保釈金(正確には保釈保証金)とは、起訴された被告人が保釈を認めてもらうに際して裁判所に収める必要がある金銭のことです。
保釈金の相場は概ね150万円〜300万円くらいです。
収めた金銭は、原則として裁判手続きが終了後に返ってきますが、一定のケースでは保釈金を没収されることもあります。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、上記内容をさらに詳しく解説するとともに、
- 保釈金はいつ返ってくるのか
- 保釈金が没収されるケース
- 保釈金の額を決める要素
についてもわかりやすく解説していきます。
大切な方を少しでも早く身柄拘束から解いてあげたい方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合は弁護士までご相談ください。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|
目次
保釈金とは?
保釈とは
「保釈」とは、一定額の保証金(これを「保釈金」と言われることがあります)を納めることを条件として、身体拘束から解放されるという制度のことをいいます。
「勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈を請求することができる」と規定されています(刑事訴訟法第88条参照)。
起訴された後であれば、公判が始まる前であっても、判決が確定するまではいつでも保釈請求をすることができます。
裁判所は、保釈の請求を受けたときには、一定の場合を除いて、保釈を許さなければならないと規定されています。このような保釈を「必要的保釈」とか「権利保釈」と言われています。一定の場合とは以下のような場合をいい、これらの事情が認められると保釈が認められません(刑法第89条各号参照)。
- 被告人が死刑または無期若しくは短期1年以上の懲役もしくは禁固にあたる罪を犯したものであるとき
- 被告人が前に死刑または無期若しくは長期10年以上の懲役若しくは禁固にあたる罪について有罪の宣告を受けたことがあるとき
- 被告人が常習として長期3年以上の懲役または禁錮にあたる罪を犯したものであるとき
- 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
- 被害者やその親族の身体・財産に害を加えたり、畏怖させたりすると疑うに足りる相当な理由がある場合
- 被告人の氏名・住所が分からない場合
また、裁判所は保釈された場合に被告人が逃亡しまたは罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上または防御準備上の不利益の程度などを考慮して適当と認めるときは、職権で保釈を認めることができます(刑法第90条参照)。
このような保釈を「職権保釈」や「裁量保釈」といいます。
保釈金
冒頭でお伝えしたように、保釈金(保釈保証金)とは、起訴された被告人が保釈を認めてもらうに際して裁判所に収める必要がある金銭のことです。
「保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない」と規定されており(刑事訴訟法第93条1項)、この保証金額については、犯罪の性質および情状、証拠の証明力、被告人の性格・資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる「相当な金額」を裁判所が定めます。
また保釈を許す場合には、被告人の住居を制限しその他適当と認める条件を付すこともできます(同3項)。
保釈金は返金されて戻ってくる?
いつ戻ってくる?
後述するように保釈金は没収されることもありますが、没収されなかった保釈保証金は返還されることになります。
以下に挙げるような場合には、保釈保証金は還付されることになります(刑事訴訟規則第91条1項各号参照)。
- 勾留が取り消され、または勾留状が効力を失ったとき
- 保釈が取り消されまたは効力を失ったため被告人が刑事施設に収容されたとき
- 保釈が取り消されまたは効力を失った場合、被告人が刑事施設に収容される前に新たに保釈の決定があって保釈金が納付されたときや、勾留の執行が停止されたとき(この場合、保釈の決定があったときには前に納付された保証金は新たな保証金の全部・一部として納付されたものとみなされます。)
したがって、保釈金は裁判所が付した条件などに違反しないまま無事に裁判手続きが終了した場合には返還されます。判決が有罪であっても無罪であっても保釈金は原則として全額戻ってきます。
なお、私選弁護人を選任して弁護活動を依頼している場合には、私選弁護人が保釈請求を代わりに行うことがあります。そのような場合には、保釈金の還付はまず弁護人の預り金口座に還付され、弁護士費用が差し引かれた後、被告人側に戻ってくる場合があります。
保釈金が没収されるケース
そして万が一の場合には、裁判所は保釈を取り消すことができます。
保釈を取り消す場合には、裁判所は決定で保証金の全部または一部を没収することができます(刑法第96条2項)。
保釈が取り消されるのは以下のような場合です(刑法第96条1項各号)。
- 召喚を受けたのに正当な理由なく出頭しないとき
- 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
- 罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
- 被害者等やその親族の身体・財産に害を加え、畏怖させる行為をしたとき
- 被告人が住所の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき
また保釈をされた者が、刑の言い渡しを受けその判決が確定した後、執行のため呼び出しを受けたにも関わらず正当な理由がなく出頭しないときや、逃亡したときには、検察官の請求により決定で保釈保証金の全部または一部を没収されることになります(刑法第96条3項)。
保釈金の相場は?
保釈金の相場としては、概ね150万円〜300万円くらいであることが多い印象です。
事案によって異なるため、保釈保証金の金額はケースバイケースで前後する可能性がありますが、一般的には最低でも150万円は必要となっているようです。なお、保釈金の過去最高額は「ハンナン事件(食肉卸売業のハンナン株式会社による詐欺・補助金適正化法違反の企業犯罪)」の20億円です。
保釈金の額を決める要素
前述のように保釈金の金額はさまざまな要素を考慮して決定されることになります。
保釈金を決定するにあたって法律に規定されている考慮要素は以下のようなものです。
- 犯罪の性質及び情状
- 証拠の証明力
- 被告人の性格及び資産
以上の事情を考慮して、「被告人の出頭を保証するに足りる」相当な金額を決定しなければなりません(刑事訴訟法第93条2項)。
保釈保証金は担保や人質的な性質のある金銭ですので、被告人が納入するのに心理的なプレッシャーを感じるような金額でなければいけません。なぜなら納めた金額が没収されることに、何らの心理的圧力を感じず逃走されてしまっては、刑事裁判手続きの存在意義がなくなってしまうからです。
そのため被告人の収入状況や家族の収入状況などは重要な考慮要素ですし、犯罪の重大性・悪質性が高くなれば保証金の金額も高額になる傾向があります。
よって被告人が資産家や芸能人・著名人の場合などには保釈金も高額になる可能性があります。金融商品取引法違反容疑で逮捕・起訴された日産自動車の元会長であったカルロス・ゴーン氏の保釈を決定した際、保釈保証金は15億円とされました。なお同氏がレバノンに逃亡したため、東京地裁は没収額としては過去最高であるこの15億円を没収する決定を行っています。
保釈保証金を準備できない場合には?
保釈保証金を準備できない場合には、保釈保証金の立て替え払いをしてくれる「日本保釈支援協会」の利用を検討してください。
この「日本保釈支援協会」を利用するには、被告人やその家族が申込みをする必要があります。そして被告人の更生の点などから審査を経て、立て替え限度額500万円の範囲内で立て替え払い契約を締結することになります。その後担当弁護人名義の口座に立替金が入金されることになります。
立て替え期間は「2カ月」とされているため、2カ月後には返済する必要があります。
また立て替え手数料や事務手数料2200円の支払いが必要となります。立て替え手数料については段階的に定められており、立替金「50万円まで」の場合には13,750円、最大「500万円」の場合には137,500円となっています。
なお、保釈保証金ではなく、弁護士費用が支払えない場合には「国選弁護人制度」や日本弁護士連合会(日弁連)の「刑事被疑者弁護援助制度」を利用することができます。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|