業務上横領の初犯は執行猶予?それとも実刑?量刑傾向を解説

「会社のお金に手を付けてしまった。初めてのことだが逮捕されてしまうのだろうか」「業務上横領は初犯なら執行猶予で済むのか、それとも実刑になるのか」といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

業務上横領が初犯の場合、刑事処分は大きく分けて不起訴・執行猶予・実刑の3つに分かれます。初犯であることは有利な要素として働くため、初犯であれば執行猶予がつきやすい傾向にありますが、これは絶対ではありません。被害者と示談ができていない場合や被害額が大きい場合などには、初犯であっても実刑となる可能性があります

この記事では、業務上横領事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点についてわかりやすく解説します。

  • 初犯でも逮捕されるのか
  • 初犯の量刑は執行猶予か実刑か
  • 執行猶予と実刑を分ける裁判例と統計
  • 不起訴や逮捕回避のためにすべきこと

なお、事件のことでお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期の対応が結果を左右します。

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業務上横領は初犯でも逮捕される?

そもそも業務上横領とは?

「業務上横領罪」とは、「業務上自己の占有する他人の物を横領した」場合に成立する犯罪です(刑法第253条参照)。

会社からお金の管理を委託されている経理部の社員が、自己の占有する会社のお金を勝手に持ち出したり、その人個人のために流用したような場合が業務上横領罪の典型的なケースです。

業務上横領罪の法定刑は、10年以下の拘禁刑です

※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。

罰金刑が定められていませんので、刑事裁判で有罪となると、執行猶予がつかない限り実刑となり刑務所に収監されて服役することになります。

なお、自分が占有・管理していない会社の物を勝手に持ち出して着服した場合は業務上横領罪ではなく窃盗罪が、任された仕事に背く行為で会社に損害を与えた場合は背任罪が問題となります。横領罪との違いなど詳しくは「背任罪とは?成立要件・時効・横領罪との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。

業務上横領の成立要件など詳しくは、業務上横領罪とは?逮捕されないケースと構成要件・事例・判例をご覧になってください。

初犯でも逮捕される?

業務上横領が初犯という場合でも、逮捕されることはあります

特に、

  • 長年にわたって横領を繰り返してきた場合など常習性が認められる場合
  • 被害金額が多額となることが見込まれる場合
  • 逮捕前に不出頭を繰り返してきた場合
  • 逮捕前の取調べで犯行を否認している場合
  • 共犯者がいる場合

には、逮捕される可能性が高いといえます。

そもそも逮捕は、捜査機関が犯人に「罪証隠滅(証拠を隠したり壊したりすること)のおそれ」、「逃亡のおそれ」があると認め、裁判官が捜査機関の請求に基づいて逮捕状を発付したときに行われます。

上記であげたケースはいずれも、捜査機関によって罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがあると判断され、逮捕状が発付されやすいケースにあたります。

もっとも、業務上横領事件で警察が捜査を始めるきっかけは、被害を受けた会社からの被害届や刑事告訴であるケースがほとんどです。横領が社内で発覚しても、会社が被害申告をしなければ警察が事件を把握することは通常ありません。「横領してもすぐには捕まらない」といわれるのはこのためで、裏を返せば、被害申告の前に会社と示談できるかどうかが逮捕回避の分かれ目になります。

また、罪証隠滅や逃亡のおそれが小さいと判断された場合には、逮捕されないまま在宅で取調べを受ける「在宅事件」として捜査が進むこともあります。在宅事件になったとしても、起訴するかどうかを最終的に検察官が決めることに変わりはありません。

もし、逮捕を免れたい場合は、速やかに弁護士に相談、依頼し、逮捕を免れるための対策を考え、実行に移す必要があります。

逮捕された後の流れと身柄拘束の期間

業務上横領で逮捕された後の手続きの流れは、初犯かどうかにかかわらず刑事訴訟法で決まっています。

  1. 逮捕後、警察の取調べを受け、48時間以内に事件と身柄が検察官へ送られる(送致)
  2. 検察官は、送致を受けてから24時間以内に勾留(引き続きの身柄拘束)を請求するかどうかを判断する
  3. 裁判官が勾留を認めると原則10日間、延長が認められるとさらに最長10日間、身柄拘束が続く
  4. 勾留の満期日がくるまでに起訴・不起訴が決まる

つまり、逮捕から起訴・不起訴の決定までの身柄拘束は、最長で23日間に及ぶおそれがあります

この期間内に被害弁償や示談をどこまで進められるかが、その後の処分を大きく左右します。早期釈放や不起訴を目指すのであれば、逮捕直後から弁護士を付けて動き出すことが重要です。

業務上横領の量刑は初犯だと執行猶予?それとも実刑?

