電子計算機使用詐欺罪とは?成立要件・判例・執行猶予を解説

「山口県阿武町の誤送金事件」「特殊詐欺の還付金詐欺」「暗号資産の不正流出」など、近年ニュースで耳にする機会が増えた「電子計算機使用詐欺罪」。詐欺罪と名前は似ていますが、欺く相手が「人」ではなく「コンピューター」である点で、通常の詐欺罪とは別の犯罪として処罰されます。

「自分のしたことが電子計算機使用詐欺罪にあたるのか不安だ」「家族が容疑をかけられてしまった」「ニュースで見聞きしたが、どこからどこまでが犯罪になるのかよくわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。電子計算機使用詐欺罪は法定刑が10年以下の拘禁刑と重く、被害額が大きくなりやすいため逮捕や起訴のリスクも軽くありません。

この記事では、詐欺事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。

  • 電子計算機使用詐欺罪の構成要件(成立要件)
  • 詐欺罪・窃盗罪との違い
  • 還付金詐欺・誤送金事件など代表的な判例・具体例
  • 罰則・時効・執行猶予の見通し

電子計算機使用詐欺罪は、刑法第246条の2に規定されています。

(電子計算機使用詐欺)
第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。

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電子計算機使用詐欺罪が新設された経緯と立法趣旨

電子計算機使用詐欺罪が新設された背景には、1980年代後半に社会問題化した変造テレホンカードや偽造プリペイドカードによる被害を、当時の刑法では処罰しきれないという問題がありました。

たとえば、通話可能度数を改ざんした変造テレホンカードを公衆電話で使用して通話料の支払いを免れる行為について、犯人が得る利益は「電話ができる」という役務であり、財物ではないため窃盗罪は成立しません。また、詐欺罪(刑法246条)は「人」を欺く犯罪ですので、機械であるコンピューターをだましても詐欺罪にはあたりません。

同様に、他人名義のキャッシュカードでATMから現金を引き出した場合は窃盗罪が成立しますが、現金を引き出さずに自分名義の口座へ送金しただけの場合には、占有移転がないため窃盗罪にも、欺罔の相手方が存在しないため詐欺罪にも問えないという処罰の空白が生じていました。

このような窃盗罪と詐欺罪のいずれにもあたらないコンピューター悪用行為を捕捉するため、昭和62年(1987年)の刑法改正で電子計算機使用詐欺罪が新設されました。広義の詐欺罪の一類型と位置づけられており、行為態様が詐欺に類似しているため刑法第246条の次の条文(246条の2)に置かれています。

電子計算機使用詐欺罪の構成要件

電子計算機使用詐欺罪の構成要件は、以下となります。

  • ① 不実の電磁的記録の作出
  • ② または虚偽の電磁的記録の供用
  • ③ ①または②により財産上不法な利益を得たこと

①不実の電磁的記録の作出

不実の電磁的記録の作出とは、銀行のATMやオンラインシステムなど他人の事務処理に使われる電子計算機に対して、虚偽の情報や不正な指令を入力し、預金残高や電子マネー残高など財産権の得喪・変更を生じさせる不実の電磁的記録を作出する行為を指します。

この点について判例は、「虚偽の情報」を「当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反する情報」と定義しています(東京高判平成5年6月29日)。一方の「不正な指令」とは、事務処理の目的に照らして本来与えられるべきでない指令を指します。

条文上は「虚偽の情報若しくは不正な指令を与える」と表現されていますが、これは行為者が電子計算機にこれらの情報・指令を入力する行為を意味します。

「財産権の得喪・変更に係る電磁的記録」に該当するのは、預金残高の記録電子マネーの残高プリペイドカードの残度数のように、その記録の作出・変更によって事実上財産権の得喪や変更が生じる電磁的記録です。

他方で、クレジットカードやキャッシュカードの磁気ストライプの記録は、カード会員番号や有効期限などの一定の事実を証明する記録に過ぎないため、ここでいう「財産権の得喪・変更に係る電磁的記録」には該当しないと解されています。

