業務上横領疑いの賠償請求を800万円から150万円に減額できた事例

※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。

事案の概要(相談前の状況)

依頼者:Aさん(女性・30代)
状況:勤務先から業務上横領を疑われ、高額の賠償請求をされている

Aさんは食料品販売の会社に勤務しており、管理職として販売店全体のマネジメントを担当しておりました。

ある時、商品の棚卸を行ったところ、店に存在するはずの在庫が不足していることが発覚しました。

そのため、会社で過去にまで遡って調査をすることになったのですが、以前にも存在するはずの在庫が不足していたことが判明し、その金額もかなりの額に上ったことから、管理職であったAさんが会社からヒアリングを受けることになります。

以前、Aさんが新人であった頃、先輩従業員から在庫数が合わなくなることはよくあると説明を受けたうえ、その際には棚卸の際にデータを修正するという処理手順を教わっていたことから、その点を会社に説明したところ、Aさんが商品を横領しているのではないかという疑いをかけられてしまいます。

データの修正について、先輩から指示を受けたので、それが通常の処理であると考えていたことや、商品を個人的に持ちだすなど横領した事実はないと弁明しましたが、会社のAさんに対する疑いは晴れませんでした。

Aさんは会社から自宅待機を命じられました。

暫くして会社から、顧問弁護士立会いのもとヒアリングをさせてもらいたいと連絡が入りましたが、元々、大きなストレスを感じると過呼吸になったり、パニック状態になったりすることがあったことから、自分一人で行くことは困難であると考え、弊所に相談に来られました。

弁護士の対応と解決への流れ

Aさんから時系列で、現在までの事実経過を伺いました。

Aさんの店では、時期によって繁閑の差が激しく、繁忙期には他店からヘルプが来ても捌ききれないほどのお客さんが来るとのことでした。

そのため、そういった時期の混乱により、あるはずの在庫が存在しないという結果が出ているかもしれないと説明してくれました。

また、誰かが商品を持ち出してしまっているということは想像もしておらず、在庫数が棚卸時にズレるのは、仕入れの数が間違っていたのではないかと考えていたとのことでした。

実際、Aさんが先輩従業員から教わった際にも、商品の持ち出しが頻発しているというような話を聞いたことはなく、仕入れ数が間違っていた可能性があると言われていました。

さらに、先輩従業員から、在庫数にズレがあった時は、棚卸時にデータを現存する在庫数に合わせれば良いという指導を受けていたため、その手順に従い、データを修正したことがあると説明してくれました。

そして、自分が商品を個人的に持ち帰ったことは一度もないとのことでした。

会社が把握している損害額は、少なく見ても数百万円に上るとのことでした。

現時点では、会社から任意のヒアリングを受けるという段階ですが、金額の大きさや会社の調査の結果いかんによっては、刑事事件となる可能性も否定できないこと、民事事件としても、会社が最終的に把握した損害を賠償するよう請求を受ける可能性もあることを説明したところ、体調が優れないこともあり、自分での対応は困難であるとのことで、弊所で対応を引き取ることになりました。

弊所からAさんの会社の担当者に連絡したところ、Aさんから伺っていた通り、会社の顧問弁護士立会いの下、Aさんから事情を再度伺いたいとのことでした。

当方としては、後ろめたいところは無かったのでヒアリングに応じることとしました。

ヒアリングを前にして、Aさんは極度に不安を感じられておりました。

ストレスがかかると過呼吸やパニック状態になる可能性があったことから、会社には、弁護士が同席すること、ヒアリングの時間を1時間だけにしてもらうこと、事前にAさんに確認する事項を教えておいて欲しいことなどを伝えました。

ヒアリングの当日、Aさんと指定された場所に向かうと、会社の担当者や役員、顧問弁護士がおりました。

事実関係についての質問に答えた後、会社側からは、商品を持ちだした事実は現在判明していないが、少なくとも常識に照らして、棚卸データを上司の承諾も得ず、勝手に修正することには問題があるとの指摘がありました。

そのうえで、会社が把握している損害は、ヒアリングの時点でも800万円以上あるとの報告がありました。

その場で会社側から、今後Aさんがどのように対応していくつもりであるのかという質問がありましたが、Aさんの体調が急変したため、回答を待たずに切り上げることになり、後日、弊所を通じて回答をするという話になりました。