仮に、業務上横領で起訴され、裁判で有罪の判決を受ける場合には、刑の重さ(量刑)が決められます。ここでは、業務上横領が初犯という場合の量刑について解説します。

業務上横領の量刑を決める要素

まず、業務上横領の裁判で、裁判官が量刑を決めるにあたっては主に次の要素を考慮します。

  • 犯行動機
    →少しは酌量の余地があるものかまったくないものか
  • 犯行態様
    →計画的か偶発的かなど
  • 被害金額
    →多いか少ないか
  • 犯人の反省の有無及びその程度
  • 社会的制裁の有無
  • 初犯か否か(前科があるかないか)
  • 被害弁償、示談成立の有無
  • 被害者の処罰感情

犯人にとって不利な要素があればあるほど、あるいは裁判官に与えるインパクトが大きい不利な要素があれば量刑は重くなる、すなわち、実刑の判決を受けやすい傾向です。

一方、さほど不利な要素はないか有利な要素がある、あるいは裁判官に与えるインパクトが大きい有利な要素(業務上横領の場合は被害弁償、示談の成立)があれば量刑は軽くなる、すなわち、執行猶予を受けやすい傾向です。

いずれにしても、刑事裁判の量刑は裁判官の自由な心証に基づいて決定されますので、少しでも量刑を軽くしたい場合は、いかに裁判官に有利な要素があることを主張していくことができるかが鍵となります。

業務上横領の実刑と執行猶予がつく割合

令和6年司法統計「第34表 通常第一審事件の有罪(懲役・禁錮)」によりますと、令和6年中に全国の地方裁判所で横領の罪(業務上横領罪のほか横領罪も含む)で有罪判決を受けた人は「516人」で、うち実刑判決を受けた人は「228人」、全部執行猶予付き判決を受けた人は「288人」です。

したがって、実刑判決を受けた人の割合は「約44%」全部執行猶予付き判決を受けた人の割合は「約56%」となります。

なお、量刑区分を見ると、516人のうち9割以上が懲役3年以下の範囲に収まっており、一般的な事案では1年〜3年程度の判決となることが多いといえます。

初犯だと執行猶予がつきやすい?

そもそも執行猶予は、「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」の言渡しをする場合に、情状(事件の事情や反省の程度など)により付けることができるとされています(刑法第25条)。業務上横領罪には罰金刑がありませんので、執行猶予を得るには、まず判決を3年以下の拘禁刑に収めたうえで、情状面の有利な事情を裁判所に示していく必要があります。初犯の方は、執行猶予を付けられる対象の要件(過去に拘禁刑以上の刑に処せられたことがないことなど)も満たしやすい立場にあります。執行猶予の仕組みについて詳しくは「執行猶予とは?実刑との違いや認められる条件をわかりやすく解説」をご覧ください。

そのうえで、先ほど量刑を決める要素の箇所でも解説したとおり、初犯か否かは業務上横領の量刑を決める上での判断要素で、初犯であることは犯人にとって有利な要素として働きますので、初犯であれば執行猶予付きの判決を得やすくなります。

また、仮に前科をもっていたとしても前科の内容や前科がついた時期によっては初犯と同じ扱いとされる可能性があります。たとえば、罰金刑にとどまる比較的軽微な事件の前科や、刑期を終えてから長い年月(5年程度が目安)が経過した古い前科であれば、その内容によっては初犯と同じように扱われる可能性があります。

初犯であること以外にも、

  • 被害金額が少額
  • 会社を解雇された
  • 被害弁償をした
  • 示談を成立させた

などという場合は執行猶予がつきやすくなります。

初犯でも実刑になりやすいケースとは?

もっとも、初犯であることは業務上横領の量刑を決める上での絶対的な要素ではないため、他の要素で不利な事情がある場合には初犯であっても実刑を受ける可能性はあります

たとえば、被害額が数千万円、数億円に上るような被害金額が大きい場合です。被害額が大きいほど被害弁償のハードルも上がります。被害金額が大きい事件では、犯人が被害弁償すること、示談を成立させることが難しい場合も多く、しかも、常習性が認められたり、犯行態様が手の込んだ悪質なものだったりと、犯人に不利な要素が出てくることが多いです。また、仮に被害弁償ができたとしても、必ず実刑を免れるとは限りません。

被害金額が多額、常習性が認められる、犯行態様が悪質な場合以外にも、

  • 会社の経理など重要ポストを任されており、会社への裏切りの度合いが強い
  • 被害弁償ができていない
  • 被害者の処罰感情が強く、示談成立には至っていない

などという場合は実刑となる可能性があります。被害額が高額なケースでの量刑については「業務上横領の被害額が1000万・5000万・1億以上の事例」で詳しく解説しています。

