特別公務員暴行陵虐罪(とくべつこうむいんぼうこうりょうぎゃくざい)とは、裁判官、検察官、警察官、刑務官など一定の公職についている人が仕事をするにあたって、被疑者・被告人などに暴行等を加えた場合に問われる罪です(刑法第195条)。罰則は7年以下の懲役又は禁錮です。公訴時効は7年です。
なお、暴行又は陵辱若しくは加虐によって人を死傷させた場合は特別公務員暴行陵虐致死傷罪が成立する可能性があります。罰則は怪我を負わせた場合は15年以下の懲役、死亡させた場合は3年以上20年以下の懲役です。
以下では、特別公務員暴行陵虐罪の構成要件(成立要件)につき、刑事事件に強い弁護士が解説していきます。
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特別公務員暴行陵虐罪の構成要件
以下では、①誰が、②どんな場合に、③誰に対して、④何を行った場合に特別暴行陵虐罪が成立しうるのかみていきましょう。
①誰が(主体)
(特別公務員暴行陵虐)
第195条
1.裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の懲役又は禁錮に処する。
2.法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。刑法第195条 - Wikibooks
特別公務員暴行陵虐罪を規定する刑法195条は1項と2項でその主体(加害者)をわけて規定しています。
1項では、裁判官、検察官、司法警察員(警察官であれば巡査部長以上の階級にある警察官)又はこれらの職務を補助する人を主体と規定しています。職務を補助する人とは、裁判所書記官、検察事務官、司法巡査などがこれにあたります。
2項では、留置場、拘置所、刑務所の職員(警察官、刑務官)を主体として規定しています。
②どんな場合に
上記の者が職務を行う際です。たとえば、警察官が職務質問(職務)を行う際に、対象者に暴行等を加えた場合は特別公務員暴行陵虐罪が成立する可能性があります。一方、警察官が職務とはまったく関係のないプライベートで暴行を加えても、暴行罪が成立する可能性はありますが、特別公務員暴行陵虐罪は成立しません。
③誰に対して(客体)
刑法195条1項で保護されるのは、被疑者、被告人のほか、参考人、証人、捜索差押えの際の立会人、証拠鑑定の嘱託を受けた鑑定人、外国人被疑者・被告人の通訳を頼まれた通訳人など、刑事手続に関係する人です。
一方、同条2項で保護されるのは、法令により身柄を拘束された人です。身柄を拘束された人には、逮捕・勾留された被疑者、被告人、裁判が確定して拘置所・刑務所に収容されている人などが含まれます。
④何を行った(行為)
職務を行う際に、暴行又は陵辱若しくは加虐を行った場合が処罰対象です。
暴行とは、殴る、蹴る、叩く、着衣を引っ張る・引き裂くなど、人の身体に対する直接又は間接の不法な有形力を行使することをいいます。
暴行罪とは?どこから成立する?構成要件・傷害罪との違いも解説
陵辱とは辱める行為ないし精神的に苦痛を加える行為をいいます。また、加虐とは苦しめる行為ないし身体に対する直接の有形力の行使以外の肉体的苦痛を与える行為をいいます。暴行以外の方法によって、精神的又は身体的に苦痛を与える一切の行為を総括して陵辱若しくは加虐といい、いずれかの行為を行えば特別公務員暴行陵虐罪が成立します。
陵辱若しくは加虐の例として、相当な飲食物を供給しない、用便に行かせない、睡眠を妨げるなどの行為をあげることができます。
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