セラピストとメンズエステ店がグルになって、罰金等の名目で金銭を脅し取る、いわゆる「美人局」についての相談が法律事務所へは多く寄せられています。
この点、美人局は恐喝罪などの犯罪行為にあたるため、警察に相談して事件化してもらうことも可能です。しかし、令和5年の刑法改正により、セラピストの同意なくお客がセラピストの身体に触れるなどした行為が罪に問われる可能性もあるのです。
そこでこの記事では、メンズエステトラブルに強い弁護士が、
- メンズエステでの美人局の手口
- メンズエステの美人局は警察に相談すれば解決するのか
- メンズエステの美人局を内密に解決するにはどうすべきか
などについて詳しく解説していきます。
なお、既にメンズエステで美人局被害に遭われてお困りの方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
メンズエステで美人局はある?
そもそも、メンズエステ店で美人局(つつもたせ)トラブルは発生しているのでしょうか。
前提としてメンズエステ店は、性風俗店ではなく性的なサービスを提供していないため、「美人局被害は発生しにくいのでは?」と思われる方が多いでしょうが、実際には異なります。
近年、女性スタッフにわいせつな行為を行ったとして因縁をつけ、金銭を脅し取ろうとして、恐喝、恐喝未遂の疑いでメンズエステ店の経営者や女性スタッフが逮捕された事件があります。
具体的な事件の内容として、事前に「女性スタッフへのタッチ禁止」「違反行為は100万円請求」といった内容の誓約書にサインをしていた顧客が、露出度の高い恰好をした女性従業員に密着されながらサービスを受けてたものの、従業員の体に触ったところエステ店の責任者の男性らが押しかけてきたというものがあります。
この事件でメンズエステ店の顧客は、店側から規約違反行為であることや、警察に通報するなどと脅され、複数名の顧客が合計数百万円を脅し取られています。
参考:「触ったら100万円」の誓約書、違反客に恐喝容疑 エステ店摘発:朝日新聞デジタル
メンズエステでの美人局の手口は?
悪質なメンズエステ店で行われる美人局の手口には、以下のようなものがあります。
- ①誓約書の内容をろくに説明もせずサインを求めてくる
- ②セラピストがきわどいサービスで誘惑してくる
- ③サービス終了後に男性スタッフが登場し罰金を請求される
以下、それぞれについて解説していきます。
①誓約書の内容をろくに説明もせずサインを求めてくる
メンズエステを利用する際には、トラブル防止のために注意事項などが書かれた誓約書にサインをするように求められることも少なくありません。
そして、誓約書には規約に違反した場合には違約金の支払義務が発生することが記載されていることがあります。顧客側の悪質行為を抑止するために、高額な違約金が記載されている場合もあります。
そのため、違約金や罰金などを誓約書に記載していれば、直ちにその店は悪質メンズエステ店であるとは限りません。
ただし、悪質な店は、新規客に誓約書の内容、特に違約金や罰金に関して十分な説明をせずにサインを求めてくる可能性があります。例えば、美人局を行おうと企んでいるメンズエステ店の場合には、非常にうす暗い部屋に通され、記載されている文字が見えない状況下で、その誓約書にサインをするように要求することがあります。
女性スタッフの身体に触れた場合には、「罰金100万円」を支払えなどと法外な違約金が記載されていることに気づかないまま書面に合意してしまう方も少なくありません。
②セラピストがきわどいサービスで誘惑してくる
誓約書にサインをしていざエステサービスの提供を受ける段階になると、セラピストがきわどいサービスを行い誘惑してきます。
施術室で待っていると、露出度の高い衣装やセクシーな衣装を着たセラピストが現れます。メンズエステ店のセラピストが露出度の高い衣装であったとしても、直ちに問題があるわけではありませんが、セラピストが全裸の場合には危機感を持ちましょう。
なぜなら一般メンズエステ店で性的なサービスを提供する行為は、違法行為に該当することになるからです。
そして、いざ施術が開始すると、セラピストが必要以上に胸や脚を密着させてきたり、執拗に鼠径部や下半身のマッサージを行ったりして顧客を誘惑してきます。
執拗に性的なサービスを受けると、顧客側も「少しだけなら身体に触れても問題ないだろう」などと考え、胸やお尻などセラピストの身体に触れてしまうことがあります。
③サービス終了後に男性スタッフが登場し罰金を請求される
セラピストからの誘惑に負けて、顧客の側からセラピストの身体に触れてしまうと、メンズエステ店の狙いどおりになってしまいます。
セラピストが顧客からの接触を確認した場合には、セラピストがメンズエステ店のスタッフや責任者に何らかの方法で報告し、施術室に男性スタッフが入ってきます。施術が終わった後に店の責任者から別室に通されるというパターンもあります。
そして、店側はセラピストから身体を触られたという報告を受けたことを伝え、「接触は誓約書に禁止行為としっかりかかれている」「違約金〇〇万円を支払ってもらう必要がある」などと言われてしまいます。誓約書にサインをしていた場合であっても、このように言われた段階で初めて禁止行為の存在や違約金の約定について認識するというケースもあります。
このような対応をする店側のスタッフは強面(こわもて)・大柄な男性である可能性が高く、顧客が困っていると、「どう責任とるつもりだ」「約束通り罰金を支払え」など乱暴な言葉づかいで金銭を要求してきます。警察に通報する・家族や職場に報告するなどと脅してくる場合もあります。
メンズエステ店側の脅しに屈してしまい、持ち金を全額渡してしまったり、不足分を消費者金融から借金させて違約金を支払わせたりすることによって、被害を受けてしまう事案が発生しています。
具体的な被害事例については、メンズエステ詐欺の相談事例と適切な対処法を弁護士が解説で紹介されていますのでご覧になってください。
メンズエステでの美人局は警察に相談すれば解決?