実刑の可能性が見込まれる場合には、あとはどれだけ刑の長さを短くできるかがポイントとなります。

業務上横領の量刑傾向がわかる裁判例

業務上横領の実刑と執行猶予の分かれ目は、実際の裁判例からも読み取ることができます。

まず、執行猶予がついた裁判例です。大学の准教授が、研究用に納品されたパソコンなどを質屋で繰り返し換金し、600万円以上を横領したとされた事案で、懲役3年・執行猶予4年の判決が言い渡されています(福岡地方裁判所小倉支部平成30年10月11日判決)。

一方、実刑となった裁判例もあります。会社の経理事務の担当者が、数年間にわたり400回以上の振込操作を繰り返して合計8,000万円を超える現金を着服した事案では、懲役6年の実刑判決が言い渡されています(千葉地方裁判所平成31年3月19日判決)。

このように、被害金額の大きさや犯行の期間・回数は、執行猶予と実刑を分ける大きな分岐点となります。そのうえで、ここまで見てきたとおり、被害弁償や示談をどこまで進められるかが、この分かれ目に大きく影響します。

業務上横領が初犯だと不起訴になりやすい?

業務上横領が初犯であることは、裁判官が量刑を決める際の要素となるほか、検察官が刑事処分(起訴または不起訴)を決定するにあたっても考慮されます。

業務上横領が初犯であることは、犯人にとって有利な要素として働きますので、初犯であれば不起訴処分となる可能性は高まります。

不起訴処分となれば刑事裁判にかけられることはありませんので、有罪判決となって前科がつくこともありません。つまり実質的に無罪を獲得したのと同様の効果を得ることができます

なお、不起訴処分の多くは、犯罪の嫌疑はあるものの情状などを考慮して起訴を見送る「起訴猶予」によるものです。起訴猶予で前科がつくかどうかなど詳しくは「起訴猶予とは?前科はつく?不起訴・起訴との違いを解説」で解説しています。また、被害金額がごく少額で被害回復も済んでいるような事案では、検察官に送致されずに警察限りで手続きが終わる「微罪処分」となる可能性もあります。

もっとも、初犯であることは、検察官が起訴するかどうかを判断する際の一要素に過ぎません。犯罪の軽重、情状などのほか、被害者との示談の成立の有無が重要視されます。つまり、業務上横領が初犯であったとしても、被害者と示談ができていなければ、起訴される可能性が増してしまうということです。

業務上横領の示談は弁護士に依頼

これまで説明してきたように、業務上横領の初犯であっても、起訴や実刑を免れるためには被害者との示談成立が重要となります。

また、被害者が捜査機関に被害申告する前段階で示談を成立させることができれば、横領の事実が捜査機関に知られない、つまりは逮捕を回避することができます。仮に逮捕後に示談が成立した場合でも、示談成立により逃亡・証拠隠滅のおそれがなくなったと判断されて早期釈放も望めます。

もっとも、被害者が加害者と直接示談交渉に応じてくれるとは限りません。業務上横領の場合、被害者は会社で加害者が従業員のケースが多いですが、会社のお金に手を付けた従業員の言葉を会社は信用しない可能性も十分あります。また、横領した金額について、従業員と会社側で認識が異なることもあり、従業員が示談交渉してもスムーズに話がまとまらないケースも多々あります。

そのため、業務上横領の示談交渉は弁護士に依頼すべきでしょう。示談金の相場や示談を成功させるためのポイントについては「業務上横領の示談金相場は?示談を成功させる3つのポイント」をご参照ください。

弁護士であれば会社側も示談交渉のテーブルについてくれることも多く、穏便な解決に向けた姿勢を見せてくれることも期待できます。また、横領した金額についても、弁護士が客観的な資料によって会社側に説明をしますので、示談交渉がスムーズに進めやすくなります。

なお、会社がどうしても示談に応じてくれない場合でも、打つ手が尽きるわけではありません。横領額に相当する金銭を法務局に供託する(国の機関に預けて被害者が受け取れる状態にしておく)、弁護士会などに贖罪寄付(反省を形として示すための寄付)を行うといった方法で、被害回復に向けた努力や反省の姿勢を裁判所・検察官に示すこともできます。こうした対応の要否や進め方も含めて、弁護士に相談するとよいでしょう。

業務上横領でお困りの方は早めにご相談ください

業務上横領の初犯では、その後の対応の仕方ひとつで、処分の結末は不起訴から実刑まで大きく振れます。特に、逮捕や実刑を避けるうえで被害者との示談は重要な意味を持ちますが、加害者本人やご家族が会社と直接交渉するのは容易ではありません。

会社に発覚してしまった、警察から連絡が来ている、あるいは既に逮捕されてしまったという段階では、時間が経つほど取り得る選択肢は狭まっていきます。一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが、結果を左右します。

当事務所は、業務上横領事件における示談交渉や不起訴の獲得に多数の実績があります。依頼者の不利益を最小限に抑えられるよう弁護士が迅速に動き、全力を尽くして対応いたします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、業務上横領のことでお悩みの方や、ご家族が逮捕されてしまった方は、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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