
ストーカー被害の慰謝料相場は、これまでの裁判例からすると数十万円~200万円程度です。ただし、示談金として請求する場合は、慰謝料に加えて治療費や引越し費用なども上乗せできるため、実際に受け取れる金額はケースによって大きく異なります。
「ストーカー被害に遭っているけれど、慰謝料はどれくらい請求できるのだろう」「示談と裁判、どちらで請求すべきか分からない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ストーカー問題に強い弁護士が、慰謝料・示談金の相場から請求方法まで分かりやすく解説します。
- ストーカーの慰謝料相場と示談金との違い
- 慰謝料が増額・減額される具体的な要素
- 実際に慰謝料が認められた4つの裁判例と認定額
- 示談交渉と損害賠償請求訴訟それぞれのメリット・注意点
- 弁護士に依頼した場合の費用相場
なお、ストーカー被害への慰謝料請求について早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をご利用ください。
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ストーカーの慰謝料相場・示談金はいくら?
慰謝料の相場は?
いわゆる「ストーカー被害」に遭った場合、被害者の方は加害者に対して「精神的苦痛を補填するため」の慰謝料を請求できます。
ストーカーを理由とする慰謝料の相場としては、これまでの裁判例からすると「数十万円~200万円」前後が多い印象ですが、ストーカー行為の悪質性が高く被害の程度が大きい場合にはこれ以上認められる場合も考えられます。また、ストーカー行為が行われた期間や加害者と被害者の関係性、被害者の落ち度の有無などによっても慰謝料額は変わってきます。
ただストーカー被害の金銭的解決の事例は、当事者同士の話し合いによって任意に示談交渉で進められることが多く、裁判所の判決まで進み、参照できる裁判例自体が少ないという傾向はあります。そのため、ストーカーの慰謝料相場はまだ固まっておらず、上記相場はあくまでも目安として考えてください。
示談金相場はいくら?
「慰謝料」と「示談金」の違いはどこにあるのでしょうか。
まず「慰謝料」とは、加害者のストーカー行為によって被害者が被った「精神的損害」を補うために請求することができる損害賠償請求権のひとつです。
これに対して「示談金」とは、加害者と被害者が和解交渉をした結果、加害者が支払うことになる金額のことを指します。つまり、示談金には、慰謝料に加え、それ以外の別の費目の損害賠償金も含まれているということです。
具体的には、慰謝料に加え、示談金として以下のような項目を含めることができます。
- 通院、治療費:精神障害を負った場合、治療や通院にかかる費用
- 引越し費用:加害行為のせいで引っ越さざるを得なくなった場合の引越し費用
- 休業損害:加害行為のせいで働けなくなった期間、収入が減少することによる損害
- 弁護士費用:弁護士に解決を依頼した場合に必要となった費用の一部 など
したがって、ストーカーの示談金の相場は、慰謝料相場である「数十万~200万円程度」に上記項目の金額を加えたものとなるためケースバイケースとなります。
また、加害者が逮捕されている場合など、刑事手続きが進んでいる場合には、加害者(の代理人弁護士)から被害者に対して示談の申し入れがされる可能性が高いです。示談とは双方が納得して合意する性質の契約ですので、示談金の金額には下限や上限についてルールがあるわけではありません。加害者が告訴を取り下げてもらいたい場合や前科が残ることを回避したい場合には、相場よりも高額な示談金を申入れて来る場合もあります。また示談交渉次第では、加害者に高額な示談金の支払いを約束させることができる場合もあります。なお、ストーカー被害を理由に転居を検討している方は「ストーカー被害で引越しする時に引越先がバレないための注意点まとめ」もあわせてご確認ください。
ストーカーの慰謝料を増減させる要素は?