不実の電磁的記録の作出に該当する代表的な事例としては、銀行員が銀行のオンラインシステムを操作して自己の口座残高を不正に増加させた事例(大阪地判昭和63年10月7日)や、還付金詐欺で被害者にATMを操作させて口座から送金させる事例などが挙げられます。具体的な事案の詳細は、後述の「電子計算機使用詐欺罪の具体例・判例」で解説します。

なお、他人のネットバンキングのIDやパスワードを盗用して、その他人の口座から自分(または第三者)の口座に送金をすることは、電子計算機使用詐欺罪のほか、不正アクセス禁止法違反も成立します。

②虚偽の電磁的記録の供用

虚偽の電磁的記録の供用とは、あらかじめ偽造・変造などによって虚偽の内容を持たせた電磁的記録を、他人が事務処理に使用するコンピューターに読み込ませる行為を指します。前段の「不実の電磁的記録の作出」が新たに虚偽データを作り出す行為であるのに対し、後段の「虚偽の電磁的記録の供用」はすでに用意した虚偽データを機械に使用させる行為を捕捉する規定です。

虚偽の電磁的記録の供用に該当する代表的な事例としては、通話可能度数を改ざんした変造テレホンカードを公衆電話に挿入する事例(岡山地判平成4年8月4日)や、自動改札機を利用したキセル乗車などが挙げられます。具体的な事案の詳細は、後述の「電子計算機使用詐欺罪の具体例・判例」で解説します。

③財産上不法な利益を得たこと

上記①または②の結果として財産上不法な利益を得たことが同罪の成立要件として必要です。

財産上の不法の利益を得るとは、財物以外の財産上の利益を不法に得ることをいいます。利益が不法なものである必要はなく、利益が適法でも、利益を得る手段が不法であれば財産上不法の利益を得たことになります。

たとえば、拾ったクレジットカードでネットショッピングをして、本来自分が支払うべきショッピングの費用の支払いを免れた場合や、偽造・変造されたテレホンカードで本来支払わなくてはならない通話料の支払いを免れた場合などが該当します。

電子計算機使用詐欺罪と詐欺罪・窃盗罪との違い

電子計算機使用詐欺罪は、詐欺罪(刑法246条)や窃盗罪(刑法235条)と区別が紛らわしい犯罪ですが、欺く対象が「人」か「コンピューター」か、利益取得が「占有移転」を伴うかという2点で区別されます。それぞれの違いを整理すると以下のとおりです。

罪名 欺く対象 得るもの 典型例
詐欺罪 財物または財産上の利益 嘘をついて現金を交付させる、有人改札でキセル乗車
電子計算機使用詐欺罪 コンピューター(電子計算機) 財産上の利益(財物以外) 銀行員による預金データの不正入力、自動改札機を使ったキセル乗車
窃盗罪 (欺罔不要) 財物(占有を移転) 他人のキャッシュカードでATMから現金を引き出す

詐欺罪との違い:欺く対象が「人」か「機械」か

詐欺罪と電子計算機使用詐欺罪の最大の違いは、欺く対象が「人」か「コンピューター」かという点にあります。詐欺罪は人を欺いて錯誤に陥らせ、その人自身が財産を交付(処分)することを処罰します。これに対して電子計算機使用詐欺罪は、コンピューターに虚偽の情報を入力するなどして電磁的記録を不正に作出・利用することを処罰します。

たとえば、駅の有人改札で不正に申告して通過するキセル乗車は、駅員という「人」を欺いているため詐欺罪が成立します。一方、無人の自動改札機で不正な乗車券を読み込ませた場合は、機械を相手にしているため電子計算機使用詐欺罪が成立します。

還付金詐欺もこの違いが分かりやすい事例です。還付金詐欺では、犯人が役所職員を装って被害者にATMを操作させ、被害者は「還付金の受領手続きをしている」と誤信したまま実際には自分の口座から犯人の口座へ送金してしまいます。被害者には「振込をする」という認識すらないため、被害者自身による財産処分行為と評価できず詐欺罪は成立しません。代わりに、ATMという電子計算機に虚偽の情報を与えたとして電子計算機使用詐欺罪が成立します(大阪高判令和4年11月17日)。

