
ネットストーカーの犯人は、匿名のアカウントであっても特定できる場合があります。警察への援助の申し出、被害届・告訴状の提出、発信者情報開示請求という3つの方法があり、条件次第では加害者の氏名や住所まで突き止められることもあります。
「掲示板やSNSで執拗な嫌がらせを受けているが、相手が誰なのかわからない」「匿名の相手には何もできないのではないか」とお感じの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ストーカー問題に注力する弁護士が、次の点をわかりやすく解説します。
- 匿名の犯人を特定する3つの方法
- ストーカー規制法の対象になる行為と罰則
- 警察が動かないときに取れる手段
なお、被害について早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。
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ネットストーカーの犯人を特定する3つの方法
①警察に援助の申し出をする
ネットストーカーを行っている者が誰なのかを特定するのに、費用をかけずに利用できる方法が、警察に援助の申し出をすることです。
警察への相談(警告を求める申し出など)や被害届をきっかけに、警察がすでに相手を特定している場合、被害者が警察署に「援助の申し出」をすると、以下の法令に基づき、ネットストーカーの氏名や住所を教えてもらえることがあります。
第七条 警察本部長等は、ストーカー行為等の相手方から当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該相手方に対し、当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための措置の教示その他国家公安委員会規則で定める必要な援助を行うものとする。
出典:e-Gov法令検索
(警察本部長等による援助)
第十六条 法第七条第一項の国家公安委員会規則で定める援助は、次のとおりとする。
~省略~
二 申出に係るストーカー行為等をした者の氏名及び住所その他の連絡先を教示すること。
出典:e-Gov法令検索
条文の「ストーカー行為等」のもとになるのは、主に、恋愛感情などの好意を満たす目的や、それが満たされなかった恨みを晴らす目的で行うストーカー規制法2条1項の「つきまとい等」です。ネットストーカーでは、次のような行為が問題になります。
- 監視していると思わせる内容を伝える・書き込む
- 拒否されたのにSNSのメッセージなどを続けて送る
- 名誉や性的羞恥心を害する内容を伝える・書き込む
- 住居や勤務先などの付近で見張る、そこへ押しかける、待ち伏せする
同じ相手に対してこれらを繰り返せば、「ストーカー行為」にあたり得ます(同条4項)。ただし、名誉や性的羞恥心を害するもの以外は、不安を覚えさせるような方法による場合に限られます。一方、投稿を見ているだけで何も働きかけていない段階では、対象になりにくいと考えられます。対象となる行為や警告・禁止命令の仕組みについては「ストーカー規制法とは?対象となる行為と警告・禁止命令を解説」をご覧ください。
もちろん、相手の行為がストーカー規制法のつきまとい等に該当しない場合は援助の対象にならず、仕返し目的で援助規定を悪用しようとする場合は相当と認められないため、教えてもらえません。
しかし、ネットストーカーの氏名や住所を把握しておくことで被害者が適切な防御態勢をとれる場合や、弁護士を介して犯人に警告を与えたり交渉したりして穏便に事態の収拾を図るなどの目的がある場合は相当と認められやすいでしょう。犯人の特定と並行して被害を最小限に抑えるための具体策については「ネットストーカー被害の対策は?5つの対処法と被害を防ぐ方法」で詳しく紹介しています。
②警察に被害届または告訴状を提出する
①の「援助の申し出」をしても、ネットストーカーの行為がストーカー規制法で禁止されているつきまとい等に該当しないと警察に判断されることがあります。
その場合は援助が受けられませんので、①の方法ではネットストーカーの特定には至りません。警察の実際の対応については「ストーカーを警察に相談したらどうなる?相談後の流れを解説」で詳しく取り上げています。
ただし、相手の行為がストーカー規制法に該当しなくても、脅迫罪や名誉毀損罪などにあたる可能性があります。
XやFacebookのDMで「殺してやる」「ひどい目に遭わせてやる」などのメッセージを受けた場合は脅迫罪、ブログや掲示板で知られたくない秘密を暴露されたり、誹謗中傷を書き込まれたりした場合は名誉毀損罪や侮辱罪が成立する可能性があります。名誉毀損罪と侮辱罪は告訴がなければ起訴されないため(刑法232条1項)、処罰を望むなら告訴が必要です。
なお、つきまとい等を繰り返す「ストーカー行為」にあたる場合は、それ自体がストーカー規制法違反の犯罪で、被害届や告訴の対象になります。刑罰は、拘禁刑なら1年以下、罰金なら100万円以下です(18条)。公安委員会から「繰り返してはならない」との禁止命令を受けたのに、それを破ってストーカー行為をした場合は、上限が拘禁刑2年・罰金200万円に引き上げられます(19条1項)。
そして、これらの罪で被害届または告訴状を警察に提出し、捜査で相手が被疑者(犯罪の疑いをかけられ、捜査の対象になっている人)として特定された場合、被害者が氏名や住所を知るには次の方法があります。
まずは、警察または検察官に、「民事訴訟(慰謝料請求)を起こしたいので被疑者の氏名や住所を教えてください」と交渉します。
これですんなり教えてもらえればいいのですが、被疑者とはいえプライバシーの問題もありますのでそう簡単には教えてくれないことの方が多いのが実情です。