それではどのような事情があれば、ストーカー被害の慰謝料の算定に影響を与えることになるのでしょうか。ここでは慰謝料の増減に影響を与えると考えられる事情を紹介しましょう。
慰謝料が増額される要素
ストーカー行為の悪質性が高い
ストーカー行為の悪質性が高い場合には、精神的苦痛の程度も大きくなると考えられ、慰謝料が高額に算定されやすくなります。
例えばストーカー行為が、数か月、数年にわたる場合や、警察などから再三にわたって注意を受けそのたびに繰り返さないことを約束している場合などは悪質と判断できるでしょう。
被害者の被害の程度が大きい
ストーカー行為によって被害者が大きな被害を被ったと判断される場合には慰謝料の金額も大きくなる可能性があります。例えば、トラウマやPTSDなど精神障害を負った場合やストーカー行為から逃げようとして転倒し大けがを負った場合などには被害の程度が大きいと判断されるでしょう。
優越的な地位を濫用している場合
加害者が被害者に対して優越的な地位を濫用してつきまといなどストーカー行為をする場合にも、悪質性が高いと判断されるおそれがあります。例えば、学校の先生と生徒の関係、会社の上司と部下の関係などの場合には、被害者が逃れられない関係を悪用した悪質な行為であるといえるでしょう。
被害者に責められる点がない場合
加害者側の一方的な恋愛感情や憎悪の感情などに基づいてストーカー行為をする場合には被害者にはまったく落ち度がないことになります。そのような場合も慰謝料が高く算定される傾向にあります。
慰謝料が減額される要素
増額される要素とは逆に、ストーカー行為の悪質性が低く被害の程度も小さい場合や、被害者にも落ち度が認められる場合には慰謝料が減額される可能性があります。
悪質性が低く被害が小さいケースとは、一概には言えませんが、例えば、ネット上だけのつきまといで実際に家の周辺をうろついたり被害者の後をつけまわすようなことをしない場合がそれにあたると言えます。また、電話やメール等で連絡を寄こしてくる頻度が少なく、その内容も、卑猥な言動や脅迫めいたものでなければ悪質性は低いと考えられます。
被害者にも落ち度があるケースとは、例えば、加害者の恋愛感情を利用して金品を受け取っておきながら用済みになったらバッサリと連絡を絶つ、あるいは理由を告げずに一方的に別れを切り出すようなケースが該当する場合があります。
ストーカーで慰謝料請求が認められた裁判例
荷物を届けてもらった配送業者から違法なつきまといをされた事例
事案の概要
配送業者である加害者が女性宅に配達をし、その後再度自宅を訪れ電話番号を手渡し複数回にわたり電話をかけ再度自宅を訪れた事案です。加害者は「昔付き合っていた子に似ている」「ご主人は何時に帰ってくる?」「よかったらお茶を飲もう」などと誘っていました。
慰謝料額
「100万円」の慰謝料が認定されました。
算定要素
- 女性の自宅を訪問してその後5回にわたり電話をかけている
- 加害者のストーカー行為により、女性は強度の不安・恐怖・外出困難・不眠・精神過敏などの症状が出現持続し、「急性ストレス障害」と診断されている
- 他方、加害者の行為自体は「電話」をかけ、「自宅を訪問」したのみであり、身体接触もなく侵害態様は強度のものではなかった
(東京地方裁判所平成16年10月14日判決)
風俗店に勤務していることをSNSなどで拡散された事例
事案の概要
デリヘル店で勤務していた女性が、自宅マンションの集合ポストに「風俗店の従業員である」というビラをまかれ、SNSに女性の顔写真や本名、源氏名、実家の所在地が分かる動画を投稿された事例です。
慰謝料額
「50万円」の慰謝料が認定されました。
算定要素
- マンションの住民やインターネット上で風俗店で勤務していることや本名・住所という情報を公開することはプライバシー権侵害の程度が高い
- SNSに投稿することは不特定多数人が閲覧することができるようになりインターネット上で際限なく拡散される危険性が高い
- 投函されたビラのうち実際に本件マンション住民に閲読されたものは一部にとどまる
(東京地方裁判所令和3年9月27日判決)
大学教授が女子学生に好意を抱きつきまとった事例
事案の概要
大学教授が学生に対して自宅に呼び出したりつきまとう等した行為が不法行為に該当すると判断された事例です。
慰謝料額
「250万円」の慰謝料が認定されました。
算定要素
- 試験を実施すると称して女性を自宅に呼び寄せたうえで婚姻届を示して婚姻を迫った行為は教員としての地位を利用して女性に対して性的性質の要求を行った不法行為にあたる
- 女性と連絡が取れなくなると1日に数十回携帯電話に電話をかけ自宅を訪問した
- 女性は恐怖感から神経症になり相当期間学校に登校できなくなったため精神的苦痛は甚大なものであった
- 本件は教員である加害者が学生である被害者に対する優越的な地位を利用して行ったという悪質なものである
(さいたま地方裁判所平成15年2月26日判決)
和解成立後も同様なストーカー行為を繰り返した事例
事案の概要
この事例は飲食店を営む女性に、タクシー運転手である加害者がストーカー行為を繰り返し、和解成立後も同様な行為を繰り返した事例です。
慰謝料額
「300万円」の慰謝料が認定されました。
算定要素
