現行犯以外で逮捕されることはない」というのは誤りです。しかし、「盗撮は現行犯以外の逮捕は難しい」という意見には、一定の理由があります。
逮捕の種類には、現行犯逮捕・通常逮捕(後日逮捕)・緊急逮捕の3つの種類があることは既にお伝えしましたが、このうち、盗撮で逮捕されることが多いのは現行犯逮捕による逮捕です。盗撮は第三者に見られる可能性が高い公共の場で行われることが多く、第三者が盗撮を目撃したときにその第三者でも令状なしに逮捕できるのが一番の理由です。通常逮捕、緊急逮捕では警察官など一部の人しか逮捕する権限がありませんが、現行犯逮捕は誰でもできます。
また、現行犯逮捕の場合、犯人が所持していたカメラに記録された画像や動画がそのまま証拠となり、逮捕時点で犯人の特定ができます。これに対して、通常逮捕(後日逮捕)の場合、逮捕までに犯人が証拠隠滅のために盗撮データを消去することもありますし、警察の捜査で犯人を特定できない場合もあります。
盗撮で後日逮捕される確率は?逮捕の可能性があるケースや証拠を解説
実際、盗撮の常習者に対しては捜査員が現場で見張りをし、盗撮した場面を直接抑えるというシーンをよく目にしますが、これは、捜査機関が盗撮の立証のことを考え、できる限り盗撮したその場面を証拠として押さえたいという意図があるためです。
このように、盗撮が現行犯逮捕以外で逮捕するのが難しいと言われる理由は、現行犯逮捕ではその場で証拠を確保でき、犯人を即座に特定できるのに対し、後日逮捕では証拠が消失したり、犯人の特定が難しくなることが多いためです。
ただし、次に示すようなケースでは、現行犯ではなく後日逮捕される可能性も十分にあるため、現行犯逮捕されなかったからといって安心することはできません。
盗撮が現行犯以外で逮捕されるケース
盗撮した場合に現行犯逮捕以外で逮捕されるケースは次のとおりです。
- ①防犯カメラの映像が証拠となるケース
- ②目撃者がいたケース
- ③別件で押収されたスマホ等から盗撮が発覚するケース
①防犯カメラの映像が証拠となるケース
まず、防犯カメラ映像が証拠となるケースです。
たとえば、駅構内のエスカレーターで前に立っていた女性のスカート内にスマートフォンを差し入れたケースで、仮に被害者、目撃者から呼び止められることなくその場を過ごしたとします。しかし、通常、駅構内や駅構内のエスカレーターには防犯カメラが設置されています。したがって、エスカレーターで盗撮すれば、盗撮した場所によっては盗撮行為そのものが防犯カメラに映っている可能性があります。また、複数の防犯カメラの映像を精査すれば、盗撮をした犯人を特定することも可能となるでしょう。
なお、近年は駅構内に限らず、公共の場所、公共の施設には複数の防犯カメラが設置されていますので、駅構内以外で盗撮した場合でも同じことがあてはまります。
②目撃者がいたケース
次に、目撃者がいたケースです。
目撃者が盗撮行為を目撃し、かつ、犯人の顔や服装、身体などの特徴を明確に記憶している場合には、後日逮捕される可能性はあります。もっとも、目撃者の勘違いや思い込みなどによって誤認逮捕してしまう可能性もあることから、目撃者の供述のみで逮捕されることは少なく、それ以外の証拠とあわせて犯行と犯人の特定が可能な場合に逮捕される可能性があるでしょう。
③別件で押収されたスマホ等から盗撮が発覚するケース
次に、別の事件で押収されたスマホ等に保存された動画などから発覚するケースです。
先に出されていた被害届の申告内容と一致する動画などが見つかった場合は、それを端緒に逮捕されてしまう可能性はあります。
盗撮をしてしまい逮捕が不安な方へ
逮捕されると日常生活を送ることができなくなり、ご自身や家族の生活や仕事などに影響を与えてしまう可能性があります。逮捕された、されていないにかかわらず、はやめに弁護士に相談し、示談交渉や自首同行などに対応してもらうことが大切です。対応がうまくいけば、逮捕の回避や早期釈放、不起訴処分の獲得など有利な結果につながりやすくなります。
当事務所では、盗撮事件の逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており豊富な実績があります。親身にかつ誠実に、弁護士が依頼者を全力で守りますので、現行犯逮捕は免れたものの後日逮捕されるのではないかと不安な方は、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。
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