詐欺罪そのものの成立要件・欺罔行為の意味・罰則については「詐欺罪とは?成立要件・欺罔行為の意味・罰則・詐欺の種類を解説」もあわせてご確認ください。

窃盗罪との違い:「財物」か「財産上の利益」か

窃盗罪は他人の「財物」(有体物)の占有を移転させる犯罪であるのに対し、電子計算機使用詐欺罪は「財産上の利益」を得る犯罪です。

具体例で見ると、他人名義のキャッシュカードでATMから現金を引き出す行為は、現金(財物)の占有が銀行から犯人へ移転するため窃盗罪となります。これに対して、ネットバンキングで他人の口座から自分の口座へ送金する行為は、現金そのものを手にしていないものの預金債権という財産上の利益を取得しているため、電子計算機使用詐欺罪が成立します。

なお、両罪が成立し、併合罪として処理されるケースもあります。還付金詐欺において、犯人グループが被害者の口座から自分たちの管理する口座へ振込送金させた行為は電子計算機使用詐欺罪、その後ATMから現金を引き出した行為は窃盗罪として、それぞれ別個独立に成立すると判断した裁判例があります(前掲・大阪高判令和4年11月17日)。

不正アクセス禁止法違反との関係

他人のIDやパスワードを盗用してネットバンキングに不正ログインし、他人の口座から自分の口座へ送金した場合には、電子計算機使用詐欺罪と不正アクセス禁止法違反の両方が成立します。両罪は手段と結果の関係に立つため牽連犯(刑法54条1項後段)として処理され、最も重い刑(電子計算機使用詐欺罪の10年以下の拘禁刑)で処断されます。

不正アクセス禁止法違反で成立する5つの罪と、逮捕された場合の流れについては「不正アクセス禁止法で逮捕される5つの罪とは?流れと対処法も解説」をご参照ください。

電子計算機使用詐欺罪の具体例・判例

電子計算機使用詐欺罪は、コンピューターやネットワークの普及に伴って適用範囲が広がってきた犯罪です。銀行員の着服から特殊詐欺、暗号資産の不正移転まで、現代の財産犯の中心的な罪のひとつといえます。代表的な事例と裁判例を以下で整理します。

銀行員による預金データの不正操作(不実の電磁的記録の作出)

電子計算機使用詐欺罪が想定する典型例の一つが、銀行員による着服です。銀行のオンラインシステムを操作する権限を有する行員が、入金事実がないにもかかわらず自己の口座に入金があったとする虚偽データを入力し、預金残高を不正に増加させる行為がこれにあたります(大阪地判昭和63年10月7日)。

預金システムは取引が権限者のみによって行われることを前提としています。そのため権限のない者が入力した虚偽の入金情報は、システムが想定する事務処理目的に反する「虚偽の情報」と評価されます。

還付金詐欺(不実の電磁的記録の作出)

オレオレ詐欺・振り込め詐欺と並ぶ特殊詐欺の代表的手口である還付金詐欺も、電子計算機使用詐欺罪に該当します。役所職員などを装って高齢者に電話をかけ、「医療費の過払金が戻る」などと信じ込ませてATMを操作させ、被害者口座から犯人グループの管理する口座へ送金させる手口です。

被害者は「還付金の受領手続き」と思い込んでいるだけで送金している認識はないため詐欺罪は成立せず、ATMに対して虚偽の情報を与えて被害者口座の預金残高を減少させたとして電子計算機使用詐欺罪が成立します(大阪高判令和4年11月17日)。特殊詐欺は「かけ子」「受け子」「出し子」など役割分担された組織犯罪として摘発されることが多く、同事案でも、出し子をつなぐ役割を担った被告人に、本罪と窃盗罪の共謀共同正犯が認められました。

クレジットカード番号の不正入力(最決平成18年2月14日)

他人のクレジットカード番号を無断でショッピングサイトの決済画面に入力し、電子マネーを購入する行為について、最高裁は電子計算機使用詐欺罪の成立を認めています(最決平成18年2月14日)。同様の論理で、商品の購入の場合にも本罪が成立すると解されています。

クレジットカード決済システムは、名義人本人による利用を前提として、カード番号や有効期限といった情報の入力を求めています。そのため、名義人以外の者がカード情報を入力する行為は、「カード名義人が自ら決済を申し込んでいる」という虚偽の情報を電子計算機に与えたと評価されます。入力されたカード番号や有効期限自体が客観的には正しい情報であっても、本罪が成立する点がこの判例の重要なポイントです。

