結論から言いますと、原則として慰謝料に課税はされませんが、例外的に税金がかかるケースもあります。また、受け取った側だけではなく、慰謝料を支払った側にも税金がかかることもあります。
そこでこの記事では、離婚問題に強い弁護士が、
- 慰謝料に税金がかかるケース
- いくらから慰謝料に税金がかかるのか
- 慰謝料に税金がかからないようにするための対策
についてわかりやすく解説していきます。
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目次
慰謝料に税金はかかるの?
結論からお伝えすると、離婚して相手方配偶者から慰謝料を受け取った場合、原則としてその慰謝料に対して税金がかかることはありません。非課税であるため確定申告も不要です。
まず「慰謝料」とは、不法行為に基づく損害賠償請求権の一種です。相手方の不法行為によってあなたが精神的損害を被った場合にその損害を慰謝するために支払われる賠償金を「慰謝料」と言います。
通常であれば、相手から金銭支払いを受けた場合には「所得税」や「贈与税」がかかります。
しかし、所得税法によれば「心身に加えられた損害につき支払いを受ける相当の見舞金」については非課税所得であると規定しています(所得税法第9条1項18号、所得税法施行令第30条3号参照)。
なお、離婚の際は、慰謝料の他にも財産分与や養育費の取り決めをすることがありますが、財産分与や養育費についても原則的に非課税となっています。財産分与や養育費に関する税金については以下の記事を参考にしてください。
慰謝料に税金がかかるケースは?
例外的に以下に挙げるようなケースでは慰謝料が税金の対象とされる場合もあります。
慰謝料として相当な範囲を超える場合
離婚に至る原因としては不貞行為が典型的ですが、不貞行為で離婚に至った場合の慰謝料相場はおよそ100万円~300万円程度です。
もちろんこれらの相場はあくまでも目安であって、婚姻期間や子供の有無、不貞行為の悪質性などによって相場以上の額になることもあります。
例えば、婚姻期間36年で、婚姻から10年後に夫が職場の部下と不倫した上に同棲を開始し、その不倫相手との間に子供をもうけ、約20年間妻に生活費も入れず、さらに同棲していた不倫相手以外にも複数の女性と不倫を働くなどしていた事案で、判例(東京地裁平成16年9月14日判決)は1000万円の慰謝料請求を認めています。
しかし、これはレアケースですので、こういった特段の事情がないのに相場からかけ離れた額の慰謝料を受け取った場合には、多すぎると評価された部分について税金が課されることになります。
慰謝料として不動産をもらう場合
慰謝料として譲り受けた不動産の評価額が、社会通念上慰謝料の額としてあまりに高額な場合には、過多の分につき贈与税が課税される可能性があります。
また、不動産を譲渡された側には「不動産取得税」がかかります。「不動産取得税」とは、土地や建物などの不動産を取得した際に、取得した側に対して課税される税金(地方税の一種)です。
さらに、不動産を取得した場合には、一般的に「登録免許税」と「固定資産税」を負担する必要があります。「登録免許税」とは相手方配偶者から自分に対して所有権移転登記をするために法務局に対して支払う税金のことです。「固定資産税」とは、固定資産である不動産の所有者がその資産価値に応じて市町村に収める税金のことです。
慰謝料として不動産をあげる場合
慰謝料の支払いとして不動産を譲渡する場合、、不動産の取得に必要となった金額よりも、離婚時に慰謝料として譲渡した時の不動産の価額が高い場合には、不動産を譲り渡す側に「譲渡所得税」が課される可能性があります。
「譲渡所得税」とは、不動産など財産の譲渡によって得られた利益に着目して課される税金です。
例えば、過去に200万円で購入した土地が離婚時には300万円の評価額になっていたとして、離婚時に配偶者に支払う慰謝料が300万円で決定したとします。この場合、土地の価額が上がっていなかったとすれば、200万円の土地に加え100万円の現金等を慰謝料に充てる必要がありますが、土地の価額が購入時より上がったために土地の譲渡だけで慰謝料の支払いが済むことになります。つまり不動産の譲渡時に100万円の利益を得たことになるため税金がかかるのです。
偽装離婚と判断された場合
離婚に基づく財産分与や慰謝料などについては原則として税金がかからないように配慮されています。
ただし夫婦といえども、高額な金銭の給付は「贈与税」の対象となりますし、一方の配偶者が死亡し相続財産を継承した場合には「相続税」が課されることになります。
しかし、相続税や贈与税を免れようとする場合や、配偶者の一方が債務超過に陥り財産隠しのために他方の配偶者に財産を移転しようとする場合などには、離婚意思がないとして離婚自体が無効であると判断される可能性もあります。
このような場合には、移転された財産のすべてに税金が課される可能性もあります。
離婚の慰謝料で税金がかかるのはいくらから?
