青少年保護育成条例違反となる行為と罰則|初犯だと罰金刑?

青少年保護育成条例は各都道府県単位で定められていますが、この条例に違反すると、逮捕されたり、罰金刑や懲役刑が科せられることもあります。

この記事では、青少年保護育成条例違反の弁護活動の経験が豊富な弁護士が、

  • 青少年保護育成条例違反となる行為
  • 違反行為が警察にバレる経緯
  • 青少年保護育成条例違反が初犯だと罰金刑になるのか
  • 違反してしまった場合の対応方法

などについてわかりやすく解説していきます。

なお、青少年保護育成条例に違反する行為をしてしまい逮捕されるおそれのある方や、既に逮捕されてしまった方のご家族の方で、この記事を読んで問題解決しない場合には弁護士までご相談ください。

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青少年保護育成条例違反について

青少年保護育成条例とは、青少年の健全な成長を阻害するおそれのある行為を禁止するなどして、青少年の健全な育成を図ることを目的とする条例で、各都道府県単位で定められています。過去、長野県だけが唯一、全国で青少年保護育成条例を制定していない県でしたが、スマホやインターネットの発展・普及など青少年を取り巻く環境の変化に伴い、長野県でも令和2年(2020年)77日より青少年保護育成条例が施行され、同年111日からは処罰規定も施行されています。

なお、条例の名称は各都道府県によって異なる場合があります。たとえば、神奈川県では「神奈川県青少年保護育成条例」という名称ですが、東京都では「東京都青少年の健全な育成に関する条例」、埼玉県では「埼玉県青少年健全育成条例」が正式名称となります。
※この記事では、便宜上、「青少年保護育成条例」という名称を用いて解説していきます。

ここで「青少年」とは、18歳未満の者、つまりは未成年者を指します。したがって、18歳以上であれば、大学生や社会人はもちろん、たとえ高校生であっても「青少年」には該当しません

ここでは、東京都の青少年保護育成条例を例にして、条例違反となる行為や罰則などについて解説していきます。

主な違反行為と罰則

東京都の青少年保護育成条例が禁止する主な行為は次のとおりです。

着用済み下着等の買受けなど

まず、青少年保護育成条例は、

  • ①青少年から着用済み下着等を買い受けること
  • ②青少年から着用済み下着等の売却の依頼を受けること
  • ③着用済み下着等の売却の相手方を青少年に紹介すること
  • ④上記①から③の行為が行われることを知って、場所を提供すること

を禁止しています。

罰則は①から③が30万円以下の罰金④が50万円以下の罰金です。

深夜の連れ出しなど

次に、青少年保護育成条例は、保護者の委託を受けた場合、保護者の同意を得た場合、その他正当な理由がある場合を除いて、

  • ①深夜(午後11時から翌日午前4時まで)に青少年を連れ出すこと
  • ②青少年と同伴すること
  • ③青少年をとどめること

を禁止しています。

罰則は30万円以下の罰金です。

なお、外出時間に関わりなく、親権者や保護者等の承諾なく未成年者(青少年)を連れ回しする行為は、たとえ未成年者本人の同意があった場合でも「未成年者略取及び誘拐罪」が成立する可能性があります。

児童ポルノ等の提供を求める行為

次に、青少年保護育成条例は、青少年に対し、

  • ①青少年に拒まれたにもかかわらず、児童ポルノの写真や動画などを送るよう要求すること
  • ②青少年を威迫し、欺き、困惑させ、又は青少年に対価を渡し、もしくは渡す約束をして、児童ポルノの写真や動画などを送るよう要求すること

を禁止しています。

罰則は30万円以下の罰金です。

青少年への勧誘行為

次に、青少年保護育成条例は、青少年に対し、

  • ①青少年が一度着用した下着または青少年のだ液もしくはふん尿を売却するように勧誘すること
  • ②ソープ、ヘルスなどの性風俗店で働くよう勧誘すること
  • ③ホストクラブなどの客になるよう勧誘すること

を禁止しています。

警察官の警告に従わずにこれらの行為を行った場合の罰則は30万円以下の罰金です。

みだらな性交、性交類似行為

次に、青少年保護育成条例は、

  • ①青少年とみだらな性交または性交類似行為を行うこと

を禁止しています。

(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)