美人局は犯罪なので警察に相談可能
メンズエステ店の美人局行為によって成立する可能性がある犯罪は以下のとおりです。
- 恐喝罪:10年以下の懲役
- 強盗罪:5年以上の有期懲役
- 脅迫罪:「2年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」
- 詐欺罪:10年以下の懲役
- 強要罪 3年以下の懲役
上記の5つの犯罪のうち、脅迫罪以外の犯罪は「未遂」も処罰されます。このように、美人局の場合には、刑事犯罪が成立する可能性があるため、警察に相談することができます。
警察に刑事告訴・被害届を提出した場合には、メンズエステ店が検挙・摘発される可能性があります。
なお、刑事事件として立件された場合、被疑者となった店側の人間は、逮捕や不起訴を獲得するために被害者である顧客に示談を申し入れてくる可能性もあります。
令和5年の刑法改正により客の行為が罪に問われる可能性も
2023年(令和5年)7月13日から施行されている改正刑法により、メンズエステ店の顧客の行為が「不同意わいせつ罪」や「不同意性交等罪」に問われる可能性があります。
一定の原因のもとで、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」、わいせつな行為・性交等をした場合には、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立します(刑法第176条1項、177条)。
不同意わいせつ罪や不同意性交等罪の成立要件となる一定の原因として次のものが明記されています(刑法第176条1項1号〜8号)。
- 暴行若しくは脅迫
- 心身の障害
- アルコールまたは薬物の影響
- 睡眠その他の意識不明瞭
- 同意しない意思を形成、表明または全するいとまの不存在
- 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕
- 虐待に起因する心理的反応
- 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮
このように、メンズエステ店の顧客が暴行や脅迫を用いない場合であっても、相手の同意なくわいせつな行為をした場合には、罪に問われるおそれがあります。たとえば、メンズエステの顧客が、拒否する間を与えずに不意打ちでセラピストの体に触るなどのわいせつ行為をした場合は「同意しない意思を形成、表明または全うするいとまの不存在」にあたります。また、セラピストは顧客がリラクゼーションや施術を受けに来店していると考えているわけですから、突然わいせつな行為や性交等を迫られれば、「予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕」にあたるでしょう。
不同意わいせつ罪が成立した場合には、「6月以上10年以下の拘禁刑」が科されることになります。また、不同意性交等罪が成立した場合には、「5年以上の有期拘禁刑」が科されることになります。
警察に相談に行くことで自ら犯した罪も発覚するリスクもあるため、その点には注意しておく必要があります。
メンズエステでのわいせつトラブルで逮捕されるのか、逮捕されるとどうなるのかについては、メンズエステトラブルの対処法は?警察から電話があったら?弁護士が解説をご覧になってください。
実際に客が逮捕された事例もある
実際にメンズエステ店などの顧客が性犯罪の疑いで逮捕された事例もあります。
まず、リラクゼーションサロン店で、施術をしていた女性従業員に性的暴行を加えたとして、客の男が逮捕された事案があります。リラクゼーションサロン店に客として訪れ、施術中に30代の女性従業員に無理矢理キスをしたり性交したりするなどの性的暴行を加えたとして、40代の男性が不同意性交等の疑いで逮捕されています。警察によると、店側からの通報を受けて駆けつけた警察官が事情を聴取したところ、男性が容疑を認めたため、その場で現行犯逮捕されています。
参考:リラクゼーションサロンで施術中の女性従業員にわいせつな行為をしたか 不同意性交の疑いで40歳の理容師の男を逮捕
また、エステ店で20代の女性従業員の服の中に手を入れ上半身を触ったとして、不同意わいせつの疑いで20代の会社員の男性が逮捕された事案もあります。
この事案では、理由は明らかにされていないものの、検察官は不起訴処分の判断をしています。
このように、結果として不起訴となる場合であっても、メンズエステ店で不同意わいせつ・性交等事件を起こした場合には、逮捕される可能性があります。
参考:女性エステ店員をマットに押し倒し、服の中に手を入れ上半身触る 容疑の29歳男を逮捕
メンズエステでの美人局を内密に解決したいなら弁護士に相談
まず、弁護士に依頼することで、メンズエステ店側と直接やり取りする必要がなくなります。
弁護士が代理人として依頼を受けて以降は、店側にその旨を連絡するため、その後一切依頼者が店側とやり取りをする必要はなくなります。
また、弁護士に相談することで、店側からの脅しや金銭要求をやめさせることができます。
