- 現場助勢罪ってどんな犯罪?成立要件や時効は?
- 実際に検挙される可能性はあるの?
この記事では、これらの疑問を、刑事事件に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
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目次
現場助勢罪とは
現場助勢罪(げんばじょせいざい)とは、殴る・蹴るなどの暴行が行われ、その結果、傷害、あるいは傷害致死に発展しかねないけんかの現場において、野次馬的助勢行為を行ったことで成立する罪です(刑法206条)。
現場助勢罪は、たとえば、次のようなケースのXに適用されます。
このように、けんかの現場では、いわゆる野次馬が「やれやれ、もっとやれ。」などと声援した場合に、けんかの当事者がそれによってあおられ、元気づけられたため、けんかの規模・程度が拡大して重大な結果が発生することは往々にして起こり得ます。
そこで、現場助勢罪はこうした事態を防止するため、無責任な野次馬助勢行為について独立した処罰規定を設けたものと考える説(独立説)があり、判例(大判昭和2年2月28日)もこの説を採用しているものと思われます。
一方、群衆心理を考慮して、現場における幇助行為(Aの加害行為を容易にする行為)につき、特に軽い刑(※)を規定したものと考える説(減軽類型説)もあります。
※現場助勢罪の罰則は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」に対し、傷害罪の幇助犯の罰則は「7年6月以下の懲役又は25万円以下の罰金」と重たいです。
現場助勢罪の時効は?
現場助勢罪の罰則は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」であり、長期5年未満の懲役もしくは禁錮または罰金に当たる罪については3年の公訴時効(刑事訴訟法250条2項6号)であることから、現場助勢罪の時効は3年となります。
現場助勢罪の成立要件
(傷害)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(傷害致死)
第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。
(現場助勢)
第二百六条 前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。刑法 | e-Gov法令検索
現場助勢罪が成立する要件は次のとおりです。
前二条の罪が行われるに当たり
「前二条の罪」とは傷害罪、傷害致死罪のことです。すなわち、前二条の罪が行われるに当たりとは、傷害罪、傷害致死罪の実行行為が行われている時点で野次馬的助勢行為を行うことが必要という意味です。
傷害罪、傷害致死罪の実行行為には暴行罪の暴行も含まれます。暴行罪の暴行とは、殴る、蹴る、叩く、投げ飛ばす、押し倒すなどが典型です。
前述の例では、Aの暴行によってBが怪我をし、Aに傷害罪が適用されますから、Xに現場助勢罪が成立します。一方、Bが怪我をせず、Aに適用される罪が暴行罪にとどまる場合は、Xには現場助勢罪は成立しません。
また、「行われるに当たり」とは、傷害罪、傷害致死罪の実行行為が行われている時点で、という意味です。そのため、暴行が始まる前、終わった後に野次馬的助勢行為を行っても現場助勢罪は成立しません。
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現場において勢いを助けたこと
「現場において」とは、暴行が行われているその時・場所で、という意味です。また、「勢いを助けた」とは野次馬的助勢行為、すなわち、「やれやれ。もっとやれ。」などと言語によって助勢する場合のほか、拳を振り回すように動作によって助勢する場合も含まれます。野次馬的行為によって暴行・傷害行為が容易になったかどうかは関係ありません。
自ら人を傷害させなかったこと
最後に、助勢者(X)が自らけんかに加わり、人(B)に怪我を加えなかったことが要件です。仮に、助勢者がけんかに加わり人に怪我を負わせたときは、傷害罪の共同正犯または同時犯が成立し、現場助勢罪は成立しません。
現場助勢罪と傷害罪の幇助との関係
現場助勢罪が適用されるか否かが問題となる事例として一方応援事例があります。一方応援事例とは、たとえば、Bに暴行を加えているAに対し、Xが「Aやれやれ!」と一方的に助勢するようなケースです。
この点に関する結論は、先にご紹介した独立説と減軽類型説で異なります。すなわち、一方的に助勢する行為は幇助行為にあたり得るため、独立説(判例の立場)によれば現場助勢罪ではなく傷害罪の幇助犯が成立すると考えます。一方、減軽類型説では、一方的に助勢する幇助行為も助勢行為の一種と考えるため、傷害罪の幇助犯ではなく現場助勢罪が成立すると考えます。
現場助勢罪で検挙される可能性は低い
現場助勢罪で検挙される可能性は低いです。なぜなら、警察は犯罪の成立要件を裏付ける一定の証拠を確保しなければ検挙に踏み切らないところ、現場助勢罪においては助勢行為を裏付ける証拠を確保することが難しいからです。
助勢行為を裏付ける証拠としては、助勢者の周辺にいた目撃者、あるいはけんかの当事者が考えられます。しかし、よほど悪質な助勢行為でない限り、目撃者の意識はけんかの当事者の言動に向けられていることが通常です。そのため、仮に警察がその目撃者から事情を聴いたとしても、助勢行為に関する有力な証言を得られる可能性はそれほど高くないものと考えられます。また、けんかの当事者の意識も助勢行為よりかはお互いの言動に意識が向けられていますから、やはり、目撃者と同様のことがいえます。
その他、けんかの現場に野次馬が複数いたような場合は、誰が助勢者なのか特定が難しいという点も理由の一つとして挙げることができます。
もっとも、検挙される可能性が低いからといって、助勢行為が許されるわけではありません。けんかを目撃したら自ら止めに入るか、難しい場合は、周囲に助けを求める、110番通報するなどして事態の収拾に努めましょう。
現場助勢罪で逮捕されそう・された方は弁護士に依頼
現場助勢罪で逮捕されないか不安、という場合ははやめに弁護士に相談しましょう。弁護士に相談すれば、そもそも逮捕されるのかどうかある程度の感触をつかむことができます。また、個別の事情に応じて、今何をすべきなのかアドバイスを受けることもできます。
万が一、逮捕された場合は早い段階で弁護士と接見し、取調べ等のアドバイスを受けます。また、選任する弁護士を私選にするのか国選にするのかを決める必要があります。私選弁護士を選んだ場合、費用は自己負担ですが、逮捕直後から被害者との示談や釈放に向けた活動を始めてくれるため、逮捕によるリスクを最小限に抑えることができる可能性があります。一方、国選弁護士を選んだ場合、原則費用はかかりませんが、勾留が決まってからでないと弁護活動を始めてくれないため、被害者との示談や釈放のタイミングが遅れてしまう可能性がある点に注意が必要です。
弊所では、暴行・傷害事件での被害者との示談交渉を得意としており実績もあります。親身誠実に、弁護士が依頼者を全力で守ることをモットーにしておりますので、まずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が解決へ繋がります。
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