第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。

東京都青少年の健全な育成に関する条例

「何人も」とされていることから、国籍、性別、年齢を問わず処罰の対象とされます。ただし、東京都の場合、青少年同士の違反行為には条例の罰則は適用されません

「性交」とは、陰茎を膣内に挿入する行為(セックスのこと)、「性交類似行為」とは、手淫や口淫など、実質的にみて性交と同視し得る態様における性的な行為をいいます。都道府県の条例によっては性交と性交類似行為をあわせて「淫行」と表現しているところもあります。

なお、この淫行の意義に関しては、判例(最高裁判所昭和601023日)が次のように定義づけています。

「淫行とは広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいう」

そしてこの判例では、婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等は、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いと述べられています。

したがって、真剣な交際が「事実」であれば違反にはあたりませんが、客観的にみて真剣交際と認めうる事実がなければ違反に問われるでしょう。

客観的にみて真剣交際と認めうる事実があるかどうかは、犯人と青少年との年齢差、犯人の既婚の有無、犯人と青少年との関係性、犯人と青少年とが出会った動機・経緯、交際の内容、連絡の頻度・内容、出会ってから性交に至るまでの期間・経緯などの事実関係を詳細にチェックされなければ判断できません。

たとえば、犯人が独身・19歳で青少年が17歳という関係であれば真剣交際だったとの判断に傾きやすいですが、反対に、犯人が既婚者・40歳で青少年が17歳という関係の場合、真剣交際の主張を通すことは難しいという判断になります。

罰則は2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

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違反行為がバレる経緯

ここまで解説してきた違反行為は、次の経緯から警察に発覚することが多いです。

  • 青少年本人が被害申告:青少年が直接警察に被害申告することもありますが、むしろ身近な親や学校の先生、友人に相談したことがきっかけで発覚するケースが多いです。
  • 親や先生が警察に通報:青少年の異変に気づいた親や先生が青少年に事情を聞いたり、スマホをチェックすることで犯罪に巻き込まれていることを知り、警察に通報するケースが多いです。
  • 青少年の補導:警察は非行が行われやすい場所を中心に補導を行っています。補導は青少年が犯罪に巻き込まれることを防ぐ目的もあり、青少年から話を聞いたり、スマホをチェックすることもあります。
  • 職務質問:ラブホテル周辺などで、夜間に青少年と二人で歩いているような場合は職務質問を受けやすい状況です。職務質問から様々な違反行為が発覚することがあります。
  • サイバーパトロール:警察はインターネット上で青少年が犯罪に巻き込まれるような投稿がされていないか日々監視しており、必要によっては投稿者を補導するなどしています。

青少年保護育成条例違反で初犯だと罰金?

仮に、青少年保護育成条例で検挙されたとき初犯だった場合、どういう罰則を科されるかですが、まず、

  • 着用済み下着等の買受け
  • 深夜の連れ出し
  • 児童ポルノ等の提供を求める行為
  • 青少年への勧誘行為

など、罰則に罰金刑しか定められていない場合は不起訴、あるいは起訴されたとしても略式起訴(※)により罰金を科されることがほとんどです。なお、罰則に罰金刑しか定められていない違反行為でも、逮捕される可能性はありますので注意が必要です。

一方、「みだらな性交、性交類似行為」の場合は、略式起訴により罰金を科されることが多いですが、行為が悪質で青少年の年齢が低い場合などは、正式起訴され懲役を科されることもあります。ただし、実刑になることはほとんどありません。

※裁判官の書面審査のみで終わる略式裁判を開くための起訴。略式起訴に対して、公開の法廷で裁判を開くことを求めるための起訴を正式起訴といいます。

青少年健全育成条例の判例

未成年と性行為をし逆転有罪となった事案

この事案は、アパート内の被告人の居室において、未だ18歳に達しない児童に対してみだらな性行為をしたとして、青少年健全育成条例違反の罪で起訴された事案です。

被告人は事件当時学生であった16歳の少女とデパートの屋上で知り合い親しくなり、以後お互いに電話などで連絡をとってアパート等で会い交際を重ねていました。そのような交際の初期に、アパートにおいて被告人が接吻したり体をなでたりしたうえ布団の中に入り同様の行為を続けているうち、そのまま肉体関係を遂げたという経緯がありました。