悪質なメンズエステ店の場合には、違約金を支払わないと家族や会社に報告する・家族に肩代わりしてもらう・個人情報を晒すなどという脅し文句でお金を要求してくることがあります。
弁護士に依頼して店側と連絡・交渉してもらうことで、上記のような脅しを止めることができます。店側が脅迫してくる場合には、弁護士が店側に対して警告し、適切な示談をすることで解決を図ります。
弁護士が示談交渉する場合には、当然その内容についても法的な観点からチェックすることになるため、依頼者に著しく不利になる条項などを排除することができます。また示談を成立させる場合、警察に被害届や告訴状を提出しない旨の同意を取り付けられる場合もありますので、その場合には刑事事件化するリスクを最小化させることも期待できます。
もちろん弁護士は依頼人に対して守秘義務を負っていますので、基本的に第三者にバレることなく内密に示談交渉を進めることができます。
メンズエステで美人局被害に遭わないための対策
最後に、メンズエステでの美人局被害を予防する目的でこの記事を読まれている方のために、美人局被害にあわないための対策について解説します。
口コミで情報収集してから店を利用する
メンズエステ店で美人局被害に遭わないようにするためには、事前に情報収集してから利用することが重要です。
メンズエステ店については、ポータルサイトや地図アプリなどに、当該店舗の口コミや評判がコメントされていることが少なくありません。また、インターネット掲示板には、地域別に個別のメンズエステ店に関する意見や評価に関するスレッドが存在している可能性もあります。
このように、利用を検討しているメンズエステ店については、事前にインターネットで情報を収集することで、健全に営業されているお店なのかどうかを確認しておくことができます。
なお、オープンして間もない店舗の場合には、まだ口コミや評価が十分に溜まっていないことがあるため、悪質なメンズエステ店か否かが判断できない場合には利用を控えるべきでしょう。
新規客に誓約書の内容を説明しない店は疑う
前述のとおり、美人局を行おうと企んでいるメンズエステ店は、新規顧客であるにもかかわらず誓約書や利用規約の内容を十分に説明しないという傾向があります。
実際に薄暗い部屋に通されて誓約書に書かれた内容が読みづらい・小さく大量の文字が並んでいてすべてに目を通すことができないなどの場合には、絶対にサインをしてはいけません。
「書面に記載された内容が読めるようにしてほしい」「内容を説明してほしい」と店側に依頼することもひとつの手です。誓約書などにサインを求められた場合には、事前にその内容をしっかりと確認したうえでサインをする必要があります。こちら側に非常に不利な内容や、法外に高額な違約金や賠償金の支払い義務が記載されていないかを確認してください。
他方で、店側の態様が怪しいと感じた場合には、サインを拒否して退店することも大切です。
店側の雰囲気や態様に違和感や疑問を抱いた場合には、サービス利用料を支払ってでも、急用や体調を理由に退店することも検討してください。代金を支払いたくないという気持ちは十分に理解できますが、美人局の被害に遭って数百万を脅し取られるよりはましです。危険を察知した場合には、一刻も早くその店から脱出することが何よりも重要でしょう。
誘惑に負けてセラピストに触るのは絶対にNG
通常、顧客の側からセラピストの身体に触れることは、メンズエステ店では禁止されています。
健全な営業を行っているメンズエステ店であっても、顧客がセラピストの胸やお尻などを触った場合には、トラブルに発展する可能性があります。そして、悪質なメンズエステ店では、露出度の高い衣装や性的なサービスを積極的に行って、性的に興奮した男性顧客がセラピストの身体に触れるように誘導してきます。
そもそも、顧客側がセラピストの身体を触らなければ美人局は成立しませんが、基本的にメンズエステ店では密室の施術室でサービスを受けるため、少しの接触でも言いがかりをつけられてしまうリスクがあります。
美人局行為を行うような悪質なメンズエステ店の場合には、積極的に顧客がセラピストの身体に触れたくなるように働きかけてくるため、誘惑に負けて相手に触ってしまうことがないように注意が必要です。
まとめ
以上、悪質なメンズエステ店が行う美人局の手口や、美人局被害を回避するための方法などについて解説しました。実際にメンズエステ店の従業員の身体に触れている場合には、顧客側も何らかの刑事責任に問われる可能性があります。
そこで、メンズエステ店で美人局トラブルに遭った場合には、弁護士に相談して対処してもらうことを検討してください。弁護士に依頼して、店側と話し合いや交渉を行ってもらうことで、大ごとになる前に内密に解決できる可能性があります。
当事務所は、メンズエステでのトラブルを、家族や会社に知られることなく、穏便かつ迅速に解決することを得意としております。弁護士が親身になって誠実に対応し、依頼者を全力で守ります。誰にも知られずにメンズエステでのトラブルを解決したい方は、ぜひ当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。
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