落ち着いた後、Aさんの意向を確認すると、訴訟など法的手続において争っていくことは精神状態からして難しい、ましてや刑事事件になった場合にはどうなるか分からない、自分に責任の一端があることは分かったので、その限りにおいて話し合いによる解決を目指したい、ただ賠償をするにしても限界があるとのことでした。

Aさんの意向を踏まえ、会社の代理人とやり取りを進めると、800万円は現時点で把握できている金額に過ぎず、この金額から減額をする意向はない、刑事事件として進めることも検討し始めているとのことでした。

弊所からは、会社の調査によって出てきた数字は、不足する在庫の価格や数から把握したものであり、会社の損害額である可能性はあるものの、当該損害をAさんが発生させたかどうかは明らかになっていないと指摘し、800万円を賠償することはできないが、Aさんが損害発生の発覚を遅らせてしまった可能性はあるため、その限りで和解をしたいと申し入れました。

その後も金額についてやり取りを続け、最終的には150万円を一括で支払うことで和解をすることになりました。

会社側と合意書を取り交わし、解決金を支払って、本件は終件となりました。

解決結果と弁護士のコメント

請求額:800万円以上 ➡ 解決金額:150万円(一括支払い)
刑事処分:なし(刑事事件化を回避)
職場・家族:会社との和解により解決

業務上横領や窃盗を疑われ、会社から高額の賠償請求を受けたり、刑事告訴されたりしてしまったケースを弊所では多数お受けしてまいりました。業務上横領の構成要件や罰則について詳しくは「業務上横領罪とは?逮捕されないケースと構成要件・事例・判例」をご参照ください。

現金や商品を直接扱う業態では、ヒューマンエラーによって、記録されたものと、実際の金額、商品数とズレてしまうことは起こり得ます。

管理を徹底すれば、すぐにズレを見つけることができるのかもしれませんが、未だに担当者任せで管理をしている会社も多く、かなり時間が経過してからズレが発覚するケースも存在します。

そういった場合、担当していた従業員が最初に疑われることになります。

本件でも、Aさんが店の管理者であったことから疑われてしまいました。

業務上横領や窃盗を疑われ、会社から関与していたのではないかと指摘を受けた場合、多くの方は混乱してしまうでしょう。

過去にお受けしたケースでは、社長や役員に囲まれ、損害を賠償する旨約する書面を作成されたケースもありました。

身に覚えのない疑いを向けられた場合にはもちろんのこと、自身に思い当たるところがあった場合でも、安易に損害を賠償する内容の書面に署名してはいけません。

業務上横領や窃盗については、大きなお金を一回で横領・窃取するというケースもありますが、長期間にわたり少額の横領・窃取を繰り返すという事例がほとんどである印象です。

本来、会社側で損害の事実を調査し、裏付けをもって損害額を証明しなければなりませんが、その作業は非常に困難が伴うため、とりあえず早い段階で本人に認めさせるというアクションを取ってくることがあります。

会社側から、さらなる賠償や刑事事件化を示唆されれば、冷静さを失い、やっていないことをやったと説明してしまうこともあるでしょうし、自分が責任を負うべき以上の範囲まで自分の行為であると認めてしまうこともあるでしょう。

しかしながら、後に、書面等で認めてしまったことを争うには困難が伴います。

会社に言われるがまま事実を認めることはせずに、一度、持ち帰って弁護士に相談をするようにしてください。

会社が主張する損害額について、きちんと裏付けがあるのかを確認し、また自身に責任があることなのかを精査することが重要です。

弊所では数十万円から数千万円の規模に上るものまで、業務上横領事件を幅広く対応してまいりました。横領で有罪となった場合の末路については「横領した人の末路は?弁護士が10個の末路を解説」でも詳しく紹介しています。

業務上横領行為により数百万円の損害を与えたとして有罪判決を受けた場合、一発で実刑になるケースもあるため、会社との交渉は慎重に進めていく必要があります。

ご自身での対応に窮した場合には、会社主導で話が進んでしまう前に、弊所にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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