なお、構成要件①で述べたとおりクレジットカードの磁気ストライプ自体は本罪の客体にはなりませんが、カード情報を入力する行為は本罪の対象となるという整理になります。

キセル乗車(虚偽の電磁的記録の供用)

連続しない区間の乗車券・定期券を併用し、無人の自動改札機を通過することで運賃の支払いを免れるキセル乗車も電子計算機使用詐欺罪にあたります。自動改札システムは「乗車区間に対応した運賃を徴収する」ことを目的としているため、対応しない乗車券を読み込ませる行為が「虚偽の電磁的記録の供用」と評価されます(東京地判平成24年6月25日ほか)。

なお、有人改札で駅員に申告して不正通過した場合は、人を欺いて運賃の支払いを免れているため詐欺罪(刑法246条2項の詐欺利得罪)が成立します。

このように使用する改札の種類で適用される犯罪が変わる点を含め、不正乗車全般の適用犯罪と罰則については「キセル乗車・無賃乗車等の不正乗車は逮捕される?適用犯罪と罰則」をあわせてご確認ください。

変造テレホンカード・プリペイドカードの使用(虚偽の電磁的記録の供用)

通話可能度数を改ざんした変造テレホンカードを公衆電話に挿入する行為(岡山地判平成4年8月4日)や、残度数を改変した内容のプリペイドカードを機器端末に挿入する行為(長野地諏訪支判平成8年7月25日)も、電子計算機使用詐欺罪が成立します。

これらは本罪が新設される直接のきっかけとなった行為類型であり、現在でも電子マネーやICカードの不正利用に応用される論点です。

誤振込された預金の不正送金(山口県阿武町誤送金事件)

2022年(令和4年)に話題となった山口県阿武町の誤送金事件では、町から自己名義の口座へ誤って約4,630万円が振り込まれた男性が、その大半をネットバンキングでオンラインカジノの決済代行業者の口座へ送金した行為について、電子計算機使用詐欺罪で起訴され、懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を受けました(山口地判令和5年2月28日。控訴審の広島高判令和6年6月11日も1審判決を支持して控訴を棄却。被告人は上告し、最高裁で係属中)。

誤振込された預金であっても受取人は預金債権を取得します(最判平成8年4月26日)が、誤振込であることを知りながら正当な権限があるかのように装って送金する行為は、銀行のシステムが予定する事務処理目的に反する「虚偽の情報」を与えたと評価される、というのが裁判所の判断です(参考・最決平成15年3月12日)。

なお、阿武町事件で問題となったオンラインカジノの利用そのものも賭博罪等にあたる違法行為です。詳しくは「オンラインカジノは違法!罰則と逮捕リスク・利用した場合の対処法」をご参照ください。

暗号資産(仮想通貨)の不正移転(最判令和6年7月16日)

近年の重要判例として、暗号資産NEMの不正流出事件に関する最判令和6年7月16日があります。同事件では、何者かが不正に入手した暗号資産取引所コインチェック社の秘密鍵を用いて、ブロックチェーン上の同社管理アドレスから別アドレスへNEMを移転させた行為が問題となりました。

最高裁は、正規の秘密鍵保有者であるコインチェック社がNEMの取引を行うかのような「虚偽の情報」をネットワーク上のサーバ(NISノード)に送信したものとして電子計算機使用詐欺罪の成立を認めました。本判決により、暗号資産の不正移転にも本罪が適用されることが最高裁レベルで確認され、サイバー犯罪における重要な先例となっています。

電子計算機使用詐欺罪の罰則・未遂犯

電子計算機使用詐欺罪の法定刑は、10年以下の拘禁刑です(刑法246条の2)。詐欺罪と同じ重さの刑罰であり、罰金刑は規定されていません。そのため、起訴されて有罪判決を受ければ、必ず拘禁刑が言い渡されます。