その場合は、弁護士を代理人として立てることで被疑者の個人情報を教えてもらえる率は高まります。
もしそれでも教えてくれない場合は、相手が起訴されたら、第1回の公判期日の後、事件が終わるまでの間に裁判所へ申し出れば、原則として裁判記録を閲覧・コピーできます(犯罪被害者保護法3条1項)。その記録にある起訴状から被告人(起訴された人)の氏名などを確認できます。
あるいは、第1回の公判の冒頭で裁判官が被告人に氏名などを確かめる手続き(人定質問)を傍聴し、メモする方法もあります。
なお、犯人特定後の慰謝料請求をお考えの方は「ストーカーの慰謝料や示談金の相場はいくら?弁護士が解説」もあわせてご確認ください。
③発信者情報開示請求をする
発信者情報開示請求の流れ
発信者情報開示請求とは、サイト運営者やプロバイダに対して、書き込みをした人の情報を開示するよう求める手続きで、情報流通プラットフォーム対処法という法律で定められています。
掲示板やSNSの誰でも見られる場所に、誹謗中傷や個人情報を書き込まれたときに、この手続きを利用できます(開示請求では、1対1のDMやメールの送り主は特定できず、DMでの脅迫などは②で特定を目指します)。開示には、権利侵害が明らかであることなどが必要です。投稿は後から消されることもあるため、URLと日時が写った画面や相手のアカウント名を証拠として早めに保存しておきましょう。
発信者情報開示請求の流れは以下となります。
- SNSや掲示板の運営者に書き込みをした人のIPアドレスを開示してもらう
- 開示してもらったIPアドレスから、書き込みをした人の契約しているプロバイダを調べる
- プロバイダに契約者情報(氏名・住所など)を開示してもらう
※IPアドレスとは、書き込みをした人のインターネット上の住所と考えてください。
※プロバイダとは、インターネット接続事業者(docomo、au、SoftBank、OCN、So-netなど)のことです。
詳しくは「発信者情報開示請求とは?開示命令による手続きを解説」に書かれていますが、簡潔に言うと、開示が認められれば、ネットストーカーの氏名や住所、携帯番号などを特定できます。
開示請求はネットストーカーの被害者自身でも行えますが、実際のところ、プロバイダが契約者情報を任意で開示してくれることはまずありません。
いくらネットストーカーといえども、プロバイダからしてみれば立派な顧客であり、顧客のプライバシー権や表現の自由との兼ね合いから開示請求に応じない姿勢をとっているのです。
そのため、最終的には裁判手続きを通じて情報開示してもらうことになります。従来はサイト運営者への仮処分とプロバイダへの訴訟という2段階の手続きが必要でした。しかし、2022年10月施行の改正により、当時のプロバイダ責任制限法(現・情報流通プラットフォーム対処法)に「発信者情報開示命令」という新たな裁判手続きが創設されました。この制度では、一連の非訟手続き(判決ではなく決定で結論が出る手続き)でサイト運営者とプロバイダへの開示請求を一体的に行えるため、従来よりも迅速に犯人の特定が可能になっています。
これらの裁判手続きは高度な法的知識が要求されるため、弁護士に依頼するのが現実的です。
警察ではなく発信者情報開示請求を活用する場面は?
犯人の特定に発信者情報開示請求を使うのは、誰でも見られる投稿による被害で、主に警察が動いてくれない場合や、警察沙汰にしておおごとにしたくない場合です。
被害者自身は、「これはストーカー規制法違反だ!」「脅迫だ!名誉毀損だ!」と考えたとしても、警察がそれを否定する判断をすることもあります。
また、ネットストーカーが元交際相手や知り合いである可能性があるケースでは警察沙汰にまではしたくないという心情が働くこともあります。
こういった事情があれば、ネットストーカーの身元特定の方法としてはやはり発信者情報開示請求に頼らざるを得ないでしょう。警察や弁護士以外の相談先については「ストーカー被害はどこに相談する?窓口を紹介」でまとめています。
ただし、開示請求でも、原則としてプロバイダなどが投稿者へ意見照会をするため(情報流通プラットフォーム対処法6条1項)、開示を求めていることが相手に伝わる可能性があります。相手に知られることが心配なら、進め方を弁護士に相談しましょう。
ネットストーカー被害でお悩みの方は弁護士にご相談ください
匿名の相手であっても、警察の援助や被害届、発信者情報開示請求などの方法で、ネットストーカーの犯人を特定できることがあります。ただし、いずれの方法も法的な知識や手続きが必要となるため、被害者がおひとりで対応するには負担が大きいのが実情です。
弁護士に依頼することで、警察への働きかけや発信者情報開示請求の裁判手続きを一任できるだけでなく、犯人特定後の警告や慰謝料請求の交渉まで一貫して任せられます。
ネットストーカーによるつきまといや誹謗中傷に日々不安を感じている方、すでに警察に相談したものの十分な対応が得られなかった方は、おひとりで抱え込まずにご相談ください。当事務所はストーカー被害の解決に注力しており、全国どこからでも24時間無料でご相談いただけます。被害者の方が安心して日常を取り戻せるよう、親身にサポートいたします。
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この記事の監修者
ストーカー被害の解決に豊富な実績を持つ。元交際相手からのつきまとい、ネットストーカー、職場でのストーカー被害など、警察に相談しても動いてもらえないケースにも弁護士として毅然と対応。「報復が怖い」「大事にしたくない」という被害者の心情に寄り添い、穏便かつ確実にストーカー行為を止めさせることに全力を注いでいる。