「情交当時においては、結婚とか婚約とかいうことを前提とせず、年長者が年少の少女を誘惑し、専ら情慾の満足を目的とする性行為をしたものと観察すべきのみならず、被告人のその後の行状をみても、やはり十八才未満の少女を相手にして慾望の赴くまま乱淫の所為に及んでいることが認められる」と認定したうえで、

「被告人を単に道徳上非難し得るというに止まらず、右条例の禁遏する所為で可罰的であると非難し得べき場合であると認めて差支ない」

として第一審の無罪を否定して逆転有罪の判断がなされています(東京高等裁判所昭和42年2月28日判決)。

被告人には罰金1万円が科されています。

妻の連れ子と性行為をした事案

この事案は、被告人が妻の連れ子であるAが13歳未満であることを知りながら(当時11歳)、就寝中の同女に対しうつ伏せにしてその背後から覆い被さるなどの暴行を加えてその反抗を抑圧して姦淫し、その後15歳になったAに対して、結婚その他正当な理由がないのに18歳に満たない青少年であることを知りながら、同女際と性交した事案です。

被告人は強姦罪とあわせて青少年健全育成条例違反の罪で起訴されました。

この事案に対して裁判所は、

「被告人が,事実を認め,被告人なりの反省の言葉を述べていること,これまで正業に就いて,家族のために真面目に働き,2人の実の娘にとっては良き父親であったこと,被害者が,公判廷で,被告人を宥恕すると述べ,被害者の母親も同様の意向を表していること,家庭には帰りを待つ離婚した元の妻と幼い2人の娘がいること,前科がないことなど,被告人のためにしん酌し得る事情を十分に考慮してみても」実刑判決は免れない旨を判示しています(さいたま地方裁判所平成14年1月15日判決)。

結果として被告人には懲役5年の実刑判決が言い渡されています。

青少年保護育成条例に違反したら弁護士に相談

青少年保護育成条例に違反して逮捕されると、最大で3日間身柄を拘束され、弁護士以外の者と連絡がとれなくなります。また、逮捕に引き続き勾留されると、起訴または不起訴が決定するまで最大で20日間身柄拘束が続きますので、お仕事されている方や学生の方は、職場や学校に隠し通すことが困難となってきます。さらに起訴されて有罪となれば、前科がつきますし、懲戒解雇や退学処分のリスクもあります

そのため、青少年保護育成条例に違反して逮捕される可能性がある場合や既に逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く弁護士への相談や接見を依頼しましょう。そのうえで、以下で解説する弁護活動を進めてもらうようにしましょう。

逮捕の回避を目指す

まず、逮捕されてない段階であれば、逮捕の回避を目指します。

青少年側(青少年および青少年の保護者)に謝罪し、示談交渉を始めて示談を成立させます。警察に被害申告される前に示談を成立させることができれば、事件のことが警察に発覚することを免れることができます。事件が警察に発覚しなければ逮捕を回避することができます。また、警察に被害申告された後でも、示談後は青少年側が被害届を取り下げてくれる可能性が高く、そうなれば警察が逮捕に踏み切ることはありません。

早期釈放を目指す

次に、万が一逮捕や勾留されてしまった場合は早期釈放を目指します。

早期釈放を目指すには、釈放後の生活環境を整えた上で、検察官や裁判官に罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないことを主張していく必要があります

並行して示談交渉も進めていきます。示談を成立させることができれば、後述するように、刑事処分は不起訴となる可能性が高いですから、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないと判断されやすくなります。

不起訴獲得を目指す

最後に、不起訴獲得を目指します。

事件が警察から検察に送られた場合は、最終的には起訴か不起訴かの刑事処分を受けることになります。検察が刑事処分を下す前に示談を成立させるなどして不起訴処分の獲得に努めます

不起訴処分となれば刑事裁判にかけられることもなく前科もつきませんので、実質無罪となります。

当事務所では、青少年保護育成条例違反での、逮捕の回避、早期釈放、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、いつ逮捕されるか不安な日々を送られている方や逮捕された方のご家族の方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。

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