なお、拘禁刑は2025年6月1日施行の改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された新たな刑罰です。施行日以降の犯罪行為に対して拘禁刑が適用され、施行日前の犯罪行為や既に確定した判決の懲役刑はそのまま効力を有します。改正前の判例で「懲役」と記載されているものは、現行法上の拘禁刑に相当する自由刑として理解できます。

未遂罪も処罰される

電子計算機使用詐欺罪は未遂罪も処罰の対象です(刑法250条)。実行の着手時期は、虚偽の情報や不正な指令を電子計算機に与える行為、または虚偽の電磁的記録を他人の事務処理の用に供する行為に取りかかった時点と解されています。

たとえば、ネットバンキングの送金画面で不正な振込操作を入力したものの、システム側のエラーで送金が完了しなかった場合などは未遂罪が成立し得ます。

親族相盗例の準用

電子計算機使用詐欺罪には親族相盗例(刑法244条)が準用されます(刑法251条)。配偶者・直系血族・同居の親族との間で本罪が行われた場合は刑が免除され、その他の親族との間では親告罪となります(被害者の告訴がなければ起訴できません)。

ただし、親族関係のない第三者を共犯とする場合や、金融機関など犯人と親族関係にない者が被害者となる場合は親族相盗例の適用がありませんので注意が必要です。なお、詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪は原則として非親告罪である点については「詐欺罪は親告罪ではありません」で詳しく解説しています。

電子計算機使用詐欺罪で執行猶予はつく?初犯の場合は?

電子計算機使用詐欺罪で起訴された場合、執行猶予はどのような条件で認められるのでしょうか。初犯ならつくのか、つく確率はどのくらいなのか、順に見ていきます。

執行猶予がつく条件は?

まず、執行猶予の制度について簡単に説明します。執行猶予とは、有罪判決を受けた場合でも、情状により刑の執行を一時的に保留する制度です。猶予期間中に新たな犯罪を犯さなければ、刑の言い渡しの効力が消滅し、刑務所に収監されずに社会復帰が可能になります。

執行猶予の適用条件は、刑法第25条第1項に定められており、具体的には次のような条件があります。

  • 1.前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない
  • 2.前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日または執行の免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない

そして、上記のいずれかに該当する者が、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けた場合には、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の執行猶予が認められる場合があります。

電子計算機使用詐欺罪でも、3年以下の拘禁刑が言い渡されたケースで上記の条件を満たせば、執行猶予がつき得ます。

執行猶予がつく確率は?

電子計算機使用詐欺罪のみの統計はありませんが、詐欺罪・準詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪を含む「詐欺の罪」全体の裁判所統計が参考になります。

令和6年の司法統計によれば、詐欺の罪で有罪判決が確定した被告人は3,063人で、このうち1,700人(約55.5%)に執行猶予が付されています。2人に1人を超える割合で実刑を回避できている計算になります。

ただし、執行猶予の可否は事件の具体的な事情や被告人の状況に大きく影響されます。したがって、単純に統計データだけで執行猶予がつくかどうかを判断することはできない点に注意が必要です

初犯だと執行猶予はつく?

これまでに犯罪歴がない場合、「初犯」として扱われます。初犯であることは、刑事裁判において有利に働く要素の一つです。加えて、反省の態度や示談の成立などが評価されれば、電子計算機使用詐欺罪においても、執行猶予が付く可能性は高まります。

一方で、初犯だからといって必ずしも執行猶予が付くわけではありません。特に、電子計算機使用詐欺罪のような詐欺事件の場合、次のような事情があると、執行猶予が認められず、実刑判決が下されることがあります。

  • 被害額が高額
  • 犯行が組織的で悪質
  • 複数の余罪が発覚している など

これらのケースでは、初犯であっても刑務所への収監が避けられない場合があります。

電子計算機使用詐欺罪の時効は?

公訴時効は7年

電子計算機使用詐欺罪の公訴時効は7年です。

刑事事件における時効は「公訴時効」と呼ばれます。公訴時効が成立すると、たとえ犯罪行為が明らかになっていても、検察官は起訴を行うことができなくなります。

電子計算機使用詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑と定められています(刑法第246条の2)。刑事訴訟法第250条第2項第4号によると、法定刑の長期が15年未満の拘禁刑である罪の公訴時効は「7年」とされています。

したがって、電子計算機使用詐欺罪の公訴時効は「7年」であり、この期間内であれば、いつ逮捕されても不思議ではなく、起訴される可能性もあります

民事の時効は?