離婚の慰謝料に税金がかかってくるのは具体的にはいくらからなのでしょうか。
贈与税の基礎控除は「110万円」です。贈与税は1年間の贈与の合計額を対象として算出されます。そのため慰謝料として「相当な範囲を超える」金額から基礎控除110万円を控除した金額が贈与税の対象となります。
例えば、300万円が慰謝料額として妥当と判断されるケースで1000万円の慰謝料を受け取っていた場合、「1000万円-300万円=700万円」が相当な範囲を超える金額です。そして700万円から基礎控除110万円を差し引いた590万円が贈与税の対象となります。
なお、贈与税に関しては、「婚姻期間が20年以上」の夫婦で、「居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭」の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで配偶者控除が受けられるという特例があります。これは「配偶者控除」ですので離婚が成立する前に慰謝料や財産分与として不動産を贈与する場合に適用されます。したがって、離婚前に慰謝料として不動産を贈与する場合には2110万円までは贈与税はかからず非課税と扱われることになります。
慰謝料で税金がかからないための対策
現金で受け取る
慰謝料として不動産を譲り受けると、先述の通り、「不動産取得税」や「登録免許税」、「固定資産税」を支払う必要が生じます。場合によっては「贈与税」の対象とされる可能性もあります。
また、不動産を譲渡した側にも譲渡所得税がかかることがありますので、「税金を支払わなくてはならないから支払う慰謝料の額を減額して欲しい」と要求される恐れもあります。
そのため慰謝料は不動産ではなくなるべく「現金」で受け取るようにしましょう。
離婚協議書を作成しておく
離婚原因が、配偶者の不貞行為であった場合の他、DVやモラハラ、悪意の遺棄があった場合なども、不法行為にもとづく慰謝料請求が可能です。
しかし、たとえ有責配偶者から慰謝料としてお金を受け取った場合でも、慰謝料として受け取ったことを証明できないと、税務当局から贈与を疑われて贈与税が課税される恐れがあります。
そのため、離婚の際は「離婚協議書」を作成し、後で税務調査があった場合に備えて慰謝料額を明記しておくようにしましょう。また、その離婚協議書を公正証書にしておくことで、慰謝料の未払いがあった場合に強制執行を容易にすることもできます。
離婚協議書の書き方とサンプル|公正証書にするまでの流れも解説
慰謝料の税金で悩んだら税理士に相談を
今回は離婚時に支払われた慰謝料や、離婚後に受け取っている養育費に税金がかかる場合・かからない場合について解説してきました。
ただし、慰謝料や養育費が社会通念上「相当な範囲」か否かといった判断には法律や税金についての専門的な知識が必要となります。また税金の種類に応じて利用できる控除の内容も変わってきます。
ご自身のケースで慰謝料に税金がかかるのか、かかるとしていくら課税されるのか、税金がかからないようにする方法はないのか、といった点についてご不安な方は是非税理士に相談することをおすすめします。
適切に税理士を入れて手続きをした方が、結果として全体のコストを押さえることができるケースもあります。離婚時の慰謝料など税金問題でお悩みの場合は税理士に依頼しましょう。
また、慰謝料や養育費の請求については弁護士が専門分野ですので、慰謝料や養育費の額に納得がいかない、増額または減額交渉をしてもらいたいといった場合には弁護士に相談しましょう。
弊所では、離婚に伴う慰謝料請求や財産分与請求、養育費請求についての実績と経験があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でサポートしますのでまずはご相談ください。相談する勇気が解決へと繋がります。
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