- 加害者の行為は、女性の生活の平穏を害し、営む店舗を閉店することを余儀なくさせたばかりか、不安感・恐怖感等の多大な精神的苦痛を与える違法な行為であった
- 当時、ストーカー規制法が成立しストーカー行為の違法性が社会的に強く意識されていた
- 加害者は自己の行為を是正する機会を与えられ、和解を成立させながらこの後もストーカー行為を継続していることは強い違法性を有する
(大阪地方裁判所平成12年12月22日判決)
ストーカーの慰謝料を請求する方法
示談交渉
示談交渉とは、当事者同士で話し合いにより解決する方法です。任意の話し合いで被害者が納得できる内容で解決できるのであれば、後述する「訴訟」に比べて時間や裁判費用もかからず最も簡便に事件を終わらせることができます。
また、訴訟では裁判所が慰謝料額を決定しますが、示談交渉であれば、相場以上の慰謝料を受け取れる可能性があります。ストーカー行為を警察に被害申告されれば、場合によっては加害者は逮捕される可能性もありますので、被害届や告訴状を捜査機関に出さないことを条件として、ある程度高額な慰謝料額でも示談に応じる加害者もいます。
示談書には示談金支払いの約束や、二度と被害者に接触しないことを約束させる遵守事項を設けることも可能です。警察への被害申告についての具体的な流れは「警察にストーカーの相談をしたら本当に助けてくれるのか?対応を解説」で詳しく解説しています。
損害賠償請求訴訟
話し合いでは解決できない場合、損害賠償請求訴訟を提起して裁判所に慰謝料(その他、上記でお伝えした引越し費用、通院治療費などの財産的損害)を認定してもらうこともできます。裁判手続では両当事者から証拠に基づく主張・立証が行われますので、ストーカー行為を立証できる証拠を確保することが重要です。
裁判に勝訴して賠償命令が下されれば、加害者が支払わなかった場合に、給与や不動産などの資産に差し押さえをして強制的に回収することも可能となります。
ただし、訴訟手続きは一般の方には難しいため弁護士に依頼される方が多いです。その場合、弁護士費用(相場は後述します)がかかりますが、ストーカー加害者には弁護士費用として請求認容額の1割程度しか請求できません。
例えば、裁判で50万円の慰謝料が相当と判断された場合は、その1割である5万円を弁護士費用として合計55万円を請求できる計算になります。ここで実際に弁護士に支払った費用を総額30万円と仮定すれば、55万円-30万円=25万円が依頼者にとっての経済的利益となります。しかし、裁判で20万円の慰謝料が相当と判断されれば、22万円-30万円=-8万円、つまり、訴訟を起こしたがために8万円の損失が生じるという事態に陥ってしまうのです。
このように、相手から受け取れる損害賠償の額よりも弁護士費用が上回ってしまうリスクもありますので、弁護士によく相談の上、経済的利益が見込めるのかを確認しましょう。弁護士に依頼した場合の具体的なサポート内容については「ストーカー被害を弁護士に相談すると何をしてくれる?注意点は?」をご参照ください。
ストーカーへの慰謝料請求を弁護士に依頼した場合の費用相場
弁護士にストーカーへの損害賠償(慰謝料)請求を依頼した場合の相場は以下となります。
| 弁護士に依頼する内容 | 弁護士費用の相場 |
| 示談交渉 | 着手金10万円~20万円+経済的利益の10%~20%の報酬 |
| 損害賠償請求訴訟 | 着手金10万円~30万円+経済的利益の10%~20%の報酬 |
慰謝料請求と並行して身の安全を確保するための具体的な方法については「ストーカー被害に遭ったらすぐすべき8つの対処法と対策」で紹介しています。
ストーカー被害の慰謝料請求でお悩みの方は弁護士にご相談ください
ストーカー被害の慰謝料は数十万円~200万円が相場ですが、示談金として治療費や引越し費用などを含めればさらに高額になる可能性があります。適切な金額で解決するためには、示談交渉と訴訟のどちらが有利かを見極めたうえで手続きを進めることが重要です。
弁護士に依頼すれば、加害者と直接対面することなく示談交渉や訴訟を進めることができます。ストーカー被害者の方にとって、加害者との接触は恐怖や不安を伴うものですが、弁護士が代理人として交渉窓口となることで、手続き面の負担だけでなく精神的な負担も大きく軽減されます。
「つきまといが続いていて慰謝料を請求したい」「加害者側から示談を持ちかけられたが応じるべきか分からない」といった状況でお困りの方は、おひとりで悩まず弁護士にご相談ください。ストーカー被害は時間が経つほど深刻化するおそれがあり、早めの対応が解決への近道となります。
弊所はストーカー被害の慰謝料請求やつきまとい行為への警告・交渉など、数多くのストーカー問題を解決してきた実績があります。全国どこからでも24時間無料でご相談いただけますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者
ストーカー被害の解決に豊富な実績を持つ。元交際相手からのつきまとい、ネットストーカー、職場でのストーカー被害など、警察に相談しても動いてもらえないケースにも弁護士として毅然と対応。「報復が怖い」「大事にしたくない」という被害者の心情に寄り添い、穏便かつ確実にストーカー行為を止めさせることに全力を注いでいる。