電子計算機使用詐欺罪は刑事事件としてだけでなく、民事事件として不法行為に基づく損害賠償請求の対象となる場合があります。この場合、時効は民法によって規定されています。

民法上の消滅時効は、次のうちいずれか早く到来した方によって完成します。

  • 被害者が「損害」と「加害者」を知ったときから3年(民法第724条第1号)
  • 不法行為が行われた時点から20年(同条第2号)

つまり、電子計算機使用詐欺罪の被害者は、損害の発生や加害者の存在を知ってから3年以内、または行為の発生から20年以内に損害賠償請求を行う必要があります。

なお、民事の時効が成立すると、被害者は加害者に対して損害賠償を請求する法的権利を失います。ただし、時効が成立する前に裁判を起こして請求手続きを進めた場合、時効の完成は阻止されます。

電子計算機使用詐欺事件を起こしたら弁護士に相談

電子計算機使用詐欺事件を起こした場合、早期に弁護士に相談することが重要です。弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • ①逮捕の回避や早期保釈の可能性
  • ②被害者との示談交渉を代行
  • ③捜査・裁判における適切な対応

①逮捕の回避や早期保釈の可能性

電子計算機使用詐欺罪は、被害額が高額で悪質と評価されやすいため、逮捕されるリスクが高い犯罪です。しかし、弁護士に早期に相談することで、逮捕を回避したり、早期の保釈を実現する可能性が高まります

弁護士は、証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを示すための具体的な行動を提案し、逮捕を防ぐ手立てを講じます。仮に逮捕されてしまっても、弁護士が迅速に接見し、勾留請求の却下を求めることで、早期の身柄解放が期待できます。

②被害者との示談交渉を代行

電子計算機使用詐欺は、被害者に金銭的な損失を与える犯罪です。しかし、被害者との示談が成立すれば、刑事手続きにおいて大きな効果をもたらします。

示談が成立している財産犯の場合、不起訴処分や執行猶予付き判決を得られる可能性が高まります。ただし、示談交渉は弁護士が間に入ることで格段にスムーズに進みます。被害者は加害者本人やその家族からの連絡に対して強い警戒心を抱くことがありますが、弁護士が第三者として交渉に臨めば、被害者の警戒心を和らげつつ和解に向けた話を進められます。

③捜査・裁判における適切な対応

弁護士に依頼することで、捜査段階から裁判に至るまで、適切な対応を支援してもらえます

誤った供述や不要な自白が裁判で不利な証拠となる可能性を避けるため、弁護士は黙秘権や供述内容について的確なアドバイスを提供し、不利な状況を回避します。

さらに、検察官に起訴された場合、弁護士は刑事裁判において、犯行の動機や被害回復の状況、再発防止策などを立証し、執行猶予付き判決や量刑の減軽を目指します。適切な弁護活動により、結果を有利に導ける可能性が高まります。

電子計算機使用詐欺罪でお悩みの方は弁護士にご相談ください

電子計算機使用詐欺罪は、コンピューターやATM、ネットバンキング、決済システムを舞台とする幅広い行為に成立する犯罪で、法定刑も10年以下の拘禁刑と決して軽くはありません。しかし、被害者との示談交渉や早期の弁護活動次第で、不起訴処分や執行猶予つき判決を獲得できる可能性は十分にあります。

電子計算機使用詐欺罪は被害額が高額になりやすく、組織的犯罪として捜査されることも多いため、容疑をかけられた段階で逮捕に至る可能性が高い犯罪です。「警察から連絡がきた」「家族が逮捕された」「自分のしたことが罪にあたるか不安だ」という状況であれば、自己判断で動かず、まずは刑事事件に強い弁護士に相談することが、その後の展開を大きく左右します。

当事務所は、これまで多くの詐欺事件・財産事件を取り扱い、不起訴処分の獲得や被害者との示談成立に豊富な実績があります。担当弁護士が依頼者一人ひとりの事情を丁寧にうかがい、見通しと取りうる選択肢を分かりやすくお伝えします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

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刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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